付き添い家族の食事代は医療費控除できる?子どもの入院でかかった費用を分かりやすく解説
子どもが病気やけがで入院すると、治療費や入院費だけでなく、思っていた以上にさまざまな費用がかかります。
特に小さなお子さんの場合、一人で入院生活を送ることが難しく、お父さんやお母さんが病院に泊まり込んで付き添うこともあるでしょう。
たとえば、子どもが盲腸で入院し、手術を受けたとします。
お母さんが一週間ほど病院に付き添い、その間、お母さんが使う貸しふとんの料金や食事代がかかったとします。
こうした費用も、医療費控除に入れることができるのでしょうか。
「子どもが入院しなければ発生しなかった費用なのだから、医療費として認められるのでは?」と思われる方も多いかもしれません。
家計という視点から見れば、確かにお子さんの入院が原因で増えた支出です。
しかし、税金の計算では、「病気や入院に関係して支払ったお金なら、すべて医療費控除になる」というわけではありません。
結論からいうと、親が入院中の子どもに付き添った場合、その親自身の食事代は、原則として医療費控除の対象にはなりません。
国税庁も、親族が患者に付き添った場合のその親族の食事代について、医療費控除の対象にはならないと明確に示しています。
また、付き添った親が使う貸しふとん代についても、通常は医療費控除に含めないと考えるのが適当です。
ただし、「付き添った親族の貸しふとん代」そのものについて、現在の国税庁の質疑応答で直接その取扱いを示した事例は確認できません。
そのため、食事代とまったく同じように「国税庁が明確に対象外としている」と説明するのではなく、医療費控除の一般的な考え方から判断する必要があります。ここは、少し丁寧に見ていきましょう。
医療費控除では「入院に関係したか」だけでは判断しません
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に、自分自身や、生計を一にする(日常の生活費を同じお財布でまかなっている)配偶者・親族のために一定の医療費を支払った場合、その金額をもとに計算した一定額を所得から差し引くことができる制度です。
ここで重要なのが、「その支出が病気や入院をきっかけに発生したかどうか」だけではない、ということです。
医療費控除の対象になるためには、その費用の内容が、税法上「医療費」として認められるものである必要があります。
そのため、「子どもが入院しなければ払わなかったお金だから」という理由だけで、すべてを医療費控除に含めることはできません。
判断するときには、誰のための費用なのか、そして診療や治療、療養のためにどのような目的で支払った費用なのかを見ることが大切です。
入院した子どもの食事代と、付き添った母親の食事代は扱いが違います
まず、分かりやすいのが食事代です。
子どもが入院し、病院から通常の入院食が提供された場合、その食事代は一定の範囲で医療費控除の対象になります。
国税庁は、病院に支払う入院患者本人の通常必要な食事代について、入院費用の一部であることから医療費控除の対象になるとしています。
一方、付き添っているお母さんが病院の売店で買ったお弁当や、病院の食堂で食べた食事の代金はどうでしょうか。
こちらは、原則として医療費控除の対象にはなりません。
国税庁は、「親族が付き添う場合、その親族の食事代は医療費控除の対象にならない」という取扱いを明確にしています。
つまり、同じ一週間の入院期間中に支払った食事代であっても、入院している子ども本人の通常の病院食と、付き添っているお母さん自身の食事では、税務上の扱いが違うということです。
「子どもが入院しなければ必要なかったのに」と思うのは自然です
ここは、実際にお子さんの入院を経験された方ほど、納得しにくい部分かもしれません。
一週間も病院に付き添えば、その間のお母さんの食事代もかかります。
病院によっては、付き添う家族のために簡易ベッドや寝具を借りなければならないこともあります。
家計全体で考えれば、どちらもお子さんが入院しなければ支出しなかったお金です。
そのため、「これも子どもの治療のために必要だった費用では?」と感じるのは当然でしょう。
しかし、医療費控除は、病気になったことで家計から余分に出ていったお金を、すべて税金の計算上考慮する制度ではありません。
対象となる費用には一定の範囲があります。
そのため、「入院がなければ払わなかったか」だけではなく、「税法上、診療や治療などのために必要な医療費と認められるか」という視点で確認する必要があります。
付き添った家族の貸しふとん代はどう考える?
それでは、お母さんがお子さんに付き添うために病院で借りた「貸しふとん代」はどうなるのでしょうか。
このような付き添う家族自身が使用する寝具の費用については、通常は医療費控除に含めないと考えるのが適当です。
ただし、ここでは少し注意が必要です。
現在、国税庁が公表している質疑応答には、「入院中の子どもに母親が付き添い、その母親が使用した貸しふとん代」という事例について、直接「対象になる」「対象にならない」と回答したものは確認できません。
したがって、これは医療費控除の一般原則を踏まえて判断することになります。
国税庁は、患者本人が入院するために寝具や洗面具などの身の回り品を購入した場合についても、これらは入院生活では必要であっても、医師等による診療を受けるために直接必要なものではないため、医療費控除の対象にならないとしています。
さらに、先ほど説明したとおり、付き添った親族自身の食事代も医療費控除の対象にはなりません。
こうした取扱いを踏まえると、付き添ったお母さん自身が使用する貸しふとん代についても、通常は患者本人の診療や治療のために直接必要な医療費とは考えにくく、医療費控除には含めない処理が適当と考えられます。
ただし、病院から請求された料金の内容や契約の形態などによっては個別に確認が必要になることもあります。
請求書に「寝具代」「付添料」など複数の項目がまとめて記載されている場合には、金額だけを見て判断せず、何に対する料金なのかを確認すると安心です。
家族の付き添いと、有料の付添人への支払いは同じではありません
ここで、もう一つ大切なポイントがあります。
それは、家族が付き添う場合と、療養上の世話をしてもらうために人を特別に依頼した場合とでは、税務上の扱いが違うということです。
国税庁は、保健師、看護師、准看護師、または特に依頼した人に対して支払う「療養上の世話の対価」について、一定のものを医療費控除の対象としています。
家政婦などに病人の付き添いを依頼し、患者の療養上の世話をしてもらった場合の対価も、この中に含まれます。
また、入院時に付添人を頼んだ場合の付添料についても、療養上の世話を受けるための費用であれば医療費控除の対象になるとされています。
つまり、「付き添い」という言葉が同じでも、親や配偶者などの家族が付き添う場合と、療養上の世話を目的として有料で付添人を依頼する場合とは、分けて考える必要があります。
親族に「付添料」を払ったことにしても医療費控除にはなりません
それでは、「お母さんが一週間付き添ったのだから、お母さんに付添料を払ったことにすれば医療費控除になるのでは?」という考え方はどうでしょうか。
これは認められません。
国税庁は、家族や親類縁者に付き添いを頼み、「付添料」という名目でお金を支払ったとしても、医療費控除の対象にはならないと明確にしています。
たとえば、「一日1万円として7日分、7万円を母親への付添料にする」というような計算をして医療費控除に加えることはできません。
実際に家族間でお金を渡していたとしても、税務上の医療費控除の対象になるかどうかは別の問題です。
有料の付添人の食事代は対象になる場合があります
付き添う人の食事代についても、誰が付き添ったかによって取扱いが変わることがあります。
親族が付き添った場合、その親族自身の食事代は医療費控除の対象にはなりません。
一方、家事代行サービスなどの付添人について、その食事代が付添いの対価の一部として支払われるものであれば、医療費控除の対象になると国税庁は説明しています。
ここで大切なのは、単に「付き添っている人の食事だから対象になる」という意味ではないことです。
患者本人の療養上の世話のために特に依頼した人について、そのサービスの対価の一部として負担している費用であるかどうかがポイントになります。
専門の付添人なら貸しふとん代も必ず対象、とは限りません
ここは今回、特に慎重に書いておきたい部分です。
「療養上の世話をする付添人への付添料が医療費控除になるのであれば、付添人が使う貸しふとん代も当然に医療費控除になるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、現在確認できる国税庁の公表資料では、付添人の貸しふとん代まで一律に医療費控除の対象になる、と直接説明しているものは確認できません。
そのため、「専門の付添人であれば、その人の貸しふとん代も必ず医療費控除になる」とは言い切らない方が安全です。
あくまで、患者本人の療養上の世話に対する対価として支払われる費用なのかという実態を確認して判断する必要があります。
付添料と食事代、寝具代などが一括して請求されているケースでは、契約内容や請求書の内訳によって判断が必要になることがあります。
入院した本人の費用でも、すべて医療費控除になるわけではありません
ここまで付き添う家族について説明してきましたが、実は、入院した患者本人について支払った費用であっても、すべて医療費控除になるわけではありません。
たとえば、国税庁は入院に伴う費用について、次のような取扱いを示しています。
入院中に病院から提供される通常の食事代は、入院費用の一部として医療費控除の対象になります。
一方で、病室に出前を取ったり、外食をしたり、おやつを購入したりした費用は、病院への入院の対価ではないため、対象になりません。
また、入院に備えて購入した寝巻き、洗面具などの身の回り品も原則として医療費控除の対象外です。
差額ベッド代についても、本人や家族の都合だけで個室に入った場合などには、医療費控除の対象にならないと国税庁は説明しています。
つまり、「病院で使ったお金だから全部対象」という考え方ではありません。
一つ一つの費用について、その内容を確認する必要があります。
付き添い家族の交通費にも注意しましょう
付き添いに関連して、もう一つ間違えやすいのが交通費です。
たとえば、小さなお子さんを病院へ連れて行くため、お母さんが一緒に電車やバスに乗ったとします。
患者の年齢や病状からみて、一人で通院させることが危険な場合には、患者本人だけでなく、付き添う人の通常必要な交通費も医療費控除の対象になる場合があります。
一方、すでに子どもが入院していて、その子どもの世話をするために自宅と病院をお母さんが往復する場合、そのお母さんの交通費は原則として対象になりません。
国税庁は、入院している子どもの世話をするために親が病院へ通う場合について、患者本人が通院しているわけではないため、親の交通費は医療費控除の対象にならないとしています。
ここでも、「子どもの病気が原因で発生した交通費だから」だけでは判断できないことが分かります。
確定申告では「患者本人の費用」と「付き添い家族の費用」を分けて整理しましょう
実際に確定申告の準備をするときには、病院関係の領収書をまとめて保管している方も多いと思います。
ただ、医療費控除を計算するときには、患者本人にかかった費用と、付き添った家族にかかった費用をいったん分けて整理することをおすすめします。
たとえば、お子さんが入院した場合であれば、診察代や手術代、治療費、通常必要な入院費、病院から提供された通常の入院食の自己負担額などは、お子さん本人にかかった費用として確認します。
一方、付き添ったお母さんの食事代や、付き添った家族自身が使う寝具代、日用品代、そして入院している子どもの世話をするために家族が病院へ通う交通費などは、別のグループに分けておきましょう。
こうしておくと、確定申告のときに対象・対象外を判断しやすくなります。
高額療養費や入院給付金を受け取った場合も確認が必要です
医療費控除を計算するときには、支払った医療費だけを見るのではなく、その医療費を補てんするために受け取った金額にも注意が必要です。
たとえば、健康保険から支給された高額療養費や、生命保険から受け取った入院給付金などがこれにあたります。
医療費控除は、原則として、実際に支払った医療費から、その医療費を補てんする保険金などを差し引いて計算します。
ただし、補てん金が医療費を上回った場合、その余った金額を別の医療費からまで差し引く必要はありません。
たとえば、入院費20万円に対して入院給付金30万円を受け取ったからといって、余った10万円を歯の治療費など別の医療費から差し引くわけではありません。
補てん金は、その給付の対象となった医療費ごとに差引計算を行います。
「医療費が10万円を超えたら、その分が戻る」わけではありません
医療費控除については、もう一つよくある勘違いがあります。
「一年間の医療費が10万円を超えれば、10万円を超えた分のお金がそのまま返ってくる」というものです。
医療費控除は、そのような制度ではありません。
原則として、実際に支払った医療費から、保険金などで補てんされる金額と10万円を差し引いて計算した金額が、医療費控除額になります。
ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の場合には、10万円ではなく「総所得金額等の5%」が差し引く基準額になります。
医療費控除額の上限は200万円です。
さらに、この医療費控除額がそのまま現金で返ってくるわけでもありません。
医療費控除は「所得控除」といって、税金を計算するもとになる所得から一定額を差し引く制度です。実際に所得税がどれくらい減るか、あるいはどれくらい還付されるかは、その方の所得や税率、すでに納めている税額などによって変わります。
また、所得税だけでなく、翌年度の住民税が軽減されることにもつながります。
医療費の領収書は捨てずに保管しておきましょう
医療費控除を受ける場合には、原則として「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付します。
通常、医療費の領収書そのものを確定申告書に添付する必要はありません。
ただし、医療費控除の明細書に記載した内容を確認するため、税務署から領収書の提示や提出を求められることがあります。
そのため、一定の場合を除き、医療費の領収書は確定申告期限等から5年間、自宅などで保存しておく必要があります。
入院の場合は、領収書だけでなく請求明細書も一緒に保管しておくとよいでしょう。
後になって、「この金額は食事代だったのか、寝具代だったのか、治療費だったのか」と迷ったときに確認しやすくなります。
迷ったときは「誰のための、何の費用か」を確認しましょう
医療費控除では、細かい支出になるほど判断に迷うことがあります。
そのようなときには、「誰のために支払った費用なのか」、そして「患者本人の診療・治療や療養のために、どのような目的で支払った費用なのか」を確認すると整理しやすくなります。
もちろん、これだけですべてのケースを判断できるわけではありません。
ただ、今回のような、「子どもが入院し、お母さんが一週間付き添った」というケースであれば、まず、子ども本人にかかった費用と、付き添ったお母さん自身にかかった費用を分けることが第一歩です。
子ども本人の通常の入院食などは医療費控除の対象になり得ますが、お母さん自身の食事代は原則として対象になりません。
お母さん自身が使う貸しふとん代についても、現在の国税庁資料にこのケースを直接扱った回答は確認できませんが、医療費控除の一般的な考え方から、通常は対象に含めないと考えるのが適当です。
一方で、患者本人の療養上の世話を受けるために一定の付添人を特別に依頼し、その対価を支払った場合には、医療費控除の対象になることがあります。
ただし、その場合でも、「付添人の貸しふとん代まで必ず医療費控除になる」と一律に判断するのではなく、実際の契約内容や請求内容を確認する必要があります。
まとめ
子どもが入院すると、治療費だけでなく、付き添う家族の食事代や寝具代、交通費など、さまざまな出費が発生します。
家計から見れば、どれも子どもの病気や入院がなければ発生しなかった費用です。
しかし、医療費控除では、「入院が原因で発生した費用だから対象」とは限りません。
今回のケースを整理すると、次のようになります。
入院したお子さんについて、病院から提供された通常の入院食などは医療費控除の対象になります。
一方、付き添ったお母さん自身の食事代は、原則として医療費控除の対象になりません。
お母さんが使用する貸しふとん代についても、国税庁がこのケースを直接示した質疑事例は確認できませんが、一般的な医療費控除の考え方から、通常は対象に含めないと考えるのが適当です。
また、家族自身への付添料は、実際に支払ったとしても医療費控除にはなりません。
これに対して、患者本人の療養上の世話のために一定の付添人を特別に依頼し、その対価を支払った場合には、医療費控除の対象になることがあります。
医療費控除で迷ったときは、「病気のために払ったかどうか」だけでなく、「誰のための、何の費用なのか」まで確認することが大切です。
入院費の請求書にさまざまな項目が含まれている場合は、領収書や請求明細書を捨てずに保管し、一つずつ内容を確認していきましょう。
※この記事は、2026年8月10日時点で国税庁ホームページに掲載されている医療費控除に関する情報を確認して作成しています。
国税庁の質疑応答事例の一部は「令和7年8月1日現在の法令・通達等」に基づいて作成されています。
実際に医療費控除の対象になるかどうかは、支払内容や契約内容などによって個別の判断が必要になる場合があります。
判断に迷う費用がある場合は、領収書や請求明細書を確認したうえで、税務署にご相談ください。






