親会社の社員が子会社の役員として出向している場合、社宅の家賃はどう計算する?

出向役員の社宅は「使用人社宅」それとも「役員社宅」?判断ポイントを解説

グループ会社の中で社員を出向させている会社では、給与だけでなく、社宅(会社が用意する住まい)の税務上の取扱いについて、判断に迷う場面が出てきます。

特に分かりにくいのが、次のようなケースです。

・親会社では、社員としての籍(身分)を残したまま
・出向先の子会社では、役員になっている

「出向(しゅっこう)」とは、社員が元の会社に籍を置いたまま、グループ会社など別の会社で働くことをいいます。
今回のように、親会社の社員が出向して、子会社では取締役などの役員になっているケースは珍しくありません。

たとえば、親会社の社員が子会社の取締役として出向しており、その人に親会社が所有する社宅を貸しているとします。この場合、

「社宅を持っているのは親会社で、本人も親会社では社員(税務上は『使用人』と呼びます)なのだから、社員向けの計算方法でよいのでは?」

と考えたくなるかもしれません。しかし、社宅にかかる費用を子会社が親会社に支払っている場合には、単純に「親会社の社員向け社宅」として扱えないことがあります。

このようなケースでは、子会社が親会社から社宅を借りて、それを自社の役員に貸しているのと同じように考えて、会社が受け取るべき家賃(税務上「賃貸料相当額」といいます)を計算することになります。

社宅の税務を考えるときは、
・建物を誰が所有しているか
・実際に誰が住んでいるか
・その人はどの会社で、どのような立場(社員か役員か)か
・社宅の費用を実質的にどの会社が負担しているか
まで整理することが大切です。

今回は、親会社の社員が子会社の役員として出向している場合の社宅について、できるだけ分かりやすく解説します。

今回想定するケース

次のようなケースを考えます。

・親会社の社員が、親会社の社員としての身分を残したまま、子会社の役員として出向している
・その出向者に対して、親会社が社宅を貸している
・社宅は、鉄筋コンクリート造、床面積115平方メートル
・親会社は、社宅の設置・維持・管理などにかかる費用に相当する金額を、子会社から負担金として受け取っている

つまり、住まいそのものは親会社が用意していますが、その費用については子会社が負担している、という関係です。
この「子会社が費用を負担している」という点が、今回の判断のポイントになります。

親会社の社員だからといって、必ず「社員向け社宅」になるわけではありません

会社が住まいを貸すとき、相手が社員か役員かによって、税務上の家賃の計算方法が異なります。

会社が社員や役員に社宅を貸すときに、「これだけは家賃として受け取ってください」という基準になる金額を、税務上「賃貸料相当額」といいます。

社員(税務上の「使用人」)に貸す場合:計算した賃貸料相当額の50%以上を本人から受け取っていれば、原則として、社宅による経済的な利益について給与としての税金はかかりません。
役員に貸す場合:原則として、計算した賃貸料相当額以上を本人から受け取る必要があります。50%という基準は使えません。

このように、「社員向けの社宅なのか、役員向けの社宅なのか」によって、本人から受け取るべき家賃の考え方が変わってきます。

今回の出向者は、親会社だけを見れば「社員」です。
しかし、出向先の子会社では「役員」です。
さらに、親会社が負担した社宅の設置・維持・管理などの費用相当額を、子会社が親会社に支払っています。

このような事実関係を前提にすると、今回のケースでは、子会社が親会社から住まいを借り上げて、それを自社の役員に貸与しているのと同じように考えることになります。
したがって、単純に「親会社が持っている社宅だから社員向けの計算でよい」と判断するのではなく、子会社の役員に対する社宅として、賃貸料相当額を検討する必要があります。

なお、こうした親子会社間の費用負担があるケースの取扱いは、法律に一つの数式としてそのまま書かれているわけではなく、役員に社宅を貸すときの一般的な考え方を当てはめて整理する、というのが実務上の基本的な考え方です。
契約内容や実態によって判断が変わることもありますので、個別の状況については、顧問税理士や所轄の税務署にご確認いただくことをおすすめします。

まずは「小規模な住宅」に該当するか確認します

役員社宅の家賃を計算するときは、最初に、その住まいが税務上の「小規模な住宅」にあたるかどうかを確認します。
この判定によって、賃貸料相当額の計算方法が変わるためです。

役員に貸す住まいについては、建物の「法定耐用年数(税務上、その建物が何年使えると決められているかという年数)」によって、小規模住宅の基準が異なります。一般的には、次のように判定します。

・法定耐用年数が30年以下の建物……床面積132平方メートル以下
・法定耐用年数が30年を超える建物……床面積99平方メートル以下

鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造の住宅用建物は、一般的に法定耐用年数が47年です。
そのため、今回の鉄筋コンクリート造の社宅は、「法定耐用年数30年超」の区分で判断します。
この場合、小規模住宅となる床面積の基準は99平方メートル以下です。

今回の社宅は115平方メートルですので、99平方メートルを超えており、「小規模な住宅」には該当しません。

ここは間違えやすいところです。「115平方メートルなら132平方メートル以下だから小規模住宅ではないか」と思われるかもしれませんが、132平方メートルという基準は、法定耐用年数が30年以下の建物について使う基準です。
鉄筋コンクリート造など、法定耐用年数が30年を超える住まいでは、99平方メートル以下かどうかで確認します。

なお、区分所有マンションなどの場合には、専有部分(自分の部屋の部分)だけでなく、共用部分(廊下やエントランスなど)を合理的に振り分けた床面積を含めて判定する必要がある場合があります。

今回は2つの金額を計算して、多いほうを使います

今回の社宅は小規模住宅には該当しません。
また、今回の事実関係では、子会社が親会社から住まいを借り上げて、それを自社の役員に貸しているのと同じように考えます。
そこで、賃貸料相当額については、次の2つの金額を比較します。

①子会社が親会社に支払う負担金額の50%

計算式は「子会社の負担金額(月額)×1/2」です。
たとえば、子会社が社宅について毎月8万円を親会社に負担しているとします。この場合は、
8万円 × 1/2 = 4万円
となります。

②固定資産税の課税標準額を使って計算した役員社宅の賃貸料相当額

「固定資産税の課税標準額」とは、市区町村が固定資産税を計算するときのもとになる評価額のことで、実際に納めた固定資産税の金額そのものとは別のものです。この点は後ほど改めて説明します。

今回のように法定耐用年数が30年を超える住まいの場合には、次のように計算します。

{建物の固定資産税の課税標準額 × 10% + 敷地の固定資産税の課税標準額 × 6%}÷ 12

この方法で、1か月あたりの賃貸料相当額を求めます。

そして、①(子会社の負担金額の50%)と②(固定資産税の課税標準額を使って計算した金額)を比較し、多いほうの金額を1か月あたりの賃貸料相当額として考えます。

具体例で計算してみましょう

仕組みが分かりやすいように、仮の数字を使って計算してみます。
実際の事例の数字ではなく、あくまで計算方法を説明するための例です。

次のような場合を考えます。

・子会社から親会社への負担金……月8万円
・建物の固定資産税の課税標準額……300万円
・土地の固定資産税の課税標準額……500万円

まず①を計算します。

8万円 × 1/2 = 4万円

次に②を計算します。建物については、

300万円 × 10% = 30万円

土地については、

500万円 × 6% = 30万円

合計すると年間60万円です。これを12か月で割ると、

60万円 ÷ 12 = 5万円

したがって、①は4万円、②は5万円となります。この例では②の5万円のほうが大きいため、月5万円が賃貸料相当額となります。

「固定資産税額」ではなく「固定資産税の課税標準額」を確認します

社宅家賃の計算で間違えやすいのが、実際に支払った固定資産税の金額をそのまま使ってしまうことです。
計算に使うのは、固定資産税として納めた税額ではなく、固定資産税の課税標準額です。

固定資産課税台帳などで、建物と土地それぞれの課税標準額を確認します。たとえば、「固定資産税を年間20万円払っているので、その20万円に10%を掛ければよい」という計算ではありません。
建物についての固定資産税の課税標準額、土地についての固定資産税の課税標準額を、それぞれ別に確認し、その金額を計算式に当てはめます。

親会社が所有している社宅であれば、親会社側で固定資産税関係の資料を保管していることが多いでしょう。実際に計算するときは、建物の固定資産税の課税標準額と、土地の固定資産税の課税標準額を、分けて確認しておくことが大切です。

また、固定資産税の課税標準額は数年ごとに見直しが行われることがあります。
見直しがあったときには、賃貸料相当額も見直しが必要になることがありますので、一度社宅家賃を決めたらそのままにするのではなく、固定資産税関係の資料が更新されたタイミングで確認しておくと安心です。

小規模住宅だった場合には計算方法が変わります

今回は鉄筋コンクリート造115平方メートルですので、小規模住宅には該当しません。
一方、役員に貸している住まいでも、小規模住宅に該当する場合には、社員に対する社宅と同じ算式を使って賃貸料相当額を計算します。
計算式は、次の3つを合計した金額です。

・① 建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
・② 12円 × 建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3平方メートル
・③ 土地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

この①から③の合計が、役員に貸している小規模住宅の賃貸料相当額となります。

ただし、ここでとても大切な注意点があります。「社員と同じ計算式を使う」ことと、「社員と同じように計算額の半分だけ受け取ればよい」ことは別です。

社員の場合には、一定の方法で計算した賃貸料相当額の50%以上を本人から受け取っていれば、原則として差額を給与として課税しないという取扱いがあります。一方、役員の場合には、その50%という基準はありません。
役員については、原則として、計算した賃貸料相当額以上を本人から受け取る必要があります。

ここは社宅制度を運用するときに、間違えやすいポイントです。

本人から受け取る家賃が少ないと、給与として税金がかかることがあります

会社が役員に社宅を無償で貸した場合には、原則として、賃貸料相当額が役員に対する給与として扱われます。
また、役員から家賃を受け取っていても、その金額が賃貸料相当額より少ない場合には、

賃貸料相当額 - 実際に本人から受け取った家賃

の差額について、給与として税金がかかる可能性があります。

たとえば、賃貸料相当額が月5万円だったとします。
ところが、役員本人からは月3万円しか受け取っていなかったとします。

この場合、
5万円 - 3万円 = 2万円
の差額があります。

この月2万円について、役員に対する給与として取り扱う必要が生じます。
1年間では、
2万円 × 12か月 = 24万円
です。

月々の差額はそれほど大きく見えなくても、年間にすると金額が積み上がります。
そのため、社宅制度を始めるときには、「近隣の家賃がこれくらいだから」「本人にはこのくらい払ってもらえばよいだろう」と感覚的に決めるのではなく、税務上の賃貸料相当額をきちんと計算しておくと、後から慌てずに済みます。

親会社と子会社の間でやり取りする「負担金」の中身も確認しましょう

今回のケースでは、親会社が社宅の設置・維持・管理などにかかる費用相当額を、子会社から受け取っています。
ここで大切なのは、子会社が毎月いくら支払っているかだけでなく、その負担金にどのような費用が含まれているかを確認することです。

一般的な借り上げ社宅では、会社が家主に支払う賃料の中に、建物の管理に必要な費用などが含まれていることがあります。
ただし、今回のような親会社と子会社の間の負担金については、契約内容や請求方法によって、その性質が異なります。
そのため、管理費などを一律に含めてよいと考えるのではなく、実際の契約内容や負担金の内訳を確認して判断することが大切です。

具体的には、次のような資料を確認しておくとよいでしょう。

・親会社と子会社の出向契約書
・社宅に関する契約書や覚書
・親会社から子会社への請求書
・負担金の計算明細
・社宅に関する費用の内訳

「子会社の負担金額×50%」を計算するときには、その負担金がどのような内容で構成されているのかまで確認しておくと、後から税務上の計算根拠を説明しやすくなります。

実務では「社宅の名義」だけで判断しないことが大切です

今回のケースで特に重要なのは、「親会社が所有している社宅だから、必ず親会社の社員向け社宅になるわけではない」という点です。

今回のお金と社宅の流れを整理すると、次のようになります。

1.親会社が社宅を用意する
2.子会社の役員として出向している人が住む
3.子会社が親会社に社宅費用の負担金を支払う

形式上、社宅を所有しているのは親会社です。
しかし、子会社がその費用を負担していることまで考えると、今回の前提では、親会社から子会社が社宅を借り、その子会社が自社の役員に貸しているのと同じように整理することになります。

このため、「親会社では社員だから社員向け社宅」という本人の身分だけで結論を出すのではなく、社宅の提供関係と費用負担を含めて、全体を見ることが大切です。

よくある勘違いを3つご紹介します

勘違い①:「親会社の社員だから社員向け社宅で計算すればよい」

今回のような出向では、本人には二つの立場があります。
親会社では「社員」、子会社では「役員」です。
本人の親会社での肩書だけを見て、「社員向け社宅のルールを使えばよい」と判断しないよう注意が必要です。
どの会社が実質的に住まいを提供しているのか、誰が費用を負担しているのかまで確認しましょう。

勘違い②:「115平方メートルなら132平方メートル以下だから小規模住宅」

役員社宅の小規模住宅の床面積基準は、建物の法定耐用年数によって変わります。
今回のような鉄筋コンクリート造の住まいは、通常は法定耐用年数30年超の区分になり、基準は99平方メートル以下です。
したがって、115平方メートルの住まいは小規模住宅には該当しません。

勘違い③:「役員でも家賃の半分を払ってもらえば大丈夫」

社員については、計算した賃貸料相当額の50%以上を本人から受け取っていれば、一定の条件のもとで給与として課税されない取扱いがあります。
しかし、役員については同じ扱いにはなりません。
役員の場合は、原則として計算した賃貸料相当額以上を受け取る必要があります。
「小規模住宅なら社員と同じ算式を使うから、本人負担も半分でよい」ということではありませんので、ご注意ください。

実際に計算するときに準備しておきたい資料

今回のような社宅について賃貸料相当額を計算するときには、次のような資料をそろえておくと安心です。

・建物の固定資産税の課税標準額が分かる資料
・土地の固定資産税の課税標準額が分かる資料
・社宅の床面積が確認できる資料
・建物の構造が確認できる資料
・親会社と子会社との出向契約書
・社宅に関する親子会社間の契約書や覚書
・子会社から親会社へ支払っている負担金の明細
・負担金に何が含まれているか分かる資料
・役員本人から受け取っている社宅家賃の記録
・賃貸料相当額の計算表

特に、親会社と子会社の間で費用をやり取りしているケースでは、「誰が、誰に、何のために、いくら支払っているのか」が分かる資料を残しておくことが重要です。

税務調査などで確認された場合にも、「以前からこの金額だったので、そのまま受け取っています」という説明より、「固定資産税の課税標準額と親子会社間の負担額を確認し、この計算方法で決めています」と説明できるほうが、安心して対応いただけます。

まとめ:親会社の社員でも、子会社で役員なら社宅の取扱いに注意しましょう

親会社の社員が、社員としての身分を残したまま子会社の役員として出向している場合、社宅の取扱いは少し複雑になります。

今回のように、
・本人は親会社では社員
・出向先の子会社では役員
・社宅は親会社が用意している
・社宅の設置・維持・管理などにかかる費用相当額を子会社が負担している
というケースでは、子会社が親会社から社宅を借り上げて、それを自社の役員に貸しているのと同じように考えて、賃貸料相当額を検討します。

また、今回の住まいは鉄筋コンクリート造で床面積115平方メートルです。鉄筋コンクリート造の住まいは通常、法定耐用年数が30年を超えるため、小規模住宅の床面積基準は99平方メートル以下となります。
したがって、115平方メートルの今回の住まいは小規模住宅には該当しません。

そのため、今回の前提では、
・① 子会社の月額負担金 × 1/2
・② {建物の固定資産税の課税標準額 × 10% + 土地の固定資産税の課税標準額 × 6%}÷ 12

を計算し、いずれか多い金額を1か月あたりの賃貸料相当額として考えます。
そして、役員本人から受け取る家賃がこの賃貸料相当額より少ない場合には、その差額が給与として課税される可能性があります。

社宅の税務は、「建物を誰が持っているか」だけで判断するのではなく、本人の親会社・子会社それぞれでの立場、社宅の提供関係、親子会社間の費用負担を、あわせて確認することが重要です。
特にグループ会社間の出向では、一般的な社員社宅とは事情が異なることがあります。

出向者に社宅を提供するときは、後から処理を直すことにならないよう、社宅を貸し始める段階で、出向契約の内容、社宅費用の負担関係、固定資産税の課税標準額、本人から受け取る家賃を整理しておくと安心です。

※この記事は2026年8月10日時点の情報をもとに作成しています。
実際の税務上の取扱いは、出向契約の内容、社宅の所有・賃借関係、親会社と子会社の費用負担の内容などによって異なる場合があります。
特に、今回のような親子会社間の費用負担がある場合の取扱いは、実務上の考え方を当てはめて整理したものであり、個別の事情によって結論が変わることもあります。
正確な取扱いや最新の情報については、所轄の税務署にご確認いただくことをおすすめします。