NISAとiDeCoは「口座の中」だけで考えない。初心者が知っておきたい資産配分の考え方

NISAとiDeCoをどう使い分ける?大切なのは株式と預金のバランス

「NISAを始めるなら、どの商品を買えばいいのだろう」
「iDeCoでは、株式と債券を半分ずつ持ったほうが安心なのだろうか」

NISAやiDeCoについて調べ始めると、どうしても「その口座の中で何を買うか」に目が向きやすくなります。

もちろん、商品選びも大切です。

ただ、その前に整理しておきたいことがあります。

それは、NISAやiDeCoだけを見るのではなく、預金なども含めた自分の資産全体を見ることです。

たとえば、銀行に300万円の預金があり、NISAに200万円、iDeCoに100万円ある人なら、考えるべきなのはNISAの200万円だけではありません。

600万円全体を見て、値動きのある資産をどのくらい持つのか、値動きの小さいお金をどのくらい残しておくのか。
この二つを考えることが大切です。

今回は、NISAやiDeCoを利用するときに知っておきたい「資産配分」と「資産の置き場所」について、投資初心者向けに整理します。

まず考えたいのは「何を買うか」より「どのくらい株式を持つか」

資産運用を考えていると、「アセット・アロケーション」という言葉を目にすることがあります。

少し難しく聞こえますが、意味はそれほど複雑ではありません。

自分のお金を、株式や債券、預金などにどのくらいずつ分けるかを考えることです。
日本語では「資産配分」と呼ばれます。
たとえば「株式60%、預金や債券40%」といった具合に、割合で捉えるとイメージしやすくなります。

投資初心者の場合、つい「どの投資信託を選べばいいのか」と商品探しから始めたくなります。
しかし、資産全体の値動きに大きく影響するのは、個別の商品名だけではありません。
資産全体のうち、株式をどのくらい持っているかも重要です。

株式には、長い目で見た成長を期待できる一方で、大きく値下がりする可能性があります。
世界中の企業に分散して投資する投資信託であっても、株式を中心に運用する商品なら、大きく価格が下がる時期はあります。

つまり、「長期で持つなら株式は安心」というわけではありません。
長期間保有することで短期的な値動きに振り回されにくくすることはできますが、元本割れの可能性がなくなるわけではありません。

大切なのは、値下がりする時期があっても続けられる範囲で株式を持つことです。

「下がっても持ち続けられるか」で考えてみる

資産配分を考えるとき、期待できる利益だけを見て決めるのは注意が必要です。

むしろ初心者ほど、大きく値下がりしたとき、自分がどう感じるかを考えてみることが大切です。

仮に、老後のためのお金が500万円あり、そのほとんどを株式で運用していたとします。
相場が大きく下がれば、スマートフォンで残高を見るたびに資産が減っている時期もあるでしょう。

頭では「長期投資だから慌てないほうがいい」と理解していたとしても、実際に自分のお金が減っていくのを見ると、不安になるものです。
その不安に耐えられず、価格が大きく下がったところですべて売ってしまえば、長期運用を続けることはできません。

だからこそ、資産配分には「自分が続けられるか」という視点が必要です。
株式を多く持てば、大きな成長を期待しやすくなる一方で、価格の上下も大きくなりやすくなります。
反対に、預金などを多く持てば値動きは小さくなりますが、大きな運用益は期待しにくくなります。

どちらが正しいということではありません。
自分が落ち着いて持ち続けられる割合を考えることが大切です。

NISAやiDeCoだけで資産配分を完成させなくてもいい

ここが、特に整理しておきたいポイントです。

NISAを利用していると「NISAの中で株式50%、債券50%にしよう」と考えるかもしれません。
iDeCoでも「iDeCoの中だけでバランスを取らなければ」と考えがちです。

しかし、必ずしも一つひとつの口座の中で資産配分を完成させる必要はありません。
すでに銀行預金を持っているのであれば、その預金も自分の資産の一部だからです。

たとえば、資産全体が1,000万円あり、「自分は株式700万円、値動きの小さい資産300万円くらいにしたい」と考えたとします。
この場合、NISAやiDeCoでは株式型の投資信託を持ち、残りの300万円を銀行預金などで持つという方法も考えられます。

NISAの中だけを見ると株式100%だったとしても、資産全体で見れば株式70%、それ以外30%です。
つまり「NISAが株式100%だから、自分の資産も株式100%」とは限りません。

ここを分けて考えられるようになると、NISAやiDeCoの商品選びも少し整理しやすくなります。

「どこに何を置くか」という考え方もある

資産の割合を考えることを「アセット・アロケーション」と呼ぶのに対し、どの資産をどの口座に置くかを考えることを「アセット・ロケーション」と呼びます。
日本語で考えるなら、資産の置き場所です。

現在のNISAでは、対象となる株式や投資信託などから得られる利益が非課税になります。
そのため、運用による利益への非課税効果だけを考えるのであれば、長期的な成長を期待して持つ資産をNISAで保有するという考え方があります。

たとえば、銀行預金は通常の銀行口座で持ち、長期間保有する株式型の投資信託はNISAで持つ、という組み合わせです。
預金は、大きく増やすことよりも、近いうちに必要になるお金を安全に持っておく役割が中心です。
一方、株式型の投資信託は値下がりする可能性を受け入れながら、長期的な成長を期待して保有します。
そこで、税制上のメリットがある口座を、成長を期待する資産に優先して使うという発想が出てきます。

ただし、ここには注意点があります。

NISAで損失が出ても、課税口座で出た利益と相殺する「損益通算」はできません。
通常の課税口座であれば、一定の条件のもとで株式などの利益と損失を相殺できる場合があります。
一方、NISA口座の損失は税務上「なかったもの」として扱われるため、課税口座の利益を減らすためには使えません。

そのため「値動きの大きい商品ほど、とにかくNISAに入れればいい」と単純に考えるのは避けたほうがよいでしょう。
まず資産全体として、どの程度のリスクを取るかを決める。
そのうえで、NISAをどのように使うか考える。この順番が大切です。

iDeCoは長期になりやすいからこそ、目的を分けて考える

iDeCoには、NISAとは大きく違う特徴があります。
老後の資産形成を目的とした制度なので、原則として60歳になるまで自由に引き出すことができません。

そのため、若いうちから利用する場合は、自然と長期間の運用になりやすくなります。
長い運用期間を確保できれば、一時的な値下がりがあっても、その後の回復を待てる時間を取りやすくなります。
そのため、株式などの値動きのある資産を組み入れる選択肢も考えやすくなります。

ただし「長期だからiDeCoはすべて株式でいい」とは限りません。
長期投資でも途中で大きく値下がりする可能性はありますし、値下がりへの感じ方も人によって異なります。

また「60歳になれば誰でもすぐ受け取れる」とも限りません。
iDeCoの老齢給付金を60歳から受け取るためには、原則として確定拠出年金の通算加入者等期間が10年以上必要です。
加入期間などが10年に満たない場合は、その期間に応じて受給を開始できる年齢が後ろになります。

細かな条件を最初からすべて覚える必要はありません。
初心者の段階では「iDeCoは基本的に老後まで使わないお金を入れる制度」と理解しておけばよいでしょう。
近いうちに使う可能性があるお金を入れる場所ではない、という点を押さえておくことが大切です。

非課税制度を使い切ることより、資産全体のバランスが先

NISAには税制上のメリットがあります。
iDeCoにも、掛金の所得控除や運用中の税制上のメリットがあります。

そのため「せっかく制度があるなら、できるだけ上限まで使ったほうがいいのでは」と考えるかもしれません。
しかし、制度を使い切ること自体が目的になってしまうと、お金本来の目的を見失いやすくなります。

たとえば、来年の引っ越しに使う予定のお金まで投資に回してしまえば、必要になったタイミングで相場が下がっているかもしれません。
iDeCoの場合は、そもそも原則として60歳まで自由に引き出せません。

そのため、お金を考えるときは、日常生活で使うお金、急な出費に備えるお金、数年以内に使う予定のお金、そして老後など、かなり先のためのお金というように、分けて考えることが大切です。
来年必要になるお金と、30年後まで使う予定のないお金では、受け入れられる値動きが違うからです。

NISAやiDeCoは便利な制度ですが、あくまでお金を運用するための「器」です。
大切なのは器をいっぱいにすることではありません。
そのお金を何のために持っているのかを考えることです。

年齢や使う時期に合わせて、値動きを抑える考え方もある

若いときと、退職が近づいてきたときでは、お金との付き合い方も変わります。
たとえば、老後まで30年以上ある場合と、数年後から生活費として資産を取り崩す予定がある場合とでは、運用できる時間が違います。

資産を使う時期が近づいてきたら「株式の割合を少し減らそうか」「数年以内に使う分は預金に移しておこうか」と考える方法もあります。
この場合も、NISAやiDeCoの口座一つひとつを見るのではなく、資産全体で考えます。
たとえば資産全体の株式を40%程度に抑えたいのであれば、株式をNISAやiDeCoなどで保有しながら、それ以外の資産を預金などで持つという組み合わせも考えられます。

つまり、順番としては「NISAでは何を買おう?」から始めるよりも「自分は資産全体で、どのくらい株式を持てそうだろう?」と考えるほうが整理しやすいのです。その後で「では、その株式をどの口座で持つか」を考えます。この順番を覚えておくだけでも、資産運用の見え方はかなり変わります。

まとめ:まず「割合」を考え、そのあと「置き場所」を考える

NISAやiDeCoを利用するとき、どうしても口座の中の商品に目が向きます。
しかし、本当に考えたいのは、その口座だけではありません。

銀行預金なども含めた自分のお金全体を見て、どのくらいを株式などの値動きのある資産にするのか。
まずここを考えることが大切です。

資産をどのような割合で持つかを考えるのが「アセット・アロケーション」。
その資産をどの口座に置くか考えるのが「アセット・ロケーション」です。
言葉そのものを覚える必要はありません。
「割合を決めてから、置き場所を考える」と理解しておけば十分です。

そして、株式をどのくらい持つかに、誰にでも当てはまる正解はありません。
長く運用できる人でも、大きな値下がりに強い不安を感じることがあります。
反対に、値動きを理解したうえで長期間持ち続けられる人もいます。

大切なのは、もっとも利益が大きくなりそうな配分だけを追い求めることではありません。
相場が下がったときにも、自分が無理なく続けられる配分にしておくことです。
NISAだから株式を買わなければならないわけでも、iDeCoだから株式を何%にしなければならないわけでもありません。

まずは預金も含め、自分が今どんな資産を持っているのかを書き出してみる。
そして「この中のどのくらいなら、価格が上下しても落ち着いて持っていられるだろう」と考えてみる。
投資を始める前は、それだけでも十分に意味があります。

制度を使うことそのものを目的にせず、自分のお金の目的と、自分が受け入れられる値動きの範囲から考えてみてください。

なお、NISAやiDeCoの制度内容は今後も見直しが行われる可能性があります。
実際に配分や商品を検討する際は、金融庁や国税庁の最新情報の確認もあわせて行うと安心です。