贈与税を払っていても、相続税が関係することがあります

贈与税申告後の相続税との関係

「贈与税の申告もしたし、税金も払った。だから、もう相続税とは関係ないですよね」

このように思われる方は少なくありません。
ですが、実際にはそうとは限りません。

亡くなる前の一定期間にした贈与は、相続税の計算でもう一度見直されることがあるからです。
つまり、贈与としていったん完了していても、相続の場面では「前もって渡した財産」として扱われる場合があるのです。

なぜ、このようなルールがあるのでしょうか

理由はシンプルです。
亡くなる直前の贈与によって、相続税を不当に少なくすることを防ぐためです。

もしこのルールがなければ、相続の直前に家族へ財産を移すことで、本来かかるはずの相続税を軽くできてしまう場合があります。
そこで税法では、亡くなる前の一定期間の贈与は、「相続財産の前渡し」として考えることになっています。

たとえるなら、月末の締め日の前に別の口座へお金を移しても、一家全体の資産として見られる、というイメージです。

「贈与税も払ったのに、また相続税?」という疑問について

ここでよくあるのが、
「贈与税を払ったのに、さらに相続税までかかるのですか?」
という疑問です。

たしかに、そのまま聞くと二重に税金がかかるように感じます。
ただし、そこはきちんと調整されます。

流れとしては、次のとおりです。

・過去の贈与額を相続財産に足して、相続税を計算する
・すでに支払った贈与税は、相続税から差し引く

つまり、贈与税として払った分がそのまま無駄になるわけではなく、相続税の計算の中で精算される仕組みです。

2024年の改正で、今後は対象期間が延びます

ここは特に誤解しやすいところなので、順番に整理します。

法改正そのものは2024年1月から始まっています。
ただし、だからといって、すぐに加算対象の期間が7年になったわけではありません。
実際に3年を超える贈与が加算対象に入ってくるのは、2027年以降に始まる相続からです。

そのため、2024年・2025年・2026年中に亡くなった場合は、これまでどおり「亡くなる前3年以内」の贈与が対象です。

大まかには、次のように考えると分かりやすいです。

・2026年中までの相続 → 亡くなる前3年以内の贈与が対象
・2027年〜2030年の相続 → 3年を超える部分も、段階的に加算対象に入ってくる
・2031年以降の相続 → 亡くなる前7年以内の贈与が対象

つまり、
「改正は2024年から始まったが、加算期間が実際に広がり始めるのは2027年から」
と理解すると、混乱がありません。

なお、延長された期間のうち3年を超える部分については、合計100万円までは加算しなくてよいという調整も設けられています。

誰に贈与したかで、扱いが変わることがあります

もう一つ大切なのは、「誰に贈与したか」です。

この加算の対象になるのは、原則として、相続や遺言で財産を受け取る方です。

たとえば、

・息子さんへの贈与 → 相続人にあたるため、加算対象になりやすい
・お嫁さんへの贈与 → 通常は相続人ではないため、原則として加算対象外

という違いがあります。

そのため、お嫁さんに贈与したお金は、原則として相続財産に足し戻されません。

ただし、遺言によってお嫁さんも財産を受け取る場合は、扱いが変わることがあります。

「申告したから安心」ではなく、「相続まで見すえて考える」ことが大切です

生前贈与は、贈与税の申告をして終わり、とは限りません。
相続が起きたときに、あらためて見直されることがあるからです。

大切なのは、「申告したかどうか」だけでなく、「誰に、いつ贈与したか」まで含めて考えること。
目の前の贈与税だけでなく、将来の相続税まで見すえた視点が、長い目で見たときの安心につながります。

まとめ

贈与税をきちんと申告して納めていても、亡くなる前の一定期間の贈与は、相続税の計算で加算されることがあります。
これは、相続直前の贈与によって相続税を不当に減らすことを防ぐためのルールです。

今回の改正は2024年から施行されているものの、加算期間が実際に広がり始めるのは2027年以降の相続からです。
この点を混同しないことが、とても大切です。