特定健診・人間ドックの費用を医療費控除にできるケースと注意点
特定健康診査、いわゆる「特定健診」を受けた結果、血圧や血糖値などが一定の基準を超えると、「特定保健指導を受けてください」という利用券が届くことがあります。
そのあと、保健師さんや管理栄養士さんから、食事や運動についてのアドバイス(指導)を受けた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのとき、こう思う方も多いかもしれません。
「これは病院で受ける治療とはちがうから、医療費控除(1年間に支払った医療費が一定額を超えたときに、税金の計算のもとになる金額から差し引ける制度です)の対象にはならないのでは」
たしかに、健康診断や、生活習慣を改善するための指導は、いわゆる病気の治療とは少し性格がちがいます。
そのため、特定健診や特定保健指導にかかった費用が、すべて医療費控除の対象になるわけではありません。
ただし、一定の条件を満たす「積極的支援」(保健師さんなどが3か月以上にわたって、面談や電話・メールなどで継続的にサポートしてくれる、しっかりめの保健指導です)を受けた場合には、話が変わってきます。
特定保健指導の自己負担額だけでなく、そのきっかけとなった特定健診の自己負担額についても、医療費控除の対象になることがあるのです。
この記事では、どのような場合に医療費控除の対象になるのか、確定申告に向けてどの書類を保管しておけばよいのか、間違えやすいポイントについて、分かりやすくご説明します。
一定の積極的支援であれば医療費控除の対象になります
特定健診の結果が一定の基準に当てはまり、健診を行った医師の指示にもとづいて「積極的支援」としての特定保健指導を受けた場合には、医療費控除の対象になる可能性があります。
対象となるためには、主に次の条件を満たす必要があります。
・特定健診の結果が、高血圧症、脂質異常症、または糖尿病と同じくらいの状態と認められる一定の基準に当てはまっていること
・特定健診を行った医師の指示にもとづいていること
・特定保健指導のうち、しっかりめのサポートである「積極的支援」を受けていること
・医療費控除の対象となる積極的支援であることを確認できる書類があること
特定保健指導について自己負担額を実際に支払った場合には、その金額が医療費控除の対象になります。
さらに、その積極的支援を受けるきっかけとなった特定健診の自己負担額についても、あわせて医療費控除の対象として取り扱われます。
つまり、「保健指導は医師による治療ではないから、医療費控除にはいっさい使えない」と一律に考える必要はありません。
一定の状態にある方が、医師の指示にもとづいて積極的支援を受けた場合には、その支援や健診が病気の予防・改善に必要なものとして、医療費控除の対象になることがあるのです。
特定保健指導の自己負担額が0円でも対象になる場合があります
ここで注意したいのが、特定保健指導の自己負担額が0円のケースです。
健康保険組合や市区町村などが費用を全額負担しているため、本人が特定保健指導の料金を支払わないことがあります。
この場合、特定保健指導そのものについて本人が支払った金額は0円ですので、特定保健指導の分として医療費控除に含められる金額はありません。
しかし、自己負担額が0円であっても、一定の基準に当てはまり、医師の指示にもとづく積極的支援を実際に受けていれば、その前に受けた特定健診の自己負担額が医療費控除の対象になることがあります。
たとえば、特定健診で2,000円を支払い、その後の積極的支援については健康保険組合が全額負担したため、自己負担額が0円だったとします。
この場合、必要な条件を満たしていれば、
・積極的支援について控除できる金額は0円
・特定健診の自己負担額2,000円については、医療費控除の対象となる可能性がある
という扱いになります。
そのため、特定保健指導の費用を支払っていないからといって、特定健診の領収書をすぐに処分しないようにしましょう。
自己負担額が0円の場合でも、積極的支援を実施したことや、自己負担額が0円であることを確認できる書類を保管しておくことが大切です。
特定健診の費用は原則として医療費控除の対象外です
特定健診の費用は、通常は医療費控除の対象になりません。
医療費控除は、基本的に病気やけがの診察・治療、治療に必要な医薬品の購入などにかかった費用を対象とする制度です。
これに対して、特定健診は、いまの健康状態を確認し、将来の病気を予防することを主な目的としています。
病気の治療そのものではないため、原則として医療費控除の対象外となります。
ただし、特定健診の結果が一定の基準に当てはまり、引き続き医師の指示にもとづく積極的支援を受けた場合には、例外として特定健診の自己負担額も対象になります。
特定健診は、受診した時点で必ず医療費控除の対象になるものではありません。
そのあとの診断や、特定保健指導の内容によって、扱いが変わる点が重要です。
「積極的支援」ならすべて対象になるわけではありません
利用券や案内書類に「積極的支援」と書かれていても、それだけで必ず医療費控除の対象になるわけではありません。
医療費控除の対象となるためには、単に生活習慣病のリスクがあるというだけでなく、特定健診の結果が、高血圧症、脂質異常症または糖尿病と同じくらいの状態と認められる一定の基準に当てはまっている必要があります。
同じ積極的支援であっても、この一定の基準に当てはまらない方に対して行われたものは、医療費控除の対象にならないことがあります。
ご自身で健診結果の数値を見て判断するのは難しいものです。
特定保健指導を行った機関から発行された領収書や証明書類を確認することが大切です。
記載内容が分かりにくい場合は、特定保健指導を実施した機関、加入している健康保険組合、市区町村の担当窓口などに確認すると安心です。
「動機付け支援」は原則として対象になりません
特定保健指導には、対象となる方の状態などに応じて、「動機付け支援」と「積極的支援」という2つの区分があります。
動機付け支援は、面談などを1回程度受けて、生活改善のきっかけをつかむための、比較的軽めのサポートです。
これに対して積極的支援は、さきほどご説明したとおり、数か月にわたって継続的にサポートを受ける、しっかりめの内容になっています。
このうち、医療費控除の対象となる可能性があるのは、一定の条件を満たした「積極的支援」です。
「動機付け支援」として行われた特定保健指導の費用は、原則として医療費控除の対象になりません。
また、名称が「積極的支援」であっても、税法上の一定の基準に当てはまらない場合には、対象にならないことがあります。
医療費控除を検討するときは、次の2点を確認しましょう。
1.特定保健指導の区分が「積極的支援」になっているか
2.医療費控除の対象となる一定の基準に当てはまっているか
この2つを、領収書や証明書類、実施機関への問い合わせによって確認することが大切です。
人間ドックを受診した場合の取扱い
特定健診の代わりに、人間ドックを受診している方もいらっしゃいます。
人間ドックの費用も、通常は医療費控除の対象になりません。
健康状態を確認することが主な目的であり、病気の治療そのものではないためです。
ただし、特定健康診査に代えて人間ドックを受診した場合には、その人間ドックの費用は、特定健康診査にかかる費用と同じ扱いになるという国税庁の見解が示されています。
つまり、人間ドックの費用も、通常は医療費控除の対象外ですが、その結果が一定の基準に当てはまり、医師の指示にもとづく積極的支援を受けた場合には、例外的に医療費控除の対象になることがあります。
大切なのは、どのような人間ドックでも対象になるわけではないという点です。
特定健康診査の代わりとして受診したものであり、かつ特定健診で必要とされる検査項目が含まれていることが前提となります。
なお、人間ドックには、基本的な健診項目に加えて、脳ドック、がん検査、各種画像検査などの追加検査が含まれていることがあります。
こうした追加検査を含む費用の全額が、必ず対象になるとは限りません。
領収書や料金の内訳を確認し、分かりにくい場合は人間ドックの実施機関や税務署、税理士に確認してください。
なお、これは特定保健指導とは別の話ですが、人間ドックによって重大な病気が見つかり、そのまま引き続いて治療を受けた場合には、人間ドックの費用が医療費控除の対象になることもあります。
確定申告に向けて必要となる主な書類
医療費控除を受ける場合に、特に重要となるのは次の書類です。
・特定健診、または対象となる人間ドックの自己負担額の領収書 ・医療費控除の対象となる積極的支援であることを確認できる、特定保健指導の領収書や証明書 ・領収書などをもとに作成した「医療費控除の明細書」(1年間の医療費の内容をまとめた書類です)
特定保健指導の領収書などには、一般的に次のような内容が記載されます。
1.特定健診を実施した機関の名称と、医師の氏名
2.特定健診の結果、一定の基準に当てはまり、特定保健指導を受けるべき方と判定されたこと
3.特定保健指導を実施した年度と、実際に積極的支援を行ったこと
4.特定保健指導にかかった費用のうち、本人が負担した金額
5.特定保健指導を実施した機関の名称と、実施責任者の氏名
特定保健指導の自己負担額が0円の場合には、自己負担額が0円であることを確認できる記載があるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。
これらの記載があることで、単なる健康づくりのための指導ではなく、医療費控除の対象となる一定の積極的支援であることを確認しやすくなります。
必要な記載が見当たらない場合は、すぐに対象外と判断せず、書類を発行した実施機関に問い合わせてみてください。
利用券や健診結果通知書は「念のため保管する資料」です
特定保健指導の利用券や、特定健診の結果通知書は、通常、確定申告書に必ず添付する書類ではありません。
しかし、医療費控除の対象となった経緯を確認する資料として役立つため、領収書などと一緒に保管しておくことをおすすめします。
念のため保管しておきたい資料には、次のようなものがあります。
・特定保健指導の利用券 ・特定健診の結果通知書
・積極的支援の対象者であることが分かる案内
・特定保健指導の実施日や内容が分かる書類
・健康保険組合や市区町村から届いた通知
これらは、通常の確定申告で必ず提出する書類ではありません。
ただし、あとから税務署に医療費控除の内容について確認された場合に、特定健診から積極的支援までの経緯を説明しやすくなります。
「確定申告で必ず提出する書類」と「念のため保存しておく資料」を分けて整理しておくと、手続きがぐっと分かりやすくなります。
現在は領収書ではなく「医療費控除の明細書」を提出します
現在の確定申告では、医療費の領収書を1枚ずつ確定申告書に添付するのではなく、領収書などをもとに「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書と一緒に提出する方法が基本になっています。
e-Tax(インターネットを通じて確定申告ができる、国税庁の電子申告システムです)を利用する場合は、確定申告書等作成コーナーの案内にそって、医療を受けた方の氏名、支払先、支払額などを入力していきます。
領収書は原則として確定申告書に添付しませんが、確定申告期限などから5年間、自宅や事務所で保存しておく必要があります。
税務署から確認を求められた場合には、領収書を提出、または提示できるようにしておきましょう。
特定健診と特定保健指導の領収書は、別々の場所に保管するのではなく、同じ封筒やファイルにまとめておくと安心です。
利用券や健診結果通知書なども一緒に保管しておけば、あとから内容を確認しやすくなります。
特定健診と特定保健指導が年をまたいだ場合
医療費控除は、原則として実際に費用を支払った年の医療費として計算します。
たとえば、12月に特定健診を受けて自己負担額を支払い、翌年2月に積極的支援を受けて指導料を支払った場合は、次のように分かれます。
・12月に支払った特定健診の自己負担額 → 前の年の医療費 ・翌年2月に支払った特定保健指導の自己負担額 → 翌年の医療費
特定健診の費用を、特定保健指導を受けた翌年分にまとめて計上することはできません。
支払った年ごとに、医療費控除を判断する必要があります。
特定健診を受けた時点では対象になるかどうか分からず、翌年に積極的支援を受けたことで、前の年の特定健診費用が対象になると分かることもあります。
すでに前の年分の確定申告を済ませている場合には、申告内容を訂正する手続きが必要になる可能性があります。
税務署に確認すると安心です。
スポーツジム代や健康食品代は対象になりません
積極的支援の中では、運動や食生活についての指導を受けることがあります。
そのため、 「運動を勧められたので、スポーツジムの利用料も対象になるのでは」 「食生活を改善するために買った健康食品も、医療費控除にできるのでは」 と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、医療費控除の対象になるのは、一定の条件を満たす特定保健指導そのものの自己負担額です。
指導を受けたあとに、自分で契約した一般的なスポーツジムの利用料は、特定保健指導そのものの費用ではないため、通常は医療費控除の対象になりません。
食生活を改善するために買った一般的な食品や健康食品の代金も、原則として対象外です。
健康のために必要だと感じる支出であっても、税法上の医療費に当てはまるとは限りません。
「健康のために支払った費用」と「医療費控除の対象となる医療費」は、分けて考えましょう。
医療費控除は支払額がそのまま戻る制度ではありません
特定健診や特定保健指導の費用が対象になったとしても、その金額がそのまま税務署から戻ってくるわけではありません。
医療費控除は、「所得控除」のひとつです。
所得控除とは、税金を計算するもとになる金額(所得)から、一定の金額を差し引くしくみのことをいいます。
つまり、医療費控除によって税金そのものが直接戻ってくるのではなく、税金を計算するもとになる金額が少なくなり、結果として税金が軽くなる、というイメージです。
一般的には、1年間に支払った対象医療費から、保険金などで補てんされた金額を差し引き、さらに原則として10万円を差し引いて計算します。
その年の総所得金額等(かんたんに言うと、1年間の所得の合計額のことです)が200万円未満の方は、10万円ではなく、総所得金額等の5%にあたる金額を差し引きます。医療費控除額の上限は200万円です。
そのため、特定健診と特定保健指導の費用だけでは、医療費控除額が発生しないこともあります。
一方で、その年に支払った病院代、歯科治療費、処方薬代など、ほかの対象医療費と合算することで、医療費控除を受けられる可能性があります。
本人だけでなく、本人と生活費を共通にしている配偶者や親族のために支払った対象医療費も、合算できます。
原則として、実際に医療費を支払った方が医療費控除を受けます。
会社が負担した費用と個人の医療費控除は別に考えます
医療費控除は、個人の所得税に関する制度です。
会社が特定健診や人間ドックの費用を負担し、本人がその費用を支払っていない場合には、会社が負担した金額を本人の医療費控除に含めることはできません。
本人が一部を自己負担している場合は、その実際に負担した金額について、医療費控除の対象となるかを判断します。
また、会社が社長や従業員の健康診断費用を負担した場合に、それを会社の福利厚生費として処理できるかどうかは、医療費控除とは別の問題です。
対象者の範囲、金額、会社の規程、役員だけを対象としていないかなどによって、税務上の扱いが変わることがあります。
「個人の医療費控除になるか」と「会社の経費になるか」は、分けて考える必要があります。
よくある間違い
特定健診と特定保健指導に関する医療費控除では、次のような間違いが起こりやすくなっています。
ひとつずつ、確認していきましょう。
利用券が届けば必ず対象になる、と思ってしまう
利用券が届いたことだけでは、医療費控除の対象になるとは限りません。
積極的支援であることに加えて、健診結果が税法上の一定の基準に当てはまっているかを確認する必要があります。
特定保健指導の自己負担が0円だから対象外、と思ってしまう
特定保健指導の自己負担額が0円でも、一定の要件を満たして積極的支援を受けていれば、特定健診の自己負担額が対象になることがあります。
人間ドックなら何でも対象になる、と思ってしまう
対象となる可能性があるのは、特定健診に必要な検査項目を含む人間ドックです。
追加検査を含む費用のすべてが対象になるとは限らないため、内訳を確認しましょう。
利用券や健診結果通知書を、申告書に必ず添付するものだと思ってしまう
利用券や健診結果通知書は、通常、確定申告書に必ず添付する書類ではありません。
ただし、対象となった経緯を説明する資料として役立つため、領収書と一緒に保管しておくと安心です。
特定健診の領収書を捨ててしまう
特定健診を受けた時点では対象外に見えても、そのあと一定の積極的支援を受けることで、対象になる場合があります。
積極的支援の対象になるかどうかが分かるまでは、領収書を保管しておきましょう。
まずは領収書や証明書の記載を確認しましょう
特定健診の結果が高血圧症などと同じくらいの状態に当てはまり、医師の指示にもとづく積極的支援を受けた場合には、「一般的な病気の治療ではないから」という理由だけで、医療費控除の対象外になるわけではありません。
一定の条件を満たしていれば、次の費用を医療費控除に含められる可能性があります。
・特定保健指導の積極的支援について、実際に支払った自己負担額
・その積極的支援につながった特定健診の自己負担額
・特定健診の検査項目を含む人間ドックの自己負担額
また、特定保健指導の自己負担額が0円であっても、一定の要件を満たしていれば、特定健診の自己負担額が対象になる場合があります。
まずは、特定保健指導の領収書や証明書に、医療費控除の対象となる積極的支援であることを確認できる記載があるかを、確認してみてください。
確定申告では、領収書をもとに医療費控除の明細書を作成します。
領収書は原則として申告書に添付せず、5年間保存します。
利用券や健診結果通知書は必須の添付書類ではありませんが、対象となった経緯を確認できるため、領収書と一緒に保管しておくと安心です。
分からない点がある場合は、特定保健指導を実施した機関、健康保険組合、市区町村、税務署にご相談ください。
ひとつずつ確認していけば、決して難しい手続きではありません。
この記事について
この記事は、2026年7月24日に確認した国税庁および厚生労働省の公表情報をもとに作成しています。
実際に医療費控除の対象になるかどうかは、健診結果、特定保健指導の区分、医師の指示、領収書や証明書の記載内容などによって異なる場合があります。
個別の確定申告については、関係書類を確認したうえで、税務署へご相談ください。






