「いつでも病院へ」が当たり前じゃなくなる? ─ 医療を長く続けるために知っておきたいこと

「いつでも病院へ」が当たり前じゃなくなる?医療の持続可能性を考える

一言でいうと何の話?

医療は大事。でも、お金も人手も無限には出せません。
だから「どう続けていくか」を決め直す時期に来た、という話です。

30秒でわかる要約

何が起きた?

日本の病院で赤字が広がり、医療の仕組みが「限界に近い」と言われ始めています。

なぜ大事?

医療は「質・安さ・かかりやすさ」を全部いっぺんに満たすのが難しく、今のままだと無理が出ます。

生活にどう関係する?

受診のルールや負担の形が変わったり、「必要な人に届きにくい」場面が増えるかもしれません。

結論を先に一言で

「医療を守るために、使い方と仕組みを”現実に合ったサイズ”に調整する必要がある」 ─ これが今日のポイントです。

何が起きた?

大きく分けて、2つのことが起きています。

① 病院の赤字が広がっている

厚生労働省(国の役所のひとつ)のデータによると、一般病院の多くが赤字になっています。
国公立・私立を合わせた赤字額は過去最大級。
都市部でも「診療を休みます」「閉院します」というニュースが出てきました。

② 医療費は長い目で見ると大きく増えた

国民医療費(国全体で医療に使ったお金)は、昔よりかなり膨らんでいます。
一方で、平均寿命も伸びてきました。
医療が発達して助かる人が増えた結果、使うお金も増えた、という構図です。

なぜ起きた?(背景)

医療が苦しくなっている理由は、実はシンプルです。

・高齢の人が増える → 医療を使う人が増えやすい
・医療技術が進む → 助かる人が増える一方、できることも増えて費用がかさみやすい
・「気軽に受診できる仕組み」 → 良い面もあるけれど、利用が増えやすい

日本の医療は「いつでも、どこでも、だれでも」受けられることを目指して広がってきました。
これはとても良いことです。
ただ、良いことには「支える側のコスト」がついてきます。

ここで例え話です。

たとえ①:スマホの”全部盛りプラン”問題

スマホの契約で「通信は無制限」「端末は最新」「月額は安い」を全部やろうとすると、どこかに無理が出ますよね。
通信会社も商売なので、全部タダ同然では続けられません。

医療も似ています。
・いつでもすぐ診てもらえる(アクセス)
・高いレベルの医療(質)
・自己負担は軽い(コスト)

この3つを全部ずっと維持するのは、やっぱり難しい。
どこかでバランスを取る必要が出てきます。

さらに、日本の制度は「昔の決め方」に引っぱられやすい面があります。
一度できた仕組みは、関わる人が多いほど変えにくい。
病院、医師会、製薬会社、患者、国……関係者がたくさんいるので、「みんな納得できる改革」はなかなか進みません。

生活への影響(良い面/注意点)

ここは不安をあおらず、落ち着いて整理しますね。

良い面(守りたい価値)

・日本の医療は、困ったときに受診しやすい。これは世界的に見ても恵まれた環境です。
・早く診てもらえると安心できる。
・平均寿命が伸びてきた背景には、医療の充実も大きく関わっています。

注意点(このままだと起きうること)

・病院の赤字が続くと、地域や診療科によっては「提供できる医療が細る」可能性があります。
・受診しやすいほど、軽い症状でも病院に来る人が増えやすい。すると、本当に必要な人の順番が遅れることもありえます。

ここで大事な視点

「医療を削る」のではなく、「医療を続けるために、使い方を適正に寄せる」という考え方です。
今あるものを守るために、使い方を見直す。
これは家計と同じ発想ですね。

事例(身近な例で考える)

たとえ②:家計の”サブスク増えすぎ”問題

家計で、動画配信・音楽アプリ・ゲーム・宅配サービスなどを「全部ちょっとずつ」契約していると、1つ1つは月500円〜1,000円でも、合計すると重くなります。気づいたら月5,000円、1万円……ということも。
医療も同じ構造です。
1回の受診や検査は数百円〜数千円の自己負担でも、国全体で積み上がると何十兆円になります。
だから「本当に必要なときに、必要な医療にお金と人手を回す」という発想が効いてきます。

たとえ③:学校の保健室を想像してみる

保健室は、ケガや体調不良の人を助ける大事な場所です。
でも、毎日「ちょっと眠い」「なんとなくだるい」だけで大勢が来たら、本当に熱が高い人がベッドで休めないかもしれません。
病院も同じで、アクセスが良いほど、使い方のルールとマナーが大事になります。
「行けるから行く」ではなく、「必要だから行く」という意識が、結果的にみんなの医療を守ります。

まとめ(大事なポイント3つ)

・病院の赤字が広がり、医療の仕組みは限界に近づいている。
・医療は「質・安さ・かかりやすさ」の全部を同時に満たすのは難しい。
・だからこそ、国の改革だけでなく、使う側も”適正な使い方”に寄せることが、医療を長く守る力になる。

今日からできる一歩

所要時間:10分
大げさな準備はいりません。今日できるのは、「医療の使い方」をほんの少し整えることです。

ステップ1 → 2 → 3 でやってみてください。

1. 家の薬箱と体温計があるか確認する(3分)
風邪のひき始めや軽い頭痛なら、市販薬で様子を見るのも選択肢です。
薬箱の中身が古くなっていないかもチェック。
2. かかりつけ先を「1つ決めてメモ」する(3分)
近所の内科、子どもがいれば小児科、歯科など。
電話番号も一緒にメモしておくと、いざというとき慌てません。
「どこに行こう?」と迷う時間が減るだけでも、気持ちがラクになります。
3. 「受診の前に見るチェック」を1行メモしておく(4分)
例:「高熱が続く/息が苦しい/出血が止まらない → すぐ受診」
例:「軽い風邪っぽい → 水分・休養・様子見も選択肢」

冷蔵庫やスマホのメモに貼っておくと、判断に迷ったとき助けになります。

これだけでも、「必要な人に医療が届く」側に一歩寄せられます。
医療を長く保つのは、制度の話であり、同時に私たちの使い方の話でもあります。
難しく考えず、「自分にできる小さな一歩」から始めてみてください。