介護認定を受けていると障害者控除は使える?税理士がわかりやすく解説

介護認定と障害者控除の関係性

親御さんやご家族が要介護認定を受けたとき、確定申告や年末調整の季節になると、こんな疑問をよく耳にします。

「介護認定を受けているのなら、障害者控除も使えるんじゃないの?」

結論から言うと、介護認定を受けているだけでは、原則として障害者控除は使えません。

ただし、一定の条件を満たし、市区町村から「障害者控除対象者認定書」という書類の交付を受けられる場合には、障害者手帳がなくても障害者控除を使える可能性があります。

税務署の視点で見ると、ここは非常に重要です。
税務署が判断の根拠として見るのは、「要介護1です」「要介護3です」という介護保険上の区分だけではなく、所得税法上の障害者に該当する根拠があるかどうかです。

この記事では、介護認定と障害者控除のつながりについて、税理士の立場からできるだけわかりやすくご説明します。

介護認定=障害者控除、ではありません

まず基本的なことを押さえておきましょう。
介護保険の「要介護認定」と、税法上の「障害者控除」は、まったく別の制度です。

国税庁は次のように説明しています。
所得税法上の障害者控除の対象となる人は、所得税法施行令第10条に限定して定められており、介護保険法の要介護認定を受けた人は、その中に直接は含まれていません。
したがって、要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にはならない、というのが国税庁の公式な取扱いです。

たとえば、次のような考え方は、税務署の視点から見ると問題になります。

・「要介護2だから障害者控除が使える」
・「要介護4だから特別障害者控除が使える」
・「介護保険証があるから障害者控除を入れてよい」

要介護度は、心身の状態を示す大切な情報です。
しかし、要介護度だけで税法上の障害者・特別障害者の区分を判定するわけではありません。
ここは誤解が起きやすいところですので、しっかり確認しておきましょう。

では、介護認定を受けている人は絶対に使えないのか

いいえ、そうではありません。
ここが実務上もっとも大切なポイントです。

国税庁は、次のような場合には障害者控除の対象になるとしています。
介護保険法の要介護認定の有無にかかわらず、精神または身体に障害のある65歳以上の人で、その障害の程度が知的障害者または身体障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けた場合などは、障害者控除の対象になる、というものです。

つまり、ポイントはひとつです。
市区町村から「障害者控除対象者」として認定されているかどうか。

この認定を受けると、多くの自治体では「障害者控除対象者認定書」という書類が交付されます。
この認定書がある場合、障害者手帳を持っていなくても、確定申告や年末調整で障害者控除を受けられる可能性があります。

「障害者控除対象者認定書」とは何か

障害者控除対象者認定書とは、税金の障害者控除を受けるために、市区町村がその人の心身の状態を確認して発行する書類です。

たとえば船橋市では、障害者手帳の交付を受けていない65歳以上の方について、認知症または身体の障害の状態が一定の基準に該当すると認定された場合に、「障害者控除対象者認定書」を交付しています。
また、この認定書はあくまで税の所得控除のために利用するものであり、障害者として福祉サービスを受けられるようになるものではないと案内されています。

ここは誤解が多い部分ですので、整理しておきます。
この認定書は、障害者手帳そのものではありません。
新たに障害者手帳が交付されるわけでもありません。
介護サービスの内容が増えたり、変わったりするものでもありません。
あくまで、所得税・住民税の障害者控除を受けるための税務上の証明書類です。

「介護認定の等級が上がった」「障害者として福祉が利用できるようになった」という意味ではなく、税金の計算の場面でだけ使える書類だということを、あわせてご理解ください。

税務署はどこを見るのか

税務署が確認するポイントは、次の4点です。

誰についての障害者控除か

本人なのか、配偶者なのか、扶養親族なのかを確認します。

税法上の障害者に該当する根拠があるか

身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳などがあれば明確ですが、介護認定に基づく場合は、市区町村が発行した障害者控除対象者認定書が重要な根拠となります。

「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」のどれに該当するか

控除額が異なるため、税額に直接影響します。区分の根拠についても確認の対象になります。

扶養親族・配偶者について控除を受ける場合、生計を一にしているか

「生計を一にする」(いっしょに生活費を出し合っている関係)とは、必ずしも同居していることだけを意味するわけではありません。
たとえば別居していても、生活費・療養費・介護費などを継続的に負担している場合には、生計を一にしていると認められるケースがあります。
ただし、これを説明できる実績(送金記録など)を残しておくことが大切です。

障害者控除の金額

所得税における障害者控除額は、区分によって異なります。
一般の障害者は27万円、特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円です。

国税庁は、納税者本人・同一生計配偶者・扶養親族が所得税法上の障害者に該当する場合には、一定の金額の所得控除を受けられると案内しています。
また、16歳未満の扶養親族については扶養控除が適用されませんが、障害者控除については適用できます。

住民税にも障害者控除があり、一般障害者は26万円、特別障害者は30万円、同居特別障害者は53万円と案内している自治体があります。

ひとつ、誤解しやすいポイントをお伝えします。
控除額がそのまま還付される金額になるわけではありません。
障害者控除は「所得控除」です。
課税される所得を減らすことで、税負担を軽くする仕組みです。
たとえば所得税率が5%の方で、障害者控除27万円が追加できる場合、所得税だけの単純計算では、27万円 × 5% = 13,500円の税負担が軽くなります。
実際には復興特別所得税や住民税も関係しますので、実際の効果は個別の状況によって変わります。

要介護いくつから使えるのか

これも非常によくある質問です。
「要介護3なら使えますか?」「要介護4なら特別障害者ですか?」「要支援の場合は無理ですか?」といったお声をよく耳にします。

結論からお伝えすると、全国一律で「要介護いくつなら必ず対象」とは言えません。
国税庁は、要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にならないと説明しており、市町村長等の障害者認定については、住んでいる市区町村の窓口に確認するよう案内しています。

自治体によっては、要介護認定調査結果をもとに障害の程度を判断しているところもあります。
たとえば新宿区では、要介護認定を受けている方について、要介護認定調査結果により障害の程度を判断すると案内しています。

つまり実務上は、要介護度そのものではなく、認定基準日時点の心身の状態が市区町村の基準に該当するかどうかで判断されます。
要介護1でも認定される可能性がゼロとは言えませんし、逆に要介護3だから必ず認定されるとも言い切れません。

一般的には、寝たきりに近い状態、認知症の程度が重い状態、日常生活に相当な支障がある状態などでは、認定の可能性が高くなる傾向があります。

誰の税金で控除できるのか

障害者控除は、対象者本人だけでなく、同一生計配偶者や扶養親族が障害者に該当する場合にも適用できます。
国税庁も、納税者自身・同一生計配偶者・扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に障害者控除を受けられると説明しています。

たとえば、次のようなケースが考えられます。
高齢の母が要介護認定を受けており、市区町村から母について障害者控除対象者認定書が交付されていて、母は子(納税者)の扶養親族に該当する、という場合です。
このようなケースでは、子の確定申告または年末調整で、母について障害者控除を適用できる可能性があります。

ただし、扶養親族に該当するかどうかは、所得要件や生計関係の確認が必要です。
「親だから」「介護しているから」というだけで、自動的に扶養親族になるわけではありません。

税務署は次の点を確認します。
親族関係があるか、生活費・医療費・介護費を継続的に負担しているか、別居の場合は送金の実績があるか、本人(親御さん)の所得状況はどうか、といった点です。

年末調整で使うか、確定申告で使うか

会社員の方であれば、年末調整の際に「扶養控除等申告書」に障害者控除の内容を記載して反映することができます。
ただし、介護認定に基づく障害者控除の場合は、勤務先に対して障害者控除対象者認定書の内容を説明できる状態にしておくことが大切です。

年末調整で入れ忘れた場合や、認定書の取得が年末調整に間に合わなかった場合は、確定申告で障害者控除を追加することも可能です。

また、すでに確定申告を済ませていて、後から認定書が取得できた場合には、「更正の請求(こうせいのせいきゅう)」という手続きにより、税金の一部が戻る可能性があります。更正の請求とは、申告した税額が実際より多すぎた場合に、正しい金額に直してもらうよう税務署に申し出る手続きのことです。
国税庁は、原則として法定申告期限から5年以内に手続きする必要があると案内しています。

過去分も戻る可能性があります

障害者控除対象者認定書は、現在の年分だけでなく、自治体によっては過去の年分について発行できる場合があります。
たとえば、令和5年分・令和6年分について、当時の心身の状態が認定基準を満たしていたと市区町村が判断した場合、その年分の認定書が発行される可能性があります。
その場合、すでに確定申告を済ませていても、原則として法定申告期限から5年以内であれば更正の請求により還付を受けられる余地があります。

ここは実務上、見落としが多いところです。親御さんが数年前から要介護状態だったにもかかわらず、障害者控除の認定書の存在を知らず、これまで申告していなかったというケースは少なくありません。
このような場合、過去分の認定書を発行してもらえるかどうかを市区町村に確認する価値があります。
ただし、過去分の認定書が出るかどうかは、自治体の取扱いや当時の資料の状況によります。
まずは市区町村の高齢福祉課・介護保険課・障害福祉課などに相談してみてください。

税務署が問題視しやすいケース

障害者控除に関して、申告内容の確認を受けやすいケースをご紹介します。
事前に整理しておくことで、トラブルを防ぐことができます。

要介護認定だけを根拠に障害者控除を入れているケース

国税庁は、要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象とはならないと明確に示しています。
認定書などの根拠がないまま控除を申告していると、申告内容の確認を求められる可能性があります。

特別障害者として控除しているが、その根拠が弱いケース

障害者と特別障害者では所得税の控除額が27万円と40万円で異なり、同居特別障害者になると75万円まで増えます。
控除額が大きいだけに、区分の根拠は確認を受けやすいポイントです。

扶養親族に該当するかが不明確なケース

親御さんが一定以上の年金収入を得ている場合、扶養親族に該当しないことがあります。
また、別居している親について控除を受ける場合には、生活費の送金実績など、生計を一にしていることを示せる資料が重要になります。

兄弟姉妹が二重に控除しているケース

同じ親について、長男も次男も扶養親族として障害者控除を申告することはできません。
誰が扶養親族として申告するのかを、あらかじめ家族内で確認・整理しておきましょう。

実際にやるべき手続き

実務上の流れは次のようになります。

市区町村に問い合わせる

問い合わせ先は自治体によって異なりますが、高齢福祉課・介護保険課・障害福祉課などが窓口になることが多いです。
次のように問い合わせると話が早いです。「要介護認定を受けている家族について、所得税・住民税の障害者控除対象者認定書を発行してもらえるか確認したいのですが」

必要書類を確認する

自治体によって異なりますが、申請書・介護保険証・本人確認書類・委任状などが必要になることがあります。
新宿区では、窓口申請・郵送申請に応じて、申請書・申請者の身分証明書・対象者の介護保険証などが必要と案内されています。

認定書が交付されたら、年末調整または確定申告に反映する

会社員の方は勤務先に提出する扶養控除等申告書に記載します。確定申告をされる方は、確定申告書に障害者控除として加算します。

すでに申告済みの場合は、更正の請求を検討する

過去の申告で障害者控除を入れていなかった場合は、認定書が取得できれば、原則として5年以内に更正の請求ができます。
手続きの詳細は、税務署にご相談ください。

まとめ:介護認定がある方は、まず市区町村に確認を

介護認定を受けているからといって、自動的に障害者控除が使えるわけではありません。
この点は、税務署が非常に重視するところです。

一方で、65歳以上で心身の状態が一定の基準に該当し、市区町村から障害者控除対象者として認定されれば、障害者手帳がなくても障害者控除を使える可能性があります。
国税庁も、市町村長等の認定を受けた場合には障害者控除の対象になると説明しています。

ご家族に要介護認定を受けている方がいる場合には、まず次のことを確認してみてください。
市区町村で「障害者控除対象者認定書」が発行できるか、対象年分はいつからか、障害者か特別障害者かどちらの区分になるか、扶養に入れているご家族の申告で使えるか、過去分についても認定書が出るか、という5点です。

税務署の立場から見ると、重要なのは「介護が大変かどうか」ではなく、税法上、障害者控除を適用できる客観的な根拠があるかどうかです。

ご家族の介護をされている方にとって、障害者控除は見落としやすい制度です。
認定書が取得できるかどうかだけでも、市区町村の窓口に一度確認してみる価値は十分あります。

この記事は作成時点の情報に基づいています。
税制や制度は年度によって変わる場合がありますので、実際の申告にあたっては、税務署にご確認ください。