相続した土地や建物を売るとき、「取得費が分からない!」どうすればいい

相続した不動産の取得費計算

こんなお悩みはありませんか?

相続で受け継いだ土地や建物を売却することになったとき、こんな困りごとが出てきます。

・「親が何十年も前に買った土地だから、いくらで買ったのか分からない…」
・「売買契約書も領収書も見つからない。どうやって計算すればいいの?」
・「税金が高くなりそうで不安…」

実は、相続した不動産を売るときの税金計算で、いちばん悩みやすいのが「取得費をいくらにするか」という問題です。

この記事では、取得費が分からないときの対応方法を、できるだけ分かりやすく整理しました。

「取得費」って何? なぜ重要なの?

まず、「取得費」という言葉を簡単に説明します。
取得費とは、売った利益を計算するときに「元手」として差し引ける金額のことです。

売却益の計算式は、ざっくり言うとこうなります:
売却益 = 売った金額 − 取得費 − 諸経費

つまり、取得費が大きいほど、売却益は小さくなり、結果として税金も少なくなります。
逆に、取得費が小さいと売却益が大きくなり、税金も高くなってしまいます。

だからこそ、「取得費をいくらにするか」が、とても重要になるのです。

結局どうすればいい? 実務の進め方(優先順位)

取得費が分からないときは、次の順番で対応するのが基本です。

ステップ1:まず、亡くなった方の取得費を示す資料を探す

契約書や領収書がなくても、あきらめずに次のような資料を探してみましょう。

・登記情報(売主の住所・氏名、売買年月日が分かります)
・通帳や金融機関の記録(当時の振込・出金の形跡がないか)
・抵当権の記録(ローンを組んでいた可能性)
・購入時のメモ、日記、確定申告書類
・仲介業者・不動産会社への照会(当時の資料が残っている可能性)
・売主が不動産業者の場合、業者側の帳簿(取引額が残っていることも)

実際に、過去の裁決事例では、売主(不動産業者)の土地台帳の記載金額を取得費と認めたケースがあります。
直接の契約書がなくても、周辺資料から「だいたいこのくらいで買ったはず」と推認できれば、認められることがあるのです。

ポイント: 周辺資料から金額を推認した場合は、その金額が当時の路線価や公示価格と比べて常識的な範囲かを確認しておくと安心です。

ステップ2:それでも見つからない場合は「概算取得費(5%)」を使う

どうしても取得費が分からない場合、売った金額の5%を取得費とみなすという「概算取得費」を使うことができます。

たとえば、3,000万円で土地を売った場合:
概算取得費 = 3,000万円 × 5% = 150万円

この方法は便利ですが、次の点に注意が必要です。

注意点①:造成費などと”一緒に足せない”場合があります

相続で土地を受け継いだ後に、造成工事をした場合を考えてみましょう。
このとき、「概算取得費(5%)」と「造成費」の両方を足せるかというと、考え方が難しくなります。
実務では、概算取得費と造成費等を比べて、有利な方を選ぶような判断になることが多いです。

注意点②:本当はもっと高いはずなのに、証明できない

昔に買った土地などは、売買契約書が残っていないことが珍しくありません。
本当の取得費が5%を大きく超えるのは明らかでも、証明できないために5%で計算することになり、税負担が重くなってしまうことがあります。

ステップ3:「5%では不合理」な場合は、推計方法を検討する

上記のような調査を尽くしても実際の金額が分からず、かつ「5%では明らかに低すぎる」という場合、次のような「推計」による取得費の算定が検討されることがあります。

・市街地価格指数を使って推計する方法
・地価公示価格を使って推計する方法
・取得時点の相続税評価額を算定して取得費とみる方法

ただし、注意してください。
これらは国税庁が公式に「この方法ならOK」と明言しているわけではありません。
推計を使う場合は、「合理性」や「説明のしやすさ」を踏まえて、慎重に選ぶ必要があります。

知っておきたい基本ルール

ここからは、少し詳しい話になりますが、知っておくと安心できる基本ルールをご説明します。

相続で受け継いだ資産の取得費は「引き継ぎ」が基本

相続で受け継いだ資産には、特別なルールがあります。
基本的に、「亡くなった方が買ったときの取得費」と「買った時期」を、相続人がそのまま引き継ぐ形になります。
つまり、相続人が新しく買ったわけではないので、相続時の評価額(相続税を計算するときの評価額)が、そのまま取得費になるわけではありません。

取得費に含められるもの

取得費には、原則として次のようなものが含まれます。

・その資産を買ったときの代金
・設備費や改良費(価値を上げるためにかけた費用)

たとえば、土地を買った後に造成工事をした費用や、建物を増改築した費用などは、条件を満たせば取得費に加えられることがあります。

相続した後に支払った費用も、一部は取得費に足せます

相続した後に、相続人の側で支払った費用のうち、「その資産を受け継ぐために通常必要だった費用」は、一定の範囲で取得費に加算できる場合があります。

ただし、何でも足せるわけではなく、「その資産と結びついている」と説明できる必要があります。

たとえば、相続登記(名義変更)にかかった登録免許税や司法書士への報酬などについて、どこまで取得費に含められるかは、個別の状況によって変わります。

まとめ:困ったときは早めに相談を

相続で受け継いだ土地や建物を売るとき、「取得費が分からない」というのは、よくある悩みです。
大切なのは、あきらめずに資料を探すことです。

契約書がなくても、登記・通帳・ローン・業者記録など、周辺資料から実際の金額に近づけることができる場合があります。
それでも見つからない場合は、概算取得費(5%)という方法がありますが、状況によっては税負担が重くなることもあります。

判断に迷う場合や、資料の集め方が分からない場合は、早めに税務署にご相談ください。