障害者控除対象者認定書は、所得税の「更正の請求」にも使えるのか

「所得税法施行令第10条」とは?障害者控除対象者認定書で所得税の更正の請求ができる理由

所得税法施行令第10条から、認定書の意味と手続きの流れを整理します

市区町村から「障害者控除対象者認定書」の交付を受けたとき、「この書類は住民税だけでなく、所得税にも使えるのだろうか」「すでに確定申告を済ませているが、あとから所得税を訂正してもらう『更正の請求』(納めすぎた税金を、あとから正しい金額に直してもらう手続きです)をしてもよいのだろうか」という疑問を持たれる方は少なくありません。

とくに、認定書の本文に、「所得税法施行令第10条に定める障害者として認定する」という趣旨の文言が記載されている場合、「これは所得税の障害者控除にも直接関係するのではないか」と考えるのは、とても自然なことです。

結論から申し上げますと、その理解で基本的に問題ありません。
例えば、令和7年分について所得税法施行令第10条(所得税法という法律の内容を、より具体的に定めた政令〈国が定めるルール〉です)に定める障害者として市町村長等が認定している書類であれば、それは所得税の障害者控除の対象者であることを示す重要な根拠資料になります。
そして、当初の令和7年分確定申告で障害者控除を適用しておらず、その控除を追加することで所得税額が減る、または還付額が増えるのであれば、所得税及び復興特別所得税について更正の請求を行うことが考えられます。

以下では、税務署がどのような視点で認定書を見るのかも交えながら、条文と国税庁の説明を確認しつつ、順を追って整理していきます。

「所得税法施行令第10条」とは、どのような決まりなのか

今回の認定書に記載されている「所得税法施行令第10条」は、所得税法上の障害者および特別障害者に当てはまる人の範囲を定めた規定です。
つまりこの条文は、単なる介護制度上の認定や福祉制度上の認定を定めたものではなく、所得税の障害者控除において「誰を障害者として扱うか」を決める、税法上のルールなのです。

国税庁も、所得税の障害者控除について対象者の範囲を説明しており、その中には「精神または身体に障害のある65歳以上の人で、障害の程度が一定の知的障害者または身体障害者に準ずるものとして、市町村長等の認定を受けている人」が含まれています。
この「市町村長等の認定を受けている人」という部分が、今回の障害者控除対象者認定書と直接つながる部分です。

今回のケースで重要なのは「第10条第1項第7号」

より正確にいうと、今回のような高齢の方に関する障害者控除対象者認定に関係するのは、所得税法施行令第10条第1項第7号です。
この規定では、65歳以上の方で、精神または身体に障害があり、その障害の程度が一定の知的障害者または身体障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人を、所得税法上の「障害者」の範囲に含めています。

流れにすると、次のようなイメージです。

65歳以上で一定の障害の状態にある方について、市町村長等が障害の程度を認定すると、所得税法施行令第10条第1項第7号に該当し、所得税法上の「障害者」として扱われ、障害者控除の対象になる、という関係です。
今回の認定書は、この流れのうち「市町村長等による認定」を証明する書類にあたります。

認定書に条文が明記されていることの意味

今回の認定書で重要なのは、単に「障害者に準ずる状態です」とだけ書かれているのではなく、「所得税法施行令第10条に定める障害者として認定する」という趣旨まで明記されている点です。
これは税務上、かなり大きな意味を持ちます。

たとえば、書類が単なる要介護認定通知書や医師の診断書だけであれば、それだけで所得税法上の障害者に該当するとは限りません。
診断内容が税法上のどの区分にあたるのか、あらためて確認が必要になるからです。
しかし今回の書類は、まさに税法上の障害者控除を前提として、市町村が条文に基づいて認定した書類です。
税務署の担当者から見ても、「令和7年分の障害者控除の適用にあたり、所得税法施行令第10条に定める障害者として市町村が認定している」と読める書類になっています。
したがって、「住民税では使えるが、所得税には使えない」という性質の書類ではありません。

国税庁も、市町村長等の認定を所得税の障害者控除の対象としています

国税庁の説明を確認しても、この点は明確です。国税庁は、障害者控除の対象となる人のひとつとして、「精神または身体に障害のある65歳以上の人で、障害の程度が知的障害者または身体障害者に準ずるものとして、市町村長等の認定を受けている人」を挙げています。
また、国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内でも、市町村長等の認定を受けた65歳以上の方を所得税上の障害者として取り扱うことが説明されています。
市町村長等の認定と所得税の障害者控除は、このように明確につながっています。

「要介護認定」と「障害者控除の認定」は、別のものです

ここは、とても誤解されやすいポイントです。
高齢の方の場合、「要介護認定を受けているから、障害者控除も使えるはずだ」と思われることがあります。
しかし、要介護認定(介護保険のしくみの中で、どのくらい介護が必要かを判定するもの)と、税法上の障害者認定は、別の制度です。

国税庁も、要介護認定を受けていることだけで、直ちに障害者控除の対象になるわけではなく、市町村長等から所得税法施行令第10条に基づく認定を受ける必要があることを説明しています。
つまり、「要介護だから障害者控除」ではなく、「市町村長等から税法上の障害者に準ずるものとして認定されたから障害者控除」というのが正しい整理です。
今回のケースでは、その認定書が実際に発行されていますので、この点はかなりしっかりとした根拠になります。

今回の認定区分は「一般障害者」にあたると考えられます

今回確認した認定書では、「知的障害者(軽度・中度)に準ずる」という、一般の障害者区分に丸印が付されています。
一方で、「知的障害者(重度)に準ずる」「身体障害者(1級・2級)に準ずる」「ねたきり高齢者」といった、特別障害者にあたる区分には丸印が付いていません。
したがって、今回の認定書から判断する限り、一般障害者として取り扱うのが妥当と考えられます。

所得税における一般障害者の障害者控除額は27万円です。
特別障害者であれば40万円、一定の同居特別障害者であれば75万円ですが、今回の認定書はそこには該当しないと読むのが自然です。

「令和7年分」という記載が重要な理由

今回の認定書には「令和7年分」と明記されています。
この点も、所得税の更正の請求を考えるうえで大切なポイントです。
所得税の障害者控除は、その年について障害者に該当するかどうかを見て判断します。
したがって、令和7年分の所得税について更正の請求をするのであれば、令和7年分について障害者と認定されていることが必要です。
今回の認定書は、この点をしっかり満たしています。

発行日が翌年になっていても、心配はいりません

今回の認定書は令和8年に発行されています。
そのため、「令和8年に発行された書類を、令和7年分の所得税に使ってよいのだろうか」と疑問に思われるのも自然なことです。

しかし重要なのは、いつ発行されたかではなく、どの年分についての認定なのか、という点です。
今回の書類には、明確に「令和7年分」と記載されています。
つまり、「令和7年分について障害者に該当することを証明する認定書が、令和8年になって交付された」という整理であり、「令和8年になって初めて障害者になった」という意味ではありません。
ですから、発行日が翌年であることだけを理由に、令和7年分所得税の障害者控除が否定されるものではないと考えられます。

所得税の更正の請求をしてよいのか

ここが今回の本題です。
結論としては、当初の令和7年分確定申告で障害者控除を適用しておらず、その控除を追加することで所得税額が減る、または還付額が増えるのであれば、更正の請求をして差し支えないと考えられます。

国税庁は、更正の請求について、税額を多く申告していた、還付金額が少なかった、純損失等の金額が少なかった、といった場合に行う手続きであると説明しています。
今回のケースで、障害者控除27万円を入れ忘れていたのであれば、所得控除額(税金を計算する前の所得から差し引ける金額のことです)が本来より少なく計算され、その結果、課税される所得金額と所得税額が本来より多くなっていた可能性があります。
そのため、更正の請求によって正しい税額に直す、という処理が考えられます。

ただし、「認定書があれば必ず更正の請求ができる」わけではありません

ここは注意が必要な点です。
障害者控除27万円を追加できるとしても、最終的な所得税額や還付額が変わらない場合には、更正の請求が認められないことがあります。
実務上は、所得控除の追加などがあっても、最終的な税額や純損失の金額に変化がない場合には、更正の請求ができないとされています。

たとえば、当初の申告時点ですでに所得税額が0円であり、障害者控除を追加しても所得税額が0円のままで、還付額も変わらないという場合には、所得税の更正の請求はできない可能性があります。
ですから、まず確認していただきたいのは、「障害者控除27万円を追加したことで、税額または還付額に本当に差が出るかどうか」です。
この点は、実際の確定申告の内容を見ながら、税務署にご確認いただくことをおすすめします。

更正の請求の理由は、こう書くと伝わりやすくなります

今回のケースであれば、税務署にとって分かりやすいのは、次のような文言です。

「令和7年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告において、障害者控除の適用が漏れていたため、所得控除額が過少となり、その結果、課税される所得金額及び税額が過大となっていました。浜松市から令和7年分の障害者控除対象者認定書の交付を受け、所得税法施行令第10条第1項第7号に規定する障害者に該当することが確認されたため、一般障害者に係る障害者控除27万円を適用して更正の請求をするものです。」

この書き方であれば、何が漏れていたのか、その結果何が間違っていたのか、何を根拠に訂正するのか、どの控除を追加するのか、という点が一通り伝わります。

認定書は、更正の請求書に添付しましょう

国税庁は、更正の請求にあたって、請求の理由の基礎となる事実を証明する書類を添付するよう求めています。
今回の請求理由の基礎となる事実は、「令和7年分について所得税法上の障害者に該当していた」ということですので、その事実を証明する中心的な資料である「令和7年分 障害者控除対象者認定書」は、更正の請求書に添付するのが適切です。
単なる参考資料ではなく、更正の請求の根拠資料として位置づけるとよいでしょう。

税務署は、認定書のどこを確認するのか

税務署の担当者が認定書を確認する際は、主に次のような点を見ていると考えられます。
対象となる年分が令和7年分であるかどうか、更正の請求で障害者控除の対象としている人と認定対象者が一致しているかどうか、一般障害者か特別障害者かという区分、所得税法施行令第10条に基づく認定であるかどうか、そして市町村長等による正式な認定であるかどうか、といった点です。
今回の認定書は、このうち重要な部分がかなり明確に記載されている書類だといえます。

たとえば、単なる病院の診断書であれば、「この診断内容が税法上の障害者に該当するかどうか」という判断が別途必要になります。
しかし今回の書類は、市町村が税法上の要件に基づいてすでに認定したものですので、税務署としても内容を確認しやすい資料になっています。

住民税だけに使える書類ではありません

今回の認定書には、所得税法施行令だけでなく地方税法施行令も記載されています。
したがって、所得税と住民税の両方を対象とした認定書と理解するのが自然です。
もし住民税だけを対象とした書類であれば、所得税法施行令第10条をわざわざ根拠として記載する意味は薄いはずです。
今回の書類は、所得税と住民税の双方について、障害者控除の対象者であることを証明する役割を持っていると考えられます。

所得税では27万円、住民税では26万円です

今回の認定区分が一般障害者であることを前提とすると、所得税の障害者控除額は27万円です。
一方、浜松市の市民税・県民税では26万円となっています。
この違いは、所得税と住民税でそれぞれ制度が定められていることによるものです。
所得税27万円、住民税26万円、というかたちで整理しておくとよいでしょう。

27万円がそのまま戻ってくるわけではありません

ここも、よく誤解されやすい点です。
所得税の障害者控除27万円は、税額から27万円をそのまま差し引く制度ではありません。
27万円は「所得控除」、つまり税金を計算する前の所得(課税所得といいます)を27万円分減らすしくみです。

たとえば、課税所得が200万円だった場合、200万円から27万円を差し引いた173万円をもとに税額を計算し直すことになります。
その結果として所得税額が減る、という流れです。
したがって、実際にいくら還付されるかは、適用される税率や、他に受けている所得控除、税額控除、すでに源泉徴収されている税額、復興特別所得税などによって変わってきます。
あくまで「所得を減らす仕組み」であるという点をご理解いただければと思います。

更正の請求の前に、まず当初の申告書を確認しましょう

更正の請求をする前に、令和7年分の当初の確定申告書の内容を必ず確認してください。
確認していただきたいのは、「障害者控除が本当に反映されていないか」という点です。
もし、すでに障害者控除27万円が計上されているのであれば、同じ控除をもう一度追加することはできません。

当初申告で障害者控除が0円だった場合、一般障害者が1人という前提であれば、更正前は0円、更正後は27万円、という訂正になるのが基本的な考え方です。

ご本人以外が控除を受ける場合は、あわせて確認が必要です

障害者控除対象者認定書は、認定を受けたご本人が税法上の障害者に該当することを証明するものです。
ただし、障害者控除を「誰が受けられるか」は、また別の問題になります。
国税庁では、納税者ご本人、生計を共にする配偶者(同一生計配偶者といいます)、扶養している親族(扶養親族といいます)が障害者である場合に、一定の要件のもとで障害者控除を受けられるとしています。

認定対象者ご本人の確定申告で控除を受ける場合は比較的シンプルですが、お子さまや配偶者の方が障害者控除を受ける場合には、扶養関係や生計を共にしているかどうかという要件もあわせて確認する必要があります。

更正の請求には期限があります

更正の請求には期限があります。
国税庁によれば、通常の更正の請求は、原則として法定申告期限(確定申告書を提出すべき期限のことです)から5年以内とされています。
令和7年分の所得税について、2026年8月時点で手続きをするのであれば、通常はこの期間内におさまりますので、期限という意味では、現時点で特段問題になる時期ではありません。

今回の認定書から導ける整理

今回の認定書には、「所得税法施行令第10条に定める障害者として認定する」という趣旨が明記されています。
したがって、所得税の障害者控除にも使用できる認定書と判断してよいと考えられます。
そして認定区分を見る限り、一般障害者として、所得税の障害者控除27万円を適用することが考えられます。

そのうえで、当初の令和7年分確定申告で障害者控除を適用していなかったのであれば、所得税額が減る、または還付額が増えることを条件として、更正の請求を行うことができると整理できます。
今回の認定書には、令和7年分と明記されていること、一般障害者区分に該当していること、所得税法施行令第10条が根拠として記載されていること、市町村長等による正式な認定書であること、という事情がそろっていますので、更正の請求を進める方向で検討して差し支えないと考えられます。

その際、今回の「令和7年分 障害者控除対象者認定書」は、更正の請求理由の基礎となる事実を証明する資料として、あわせて添付いただくことをおすすめします。

ご確認とご相談のお願い

この記事は作成時点の情報に基づいて整理したものです。障害者控除の金額や更正の請求の期限、必要書類の取扱いなどは、その方の状況や、確定申告の当初の内容によって判断が異なる場合があります。
とくに、実際に更正の請求によって税額や還付額がどの程度変わるのかは、お手元の確定申告書の内容を拝見しないと正確にはお伝えできません。
実際の適用にあたっては、個別の判断が必要になりますので、正確な金額やお手続きの進め方については、お手数ですが最寄りの税務署に一度ご確認いただければと思います。