中国依存を減らすと、なぜモノが高くなるのか

中国依存削減と物価上昇の関係

30秒でわかる、この記事の要点

何が起きている?

世界で軍事費を増やす動きが加速しており、人・モノ・お金の流れが変わりつつあります。

なぜ関係ある?

これまで医療・教育・民間企業に回っていたお金が防衛に向かいやすくなり、物価や金利、税負担に影響してきます。

中小企業や家計にどう響く?

仕入れコストの上昇、金利負担の増加、そして消費の冷え込みという形で、じわじわと経営と生活の両方に影響してきます。

はじめに─「遠い話」と思っていたら、足元の話だった

「ロシアとウクライナ」「米中対立」「防衛費GDP比2%」。
ニュースで聞くたびに、「大変な話だな」と思いながらも、どこか他人事のように感じてしまいます。

でも、税理士として長年、中小企業の経営者と向き合ってきた立場から正直に言うと、こうした「世界の動き」が足元の経営数字に出てくるのは、思っているよりずっと早いものです。

仕入れ単価が少しずつ上がる。
融資の金利条件が変わってくる。
お客様の財布が少し固くなる。
どれも派手な変化ではないのですが、半年、一年と積み重なると、利益を大きく削ります。

今回の記事のテーマは、シンプルに言えばこうです。

「世界が軍事にお金を使う時代になると、モノの値段も金利も上がりやすく、中小企業や家計の負担は増える可能性がある」

怖がらせたいわけではありません。
むしろ、落ち着いて全体像を把握することで、慌てずに備えられるようになってほしいと思っています。

なぜ世界は軍事費を増やしているのか

少し前まで、先進国の多くは「防衛費を抑えながら経済を発展させる」という方向で動いていました。
冷戦が終わり、「貿易で豊かになれる」という考え方が主流だったからです。

ところが状況が変わりました。

ロシアによるウクライナ侵攻。
中国とアメリカの対立の深まり。
中東情勢の不安定さ。
こうした出来事が重なり、各国が「もしものときに備えなければ」と動き始めています。
欧米の多くの国が防衛費の増額を決め、日本もこの流れと無縁ではありません。

これを、テスト勉強に置き換えると少しイメージしやすいかもしれません。

「今まで先生は『小テストはありません』と言っていた。だから、部活や趣味、他の教科に時間を使えた。でも急に『来週から毎週テストをします』と言われたら?」

自由に使えた時間をテスト勉強に回さなければなりません。
安全のためには必要なことかもしれない。
でも他のことに使える時間は、確実に減ります。

国のお金も同じです。
防衛に多く使えば、医療・教育・子育て・社会保障に回せるお金は少なくなりやすい。
これは数字の話であり、良い悪いの話ではありません。

「安い中国製品」に頼らなくなると何が起きるか

軍事費の増加と同時に進んでいるのが、「中国への依存を減らす」という動きです。

半導体、医薬品の原料、電子部品、工業製品……。
これまで中国から大量に安く仕入れていたものを、別の国に切り替えたり、国内で生産するように変えたりする流れが、世界規模で起きています。

この動きは安全保障の面では意味があります。

ただ、経済の面では避けられない副作用があります。

「安さより安全を選ぶ分、値段は上がる」

100円ショップで買えていたものを、近所の職人が作った店で買うイメージです。
品質や安心感はある。
でも100円では買えない。
このコスト増が、あちこちで少しずつ積み重なっていく。
それが今起きていることです。

小さな会社への具体的な影響

「うちは輸出入とは関係ない」と感じる方もいると思います。
でも、影響は意外と身近なところに出てきます。

たとえば、飲食店・食品関連の場合。

食材の産地が変わる。
包装資材の値段が上がる。
厨房機器のパーツが手に入りにくくなる。
こういった形で、じわじわとコストが上昇します。

私が顧問先で実際に見ている例を挙げると、従業員10人ほどの製造業の会社が、仕入れ先の変更を余儀なくされ、同じ素材なのに単価が15〜20%上がったというケースがありました。
売上が変わらないのにコストだけ上がるので、利益率が静かに削れていきます。

小売業・サービス業でも同様です。

最終的に原材料を輸入に頼っているメーカーからの仕入れ価格が上がれば、その分は下流に流れてきます。
「うちの仕入れ先は国内メーカーだから関係ない」と思っていても、そのメーカー自身がコスト高に苦しんでいれば、いずれ値上げの通知が届くことになります。

建設・不動産関連はさらに直接的です。

資材(鉄、木材、樹脂部品など)の価格は、国際的な調達コストの影響を受けやすく、建築コストの上昇が続いています。

軍事費の増加が金利を押し上げる可能性

もう一つ、中小企業と家計の両方に関係する話があります。
金利です。

国が軍事費を増やすとき、税金だけではまかなえないことも多く、国債(国の借金)を増やして対応する場合があります。
借金が増えれば、「それだけの金利を払ってくれないと貸せない」という力学が働きやすくなり、長期金利が上昇しやすくなります。

実際、防衛費を大幅に増やした一部の国では、長期金利が上昇傾向になったという動きが観察されています(各国の状況によって異なるため、一概には言えませんが、こうした関係性は十分に考える価値があります)。

住宅ローンを抱えている方への影響

たとえば、3,000万円を住宅ローンで借りている場合。金利が少し上がるだけで、毎月の返済額は数千円単位で増えることがあります。
毎月の固定費が増えれば、旅行・外食・習い事・趣味などに使えるお金が減ります。

これは家計だけの話ではありません。
「消費が減る」ということは、飲食店、小売店、サービス業にとって客単価や客数の減少につながります。

中小企業の資金調達にも影響します

設備投資のために融資を受ける際、金利が上がれば、返済計画を立て直す必要が出てきます。
事業計画の前提が変わってしまうわけです。
私の事務所でも、金利の動向を見ながら設備投資の時期を再検討しているお客様が増えてきています。

株価が高いからといって安心とは限らない

「でも、株は上がっているじゃないか」という声もあります。

たしかに今、株価が高い局面があります。
インフレで現金の価値が下がりやすい時代には、株などの資産を持つことに合理性はあります。

ただ、株価が高いことと「世界のリスクが消えた」ことは別の話です。

・軍事費の増加による財政圧迫
・金利上昇のリスク
・中国依存を減らすコストの増大
・政治不安

こうした歪みが積み重なっているとすれば、どこかで株価が調整する可能性は否定できません。
「調整」とは、上がりすぎた価格が現実に近づいていく動きのことです。

もちろん、いつそうなるかは誰にも断言できません。
市場は人の感情にも動かされるので、「まだ上がる」と思う人が多ければ、しばらく続くこともあります。

だからこそ大事なのは、株高だけを見て「大丈夫」と思い込まないことです。

・生活費や近い将来必要なお金を投資に回さない
・一度に大きく動かさず、時間を分ける
・リスクのある資産と安定した資産のバランスを持つ

こうした基本が、不安定な時代にはより重要になります。

「防衛費を増やすこと」は悪いことか

誤解のないように付け加えておきます。

防衛費を増やすこと自体が、すべて悪いわけではありません。
国の安全を守ることは、経済活動の前提でもあります。
防衛関連の産業には仕事が増え、AI・通信・宇宙などの技術が民間にも広がることもあります。
インターネットやGPSも、もともとは軍事技術が出発点でした。

問題は、「どう調達するか」「何を削るか」「誰が負担するか」が、私たちの生活や経営に直結しているという点です。

税理士として経営者の方と話すとき、私はよく「数字は嘘をつかない」と言います。
今起きている変化の方向性は、数字を通じて見えてきます。
仕入れ価格、金利、消費動向、財政の動き。
一つひとつは小さなシグナルですが、それが積み重なると、経営判断の前提が変わってきます。

「大きな話だから、自分には関係ない」とは言えない時代に入っているのだと思います。

まとめ:知っておきたい3つのポイント

中国依存を減らすことは安心につながるが、コストは上がりやすくなる

安さより安全を選ぶ分だけ、仕入れ値・製品価格は上昇圧力を受けます。
中小企業にとっては利益率への影響を把握しておくことが大切です。

軍事費の増加は金利や社会保障にも波及しうる

財政への圧力が金利を押し上げ、融資コストや住宅ローンの負担を増やす可能性があります。
また、他の予算が圧迫されれば、社会保障や公的サービスにも影響が出てきます。

株高だけを見て安心するのは危うい

世界に積み重なっている歪みを無視せず、生活費・事業資金・投資を分けて考えることが、いざというときの安定につながります。

今日からできる一歩─10分でできる確認作業

難しいことは何もありません。
まずここから始めてください。

個人の場合

1.スマホのメモを開く
2.「住宅ローン・車のローン・カード分割・奨学金・リボ払い」があれば書き出す
3.それぞれ「金利が上がったら困るか」を○・△・×でつける

経営者・事業主の場合

1.直近3か月の仕入れ単価の変化を確認する
2.融資がある場合、金利タイプ(固定か変動か)を確認する
3.主な仕入れ先が「どこの国で作っているか」を、一度だけ確認してみる

これだけでいいのです。

世界のニュースをすべて追う必要はありません。
でも、自分の家計や会社が「今の変化に対してどのくらい敏感か」を知っておくことは、落ち着いた判断の土台になります。

大きな流れを正確に予測しようとする必要はありません。
ただ、「こういう方向に動いている可能性がある」と頭の片隅に置いておくだけで、情報の受け取り方は変わります。

そして、変化が来たときに慌てず、次の一手を考えられるようになります。
それが、今できる一番現実的な備えだと私は思っています。

本記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。