自宅療養中の付き添い費用の医療費控除
交通事故などが原因で後遺症が残り、医師と相談したうえで自宅で療養することになった、というケースがあります。
たとえば、寝たきりに近い状態が続き、食事や排せつ、体位交換、通院の付き添いなど、日常生活の多くで介助が必要になるような状況です。
このようなとき、ご家族だけでは介助の手が足りず、外部の人(家政婦さん、ヘルパーさん、付き添いの方など)に「療養上の世話」をお願いすることがあります。
ここで気になるのが、その人に支払う費用が、確定申告の「医療費控除」の対象になるかどうか、という点です。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えると、税金の負担が軽くなる制度です。
結論:療養に必要な「世話(介助)」の費用は、対象になることがあります
病気やけがの療養のために必要な”世話(介助)”として支払う費用であれば、支払先が看護師などの資格者でなくても、医療費控除の対象になることがあります。
また、療養を受ける場所が病院か自宅かで結論が変わるわけではありません。
自宅療養であっても、療養上の世話として必要性が認められる範囲の支出であれば、医療費控除の対象になりえます。
医療費控除の対象になりやすい費用(イメージ)
医療費控除でポイントになるのは、「その支払いが、治療や療養に直接関係するかどうか」です。
一般的には、次のような支払いは、療養上の世話として整理しやすいです。
- 寝たきりの方の体位交換、排せつ介助、清拭(からだを拭くこと)、着替えの介助
- 食事の介助(患者ご本人に対する介助としての意味合いが強いもの)
- 通院・受診の付き添い(安全確保や移動介助が必要な場合)
- 医師の指示や病状に照らして、一人にしておけないため見守りが必要な場合の付き添い など
たとえば、寝たきりで一人で起き上がれず、トイレや着替えも自力では難しいため、日中数時間は付き添いの方に介助をお願いしている、というケースでは、「療養上の世話」の性質がはっきりしやすいです。
対象になりにくい(または線引きが必要な)費用
同じ”家政婦さんへの支払い”でも、内容が「療養上の世話」から離れてくると、医療費控除としては注意が必要です。
たとえば次のようなものは、一般には医療費控除としては説明しづらくなります。
- 家族全員分の食事作り、掃除、洗濯など、一般的な家事の代行が中心のもの
- 患者ご本人の療養とは直接関係しない、日常生活の便利サービス部分
- 介助と家事が混ざっているのに、内訳がまったく分からない支払い など
現実には「介助も家事もお願いしている」という形が多いと思います。
その場合は、「療養上の世話に当たる部分」と「通常の家事代行の部分」を分けて考えるのが安全です。
もし料金体系として内訳があるなら、その内訳に沿って医療費控除に入れる範囲を整理しておくと、後から説明しやすくなります。
介護保険の要介護認定を受けていない場合はどうなる?
介護保険の要介護認定を受けているかどうかは、医療費控除の判断の決め手ではありません。
医療費控除はあくまで「治療・療養に直接必要な支払いか」という視点で見ます。
そのため、要介護認定がないことだけで直ちに対象外になる、というものではありません。
ただし、介護保険サービスや障害福祉サービスなど、制度ごとに取扱いが分かれることがあります。
実際のサービス内容や契約形態によって整理が変わる場合もあります。
申告の際は、「どういう目的で、誰に、何をしてもらった費用か」を言葉で説明できる状態にしておくことが大切です。
申告で困らないための準備(実務的なポイント)
医療費控除に入れる場合は、次のような準備をしておくと安心です。
- 領収書(支払先、日付、金額)が分かるものを保管する
- 可能なら、領収書や明細に「付き添い」「介助」「療養上の世話」など、内容が分かる記載をもらう
- 介助と家事が混在する場合は、契約書・明細・メモ等で内訳が分かるようにする
- 医師と相談のうえ在宅療養を選んだ事情があるなら、通院記録や指示内容が分かる資料(診療明細、看護計画、病状の説明書など)を手元に残しておく
診断書まで必須とは限りませんが、こうした資料があると、後から説明がしやすくなります。
医療費控除は「何に対する支払いか」が肝心です。
同じ金額でも、内容の説明がつくかどうかで、申告の安心感が変わってきます。
まとめ
交通事故の後遺症などで寝たきりとなり、自宅で療養する中で、家族だけでは介助が難しいため外部の人に療養上の世話をお願いする、というケースでは、その支払いが”療養上の世話の対価”として必要な範囲であれば、医療費控除の対象になりえます。
病院か自宅か、また要介護認定の有無だけで機械的に決まるものではなく、「支払いの内容(治療・療養との直接性)」がポイントになります。
なお、税制や取扱いは改正や運用変更がありえます。実際の申告では、支払先・契約内容・明細の書き方によって判断が分かれることもあります。心配な場合は、税務署に最新の情報をご確認ください。






