おじ・おば・甥・姪は扶養義務者になる?相続税・贈与税における範囲と判定基準

相続税・贈与税でいう「扶養義務者」とは?対象となる親族の範囲を分かりやすく解説

相続税や贈与税について調べていると、「扶養義務者」という言葉が出てくることがあります。

「扶養」という言葉を見ると、
・健康保険の扶養に入っている家族
・所得税の扶養控除の対象になっている家族
をイメージする方も多いのではないでしょうか。

しかし、相続税法でいう「扶養義務者」は、所得税の扶養控除や社会保険の扶養とは別のものです。
相続税法では、一定の親族を「扶養義務者」と定めています。
さらに、親族の種類によっては、家庭裁判所の審判を受けていなくても、実際の生活状況によって扶養義務者として取り扱われる場合があります。

「誰が扶養義務者になるのか」は、贈与税の生活費・教育費の非課税や、相続税の未成年者控除・障害者控除などにも関係してきます。
つまり、実際の税額に影響することがある、意外と大切な言葉なのです。

そこで今回は、相続税・贈与税における「扶養義務者」の範囲を、できるだけ分かりやすく整理してご説明します。

相続税法上の「扶養義務者」とは

相続税法第1条の2第1号(相続税・贈与税の基本的なルールを定めた法律の条文です)では、「扶養義務者」を、
「配偶者及び民法第877条に規定する親族」
と定めています。

この規定だけでは少し分かりにくいため、民法第877条(家族の間でお互いに助け合う義務について定めた条文です)と、国税庁の相続税法基本通達(法律の内容を、国税庁がより具体的に解釈・説明した文書です)をあわせて確認する必要があります。

民法第877条では、
・直系血族
・兄弟姉妹
は、互いに扶養する義務があるとされています。
さらに、特別な事情がある場合には、家庭裁判所が三親等内の親族に扶養義務を負わせることができるとされています。

これらを踏まえると、相続税法上の扶養義務者は、基本的に次の人たちです。

・配偶者
・直系血族
・兄弟姉妹
・家庭裁判所の審判によって扶養義務者となった三親等内の親族

さらに、相続税法では、これに加えて一定の「三親等内の親族」も扶養義務者として取り扱います。
ここが、相続税法上の扶養義務者を理解するうえで大切なポイントです。

「直系血族」とは誰のこと?

「直系血族」という言葉は、普段あまり使わないため、少し分かりにくいかもしれません。

簡単にいうと、自分を中心として親子関係で上下につながっている血族のことです。

たとえば、
・父、母
・祖父、祖母
・子
・孫
などが該当します。

一方、おじ・おば・兄弟姉妹などは、直系血族ではありません。
ただし、兄弟姉妹については、民法第877条で直系血族と並んで扶養義務者として定められています。

したがって、相続税法上も、配偶者、父母、祖父母、子、孫、兄弟姉妹などは、基本的に扶養義務者に該当します。

おじ・おば・おい・めいは扶養義務者になる?

少し複雑になるのが、おじ・おば・おい・めいなどの三親等内の親族です。

民法上は、単に三親等内の親族であるというだけで、当然に扶養義務を負うわけではありません。
民法第877条第2項では、「特別の事情」がある場合に、家庭裁判所が三親等内の親族に扶養義務を負わせることができるとされています。

つまり、民法上は、おじ・おば・おい・めいなどについては、家庭裁判所の審判によって扶養義務者となる場合がある、ということです。

ところが、相続税・贈与税では、これとは別に、実際の生活関係を考慮した取扱いがあります。

三親等内の親族で「生計を一にする人」は、家庭裁判所の審判がなくても対象になることがあります

国税庁の相続税法基本通達1の2-1では、配偶者、直系血族、兄弟姉妹、家庭裁判所の審判を受けた三親等内の親族のほか、
「三親等内の親族で生計を一にする者」
についても、家庭裁判所の審判がなくても、相続税法上の扶養義務者に該当するものとして取り扱うとされています。

つまり、おじ・おば・おい・めいなどについても、実際に生計を一にしているのであれば、相続税・贈与税では扶養義務者に該当する場合があるということです。

ただし、「三親等内の親族なら全員が扶養義務者になる」という意味ではありません。

配偶者、直系血族、兄弟姉妹以外の三親等内の親族については、
・家庭裁判所の審判により扶養義務者となっているか
・生計を一にしているか
といった点を、それぞれ確認する必要があります。

相続税法上の扶養義務者を整理すると

相続税法上の扶養義務者を整理すると、次のようになります。

配偶者

夫または妻です。

直系血族

父母、祖父母、子、孫などです。

兄弟姉妹

兄、姉、弟、妹です。

家庭裁判所の審判によって扶養義務者となった三親等内の親族

たとえば、おじ・おば・おい・めいなどについて、家庭裁判所の審判により扶養義務を負うこととなった場合です。

三親等内の親族で、生計を一にしている人

家庭裁判所の審判がなくても、三親等内の親族で生計を一にしている場合には、相続税法上の扶養義務者として取り扱われます。

この「三親等内の親族で、生計を一にしている人」の取扱いは、民法上の扶養義務そのものと、相続税法上の「扶養義務者」の取扱いを分けて考える必要がある、大切なポイントです。

「生計を一にする」とは?

「生計を一にする」という言葉も、税金の説明ではよく使われます。

一般的には、日常生活に必要なお金を共通にしているなど、生活上・経済上のつながりがある状態をいいます。

ここで注意したいのは、
「同居している=必ず生計を一にしている」
「別居している=生計を一にしていない」
とは限らないことです。

国税庁は、所得税における「生計を一にする」の考え方について、必ずしも同居を要件とはしていません。
たとえば、勤務、修学、療養などの理由で別居していても、生活費、学資金、療養費などを継続的に送金している場合などには、「生計を一にする」と取り扱うことがあると説明しています。
反対に、同じ家に住んでいても、明らかにお互いに独立した生活をしている場合には、必ずしも生計を一にするとは限りません。

ただし、この説明は所得税における「生計を一にする」の取扱いを示したものです。
相続税法基本通達1の2-1自体には、「生計を一にする」の具体的な判定方法までは記載されていません。

そのため、相続税法上の扶養義務者に該当するかどうかについては、親族関係だけでなく、実際の生活状況や生活費の負担状況などを踏まえて、個別に判断することが大切です。

たとえば、こんなケースです

たとえば、おじとおいという関係を考えてみましょう。

おいが別の場所に住んでいても、おじが毎月継続的に生活費を負担し、実質的に生活を支えているような場合には、生計を一にしていると判断される可能性があります。

一方、親族ではあっても、長年別々に生活し、お互いの生活費もまったく負担していないような場合には、同じようには考えられません。

「親族であるか」だけではなく、「実際にどのような生活・経済関係だったのか」が重要になります。

扶養義務者かどうかは「いつの時点」で判断する?

扶養義務者に該当するかどうかについては、判定する時点も重要です。

国税庁の相続税法基本通達1の2-1では、
・相続税の場合……相続開始の時
・贈与税の場合……贈与の時
の状況によって判断するとされています。

相続開始の時とは、通常、亡くなった方(税務上は「被相続人」と呼びます)が亡くなった時のことです。
たとえば、相続が発生した後に同居を始めたとしても、その後の状況だけを見て扶養義務者かどうかを判断するわけではありません。

相続税では、亡くなった時点で、
・どのような親族関係だったか
・生計を一にしていたか
などを確認します。

贈与税の場合も同じ考え方です。
現在の生活状況ではなく、「贈与をした時点」で扶養義務者に該当していたかどうかを確認します。

なぜ「扶養義務者」に該当するかどうかが重要なの?

扶養義務者という言葉だけを見ると、単なる親族関係の分類のように思えるかもしれません。
しかし、相続税や贈与税では、扶養義務者に該当するかどうかによって、税務上の取扱いが変わることがあります。

代表的なのは、次の3つです。

・生活費や教育費の贈与
・相続税の未成年者控除
・相続税の障害者控除

それぞれ、もう少し詳しくご説明します。

扶養義務者からの通常必要な生活費・教育費には、原則として贈与税がかかりません

扶養義務者相互間で、生活費や教育費に充てるために贈与された財産のうち、「通常必要と認められるもの」については、贈与税の課税対象になりません。

たとえば、
・通常の生活費
・学校の授業料
・教材費
・文具費
・通常必要な養育費
・一定の治療費
などが考えられます。

ただし、「扶養義務者からもらったお金なら、すべて贈与税がかからない」というわけではありません。
国税庁の相続税法基本通達では、非課税になる生活費・教育費は、「必要な都度、直接その用途に充てるために贈与されたもの」とされています。

たとえば、毎月必要となる生活費をその都度渡し、そのお金が食費や家賃などに使われている場合は、通常必要な範囲であれば非課税となることが考えられます。一方、数年分の生活費や教育費として多額のお金をまとめて渡し、その一部がそのまま預金として残った場合や、株式・住宅などの購入に使われた場合には、生活費・教育費として使われなかった部分が贈与税の課税対象となることがあります。

大切なのは、「生活費という名前で渡したか」ではなく、「実際に通常必要な生活費や教育費として使われたか」という点です。

相続税の未成年者控除にも関係します

相続税では、一定の要件を満たす未成年の法定相続人(民法で定められた、相続する権利を持つ人のことです)について、「未成年者控除」という制度があります。

現在は、一定の要件を満たす18歳未満の法定相続人について、満18歳になるまでの年数1年につき10万円を相続税額から控除します。
なお、この「18歳未満」という基準は、2022年(令和4年)4月の民法改正によって成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴うもので、それより前に発生した相続では20歳未満が基準となっていました。

そして、未成年者本人の相続税額から控除しきれない金額がある場合には、その控除しきれない金額を、その未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。
そのため、「誰が扶養義務者なのか」が、実際の相続税額に影響する場合があるのです。

なお、未成年者控除には、年齢だけでなく、法定相続人であることや住所に関する要件などもありますので、個別に確認が必要です。
金額や年齢の基準は法令改正によって変わることがありますので、正確な内容は税務署にご確認ください。

障害者控除にも扶養義務者が関係します

相続税の障害者控除についても同様です。
一定の要件を満たす85歳未満の障害者である法定相続人については、一定の障害者控除を受けることができます。

障害者本人の相続税額から障害者控除を引き切れない場合には、その引き切れない部分を、その障害者の扶養義務者の相続税額から控除することができます。

したがって、未成年者控除や障害者控除が関係する相続では、扶養義務者の範囲を正しく確認することが重要です。

よくある勘違い①「所得税の扶養に入っていなければ扶養義務者ではない」

これは、実は別の制度です。

所得税の扶養控除と、相続税法上の扶養義務者は同じものではありません。
所得税の扶養控除では、扶養される人の年齢や所得金額、生計関係など、別の要件があります。

そのため、
「年末調整で扶養控除を受けていないから、相続税法上も扶養義務者ではない」
とは限りません。また、社会保険の「扶養」に入っているかどうかとも、別の問題です。
税金や社会保険では、同じ「扶養」という言葉が使われていても、制度によって意味が異なりますので、注意しておきましょう。

よくある勘違い②「三親等以内なら全員が扶養義務者になる」

これも注意しておきたいポイントです。

相続税法上、
・配偶者
・直系血族
・兄弟姉妹
については、基本的に扶養義務者となります。

しかし、それ以外の三親等内の親族については、
・家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となっている
または
・生計を一にしている
といった事情を、それぞれ確認する必要があります。

したがって、「おじだから必ず扶養義務者」「おいだから必ず扶養義務者」というわけではありません。

実務では、親族関係だけでなく生活状況も確認します

配偶者、直系血族、兄弟姉妹であれば、親族関係を確認することで判断できることが多いでしょう。
一方、三親等内の親族について「生計を一にしていたか」が問題になる場合には、実際の生活状況を確認する必要があります。

たとえば、状況を確認するための参考資料として、
・戸籍など親族関係が分かる資料
・住民票など居住状況が分かる資料
・生活費の送金記録
・預金口座の入出金記録
・学費や療養費を負担していたことが分かる資料
・家賃や公共料金などの負担状況が分かる資料
などが役立つことがあります。

ただし、これらがすべて法律上必ず提出しなければならない「必要書類」というわけではありません。
個別のケースで「実際に生計を一にしていたこと」を説明するための参考資料として、日頃から手元に残しておくと安心です。

まとめ

相続税法上の「扶養義務者」を整理すると、基本的には次の人が該当します。

・配偶者
・父母、祖父母、子、孫などの直系血族
・兄弟姉妹
・家庭裁判所の審判によって扶養義務者となった三親等内の親族
・三親等内の親族で生計を一にしている人

特に注意したいのが、最後の「三親等内の親族で生計を一にしている人」です。
相続税・贈与税では、家庭裁判所の審判がなくても、このような人を扶養義務者として取り扱うことがあります。

また、扶養義務者に該当するかどうかは、
・相続税では相続開始時
・贈与税では贈与時
の状況で判断します。

そして、相続税法上の扶養義務者は、所得税の扶養控除や社会保険上の扶養とは別の制度です。
「扶養に入れている・入れていない」という日常的な感覚だけで判断するのではなく、相続税法上のルールに沿って確認することが大切です。

特に、
・おじ・おば・おい・めいなどが関係している
・別居している親族の生活費を継続的に負担している
・生活費や教育費としてまとまった金額を贈与している
・未成年者控除や障害者控除で控除しきれない金額がある
といった場合には、扶養義務者に該当するかどうかによって、税務上の取扱いが変わる可能性があります。
親族関係だけで判断できないケースもありますので、実際の生活費の負担状況や送金状況などを一度整理したうえで、早めに確認しておくことをおすすめします。

※この記事は2026年9月3日時点で確認できる法令および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。
国税庁の相続税法基本通達については、令和8年6月25日付改正分まで更新されていることを確認しています。
実際の適用については、親族関係、生計の状況、財産の取得状況などによって個別の判断が必要になる場合があります。
正確な金額や期限、要件については、最新の情報を税務署にご確認ください。