社内託児所を利用する社員に税金はかかる?福利厚生としての税務上の取扱いをわかりやすく解説

社内託児所の税務上の取扱い

子育て中の社員が安心して働き続けられるよう、会社が社内に託児所を設けるケースが増えています。
育児と仕事を両立したい社員にとって、職場に託児所があるというのは、とても心強い制度です。

では、このような社内託児所を社員が利用した場合、税金の面ではどのように考えればよいのでしょうか。
「会社から何かサービスを受けたなら、給与として税金がかかるのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

今回は、社内託児所を福利厚生として設ける場合の税務上の考え方について、税金が苦手な方にもわかりやすく解説します。

まず結論から:通常は社員に税金はかかりません

難しい話に入る前に、まず結論をお伝えします。

次の条件をすべて満たしている場合、社内託児所を利用した社員に対して、給与として所得税を課税しなくても差し支えないと考えられています。

・利用の対象者が、すべての社員である
・役員だけに限定した制度ではない
・ミルク代・おむつ代などの個人的な費用は、社員本人が負担する

つまり、「社内託児所を使ったから、その分だけ給与が増えたとみなして、所得税を追加で計算しなければならない」という心配は、通常はしなくてよいということです。

これは多くの経営者や人事担当者が最初に気になるポイントですので、まずはここを押さえておきましょう。

なぜ税金がかからないのか?福利厚生の考え方

そもそも、会社が社員のために設ける「社員食堂」「休憩室」「社内保養所」「社内託児所」などの設備は、福利厚生施設と呼ばれます。

社員が働きやすい環境を整えるために会社が用意するこれらの設備は、社員全体のための「共用の設備」という位置づけです。
そのため、利用した社員が多少の経済的な利益を受けたとしても、それが一般的な福利厚生の範囲内であれば、給与として課税しなくてもよい取り扱いになっています。

たとえばイメージしやすい例を挙げると、「社員食堂でランチを食べたから、その食事代を給与に上乗せして所得税を計算する」という会社はありませんよね。それと同じ考え方が、社内託児所にも当てはまります。

会社が「社員全体のために用意した施設」を使わせているわけですから、個人への給与ではなく、福利厚生の一部として扱うことができるのです。

税金がかかる可能性があるケースもあります

ただし、どのような場合でも必ず非課税になるわけではありません。次のようなケースでは注意が必要です。

利益の額が著しく大きい場合

社内託児所のサービス内容が通常の福利厚生の範囲をはるかに超えていて、社員にとって非常に大きな経済的な利益になっている場合には、課税の問題が出てくる可能性があります。

たとえば、一般的な民間の託児サービスと比べて極端に有利な条件で利用でき、しかも会社がミルク代・おむつ代・食事代といった個人的な費用まで広く負担しているようなケースです。
「会社が出してくれているのは施設の維持・運営費だけ」という状態であれば問題になりにくいですが、個人的な費用まで会社持ちになると、「給与の一部」とみなされるリスクが出てきます。

役員だけが利用できる場合

福利厚生の基本的な考え方は、「社員全体を対象にしたもの」です。
そのため、利用できる人が役員だけに限られているような場合は、「特定の人への特別な利益の提供」とみなされる可能性があります。

役員への利益供与と判断されると、給与課税だけでなく、会社側の税務上の扱いにも影響が出ることがあります。
「全社員が利用できる制度にする」というのは、税務上の安全を確保するうえで、とても大切なポイントです。

今回のケースではどう考えるか

今回の会社では、次のような状況とのことです。

・社内託児所の利用対象者は、すべての社員
・ミルク代・おむつ代など、子どもごとに発生する個人的な費用は、各社員が実費で負担する

この条件を確認すると、会社が負担しているのは「社員が働きやすい環境を整えるための施設の維持・運営費」であると考えられます。
個人的な費用は本人負担ですし、特定の人だけが優遇されているわけでもありません。

このような形であれば、社内託児所を利用する社員が受ける利益は、通常の福利厚生の範囲内と判断されますので、給与として課税しなくても差し支えないでしょう。

実務で押さえておきたいポイント

社内託児所を設ける場合には、後から「これは給与だったのでは?」という疑問や誤解が生じないよう、あらかじめ以下の点を整理しておくことをおすすめします。

制度の設計で気をつけること

・利用対象者を特定の人に限定せず、社員全体に広く開放する
・役員だけが有利になるような仕組みにしない
・ミルク代・おむつ代・食事代など、子どもごとに発生する個人的な費用は、社員本人が負担する

記録・書類の整備で気をつけること

・利用規程(りようきてい)を作成し、「誰が利用できるか」「会社はどこまで負担するか」を文書として明確にしておく
・施設の維持・運営にかかった費用と、社員が個人負担した費用を、しっかり区分して記録しておく

特に「誰が利用できるのか」「会社が負担する範囲はどこまでか」の2点は、税務調査で確認されることがあるポイントです。
あとから説明できるように、利用規程として書き残しておくと安心です。

消費税・法人税との関係も確認しておきましょう

社内託児所にかかる費用を会社が負担する場合、その支出は法人税の計算上、福利厚生費として経費(損金)に算入できます。
ただし、役員だけを対象にしている場合や、特定の人だけが利用できる場合は、損金算入が認められないこともあります。

また、社内託児所の設置や運営にかかった費用に消費税が含まれる場合、仕入税額控除(消費税の計算上、支払った消費税を差し引けるしくみ)が適用できるかどうかは、利用の状況や契約形態によって異なります。

これらの詳細については、個別の状況によって判断が変わることがありますので、税務署にご相談されることをおすすめします。

よくある勘違いと注意点

「福利厚生費」と書けばすべてOKではありません

会計処理として「福利厚生費」という科目に計上していても、それだけで税務上の問題がなくなるわけではありません。
大切なのは、実態として福利厚生の要件を満たしているかという点です。記録と制度設計の両面から整えておくことが大切です。

個人的な費用まで会社が負担すると課税リスクが出ます

ミルク代・おむつ代・おもちゃ代・食事代など、子どもの個人的な養育にかかる費用まで会社が負担すると、「それは給与の一部では?」と判断されるリスクが高まります。
こうした費用は社員本人に負担してもらう形を徹底しておきましょう。

利用規程がないと説明が難しくなります

「なんとなく全員が使える」という曖昧な状態ではなく、「利用規程として文書化されている」という状態が理想的です。
税務調査が入った際に、制度の内容を口頭で説明するのは難しいものです。
一度、文書として整理しておくと、後々とても役に立ちます。

まとめ

社内託児所を福利厚生として設け、すべての社員が公平に利用できるようにしている場合には、社員が受ける利益について給与として課税しなくても差し支えないと考えられます。

一方で、役員だけを対象にしていたり、個人的な費用まで会社が幅広く負担していたりする場合には、課税の問題が生じる可能性があります。

社内託児所は、子育て中の社員にとって大きな安心材料になります。
せっかく設ける制度ですから、税務上も問題のない形で運用できるよう、利用規程の整備と費用負担の区分をしっかり整えておきましょう。

不安な点があれば、制度を設ける前に一度、税務署に確認しておくことをおすすめします。
早めに相談しておくことで、後からの修正や手間を防ぐことができますよ。

この記事は作成時点の情報に基づいています。
税制は年度によって変わる場合があります。
実際の適用については個別の状況によって判断が異なりますので、詳細は税務署にご確認ください。