【令和8年分】年末調整はここが変わる|基礎控除・扶養控除の改正点と対応スケジュールを税理士が解説

令和8年分 年末調整、何が変わる?──今年は「いつから変わるか」を意識した準備を

令和8年(2026年)の年末調整は、例年より少し早めの準備が安心です。

令和8年度の税制改正によって、所得税の「基礎控除(所得から差し引くことができる、多くの方に共通する控除です)」や「給与所得控除(会社員などが給与収入から一定額を差し引いて所得を計算するしくみです)」が見直されるほか、扶養家族として扱うことができる基準、生命保険料控除、通勤手当や食事の非課税限度額など、給与計算や「年末調整(会社が1年間の給与から差し引いてきた所得税を、12月に本来の金額へ計算し直す手続きです)」に関係する制度が、いくつも変わります。

まず経営者や給与計算のご担当者に知っておいていただきたいのは、今回の改正のすべてを、今すぐ毎月の給与計算に反映しなければならないわけではない、という点です。

・基礎控除の引き上げ
・給与所得控除の最低保障額の引き上げ
・扶養親族などの所得要件の見直し

これらは、原則として令和8年12月1日に施行されます。
そのため、令和8年11月までの「源泉徴収(会社が給与を支払うときに、あらかじめ所得税分を差し引いて国に納めるしくみです)」の事務には変更がなく、令和8年12月に行う年末調整から、改正後の内容を反映します。

つまり、「税制改正があったので、9月や10月の給与から源泉所得税をすべて変更しなければならない」というわけではありません。

一方で、12月になってから初めて改正内容を確認すると、従業員への案内や申告書の回収、給与計算ソフトの設定確認が間に合わなくなるおそれもあります。

今年は「年末調整は12月にすればよい」と考えるのではなく、9月から10月の段階で少しずつ準備を始めていただくことをおすすめします。
この記事では、令和8年度税制改正にともなう年末調整・源泉徴収の実務について、税金にあまり詳しくない経営者・経理担当の方にも分かるよう、実務上の注意点を中心にご説明します。

まず押さえたいのは「11月までは従来どおり、12月の年末調整から改正後」ということです

今回の改正を理解するうえで、最初に押さえていただきたいのが「いつから変わるのか」です。

令和8年度税制改正では、基礎控除の引き上げや給与所得控除の最低保障額の引き上げ、扶養親族などの所得要件の見直しが行われています。
ただし、令和8年11月までに行う通常の給与の源泉徴収事務については、今回の改正による変更はありません。

たとえば毎月25日に給与を支給している会社であれば、9月・10月・11月の給与については、原則として従来の源泉徴収税額表などに基づいて源泉所得税を計算します。
そして12月の年末調整では、改正後の基礎控除や給与所得控除、扶養関係の所得基準などを使って、その従業員が令和8年中に本来納めるべき所得税を計算します。
毎月の給与からすでに差し引いた源泉所得税の合計額と、年末調整で計算した年間の税額を比べ、税金を預かりすぎていれば従業員へ還付し、不足していれば追加で徴収します。

今年の年末調整は、まず「11月まで」と「12月以後」を分けて考えると、理解しやすくなります。

基礎控除が引き上げられます

今回の改正のなかでも特に重要なのが「基礎控除」です。
基礎控除とは、所得税を計算するときに、多くの方が所得から差し引くことができる控除のことです。

所得税は「稼いだ金額のすべて」にそのまま税率をかけるわけではありません。
所得から基礎控除などの所得控除を差し引き、そのあとの金額をもとに税金を計算します。

令和8年分と令和9年分については、本人の「合計所得金額(給与だけでなく、副業や年金などを含めたすべての所得を合計した金額です。
各種控除を差し引く前の金額を指しますが、正確な計算方法は所得の種類によって異なりますので、迷う場合は国税庁の資料をご確認ください)」に応じて、基礎控除額は次のようになります。

・合計所得金額489万円以下:104万円
・489万円超655万円以下:67万円
・655万円超2,350万円以下:62万円
・その後は、2,350万円超2,400万円以下の場合は48万円、2,400万円超2,450万円以下の場合は32万円、2,450万円超2,500万円以下の場合は16万円と段階的に小さくなり、合計所得金額が2,500万円を超える場合には基礎控除はありません

ここで注意したいのは、「合計所得金額」と「給与の年収」は同じではない、ということです。
たとえば給与収入が500万円だからといって、合計所得金額も500万円になるわけではありません。
給与を受け取っている方は、給与収入から「給与所得控除」を差し引いて給与所得を計算します。
そのため基礎控除額を判断するときには、単純に年収だけを見るのではなく、年末調整用の計算表や給与計算ソフトを使って正しく判定する必要があります。

給与所得控除の最低保障額も74万円に引き上げられます

基礎控除とあわせて変わるのが「給与所得控除」です。
給与所得控除とは、会社員など給与を受け取って働く方について、給与収入から一定額を差し引いて所得を計算するしくみです。

個人事業主であれば、売上から仕事に必要な経費を差し引いて所得を計算します。
一方、会社員の場合には、仕事に関連する支出を一つひとつ経費として計上するのではなく、原則として給与の金額に応じて一定額を「給与所得控除」として差し引きます。

令和8年分と令和9年分については、この給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられます。
一方、給与の収入金額が220万円を超える場合については、今回の改正による給与所得控除額の変更はありません。

今年は基礎控除と給与所得控除の両方が見直されるため、特に給与収入が比較的低い方について、年末調整の結果が前年と変わる可能性があります。

扶養親族になるための所得基準も変わります

今年の年末調整で、従業員からの質問が特に増えそうなのが扶養関係です。

令和8年分からは、「扶養親族(税法上、一定の要件を満たす家族として扶養控除の対象になる方です)」や「同一生計配偶者(生計をともにしている配偶者のうち、一定の所得以下の方です)」について、合計所得金額の基準が62万円以下に引き上げられます。
給与収入しかない方であれば、給与所得控除の最低保障額74万円を差し引くため、給与収入136万円以下が一つの目安になります。

たとえば、パート勤務をしているご家族や、アルバイトをしているお子さんがいる従業員の場合、前年までと同じ収入であっても、税務上の扶養の判定が変わる可能性があります。
ここで会社側が気をつけたいのは、「家族構成が去年と同じだから、扶養関係も去年と同じだろう」と決めつけないことです。
家族そのものが変わっていなくても、税法上の所得基準は変わっています。

そのため今年は、従業員に対して「ご家族の今年の収入見込みをもう一度確認してください」と早めに案内しておくことをおすすめします。

なお、所得税の扶養と、健康保険など社会保険上の扶養は、別の制度です。
所得税で扶養親族に該当したからといって、自動的に健康保険でも扶養になるわけではありません。
従業員から「いくらまで働けますか」と相談を受けた場合には、所得税だけでなく、社会保険や会社独自の家族手当なども、それぞれ別に確認する必要があります。

大学生年代のお子さんがいる場合は「特定親族特別控除」にも注意が必要です

特に気をつけたいのが、19歳以上23歳未満のお子さんなどがいるご家庭です。
今回の改正で、この年代の家族を扶養している場合に受けられる「特定親族特別控除」という控除が新たに設けられています。

対象となる「特定親族」とは、納税者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族などのうち、扶養親族の所得基準を超えている一定の方を指します。
令和8年分では、合計所得金額が62万円を超え123万円以下の場合に、特定親族特別控除の対象となる可能性があります。
給与収入だけの場合には、136万円を超え197万円以下がおおよその所得面での目安です。

ただし、「19歳以上23歳未満で、収入がこの範囲なら必ず控除が受けられる」という意味ではありません。
生計を一にしていることや親族関係など、所得以外にも条件があります。
また、合計所得金額が62万円以下で他の要件も満たしている場合には、特定親族特別控除ではなく、通常の扶養控除における「特定扶養親族(19歳以上23歳未満の扶養親族で、通常より大きな控除額が認められる区分です)」として扱われることがあります。

大学生年代のお子さんがアルバイトをしている従業員については、単に「年収がいくらか」だけでなく、どの控除に該当するのかまで確認していただくことが大切です。

改正によって新しく扶養対象になる場合は申告書を確認しましょう

今回の改正によって、これまで扶養控除などの対象ではなかった親族が、新たに対象となる場合があります。
その場合には、従業員から提出される「扶養控除等申告書(従業員が扶養家族の状況を会社に伝えるための書類です)」の内容を確認する必要があります。

添付資料では、今回の改正によって新たに扶養親族等に該当することとなった親族を追加する場合、「異動月日及び事由」の欄に「令和8年12月1日改正」などと記載する取り扱いが示されています。

ここで特に間違えやすいのが、11月までの給与計算との関係です。
年末調整では改正後の扶養基準を使いますが、令和8年11月30日以前に支払う給与について、今回の改正で新しく扶養対象になる親族を、すぐに毎月の源泉徴収上の「扶養親族等の数」へ加えるわけではありません。
つまり、年末調整では新しい基準を使う一方で、11月までの毎月の給与については従来の源泉徴収事務を続ける、というケースがあります。
今年の給与計算では、この違いを特に意識しておきましょう。

年末調整の書類は12月になるまで待つ必要はありません

「改正が12月1日に施行されるのであれば、年末調整の申告書も12月になってから集めなければならないのでは」と思われるかもしれません。
しかし、実務上は12月1日まで待つ必要はありません。

年末調整に間に合うよう、改正内容を反映した年末調整関係書類を12月1日より前に従業員から提出してもらって差し支えありません。
そのため、例年どおり10月から11月ごろに年末調整書類を配布し、回収を始めることができます。

むしろ今年は扶養関係の所得基準などが変わるため、早めに従業員へ案内したほうが安心です。
配偶者や大学生のお子さんがパート・アルバイトをしているご家庭では、年収の見込みを確認するのに時間がかかることがあります。
年末になって慌てて確認するより、早い段階でご家族の給与明細などを確認してもらうほうが、申告書の訂正や年末調整のやり直しを減らすことにつながります。

23歳未満の扶養親族がいる方は生命保険料控除にも変更があります

令和8年分と令和9年分については、23歳未満の扶養親族がいる方を対象に、「生命保険料控除(支払った生命保険料に応じて、所得から差し引くことができる控除です)」にも特例があります。

平成24年1月1日以後に締結した契約に基づく「新生命保険料」について、一定の場合には一般生命保険料控除の上限が6万円となります。
年間の新生命保険料が12万円を超える場合には控除額は6万円となり、それ以下の場合には支払った保険料の金額に応じて控除額を計算します。
ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除をあわせた生命保険料控除全体の上限は、これまでと同じ12万円です。

年末調整のご担当者としては、23歳未満の扶養親族がいる従業員について、生命保険料控除の計算が前年と変わる可能性があることを覚えておくとよいでしょう。

マイカー通勤などの通勤手当は、すでに令和8年4月から改正されています

今回の税制改正のなかには、年末調整を待たず、すでに令和8年4月から実務に影響しているものもあります。その一つが通勤手当です。

自動車や自転車などを利用して通勤している従業員に対する通勤手当について、片道65キロメートル以上の長距離通勤者の非課税限度額が引き上げられました。

・片道65キロメートル以上75キロメートル未満:月45,700円
・75キロメートル以上85キロメートル未満:月52,700円
・85キロメートル以上95キロメートル未満:月59,600円
・95キロメートル以上:月66,400円

さらに、一定の要件を満たす駐車場などを利用し、その料金を従業員本人が負担することが通常となっている場合には、通勤距離に応じた非課税限度額に、駐車場料金相当額を月5,000円まで加算できるしくみが設けられています。
ただし、「駐車場代であれば何でも5,000円まで非課税になる」というわけではなく、勤務先の周辺や、通勤で利用する駅・停留所の周辺にあるなど、一定の要件を満たす駐車場である必要があります。
また、この加算は、通勤距離が片道2キロメートル未満の方には適用されません。

この改正は、令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用されています。
給与計算ソフトの通勤手当設定を以前のまま使っている会社は、一度確認しておくと安心です。

食事補助の「7,500円」には条件があります

会社が従業員に食事を支給している場合の非課税限度額についても改正されています。
ここは誤解しやすいため、金額だけでなく条件まで押さえておくことが大切です。

会社が役員や従業員へ食事を支給した場合に、その食事を給与として課税しないためには、原則として次の二つの条件を満たす必要があります。

・役員や従業員本人が食事の価額の半分以上を負担していること
・食事の価額から本人が負担している金額を差し引いた会社負担分が、1か月あたり7,500円以下であること(この判定は、消費税と地方消費税を除いた金額で行います)

したがって、「会社が従業員へ食事代として7,500円まで現金を渡しても非課税」という制度ではありません。
原則として、食事代を現金で補助した場合には給与として課税されます。
例外として、深夜勤務者について夜食を現物で支給することができないため、その代わりに現金を支給する場合には、一定の条件のもと、1食あたり650円以下であれば課税しなくてよい取り扱いがあります。

食事補助制度を導入している会社では、「金額が7,500円以内だから大丈夫」と判断せず、本人負担の割合や支給方法まで確認しておきましょう。

住宅ローン控除の適用期間も延長されています

住宅ローン控除(正式には「住宅借入金等特別控除」といいます)についても改正があります。
一定の要件を満たす住宅を取得などし、令和12年12月31日までの間に居住した場合まで、制度の対象期間が延長されています。

ただし、住宅の種類や省エネ性能、居住を始めた年などによって、借入限度額や控除期間が異なります。
会社の年末調整担当者が、住宅の性能や適用要件を一から判断するわけではありません。
年末調整では、従業員から提出された住宅ローン控除関係の書類にもとづいて処理するのが基本です。

また、住宅ローン控除を初めて受ける年については、原則として本人が確定申告を行います。
「住宅を購入したので、最初の年から会社の年末調整だけで済む」というわけではありませんので、従業員から相談を受けた場合には、その点をご案内いただくと安心です。

ひとり親控除の38万円への引き上げは令和9年分からです

令和8年度税制改正では、「ひとり親控除(一定の要件を満たすひとり親の方が受けられる所得控除です)」についても見直しが行われています。
控除額は35万円から38万円へ引き上げられますが、この改正が適用されるのは令和9年分以後の所得税です。
したがって、令和8年分の年末調整では、引き続き改正前の35万円で計算します。

税制改正では、「今年改正された制度だから、今年の年末調整から使う」とは限りません。
何が変わったのかと同時に、「いつから適用されるのか」を確認することが重要です。

退職金を支給する会社は「退職所得の源泉徴収票」に注意が必要です

退職者がいる会社では、「退職所得の源泉徴収票(退職金を支払った際に、支払った金額や源泉徴収した税額を記載して税務署などへ提出する書類です)」についても取り扱いが変わっています。

令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等については、従来よりも税務署への提出対象が広がりました。
改正後は、原則として、退職手当等の支払を受けるすべての受給者について、この書類を作成・提出する必要があります。
令和7年12月31日以前に支払うべき退職手当等については、税務署などへの提出対象が法人の役員である場合などに限られていましたので、過去の感覚のまま処理しないよう注意が必要です。

ただし、死亡退職による退職手当等の場合には別の支払調書を提出する取り扱いがあり、非居住者への退職手当等についても別の法定調書が必要となる場合があります。
そのため、社内マニュアルなどでは単に「令和8年から全員提出」とだけ書くのではなく、「令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等について、原則としてすべての受給者が対象」としておくほうが正確です。

退職金は金額が大きくなりやすいため、退職者がいる場合には、支給後ではなく事前に源泉徴収や必要書類を確認しておくと安心です。

今年は年末調整の還付額が例年より大きくなる方も考えられます

令和8年11月までの毎月の源泉徴収事務については、今回の基礎控除などの改正による変更はありません。
一方、12月の年末調整では改正後の基礎控除や給与所得控除などを反映します。
そのため従業員によっては、1年間の給与から天引きされていた所得税が、年末調整後の年間税額より多くなり、例年よりも還付額が大きくなる可能性があります。

もちろん、全員の還付額が増えるという意味ではありません。
給与の金額、扶養家族の状況、生命保険料控除、住宅ローン控除などによって結果は変わります。

会社として気をつけたいのは、年末調整による還付も、一時的には会社から従業員へ支払うことになるという点です。
従業員数が多い会社では、12月の給与振込額が通常より大きくなる可能性があります。
税金の話だから会社の資金繰りとは無関係、と考えず、12月の給与支給前には預金残高にも少し余裕を持たせておくと安心です。

令和9年1月からは新しい源泉徴収税額表へ切り替えます

令和8年分の年末調整が終わったあとにも、給与担当者には大切な作業があります。
令和9年分の給与等については、「令和9年分源泉徴収税額表」を使って源泉徴収税額を計算します。
国税庁も、令和9年分の税額表は令和8年分以前の給与等には使用しないよう注意を促しています。

給与計算ソフトを利用している会社では、年末から年始にかけて税制改正対応のアップデートが行われることが一般的です。
ただし、ソフトだから必ず自動的に正しく切り替わるとは限りません。
令和9年1月の給与計算を始める前に、税額表やソフトの年度設定が令和9年分へ切り替わっているかを確認しておきましょう。
特にExcelなどで独自の給与計算表を作成している会社は、注意が必要です。

令和9年から「防衛特別所得税」が始まります

令和9年1月1日以後に生ずる所得については、新たに「防衛特別所得税(国の防衛費に充てるために新しく設けられる税金です)」が始まります。
源泉徴収義務者は、所得税を徴収する際に、源泉徴収すべき所得税額の1%相当額を防衛特別所得税として併せて徴収します。

一方、「復興特別所得税(東日本大震災からの復興のための財源として、所得税にあわせて徴収されている税金です)」の税率は、現在の2.1%から1.1%へ引き下げられます。
防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%をあわせた割合は2.1%となるため、この部分については改正前後で合計割合に変更はなく、国税庁は源泉徴収税額の計算方法自体に変更は生じないと説明しています。

ただし、基礎控除などの改正によって、令和9年分の源泉徴収税額表自体は変わっています。
「合計割合が同じだから、令和8年の税額表をそのまま使えばよい」という意味ではありません。令和9年分の給与については、必ず令和9年分の源泉徴収税額表を使用しましょう。

令和9年1月から源泉徴収票の提出方法も変わります

年末調整後の法定調書事務についても、大きな変更があります。
令和9年1月1日以後、市区町村へ「給与支払報告書(会社が従業員の給与について市区町村へ提出する報告書で、住民税の計算に使われます)」を提出した場合には、税務署にも「給与所得の源泉徴収票」を提出したものとみなされます。

そのため、これまでのように、市区町村へ給与支払報告書を提出したうえで、税務署提出用の源泉徴収票を別に作成・提出する必要がなくなります。

ただし、ここで注意したいのが従業員本人への交付です。
税務署への提出が不要になることと、従業員本人へ源泉徴収票を渡さなくてよくなることは別の話です。
受給者へ交付する源泉徴収票については、引き続き作成・交付が必要です。
「税務署に出さなくてよくなったから、源泉徴収票自体を作らなくてよい」と誤解しないようにしましょう。

今年の年末調整で特に気をつけたいのは「去年と同じ」と思い込まないことです

令和8年分の年末調整では、前年と家族構成や給与額が大きく変わっていない従業員であっても、税制改正によって結果が変わる可能性があります。
特に扶養関係については、本人やご家族の収入が昨年とほぼ同じでも、所得基準そのものが変わっています。

そのため、前年の申告書をそのまま参考にして処理するだけでは不十分です。
会社側が従業員のご家族の収入を推測して、「去年と同じだから今年も扶養でよいだろう」と判断するのも避けたほうがよいでしょう。
従業員本人に今年の収入見込みを確認してもらい、申告書に正しい内容を記載してもらうことが基本です。

実際に国税庁の令和8年分年末調整Q&Aでも、従業員が申告書に記載した給与収入などに誤りが判明した場合には、従業員本人に記載内容の訂正を依頼するなどして、適正な控除額で年末調整を行うことが示されています。
会社側が代わりに推測するのではなく、従業員本人に確認してもらうという流れを整えておくことが大切です。

今年は9月から10月の準備が年末の負担を減らします

令和8年分の年末調整では、12月になってから慌てて対応するよりも、9月から10月の段階で準備を進めておくことをおすすめします。

・まず、利用している給与計算ソフトや年末調整ソフトが令和8年度税制改正に対応しているか確認します
・従業員へ年末調整書類を配布する際には、「今年は扶養の所得基準などが変わっていますので、昨年と同じ方もご家族の収入見込みを確認してください」と案内しておくとよいでしょう
・大学生年代のお子さんがいる方については、特定親族特別控除の対象となる可能性も確認します
・23歳未満の扶養親族がいる方については、生命保険料控除の計算もあわせて確認します
・通勤手当や食事補助については、すでに令和8年4月から改正が適用されていますので、給与計算の設定も点検しておくと安心です
・退職金を支給した会社については、退職所得の源泉徴収票の提出対象が変わっていることも忘れないようにしましょう
・そして、令和9年1月の給与計算に備え、年末調整が終わったあとには令和9年分の源泉徴収税額表へ切り替えます

このように一つずつ時期を分けて考えると、今年の改正も整理しやすくなります。

後から説明できるよう、計算の根拠となる資料も残しておきましょう

給与計算や年末調整では、最終的な税額が合っていることはもちろん重要ですが、「なぜこの処理をしたのか」を後から確認できる状態にしておくことも大切です。

扶養控除を適用した場合には、従業員から提出された扶養控除等申告書を適切に保管します。
通勤手当について駐車場料金を非課税限度額へ加算している場合には、駐車場の場所や料金、通勤経路などを確認できるようにしておくと安心です。
食事補助についても、会社がいくら負担しているかだけでなく、従業員本人の負担額や支給方法が分かるようにしておくとよいでしょう。

これは必要以上に税務調査を心配するという意味ではありません。
経理担当者が変わったときや、あとから処理内容を確認する必要が生じたときにも、「この資料にもとづいて、このように処理しました」と説明できる状態を作っておくことが、会社の経理を安定させることにつながります。

まとめ 令和8年の年末調整は「いつから変わるか」を整理して準備しましょう

令和8年分の年末調整では、基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得基準など、給与計算に関係する重要な制度が複数変わります。
ただし、すべての制度が同じタイミングで変わるわけではありません。

基礎控除など今回の主要な改正については、令和8年11月までの毎月の源泉徴収事務には原則として変更がなく、令和8年12月の年末調整から改正後の内容を反映します。
一方、通勤手当や食事の非課税限度額については、すでに令和8年4月から改正が適用されています。
さらに、令和9年1月からは新しい源泉徴収税額表を使い、防衛特別所得税も始まります。
また、給与所得の源泉徴収票についても、市区町村へ給与支払報告書を提出した場合の「みなし提出」の制度が始まります。

今年、会社側が特に意識したいのは、従業員への早めの案内です。

「今年は扶養の基準などが変わっていますので、ご家族の収入見込みをもう一度確認してください」

この一言を早めに伝えておくだけでも、申告漏れや年末調整後の訂正を減らしやすくなります。
また、給与計算ソフトを使用している会社でも、ソフト会社任せにせず、令和8年分の年末調整と令和9年1月以後の給与計算について、それぞれ正しい制度が反映されているかご確認ください。

今年の年末調整は変更点が多いため、一度にすべてを覚えようとすると難しく感じるかもしれません。
しかし、「誰に関係するのか」「いつから変わるのか」「会社として何を確認するのか」を一つずつ整理すれば、落ち着いて対応できます。
今年は特に「去年と同じだから大丈夫」と考えず、少し早めに準備を始めておくことをおすすめします。

※この記事は2026年9月19日時点の法令、国税庁公表資料および添付資料にもとづいて作成しています。
税制は適用時期や個別の状況によって取り扱いが異なる場合があります。
実際の年末調整や源泉徴収事務を行う際には、最新の国税庁資料をご確認ください。
個別の判断が必要な場合には、税務署へご相談ください。