「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」―日米の財政拡張が変える資産運用の常識

金利上昇は本当に「正常化」なのか―日米の財政拡張が変える株式・国債・通貨の世界

日本でも米国でも、長期金利が大きく動く時代になってきました。

2026年に入ってからは、日本の10年国債利回りが約30年ぶりの水準まで上昇し、米国でも30年国債の利回りが20年以上ぶりの高さをつける場面が続いています。
長い間ほとんど意識する必要がなかった金利が、いよいよ経済や企業経営、そして政府の財政にも大きな影響を与える水準まで上がってきているのです。

米国でも、高い金利が続く一方で政府債務は増え続けています。

こうした状況を見ると、
「景気が良くなったから金利が上がっているだけなのか」
それとも、
「政府の借金が増えすぎて、投資家がより高い金利を求めるようになっているのか」
を分けて考える必要があります。

私は、ここがこれからの世界経済を見るうえで非常に重要なポイントになると考えています。

現在起きている金利上昇には、経済が正常化したことによる金利上昇も含まれています。

しかし、それだけでは説明できない動きも少しずつ大きくなっています。

特に気になるのが、日米とも政府債務が増え続けているにもかかわらず、財政再建よりも財政支出の拡大を重視していることです。

この状態が長く続けば、金利上昇の意味そのものが変わってくる可能性があります。

「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」は同じではありません

最初に整理しておきたいのが、金利が上がること自体が必ず悪いわけではないということです。

例えば、経済が成長して企業の投資が増え、賃金が上がり、人々の消費も増えているとします。

その結果、物価もある程度上昇し、中央銀行が非常に低かった金利を通常の水準へ戻していく。

こうした流れで金利が上昇するのであれば、それほど大きな問題ではありません。

企業の借入金利は上がりますが、それ以上に売上や利益が増えていれば十分に耐えることができます。

政府についても、経済成長によって税収が増えれば、多少金利が上がっても対応できます。

これが、いわば「良い金利上昇」です。

ところが、まったく違う理由で金利が上がる場合があります。

政府の財政赤字が増えます。

その穴を埋めるために国債を大量に発行します。

国債が大量に市場へ出てくれば、投資家は、
「もっと高い利回りでなければ買いたくない」
と考えるようになります。

すると国債価格が下がり、長期金利が上昇します。

金利が上がれば政府の利払い費も増えます。

利払い費が増えると、さらに財政赤字が拡大します。

そして、その赤字を埋めるために、また国債を発行する必要が出てきます。

つまり、

財政赤字が増える

国債発行が増える

長期金利が上がる

政府の利払い費が増える

さらに財政が悪化する
という循環です。

こちらは景気が良くなった結果としての金利上昇とは性質が大きく違います。

現在の日米では、この二つの金利上昇が混ざり始めているように見えます。

日本の金利上昇は「正常化」だけでは説明しにくくなっています

日本では長い間、金利が極端に低い状態が続いてきました。

そのため、金利がある程度上昇すること自体は不自然ではありません。

物価が上がり、賃金も少しずつ上昇し、日本銀行が長く続けてきた非常に緩い金融政策を少しずつ修正していくのであれば、長期金利が上がるのは当然ともいえます。

問題は、その金利上昇のすべてを「正常化」という言葉だけで説明できるのかということです。

日本政府の債務はすでに非常に大きな規模になっています。

実際、2026年8月には新発10年国債の利回りが1996年以来およそ30年ぶりの水準まで上昇し、日本の財政悪化への懸念が意識されているとの報道も相次ぎました。

それでも、防衛、社会保障、産業政策、エネルギー対策、物価高対策、新しい成長分野への支援など、政府に求められる支出は増えています。

もちろん、それぞれには必要性があります。

しかし、すべてを同時に進めれば、政府がお金を必要とする金額も大きくなります。

その資金を税収だけでまかなえなければ、国債発行が増えることになります。

国債の供給が増えれば、投資家がより高い利回りを求めるのは自然です。

つまり、日本の長期金利上昇には、
「金融政策が普通の状態へ戻っている」
という部分だけでなく、
「これから発行される国債を買ってもらうには、より高い金利が必要になっている」
という部分も含まれ始めている可能性があります。

ここを見落とすべきではありません。

日本には「円を守りたいが、金利は上げたくない」という難しさがあります

現在の日本が難しいのは、政策の方向がぶつかりやすくなっていることです。

円安と物価上昇を抑えようとすれば、日本銀行はある程度金利を上げる必要があります。

金利が上がれば、円を持つ魅力が以前より高くなるため、円安を抑える方向に働く可能性があります。

しかし金利が上がれば、政府が発行している国債の利払い負担も時間をかけて増えていきます。

つまり、
円を守るためには金利を上げたい。
しかし、
財政を守るためには金利をあまり上げたくない。
という矛盾が出てきます。

反対に、政府の利払い負担を心配して金利を低く抑え続ければ、円安が続く可能性があります。

円安が進めば、海外から買うエネルギーや食料、原材料などの価格が上がりやすくなります。

その結果、国内の物価上昇が続けば、今度は再び金融政策を引き締める必要が出てきます。

日本銀行だけに問題を解決してもらおうとしても、そもそも限界があるのです。

金融政策と財政政策を別々に考えることが難しい時代になってきています。

米国では政府債務そのものより「これからも増え続けるのか」が重要です

米国についても同じような問題があります。

米国の連邦政府債務は、この10年ほどで大きく増加しています。

ただし、過去に債務が増えたことだけを問題にしても十分ではありません。

市場が本当に見ているのは、
「これから債務が減る見通しがあるのか」
という点です。

政府債務が大きくても、財政赤字を縮小する明確な計画があり、将来的に債務の増加を抑えられると投資家が考えているのであれば、大きな問題にならない可能性があります。

ところが今後も減税、防衛、産業政策などに多くの資金を使いながら、財政赤字を大きく減らさないのであれば、米国政府は大量の国債を発行し続ける必要があります。

そのとき投資家は、
「米国債は安全か」
だけではなく、
「この利回りなら買う価値があるか」
を考えます。

ここは非常に重要です。

国債に信用不安がなくても、供給量があまりに多ければ、価格は下がることがあります。

国債価格が下がれば、利回りは上昇します。

実際、2026年8月に行われた米国の30年国債入札では、落札利回りが2001年以来およそ25年ぶりの高さとなり、超長期債への需要の弱さが市場で意識される場面もありました。

つまり、信用問題が表面化していなくても、国債の供給が増え続けるだけで長期金利に上昇圧力がかかるのです。

世界では「お金の奪い合い」が始まっている可能性があります

さらに大きな視点で見ると、政府債務だけの問題ではありません。

これから世界では、非常に多くの分野がお金を必要とします。

AIへの投資があります。

データセンターを造る必要があります。

大量の電力設備も必要です。

半導体工場も造らなければなりません。

防衛費も増えています。

インフラの更新も必要です。

高齢化への対応にもお金がかかります。

気候変動やエネルギー問題への投資も続きます。

そして政府自身も財政赤字を補うために大量の資金を必要としています。

つまり、世界中で同時に、
「お金を貸してください」
という需要が増えているわけです。

しかし、世の中にある貯蓄には限りがあります。

その限られたお金を、

政府も欲しい。

企業も欲しい。

AI企業も欲しい。

防衛産業も欲しい。

不動産業界も欲しい。

となれば、資金を借りるための値段である金利が上がるのは自然です。

2010年代とは、この部分がかなり違います。

米国債の買い戻しは「借金を減らす政策」ではありません

米国では、財務省による国債の買い戻しも注目されています。

国債を買い戻すと聞くと、
「政府が借金を返している」
ように聞こえるかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

例えば、政府がすでに発行している長期国債を買い戻したとします。

その資金を、新しく短期国債を発行して調達したのであれば、政府全体の借金が大きく減ったわけではありません。

借金の種類を入れ替えただけです。

長期間借りる形を減らして、短期間借りる形を増やしたともいえます。

実際、2026年8月には米財務省が長期国債の買い戻し枠を従来の2倍以上に広げると発表し、発表の直後には長期金利が一時的に低下する場面もありました。
この措置は国債市場の流動性を支えることが目的とされていますが、同時に長期金利の上昇圧力を和らげる狙いがあるとも見られています。
ただし、買い戻しの原資は新たな短期国債の発行でまかなわれており、政府全体の借金そのものが減ったわけではない点は変わりません。

この方法にはメリットがあります。

市場に出回っている特定の国債を整理したり、国債市場の取引を円滑にしたり、長期債の需給を改善したりする効果は考えられます。

しかし、政府債務そのものを減らす政策ではありません。

ここを混同してはいけません。

長期債を減らして短期債を増やせば、別の危険が生まれます

短期国債は一般的に、長期国債より低い金利で発行しやすい場合があります。

そのため短期的には、政府の利払い費を抑えることができます。

しかし短期国債には弱点があります。

すぐに満期が来ることです。

そのたびに、新しい国債を発行して借り換えなければなりません。

もし金利が上がっているときに大量の借り換えが必要になれば、高い金利が政府の利払い費へ早く反映されます。

住宅ローンに置き換えると分かりやすいでしょう。

長期間固定された住宅ローンをやめて、短期間で何度も金利を見直すローンへ変更するようなものです。

現在の金利が低ければ得をするかもしれません。

しかし将来金利が上がれば、その影響をすぐに受けます。

今の負担を少し軽くする代わりに、将来の金利変動への弱さを大きくする。

そうした側面があるのです。

金利を抑えようとする政策が増えるほど、逆に市場が不安になることもあります

ここからがさらに難しい問題です。

政府にとって、長期金利の上昇は非常に困ります。

住宅ローン金利が上がります。

企業の借入金利も上がります。

不動産市場にも影響します。

株価にも影響します。

そして政府自身の利払い費も増えます。

そのため政府には、できるだけ長期金利を上げたくないという強い動機があります。

そこで国債の発行方法を変えたり、買い戻しを増やしたりして、長期金利への上昇圧力を弱めようとすることが考えられます。

ただし、財政赤字そのものが減っていなければ問題の根本は変わりません。

市場から見れば、
「国債の売り方は変わったが、政府の借金が増え続ける状況は変わっていない」
ということになります。

そのため一時的に金利を下げることができても、財政への見方が変わらなければ、再び長期金利が上昇する可能性があります。

市場が本当に知りたいのは、
「どの国債を買い戻すのか」
ではなく、
「将来の政府債務をどうやって増えにくくするのか」
だからです。

中央銀行の独立性も重要になってきます

もう一つ注意したいのが、政府と中央銀行の距離です。

本来、政府の財務当局と中央銀行は役割が違います。

政府は税金や国債発行を通じて財政を運営します。

一方、中央銀行は物価や景気を見ながら金利を決めます。

ところが政府債務が大きくなり、金利上昇による利払い費が非常に重くなると、

「政府の負担を減らすために金利を低くしてほしい」

という圧力が強くなる可能性があります。

もし市場が、
「中央銀行が物価よりも政府の利払い負担を優先するようになるのではないか」
と考え始めれば、逆効果になる場合があります。

金利を低く抑えれば将来インフレが強くなるのではないか。

通貨の価値が下がるのではないか。

そのような心配が増えるからです。

すると投資家は長期国債を買うために、さらに高い利回りを要求する可能性があります。

政府が金利を下げようとすればするほど、長期金利が上がってしまう。

そんな難しい状態に入る可能性もあるのです。

今後もっとも注意したいのは「中央銀行が金利を下げても長期金利が下がらない」ことです

これから金融市場を見るうえで、非常に重要な変化があります。

それは、
中央銀行が政策金利を下げているのに、10年や30年といった長期金利が上昇する
という動きです。

通常であれば、中央銀行が利下げを始めれば、市場は将来の金利低下を予想します。

そのため長期金利も下がりやすくなります。

しかし、中央銀行が利下げをしているにもかかわらず長期金利が上がるのであれば、市場は別のものを見ていることになります。

財政赤字。

大量の国債発行。

将来のインフレ。

政府への信頼。

こうしたものを心配している可能性があります。

その段階になると、長期金利は中央銀行だけではコントロールしにくくなります。

私は、この動きが今後の非常に重要な確認ポイントになると考えています。

そして金利上昇は株式市場にも大きな影響を与えます

ここまでの話は国債市場だけの問題ではありません。

株式市場にも直接つながっています。

景気が良くなって金利が上がる場合、企業の利益も増えている可能性があります。

例えば、

企業利益が10%増える。

一方で金利も少し上がる。

という状況であれば、株価はある程度耐えることができます。

しかし、財政不安や国債の大量発行によって金利が上がる場合は違います。

企業利益が増えていないにもかかわらず、金利だけが上がります。

株式の価値を計算するときに使われる割引率が高くなりますから、同じ利益を出している会社でも、投資家が払ってよいと考える株価は低くなります。

簡単に言えば、PERが下がりやすくなります。

さらに借入金利が上昇し、企業の利払い負担まで増えてくれば、企業利益そのものも減る可能性があります。

すると、
PERが下がる。
さらにEPS、つまり1株当たり利益も下がる。
という二重の下押しが起きます。

これは株式市場にとってかなり厳しい環境です。

「金利が低いから株を買う」という時代が終わる可能性があります

2010年代の株式市場には、一つの大きな特徴がありました。

国債の金利が非常に低かったことです。

銀行預金にもほとんど金利がつきません。

国債を買っても十分な利回りが得られません。

そのため投資家は、
「多少リスクを取ってでも株式を買うしかない」
という状態になりやすくなっていました。

世界中の中央銀行が大量のお金を供給したこともあり、株式、不動産、さまざまな金融商品へ資金が流れ込みました。

しかし国債金利が十分高くなれば、状況は変わります。

安全性が比較的高い国債で数%の利回りが得られるのであれば、すべてのお金を株式へ向ける必要はありません。

国債という強力な競争相手が復活するからです。

株式市場からお金が完全に消えるという意味ではありません。

しかし、
「株でなければ運用できない」
という世界ではなくなります。

これは非常に大きな変化です。

これからは企業の実力が今まで以上に重要になります

金利が非常に低い世界では、市場全体へ大量のお金が流れ込むだけで、多くの株価が一緒に上がることがありました。

しかし金利が高くなれば、すべての企業が同じように評価されるとは限りません。

借金が多い企業。

利益率が低い企業。

将来の利益ばかりを期待されている企業。

景気に大きく左右される企業。

こうした会社には厳しい環境になる可能性があります。

一方で、

十分な利益を出している。

価格転嫁ができる。

借金が少ない。

高い利益率を維持できる。

安定したキャッシュフローがある。

という企業は、相対的に強くなります。

中央銀行のお金によって株式市場全体が持ち上げられるのではなく、

「その会社は本当に利益を生み出せるのか」

によって株価が決まる割合が大きくなる可能性があります。

これは株式投資の考え方そのものを変える話です。

日本の金利上昇が米国にも影響する可能性があります

さらに重要なのが、日本と米国の問題を別々に考えられないことです。

日本では長い間、国内の金利が非常に低かったため、日本の投資家は海外に資金を向けてきました。

米国債も重要な投資先の一つです。

ところが日本国債の利回りが十分高くなれば、日本国内で運用する魅力が高くなります。

為替変動のリスクを取って海外債券を買わなくても、日本国債で一定の利回りが得られるからです。

すると、日本の金融機関や機関投資家が資金の一部を国内へ戻す可能性があります。

もし日本から米国債へ流れていた資金が減れば、米国側では国債の買い手が減ります。

その結果、米国債利回りにさらに上昇圧力がかかる可能性があります。

整理すると、

日本の金利が上がる

日本の資金が国内へ戻る

米国債を買う海外資金が減る

米国の長期金利が上がる

世界全体の資金調達コストが上がる
という流れも考えられます。

日本の金利上昇は、日本国内だけの問題ではないのです。

本当に大きな変化は「政府が民間のお金を吸い上げ始めること」かもしれません

ここまで考えてくると、今起きていることの本質が見えてきます。

それは単純に、
「日本の10年金利が何%になった」
「米国の10年金利が何%になった」
という話ではありません。

もっと重要なのは、
世界中の政府が大量の資金を必要とするようになり、民間企業と同じ市場で資金を集めるようになっている
ということです。

政府が国債を大量に発行して資金を集めれば、そのお金はどこかから来なければなりません。

銀行。

保険会社。

年金基金。

投資信託。

個人投資家。

海外投資家。

つまり、民間で使われる可能性のあった資金が、政府へ向かいます。

そして政府がより高い金利を払えば、企業も資金を集めるために高い金利を払う必要が出てきます。

これが続けば、経済全体の資本コストが上昇します。

2010年代は、中央銀行が市場へ大量の資金を供給し、金利を低くすることで、資産価格を押し上げる力が非常に強い時代でした。

これからは反対に、
政府の巨額な資金需要が金利を押し上げ、資産価格の上昇を抑える
という力が強くなる可能性があります。

もしそうであれば、私たちはかなり大きな時代の転換点にいることになります。

すべてが「悪い金利上昇」だと考える必要はありません

ただし、現在の金利上昇をすべて悲観的に見る必要もありません。

日本では、長期間ほとんど金利がなかった状態から、普通の金利が存在する世界へ戻っている面があります。

米国でも、AIやデータセンター、エネルギーなどへの巨大な投資需要があり、経済活動そのものが資金を必要としている面があります。

つまり現在の金利上昇には、

経済の正常化。

新しい投資需要。

インフレ。

国債の大量発行。

財政への不安。

将来の物価への不安。

さまざまな要因が混ざっています。

したがって、
「現在の金利上昇は100%悪い」
と決めつけるのも適切ではありません。

しかし、以前より確実に注意しなければならないのは、
「政府の財政に対する上乗せ金利」
のようなものが、長期金利の中に含まれ始めている可能性です。

同じ3%という金利でも、
「経済が強くなったから3%」
なのか、
「大量の国債を買ってもらうためには3%必要だから3%」
なのかでは、意味がまったく違います。

これから見るべきなのは金利の数字そのものではありません

今後は長期金利が何%になったかだけを見るのでは不十分です。

大切なのは、
なぜその金利になっているのか
を見ることです。

特に注意したいのは、中央銀行が利下げをしているにもかかわらず長期金利が上昇する場面です。

また、国債の入札で投資家の需要が弱くなるかどうかも重要です。

さらに、

国債と通貨が同時に売られる。

政府が国債市場へ介入する政策を増やす。

中央銀行に対する政治的な圧力が強くなる。

といった動きが重なる場合には、より注意が必要でしょう。

市場が単純な景気や金融政策ではなく、
「政府の財政は本当に大丈夫なのか」
を考え始めている可能性があるからです。

まとめ―40年間続いた金利低下の世界が変わり始めている可能性があります

日本と米国は経済の仕組みも歴史も違います。

しかし現在、非常によく似た問題に近づいているように見えます。

政府は景気を支えたい。

成長分野にも投資したい。

防衛や社会保障にもお金を使いたい。

一方で、長期金利は上げたくありません。

しかし政府が支出を増やして国債を大量に発行すること自体が、長期金利を押し上げる原因になり得ます。

政府は金利上昇を嫌っている。

しかし同時に、その金利上昇を生み出す政策を続けている。

そこに矛盾があります。

国債の買い戻しや発行方法の変更によって、一時的に市場を安定させることはできるかもしれません。

しかし、それだけでは政府債務の増加そのものは止まりません。

最終的に市場が知りたいのは、
「どの国債を買い戻すのか」
ではなく、
「政府債務が増え続ける状態を、将来どうやって止めるのか」
ということです。

この問いに明確な答えが出ない限り、長期金利には上昇圧力が残る可能性があります。

そしてこの変化は、国債だけでは終わりません。

株式。

不動産。

企業融資。

住宅ローン。

為替。

そして政府財政。

すべてに影響します。

これまでの約15年間は、
「金利は低いもの」
「中央銀行が困ったときには市場を支えるもの」
という考え方がかなり強く通用してきました。

しかし、これからも同じとは限りません。

むしろ、
政府が大量のお金を必要とすることで金利が高くなり、その金利が株価や不動産価格の上限を決める
という世界へ移り始めている可能性があります。

もしそうであれば、現在起きている長期金利の上昇は、一時的な金融市場の動きとして見るべきではありません。

40年近く続いてきた「金利低下を前提とした世界」が変わり始めたことを示す、一つの重要なサインとして見る必要があります。

これからの投資や企業経営では、
「金利はいずれ元の低い水準へ戻る」
ことを当然の前提にするのではなく、
「金利がある世界で、企業や政府は本当に利益と財政を維持できるのか」
という視点が、これまで以上に重要になっていくのではないでしょうか。