デイサービスの交通費は医療費控除の対象?介護保険サービスごとの判断ポイント
介護が必要なご家族が、デイサービスや通所リハビリテーションなどへ通っている場合、毎回の交通費も少しずつ積み重なっていきます。
「介護を受けるために必要な交通費なのだから、医療費控除の対象になるのではないか」と考える方も多いでしょう。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費の合計額が一定の金額を超えた場合に、税金の計算のもとになる所得から一定額を差し引くことができる制度です。
うまく使えば、所得税や住民税の負担が軽くなることがあります。
結論からお伝えすると、介護保険サービスを受けるために支払った交通費は、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になります。
ただし、要介護認定(介護がどのくらい必要かを、市区町村が判定する仕組みです)を受けていることや、老人福祉センター、デイサービスセンターなどへ通っていることだけで、すべての交通費が対象になるわけではありません。
判断するときに大切なのは、次の3点です。
・どのような介護保険サービスを利用しているか
・そのサービスの自己負担額(介護保険からの給付を除いて、利用者が実際に支払う金額です)が医療費控除の対象になっているか
・交通費が、そのサービスを受けるために通常必要なものか
この記事では、デイサービスや通所リハビリテーションなどへ通うための交通費について、医療費控除の対象になる条件や、確定申告のときに準備しておきたい資料を、できるだけやさしい言葉で解説します。
介護施設へ通う交通費は、一定の条件で医療費控除の対象になります
介護保険サービスを受けるために施設へ通う交通費は、次の2つの条件を満たす場合に、医療費控除の対象になります。
1つ目は、利用した介護保険サービスの自己負担額が、医療費控除の対象になっていることです。
2つ目は、その交通費が、介護保険サービスを受けるために通常必要なものであることです。
つまり、交通費だけを切り離して判断するものではありません。まず、施設で受けた介護サービスの利用料が医療費控除の対象になるかを確認します。
そのうえで、そのサービスを受けるために必要だった交通費かどうかを確認する、という順番で考えます。
たとえば、医療費控除の対象になる通所リハビリテーションを受けるために、電車や路線バスを利用した場合、その交通費は原則として医療費控除の対象になります。
一方で、利用した介護サービスそのものが医療費控除の対象にならない場合は、そのサービスを受けるための交通費も、原則として対象になりません。
要介護認定を受けているだけでは対象になりません
よくある勘違いの一つが、「要介護認定を受けている人の交通費なら、すべて医療費控除の対象になる」というものです。
しかし、要介護認定や要支援認定を受けていることだけでは、医療費控除の対象になるとは限りません。
介護保険サービスには、看護やリハビリテーションなど医療との関係が強いサービスと、食事、入浴、日常生活上の支援などを中心とするサービスがあります。
医療費控除では、これらすべてが同じように扱われるわけではないのです。
そのため、判断するときは、施設の名称だけでなく、実際に利用している介護保険サービスの正式名称を確認することが大切です。
たとえば、「老人福祉センターへ通っている」という情報だけでは、医療費控除の対象になるかどうかを判断できません。
老人福祉センターなどでは、介護保険の通所介護を行っていることもあれば、健康相談、趣味の教室、交流活動など、介護保険とは別の事業を行っていることもあるためです。
介護保険サービスではない、一般的な教室や交流活動へ参加するための交通費は、通常、医療費控除の対象にはなりません。
まずは、領収書、利用明細書、ケアプラン(どのような介護サービスを、どのくらい利用するかをまとめた計画書です)、サービス利用票(利用する介護サービスの内容や回数を一覧にした書類です)などを確認し、どのサービスを利用しているのかを整理してみましょう。
通所リハビリテーションと通所介護では取扱いが異なります
施設へ通う介護サービスとしてよく利用されるものに、通所リハビリテーションと通所介護があります。
どちらも日帰りで施設へ通うサービスですが、医療費控除の取扱いは同じではありません。
通所リハビリテーション
通所リハビリテーションは、一般に「デイケア」と呼ばれることがあります。
介護老人保健施設、病院、診療所などへ通い、医師の指示や医学的な管理のもとで、心身の機能を維持・回復するためのリハビリテーションを受けるサービスです。
通所リハビリテーションは、医療との関係が強い介護保険サービスとして、自己負担額が原則として医療費控除の対象になります。
そのため、通所リハビリテーションを受けるために通常必要となった電車代やバス代なども、医療費控除の対象になります。
通所介護
通所介護は、一般に「デイサービス」と呼ばれるサービスです。
施設へ通い、食事や入浴、排せつの介助、日常生活上の支援、機能訓練などを受けます。
通所介護の自己負担額は、いつでも医療費控除の対象になるわけではありません。
訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーションなど、一定の医療系サービスと併せて利用している場合に、医療費控除の対象になります。
実務上は、1か月単位のケアプランで判断します。
ケアマネジャーなどから交付されるサービス利用票に、医療系サービスと通所介護が一緒に記載されているかを確認しましょう。
通所介護だけを利用しており、同じ月のケアプランに医療系サービスが含まれていない場合は、原則として通所介護の自己負担額は医療費控除の対象になりません。
その場合、通所介護へ通うために支払った交通費についても、原則として医療費控除の対象外となります。
まずは領収書の「医療費控除対象額」を確認しましょう
介護保険サービスの利用料については、利用者ご自身で対象額を判断するよりも、まず介護サービス事業者が発行した領収書を確認するのが確実です。
医療費控除の対象となる介護保険サービスの領収書には、一般に、次のような記載があります。
・医療費控除対象額
・医療費控除の対象となる金額
・うち医療費控除対象分
領収書に医療費控除の対象額が記載されている場合は、その金額をもとに確定申告の準備を進めます。
領収書の合計金額を、そのまま医療費控除に入れないよう注意しましょう。
介護サービスの領収書には、介護サービスの自己負担額のほか、食費、日用品代、理美容代、レクリエーション費などが含まれていることがあります。
これらの費用が医療費控除の対象になるかどうかは、利用したサービスの種類や費用の内容によって異なります。
特に食費については、すべてが一律に対象外になるわけではありません。
一定の介護保険サービスでは、食費の一部が医療費控除の対象額に含まれる場合があります。
そのため、項目名だけを見てご自分で除外するのではなく、領収書に記載された医療費控除対象額を確認することが大切です。
領収書に対象額の記載がない場合や、記載内容が分からない場合は、介護サービス事業者に「医療費控除の対象になる金額を教えてください」と確認すると安心です。
医療費控除の対象になりやすい交通費
利用した介護保険サービスの自己負担額が医療費控除の対象になっている場合、そのサービスを受けるために通常必要な交通費も対象になります。
代表的なものは、次の交通費です。
・電車代
・路線バス代
・やむを得ず利用したタクシー代
電車や路線バスは、介護保険サービスを受けるために必要な移動であれば、原則として医療費控除の対象になります。
電車やバスでは領収書が発行されないこともあります。
その場合は、次の内容を記録しておきましょう。
・利用した日
・利用した人
・利用した区間
・行き先の施設名
・受けた介護サービス
・往復の交通費
たとえば、次のように記録します。
「6月10日 母 自宅最寄り駅から〇〇介護老人保健施設まで 通所リハビリテーション利用 往復760円」
同じ施設へ定期的に通っている場合は、サービス利用票や利用予定表と交通費の一覧を一緒に保管しておくと、確定申告のときに整理しやすくなります。
タクシー代は、やむを得ない事情がある場合に限られます
タクシー代は、電車代やバス代と同じように、いつでも医療費控除の対象になるわけではありません。
原則として、公共交通機関を利用できる状況で、便利だからという理由で利用したタクシー代は対象になりません。
一方で、本人の身体状況や周辺の交通事情などから、電車やバスを利用することが難しい場合には、タクシー代が医療費控除の対象になる可能性があります。
たとえば、次のような事情が考えられます。
・歩行が難しく、駅やバス停まで移動できない
・車いすを利用しており、公共交通機関での移動が難しい
・認知症などにより、公共交通機関での移動に危険がある
・急な体調悪化など、緊急性があった
・自宅周辺に利用できる公共交通機関がない
ただし、タクシー代が対象になるかどうかは、要介護度や病名だけで自動的に決まるものではありません。
公共交通機関を利用することが実際に難しかったか、タクシーを使う必要性があったかなど、利用時の具体的な状況によって判断されます。
タクシーを利用した場合は、領収書を保管するとともに、利用した理由を簡単に記録しておきましょう。
たとえば、「歩行が困難でバス停まで移動できなかったため」といったメモを残しておくと、後から説明しやすくなります。
自家用車のガソリン代や駐車料金は対象になりません
ご家族が自家用車で送迎している場合も多いでしょう。
しかし、自家用車で介護施設へ通った場合のガソリン代や駐車料金など、自家用車の利用にかかる費用は、原則として医療費控除の対象になりません。
これは、介護施設へ通う場合だけでなく、病院へ通院する場合も同じです。
医療費控除の対象となる通院費は、電車代やバス代など、人を運ぶサービスに対して支払う費用が基本です。
そのため、次のような費用は原則として対象外です。
・自家用車のガソリン代
・駐車場代
・自家用車の維持費
・家族が運転したことへの謝礼
自家用車での送迎が介護のために必要であったとしても、税務上は電車代やバス代とは異なる取扱いになりますので、あらかじめ知っておくと安心です。
付き添う家族の交通費は、個別に判断されます
要介護者ご本人が一人で移動することが難しく、家族などの付き添いが必要になることもあります。
病院への通院については、患者の年齢や病状から一人で通院させることが危険な場合、付き添う人の通常必要な交通費も医療費控除の対象になる取扱いがあります。
介護保険サービスを受けるための移動についても、要介護者が一人では安全に施設へ通えず、サービスを受けるために付き添いが必要だった場合には、付き添う人の交通費が医療費控除の対象になる可能性があります。
ただし、介護サービス利用時の付き添う人の交通費については、利用状況や付き添いの必要性による個別判断が必要です。
「家族だから一緒に行った」というだけではなく、本人が一人で移動できないなど、付き添いが必要だった具体的な事情を説明できるようにしておきましょう。
一方、本人は施設の送迎車で移動し、家族が面会や別の用事のために施設へ行った場合には、家族の交通費は医療費控除の対象になりません。
あくまで、本人が介護保険サービスを受けるために必要な付き添いだったかどうかがポイントです。
判断に迷う場合は、申告前に税務署へ確認すると安心です。
具体例で確認しましょう
通所リハビリテーションへ路線バスで通っている場合
要介護認定を受けた母親が、介護老人保健施設の通所リハビリテーションを利用しています。
領収書には、通所リハビリテーションの自己負担額が医療費控除対象額として記載されています。
母親が施設へ通うために路線バスを利用している場合、そのバス代は通常必要な交通費として、医療費控除の対象になると考えられます。
通所介護と訪問看護を同じ月に利用している場合
母親がケアプランに基づき、通所介護と訪問看護を利用しています。
同じ月のサービス利用票に訪問看護が記載され、通所介護の領収書にも医療費控除対象額が記載されている場合、通所介護の自己負担額は医療費控除の対象になります。
その通所介護を受けるために通常必要となった電車代やバス代も、医療費控除の対象になります。
通所介護だけを利用している場合
母親が通所介護を利用していますが、同じ月のケアプランに訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療系サービスが含まれていません。
この場合、原則として通所介護の自己負担額は医療費控除の対象になりません。
そのため、通所介護へ通うための交通費も、原則として対象外です。
自家用車で家族が送迎している場合
母親が医療費控除の対象になる通所リハビリテーションを利用し、家族が自家用車で送迎しています。
この場合でも、自家用車のガソリン代や駐車料金は、原則として医療費控除の対象にはなりません。
確定申告のために準備しておきたい資料
介護保険サービスの交通費を医療費控除に含める場合は、次の資料を準備しておきましょう。
・介護サービス事業者から受け取った領収書
・介護サービスの利用明細書
・ケアプラン
・サービス利用票
・電車やバスの利用日、区間、金額を記録した一覧表
・タクシーの領収書
・タクシーを利用した理由のメモ
・付き添いが必要だった場合は、その事情が分かる記録
・高額介護サービス費などの払戻額が分かる書類
特に、介護サービス事業者の領収書に「医療費控除の対象となる金額」が記載されているかを確認してください。
公共交通機関の交通費は領収書が出ないことも多いため、利用のたびに記録しておくことが大切です。
1年分を確定申告の直前にまとめようとすると、利用日や金額が分からなくなってしまうことがあります。
ノート、表計算ソフト、家計簿アプリなど、続けやすい方法で月ごとに整理しておくと、あとで慌てずに済みます。
高額介護サービス費の払戻しがある場合は差し引きます
介護保険サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合、高額介護サービス費(1か月の自己負担額が上限を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です)として払戻しを受けることがあります。
医療費控除の対象となった介護サービス費について払戻しを受けた場合は、その払戻額を医療費から差し引いて計算します。
支払った自己負担額を、そのまま医療費控除に入れないよう注意しましょう。
ただし、どの費用から差し引くかは、その給付金が何を補うために支払われたものかによって決まります。
交通費について払戻しを受けていない場合に、交通費から一律に高額介護サービス費を差し引く、ということではありません。
誰が医療費控除を受けるのかも確認しましょう
医療費控除を受けられるのは、原則として実際に医療費を支払った人です。
本人の医療費だけでなく、生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費も対象になります。
「生計を一にする」とは、必ずしも同居していることだけを意味しません。
別居していても、生活費や療養費を継続的に負担するなど、家計が実質的につながっている場合があります。
たとえば、母親の介護サービス利用料や交通費を子どもが負担しており、母親と子どもが生計を一にしている場合は、支払った子どもが自分の確定申告で医療費控除を受けられる可能性があります。
一方、母親ご本人が自分の預金から支払っている場合は、原則として母親ご本人の医療費控除として考えます。
誰の口座やクレジットカードから支払ったのか、現金の場合は誰が負担したのかも、あわせて整理しておきましょう。
医療費控除は、支払った金額がそのまま戻る制度ではありません
医療費控除について、「交通費が1万円かかったので、税金が1万円戻る」と思われることがあります。
しかし、医療費控除は、支払った金額がそのまま返金される制度ではありません。
医療費控除額は、原則として次の計算式で求めます。
実際に支払った医療費から、保険金などで補てんされた金額と10万円を差し引きます。
その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。
医療費控除額の上限は200万円です。
計算した医療費控除額を所得から差し引くことで、その人の所得税率などに応じて税金が軽くなります。
そのため、医療費控除の対象となる交通費があっても、年間の医療費全体が基準額を超えなければ、所得税の還付が発生しない場合もあります。
病院代、薬代、歯科治療費、介護サービス費、対象となる交通費などを、ご家族の分も含めて1年間分まとめて確認することが大切です。
まとめ
介護保険の要介護者や要支援者が、通所介護や通所リハビリテーションなどを受けるために支払った交通費は、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になります。
ただし、施設へ通っていることや、要介護認定を受けていることだけで判断するものではありません。
重要なのは、利用した介護保険サービスの自己負担額が医療費控除の対象になっているかどうかです。
自己負担額が医療費控除の対象になっており、そのサービスを受けるために通常必要となった電車代やバス代であれば、交通費も対象になります。
一方、自家用車のガソリン代や駐車料金は、原則として対象になりません。
タクシー代は、公共交通機関を利用することが難しいなど、やむを得ない事情がある場合に限って対象になる可能性があります。
付き添う人の交通費についても、本人が一人で移動できないなど、付き添いの必要性を踏まえた個別判断が必要です。
まずは、介護サービス事業者から受け取った領収書の「医療費控除対象額」を確認しましょう。
分からない場合は、介護サービス事業者やケアマネジャーに、利用しているサービスの正式名称と、医療費控除の対象になる金額を確認してください。
交通費については、利用日、区間、金額、利用目的をその都度記録しておくことが大切です。
早めに整理しておけば、確定申告の直前になって慌てずに済みます。今からでも、領収書やサービス利用票を月ごとにまとめておくと安心です。
※この記事は、2026年7月時点で確認できる国税庁の公表情報をもとに、一般的な取扱いを説明しています。
実際の適用は、利用している介護サービスの種類、ケアプラン、支払状況、交通手段、付き添いの必要性などによって異なる場合があります。
正確な金額や取扱いについては、税務署へご確認ください。






