施設に1週間入所した場合の自己負担額は、医療費控除の対象になりますか?

施設短期入所の医療費控除対象判定

介護保険の訪問サービスや通所サービスを利用されている方が、事情によって施設へ短期間入所することがあります。

たとえば、家族が数日間家を空けなければならない場合や、介護をしている家族がいったん休養を取るため、あるいはご本人の体調管理のために、1週間ほど施設を利用するケースです。

このようなとき、多くの方が気になるのが「施設に支払った自己負担額は、確定申告の医療費控除に入れていいのだろうか」という点ではないでしょうか。

結論からお伝えすると、短期入所サービスの内容や利用状況によって、医療費控除の対象になる場合があります。

ただし、「介護保険サービスを利用したから全部対象」とは言い切れません。
利用したサービスの種類、ケアプランの内容、領収証の記載内容、介護保険からの給付や払い戻しの有無などを、ひとつひとつ確認する必要があります。

この記事では、税金や介護保険に詳しくない方にも分かりやすいよう、確認すべきポイントを整理してお伝えします。

まず確認したいのは「どのサービスを利用したか」です

「施設に入所した」といっても、税務上は内容をきちんと区別して考える必要があります。

たとえば、次のようなサービスがあります。

・介護老人保健施設・介護医療院などへの入所(いわゆる施設サービス)
・短期入所療養介護(医療系のショートステイ)
・短期入所生活介護(生活介護系のショートステイ)
・訪問サービスや通所サービスを短期入所に振り替えて利用するケース

同じ「施設に泊まった」「ショートステイを利用した」という感覚でも、サービスの名称や内容によって、医療費控除の扱いが変わることがあります。

まずは手元にある領収証、サービス利用票、ケアプランを見て、実際に利用したサービスの名称を確認するところから始めましょう。

短期入所サービス(ショートステイ)とは

短期入所サービスとは、一般に「ショートステイ」と呼ばれるサービスです。
自宅で介護を受けている方が、短期間だけ施設に入所して、介護や機能訓練、日常生活のサポートなどを受けるものです。

次のような場面でよく利用されます。

・家族が数日間家を空けるため、本人が施設を利用する
・介護をしている家族の負担を軽くするため、数日から1週間ほど利用する
・本人の体調や生活状況を見ながら、自宅での生活を続けるために一時的に利用する

ここで注意したいのは、ショートステイにも種類があるということです。

国税庁の整理によると、短期入所療養介護は医療費控除の対象となる居宅サービスのひとつとして位置づけられています。
一方、短期入所生活介護は、医療系サービスとあわせて利用している場合に医療費控除の対象となるサービスとして整理されています。

つまり、「ショートステイだから必ず対象になる」とは言い切れません。
どの種類のショートステイなのか、また医療系サービスとあわせて利用しているのかを確認することが大切です。

訪問・通所サービスを短期入所に振り替えた場合

介護保険では、訪問サービスや通所サービスを利用している方が、事情によって短期入所サービスへ振り替えて利用するケースがあります。

このような「振替えショートステイ」についても、国税庁は医療費控除の取扱いを示しています。
支払い方法(いったん全額を自己負担する償還払いや、受領委任方式など)によって、確認が必要な書類も変わってきます。
たとえば、領収証のほかに「振替措置決定通知書」などが必要になることがあります。

ただし、この取扱いはやや専門的で、市区町村ごとに手続きや支払方法が異なる場合もあります。

振替利用をした場合は、次の3点を確認してください。

・利用したサービスが何か
・医療費控除の対象額が領収証などに記載されているか
・市区町村から通知書や証明書が発行されているか

特に、後日、市区町村から介護保険分の給付を受ける場合(償還払い)は、最終的に自分が実際に負担した金額をもとに医療費控除を考えます。

医療費控除の対象になるのは「最終的に自分が負担した金額」です

医療費控除を計算するときに大切なのは、実際に最終的に自分が負担した金額を確認するということです。

たとえば、いったん全額を支払ったあと、市区町村から介護保険分が戻ってくる場合があります。
この場合、支払った全額をそのまま医療費控除に計上するのではなく、戻ってきた金額を差し引いた後の自己負担額を確認します。

国税庁の説明でも、高額介護サービス費などの払い戻しを受けた場合には、その金額を医療費の金額から差し引いて計算するとされています。

「払い戻しがあったかどうか」も、申告前に必ず確認しておきましょう。

食費・居住費・日用品費はどうなるのか

施設やショートステイを利用すると、介護サービスそのものの費用だけでなく、食費、居住費(滞在費)、日用品費などがかかることがあります。
ここも、誤解が起きやすいところです。

介護老人保健施設や介護医療院などの介護保険施設では、介護費・食費・居住費にかかる自己負担額が医療費控除の対象になるとされています。

一方、日常生活費や特別なサービス費用など、対象にならないものもあります。

短期入所サービスの場合も、領収証に「医療費控除の対象となる金額」が記載されていることがあります。
確定申告では、領収証の総額ではなく、その記載金額を確認するのが基本です。

確定申告で用意しておきたい書類

医療費控除を受けるときは、確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付します。
以前は領収書を申告書に添付する方法がありましたが、現在は原則として、領収書そのものを提出する必要はありません。

ただし、領収書は必ず手元に保存してください。

医療費控除の明細書の内容を確認するため、税務署から提示や提出を求められることがあります。
領収書は、確定申告期限から5年間、自宅で保存しておく必要があります。

介護保険サービスについては、次の書類を手元に残しておくと安心です。

・施設・事業者から発行された領収証
・医療費控除の対象額が確認できる書類
・サービス利用票
・ケアプラン
・市区町村からの支給決定通知書・振替措置決定通知書
・介護保険からの払い戻し額が分かる書類

これらをすべて申告書に添付するという意味ではありません。
大切なのは、「明細書に記入した内容を、あとで説明できる状態にしておくこと」です。

よくある勘違い

「介護サービスなら全部対象になる」と思ってしまう

介護保険サービスであっても、すべてが医療費控除の対象になるわけではありません。
サービスの種類によって、対象になるもの・医療系サービスとあわせて利用した場合に対象になるもの・対象外になるものがあります。

領収証の合計額をそのまま入れてしまう

領収証の総額には、医療費控除の対象にならない費用が含まれていることがあります。
確定申告では、領収証に記載された「医療費控除の対象額」を確認しましょう。

払い戻しを受けた金額を差し引かない

介護保険や高額介護サービス費などで、あとから戻ってきた金額がある場合は、その分を差し引いて考えます。
医療費控除は、最終的に自分が負担した金額をもとに計算するためです。

「施設に入った」という事実だけで判断してしまう

税務上は、「どの施設で・どのサービスを受けたのか」が重要です。
「施設に1週間入った」という事実だけでは、医療費控除の対象になるかどうかは判断できません。

税務署に相談した方がよいケース

次のような場合は、自己判断せず、税務署、または市区町村の介護保険担当窓口に確認すると安心です。

・領収証に医療費控除の対象額が記載されていない
・短期入所生活介護が、医療系サービスとあわせて利用されているか分からない
・訪問・通所サービスから短期入所へ振り替えて利用した
・いったん全額を支払い、あとから介護保険分の給付を受けた
・市区町村から支給決定通知書や振替措置決定通知書が届いている
・食費・居住費・滞在費・日用品費などの区分が分からない
・家族の分の医療費と合算してよいか迷っている
・過去の確定申告を修正したい

特に、振替利用や払い戻しがある場合は、書類の見方が少し複雑になります。
早めに確認しておくと、申告時に慌てずにすみます。

まとめ

施設に1週間ほど入所した場合の自己負担額は、利用したサービスの内容によって、医療費控除の対象になることがあります。

ただし、判断のポイントは「施設に入ったかどうか」だけではありません。次の点を順番に確認していきましょう。

・利用したサービスの名称は何か
・短期入所療養介護か、短期入所生活介護か
・医療系サービスとあわせて利用しているか
・領収証に医療費控除の対象額が記載されているか
・介護保険などから払い戻しを受けていないか
・市区町村から通知書や証明書が出ていないか
・医療費控除の明細書に記入できる資料がそろっているか

確定申告では、領収書をそのまま提出するのではなく、原則として「医療費控除の明細書」を添付します。
領収書や通知書は、あとで確認できるように5年間保存しておきましょう。

介護保険サービスの医療費控除は、名称が似ているサービスでも取扱いが異なることがあります。
迷ったときは、領収証・サービス利用票・ケアプラン・市区町村からの通知書をそろえたうえで、税務署にご相談ください。

この記事は、国税庁が公表している令和7年4月1日現在の情報をもとに作成しています。
実際の適用は、利用したサービスの種類・ケアプランの内容・領収証の記載・市区町村の取扱い・払い戻しの有無によって異なります。
申告の際は、最新の公的情報とご自身の書類をご確認ください。