金利が上がっても下がっても困らない―銀行の国債戦略から学ぶ、変動と固定の組み合わせ方

金利が戻った日本で、国債の役割が変わり始めている―銀行の動きから考える、これからのお金の守り方

長い間、日本では銀行に預けても、国債を買っても、受け取れる利息はごくわずかでした。

ところが、金利のある世界が少しずつ戻ってきたことで、これまであまり注目されなかった国債の見え方が変わり始めています。
2026年5月には30年国債の利回りが4%台に乗り、9月には10年国債の利回りも約30年ぶりに3%を超えました。
こうした中で、大手銀行の間でも国債への投資を増やすことを検討する動きが伝えられています。

ただし、ここで勘違いしたくないことがあります。
利回りが高くなったからといって、今すぐ買うのが正解とは限らないということです。
むしろ大きなお金を運用する銀行ほど、金利がさらに上がる可能性を気にしています。

国債は、単に利息を受け取るための商品なのでしょうか。
それとも、将来の不景気からお金を守るための道具なのでしょうか。
今回は銀行の考え方を手がかりに、金利が動く時代の資産運用について考えてみたいと思います。

国債を買う意味が、以前とは違ってきました

日本では長く低金利が続いてきました。
国債を買っても十分な利息を得にくく、とくに長い期間お金を固定することには魅力を感じにくい状況でした。

30年後までお金を貸すことになるのに、見返りがわずかであれば、ほかの運用方法を探したくなるのは自然なことです。
銀行にとっても、低い利回りの国債を長く持つことには慎重にならざるを得ませんでした。

しかし金利が上がると、同じ国債でも事情が変わります。
新しく買う国債から、以前より多くの収益を見込めるようになるからです。
長い期間にわたって一定の利回りを確保できるという特徴も、以前より価値を持ち始めます。

ここで区別しておきたいのは、銀行が国債を再び検討していることと、買い時が来たことは別だという点です。
投資する価値が高まったと判断しても、実際に資金を大きく動かすかどうかは別の問題なのです。

利回りが魅力的でも、購入を急がない理由

国債の仕組みを知るうえで、まず押さえたいのが金利と債券価格の関係です。

一般に、市場で取引される固定金利の国債は、金利が上がると価格が下がり、金利が下がると価格が上がります。

例えば、以前に発行された国債より、新しく発行される国債の方が高い利回りを得られるとします。
投資家は当然、新しい国債を買いたくなります。
すると、以前の低い条件の国債を売るには、価格を下げる必要が出てきます。

しかも、この価格の動きは、満期までの期間が長い国債ほど大きくなりやすいという特徴があります。
5年後にお金が戻る国債と30年後に戻る国債とでは、将来の金利変化から受ける影響がまったく違うのです。

4%を超える30年国債の利回りは、十分に魅力的に見えるかもしれません。
しかし、その後4.5%、5%へと金利が上がれば、すでに持っている国債の市場価格は大きく下がる可能性があります。
高い利息を受け取っていても、途中で売れば損失が出ることがあるのです。

つまり、利回りが上がって投資先として面白くなったことと、価格がこれ以上下がらないことは同じではありません。
慎重な投資家は、この二つを分けて考えます。

銀行が国債に期待するのは、利息だけではありません

ここからが、今回もっとも考えたい点です。

銀行は、預金を集め、そのお金を企業や個人に貸し出すことで収益を得ています。
貸出金利と預金金利などの差が、銀行の大切な収益源の一つです。

金利が上がる局面では、変動金利の貸出金利を引き上げやすくなるため、銀行の収益に追い風が吹くことがあります。
もちろん預金金利も上がりますし、貸出金利をどこまで上げられるかは取引先によって違います。
金利が上がれば必ず銀行がもうかる、という単純な関係ではありません。

それでも、長く低金利に苦しんできた銀行にとって、金利の上昇は収益の構造を立て直す機会になってきました。

ところが、今の環境がずっと続くとは限りません。
物価の上昇が落ち着き、景気が弱くなれば、中央銀行は金利を引き下げる方向に動くかもしれません。
そうなると貸出金利も下がり、銀行の利益を押し下げることになります。

さらに景気が悪くなれば、取引先企業の売上が減り、借入金を返せなくなる会社が増えるかもしれません。
銀行にとっては、利息による収益が減るだけでなく、貸倒れへの備えも必要になります。

では、そのような時に、あらかじめ一定の利回りで買っておいた国債を持っていたらどうでしょうか。

不景気になった時、国債が助けになる場合があります

景気が悪くなって市場金利も下がると、以前に高い利回りで買った固定金利の国債は値上がりしやすくなります。

新しく発行される国債の利回りが低くなれば、過去に有利な条件で発行された国債を欲しがる人が増えるからです。
銀行は保有する国債の値上がりによって、本業の落ち込みを一部補える可能性があります。

ここに、国債を持つもう一つの意味があります。
今の収益を増やすだけでなく、将来、本業が苦しくなった時に備えるという役割です。

景気が良い時は企業への貸出が順調で、国債の価格は弱いかもしれません。
反対に景気が悪い時は、貸出の利益が減っても国債の価格が上がることがあります。

すべてが同じ方向に悪くなるのではなく、異なる動きをする資産を組み合わせておく。
これが資産運用でよく使われる「分散」という考え方です。

銀行が国債を組み合わせるのは、何十年も先の金利を正確に予測するためではありません。
予測と違う未来が来ても、経営を続けやすくするためです。

ですから、国債への関心が高まっていることは、銀行が近いうちの利下げを確信しているという意味ではないでしょう。
いつか訪れるかもしれない景気の変化に備え始めた、と考える方が自然ではないでしょうか。

ただし、国債が必ず保険になるわけではありません

ここには大切な注意点があります。
景気が悪くなれば必ず長期金利が下がる、とは限らないことです。

通常、不景気になると、企業がお金を借りて設備投資をする動きが弱まり、金利は下がりやすくなります。
そのような局面では、固定金利の国債が値上がりし、守りの役割を果たすことがあります。

しかし、物価の上昇が収まらないまま景気が悪化したらどうでしょうか。
あるいは政府が景気対策のために大量の国債を発行し、将来の財政に不安が広がったらどうでしょうか。

国債を買う人たちは、もっと高い利回りを求めるかもしれません。
その場合は、景気が悪くても長期金利が下がらず、むしろ上がることさえ考えられます。

そうなると、企業への貸出の状態が悪くなり、国債の価格も下がるという、銀行にとって厳しい組み合わせが起こり得ます。

国債は、あらゆる危険からお金を守ってくれる万能な商品ではありません。
どのような理由で景気が悪くなるのかによって、役立ち方が変わるのです。

世界では、お金を必要とする人が増えています

長期金利の動きを考えるには、日本国内だけでなく、世界で起きている変化にも目を向ける必要があります。

かつては、世界中で貯められたお金に比べて、十分な収益が期待できる投資先が少ないと考えられた時期がありました。
そのような環境では、国債などを買いたいお金が集まりやすく、金利は低く抑えられます。

しかし最近は、巨額の資金を必要とする計画がいくつも進んでいます。
代表的なのが、人工知能を動かすための設備投資です。

人工知能は、パソコンの中のソフトだけで成り立つわけではありません。
大量の計算をこなす半導体、それを収めるデータセンター、休まず電気を届ける発電設備、電力を運ぶ送電網などが必要です。

こうした施設をつくるには、建物、機械、人材、土地などに大きなお金がかかります。
今後も十分な利益が見込めると企業が判断すれば、手元のお金だけでなく、借入れや社債の発行などを通じて投資を続けるでしょう。

同じ時期に、多くの国の政府も、防衛、社会保障、古くなった道路や橋の修繕などでお金を必要としています。
政府と企業が、それぞれ大きなお金を集めようとしているわけです。

お金を出す側から見れば、投資先の選択肢が増えたことになります。
国債を買ってもらいたい政府は、ほかの投資先と比べても納得してもらえる利回りを示す必要が出てきます。

もちろん、人工知能への投資が増えれば必ず金利が上がる、というわけではありません。
企業の自己資金や新たな貯蓄が十分にあれば、影響は小さくなります。
それでも長期金利を考えるうえで、政府の借金だけでなく、民間企業の資金需要も無視できなくなっています。

金利が昔の水準に戻るとは限りません

ここで考えたいのは、金利が上がった理由が一時的なものなのか、それとも長く続くものなのかという点です。

物価が落ち着き、景気が弱くなれば、金利は下がるかもしれません。
しかし、設備投資や電力需要、国の財政支出などが長く続けば、金利には上がりやすい力が残ります。

また、物価が今後どの程度上がると予想されているかも重要です。
投資家は、受け取る利息の数字だけでなく、そのお金で将来どれだけの物を買えるかを考えるからです。

金利の先行きを、一つの数字だけで決めつけることはできません。
高くなったのだからそろそろ下がるはずだという考えも、これからもずっと上がるはずだという考えも、どちらも危ういものです。

高い利回りが魅力になってきた今だからこそ、金利の天井を言い当てようとするより、上がっても下がっても困りにくい持ち方を考えたいところです。

日銀が利上げをすると、長期国債には悪いのでしょうか

日本の金利を考える時、日銀の金融政策は欠かせません。
ただし、日銀が動かす短い期間の金利と、30年や40年の国債の利回りは、必ずしも同じ方向に動くわけではありません。

日銀が金利を引き上げれば、目先の金利には上がる力が働きます。
その一方で、適切な利上げによって物価上昇への不安が和らげば、長い期間の金利が落ち着くことも考えられます。

逆に、物価が上がり続けているのに金利が低すぎると、市場は将来の物価や円の価値を心配するかもしれません。
すると、長い期間お金を貸す人は、その不安に見合う高い利回りを求めるようになります。

つまり、利上げはすべての国債にとって同じ意味を持つわけではありません。
目先の利上げだけを見るのではなく、それによって将来の物価や景気への信頼がどう変わるかまで考える必要があります。

国債の価格を左右するのは、今の政策金利だけではありません。
将来の金利の見通しや、長い期間お金を貸すことへの不安も関係しているのです。

30年後まで信頼される国でいられるか

超長期国債を考える時、もう一つ避けて通れないのが国の財政です。

30年国債を満期まで持つということは、30年先に元本を返してもらう約束を受け入れることです。
その間には、景気の良い時も悪い時もあるでしょう。
政権が変わり、人口や社会の仕組みが変わることもあるはずです。

投資家は、いま国がいくら借金をしているかだけでなく、将来も返済や利払いを続けられる仕組みがあるかを見ています。

税収が増える見込みはあるのか。お金の使い方を見直すことはできるのか。
負担の大きい政策を改めなければならなくなった時、政治は必要な決断を下せるのか。

こうした信頼が弱まると、投資家は不安に見合う高い利回りを求めます。
国債の利回りが高い背景には、金利全体の上昇だけでなく、将来への心配が含まれていることもあるのです。

ですから、利回りが高いことは、必ずしもお買い得の証拠にはなりません。
なぜその利回りが求められているのかを考えることが大切です。

一方で、国の財政が心配だからといって、すぐに国債の返済ができなくなるという意味でもありません。
目先の数字に驚くのではなく、長い目で信頼を保てるかを見ていくことが求められます。

銀行の投資判断を、個人がそのまま真似する必要はありません

ここまで読むと、長期国債が魅力的なら、個人も30年や40年の国債を買った方がよいのではないかと感じるかもしれません。

しかし、銀行と個人とでは、お金の持ち方も目的も違います。
銀行は預金や貸出など、大きな資産と負債を抱えています。
その全体の動きを安定させるために、長期国債を組み合わせる意味があるのです。

一方、個人がまず考えるべきなのは、暮らしに必要なお金をいつ使うのかということです。
数年以内に必要な教育資金や生活費を、価格の変動が大きい長期の債券に回すことには慎重であるべきでしょう。
会社の余裕資金の置き場所を考えている経営者の方にも、同じ考え方が当てはまります。

さらに、銀行などが市場で売買する30年国債と、個人向け国債とでは、途中でお金に戻す時の仕組みが違います。

個人向け国債には、半年ごとに利率が見直される「変動10年」と、購入時に決まった利率が満期まで続く「固定5年」「固定3年」の三つがあります。
いずれも1万円から購入でき、発行から1年が過ぎれば中途換金できます。
換金時には直近2回分の利子に相当する額(税引後)が差し引かれますが、市場金利の動きによって元本そのものが減る仕組みではありません。

一方、市場で取引される通常の長期国債は、途中で売ればその時の価格の影響を受けます。
同じ「国債」という名前でも、何を選ぶかによって注意点は大きく違うのです。

個人は、変動金利と固定金利を組み合わせて考える

将来の金利がどうなるか分からない時、個人にとって現実的なのは、一度にすべてを決めない方法です。

例えば、これからも金利が上がると考えるなら、半年ごとに利率が見直される変動10年には意味があります。
市場の金利が上がれば、受け取る利息も増える可能性があるからです。
ただし、変動10年の利率は10年国債の利回りに0.66を掛けた水準で決まるため、市場金利の上昇分がそのまま反映されるわけではありません。
なお、どの種類にも年0.05%という利率の下限が設けられています。

一方、固定5年には、購入時に決まった利率を5年間維持できる良さがあります。
購入後に金利が下がっても受け取る利息の条件が変わらないことは、安心材料になるでしょう。

どちらか一方に決める必要はありません。
変動10年を持ちながら、固定5年を少しずつ買い足す方法も考えられます。
例えば10万円ずつ時期を分けて購入すれば、金利がさらに上がった時には、次に買う分で高い利率を取り込めます。
逆に金利が下がった時には、すでに購入した分の固定金利を維持できます。

もちろん、待っている間に金利が下がれば、早く買わなかったことで有利な条件を逃すこともあります。
時期を分けて買うことは、必ず利益を最大にする方法ではありません。

それでも、いつ金利が最も高くなるかを当てる難しさを考えれば、購入時期を分けることには十分な意味があります。
一番良い結果を一度でつかむことより、大きな失敗を避けることを優先したいところです。

利息が増えても、生活を守れるとは限りません

もう一つ忘れたくないのが、物価の上昇です。

固定金利で一定の利息を受け取れたとしても、その間に食品や光熱費などの値段が大きく上がれば、お金の実際の価値は目減りしてしまいます。
また、国債の利子には20.315%の税金がかかるため、手元に残る利息は表示された利率より少なくなることも覚えておきたい点です。

通帳の金額を減らさないことと、将来も同じ暮らしができることは別の問題です。だからこそ、預金や国債だけでなく、必要に応じて株式や投資信託なども含め、目的に合った組み合わせを考える必要があります。

ただし、値動きの大きい商品を無理に増やすことが正解とも限りません。
まずは、急な支払いに備える現預金、数年先に使う予定のお金、長く運用できるお金を分けて考えることが先決です。

これからは、何を見て判断すればよいのでしょうか

今後の金利を考える時は、一つのニュースだけで判断しないことが大切です。

まずは日銀の金融政策です。
物価や賃金の動きを見ながら、今後も利上げを続けるのか、それとも様子を見るのか。
これは日本の金利全体に影響します。

次に、10年、30年といった国債の利回りです。
短い期間と長い期間の金利が同じように動いているのか、それとも長い期間の金利だけが大きく上がっているのか。
その違いが、市場が何を心配しているのかを考える手がかりになります。

そして、米国など海外の金利、原油をはじめとするエネルギー価格、政府の予算や財政運営にも目を向けたいところです。
海外の金利上昇や原油高は、日本の物価や長期金利にも影響を及ぼすことがあります。

もちろん、毎日こうした数字を追いかける必要はありません。
むしろ、自分がお金を使う時期と必要な金額を先に決め、その計画を大きく変えるような動きがないかを定期的に確かめる方が、個人には実用的でしょう。

金利の未来を当てるより、どちらに動いても困らない準備を

日本で国債の存在感が高まっていることは、お金の運用を考えるうえで大きな変化です。
以前は利息の低さばかりが気になった国債も、今では受け取る利回りと、将来の景気悪化への備えという二つの役割から考えられるようになりました。

しかし、魅力が増したことと、今が最も良い買い時であることは違います。
期間の長い国債ほど金利上昇による値下がりに注意が必要ですし、不景気になっても必ず値上がりするとは限りません。

だからこそ、銀行も個人も、金利が上がる未来と下がる未来の両方を想定しておくことが重要になります。

これからのお金の守り方は、国債を買うか買わないかという二者択一ではありません。
何年後に使うお金なのか、変動と固定をどう組み合わせるか、いつ、どのくらい買うのかを、ご自身の暮らしに合わせて考えることではないでしょうか。

なお、金利や商品の条件は時期によって変わります。
実際に購入を検討される際は、財務省や取扱金融機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。

金利が戻ってきた今、必要なのは難しい予測ではなく、どちらに転んでも動ける選択肢を増やしておくことなのかもしれません。