iDeCoとNISAは何が違う?老後のお金を考える前に知っておきたい2つの制度

iDeCoとNISAは何が違う?初心者向けに税金・引き出し・使い分けをやさしく解説

「NISAはなんとなく聞いたことがあるけれど、iDeCoはよくわからない」
「どちらも税金がお得になる制度らしいけれど、何が違うの?」

投資について調べ始めると、NISAと並んでよく出てくるのが「iDeCo(イデコ)」です。

どちらも資産形成を後押しする税制上のメリットがありますが、目的はかなり違います。

特にiDeCoを考えるときに大切なのは、単なる「お得な投資口座」と考えないことです。

iDeCoは、基本的には老後のために自分で準備する年金制度です。

自分で掛金を出し、自分で運用する商品を選び、その運用結果によって将来受け取れる金額が変わります。

公的年金とは別に、自分自身で老後資金を準備するための仕組みの一つです。

今回は、NISAとの違いを比べながら、iDeCoを考えるときに知っておきたいポイントを整理してみます。

※制度内容は2026年8月時点の情報をもとにしています。

iDeCoは「いつでも使えるお金」をつくる制度ではない

iDeCoを理解するうえで、最初に知っておきたいことがあります。

それは、原則として60歳になるまで積み立てた資産を自由に引き出せないことです。

iDeCoには大きな税制上のメリットがありますが、それは老後の資産形成を目的とした年金制度だからこそ設けられています。

例外的なケースを除き、途中で自由に解約して現金を取り出すことはできません。

また、「60歳になれば誰でもすぐ受け取れる」というわけでもありません。

60歳から受け取るには、原則として60歳までの通算加入者等期間が10年以上必要です。

この期間が10年に満たない場合は、加入していた期間に応じて、受け取りを始められる年齢が61歳から65歳までの間に繰り下がります。

そのため、iDeCoは「60歳まで引き出せない制度」というより、老後まで使わないことを前提に積み立てる制度と考えるほうがわかりやすいでしょう。

ここがNISAとの大きな違いです。

NISAで保有している株式や投資信託は、必要になれば売却できます。

現在のNISAでは、商品を売却すると、その商品の取得金額分について翌年以降に非課税保有限度額を再利用することもできます。

つまり、NISAは比較的使い道を限定せず資産形成に利用しやすいのに対して、iDeCoは「老後のためのお金」を準備する仕組みです。

たとえば、数年後の住宅購入に使う予定のお金や、子どもの教育費、近いうちに必要になる大きな支出のお金までiDeCoに入れてしまうと、必要になったときに取り出せません。

その意味では、「途中で引き出せない」ことは確かに不便です。

一方で、老後資金として考えるなら見方も変わります。

普通の預金であれば、「少しくらいなら」と旅行や大きな買い物に使ってしまうこともあります。

iDeCoでは簡単に取り出せないため、老後のお金を別に確保しておきやすいとも考えられます。

不便さとメリットは、表裏一体なのです。

iDeCoには3つの税制上のメリットがある

iDeCoの特徴としてよく挙げられるのが、税制上のメリットです。

iDeCoでは、積み立てるとき、運用しているとき、受け取るときという3つの段階で税制上の仕組みが用意されています。

まず、支払った掛金は全額が「所得控除」の対象になります。

次に、運用によって得られた利益については、運用中は原則として税金がかからず、そのまま再投資できます。

そして老後に受け取るときも、一時金として受け取れば「退職所得控除」、年金として受け取れば「公的年金等控除」の対象になります。

NISAにも大きな税制上のメリットがあります。

通常、株式や投資信託で利益が出ると税金がかかりますが、NISA口座で得た対象となる売却益や配当・分配金は非課税です。

現在のNISAでは、非課税で保有できる期間も無期限になっています。

ただし、NISAで投資した金額そのものが所得控除になるわけではありません。

ここがiDeCoとの大きな違いです。

iDeCoでは、運用で利益が出るかどうかとは別に、掛金を支払った段階で所得控除を受けられる可能性があります。

だからといって、「iDeCoのほうがNISAより得」と単純に考える必要はありません。

NISAには、必要に応じて商品を売却し、お金を使いやすいという特徴があります。

一方、iDeCoには掛金の所得控除がある代わりに、老後まで資金を引き出しにくいという制約があります。

どちらが上かというより、何のためのお金なのかが違うと考えるほうが自然です。

「所得控除」でなぜ税金が少なくなるのか

「掛金が全額所得控除になります」と聞いても、投資を始めたばかりの人には少しわかりにくいかもしれません。

所得控除とは、簡単にいうと、税金を計算するときの所得を小さくする仕組みです。

税金は、会社から受け取った給料の金額にそのまま税率を掛けて決まるわけではありません。

給与所得控除や基礎控除など、さまざまな控除を差し引いたうえで、税金を計算するもとになる金額を求めます。

iDeCoで支払った掛金も、その控除の一つとして扱われます。

たとえば、毎月1万円をiDeCoに積み立てると、1年間の掛金は12万円です。

仮に所得税率が10%、住民税率が10%だとすると、単純計算では年間約2万4,000円の税負担が軽くなることになります。

考え方としては、「年間の掛金 × 所得税と住民税の税率」で、おおよその効果をイメージできます。

ただし、誰でも同じ金額だけ税金が少なくなるわけではありません。

所得や税率によって効果は変わりますし、もともと所得税や住民税がかかっていない場合には、掛金の所得控除による税負担軽減を十分に受けられないこともあります。

そのため、「iDeCoなら必ず大きく節税できる」と考えるのではなく、自分の場合はどのくらい効果があるのかを確認することが大切です。

一般には、掛金が大きく、適用される税率が高い人ほど、税負担を軽くする効果も大きくなりやすいと考えられます。

iDeCoだからといって、必ず株式に投資する必要はない

「iDeCoは投資の制度だから、株を買わなければいけないのでは?」

そう感じる人もいるかもしれません。

実際には、iDeCoで選べる商品には投資信託だけでなく、定期預金などの「元本確保商品」を用意している金融機関もあります。

そのため、「値下がりする商品はどうしても不安」という人にも選択肢はあります。

ただし、元本確保商品だからといって、何も考えなくてよいわけではありません。

iDeCoには手数料がかかります。

金利が低い状況では、定期預金などで受け取る利息よりも、手数料の負担のほうが大きくなる可能性もあります。

また、iDeCoは老後までの長い期間を使って資産形成をする制度です。

20年、30年と運用できる人であれば、その時間をどう使うかも考えておきたいところです。

株式を含む投資信託には、値下がりする可能性があります。

預けたお金が必ず増えるわけではありませんし、元本が保証されているわけでもありません。

一方で、長い時間をかけて資産を育てるという考え方から、株式など値動きのある資産を取り入れる方法もあります。

ここで大切なのは、「長期なら必ず増える」と考えることではありません。

自分がどのくらいの値下がりなら受け入れられるのかを考え、その範囲で運用商品を選ぶことです。

投資への不安を無理になくす必要はありません。

不安の原因を確認しながら、自分が続けられる方法を考えることのほうが大切です。

iDeCoは受け取るときまで完全非課税というわけではない

iDeCoについて、もう一つ覚えておきたいのが老後の受け取り方です。

NISAでは、制度の対象となる運用益は非課税です。

一方、iDeCoは「最後まで何も考えず完全非課税」という仕組みではありません。

老後に受け取る段階では、税金の計算が関係してきます。

ただし、一時金として受け取る場合には「退職所得控除」、年金として受け取る場合には「公的年金等控除」という仕組みがあります。

一時金として受け取るときの退職所得控除については、2026年1月から少し注意したい変更がありました。

これまでは、iDeCoの一時金を先に受け取り、その後4年を超えてから会社の退職金を受け取れば、それぞれの退職所得控除をほぼそのまま使うことができました。
ところが2026年1月からは、この間隔の基準が「4年」から「9年」に延長されています。

つまり、iDeCoの一時金を受け取ったあと9年以内に会社の退職金も受け取ると、加入期間と勤続期間の重複する部分が調整され、退職所得控除が満額使えない可能性があるということです。
反対に、会社の退職金を先に受け取ってからiDeCoを一時金で受け取る場合は、もともと「19年」という長い間隔が基準になっており、こちらは今回の改正では変わっていません。

受け取る順番や間隔によって税負担が変わってくるため、会社の退職金とiDeCoの両方を見込んでいる人は、どちらを先に、どのくらい間隔をあけて受け取るかも含めて考えておく必要があります。

そのため、実際にどのくらい税金がかかるかは、人によって違います。

会社から受け取る退職金の金額や受取時期、公的年金、そのほかの所得などによっても変わります。

つまり、iDeCoは「積み立てるときにお得だから、それだけ見ておけばよい」という制度ではありません。

将来受け取る時期が近づいてきたら、どのように受け取るかまで考える必要があります。

とはいえ、若いうちから何十年先の税金まで細かく計算する必要はありません。

まずは、「iDeCoには掛金を出すときだけでなく、受け取るときにも税金のルールがあり、受け取る順番やタイミングによっても金額が変わる」ということを知っておけば十分です。

退職が近づいてきた段階で、会社の退職金なども含めて改めて確認するとよいでしょう。

手数料や、もしものときの扱いも知っておきたい

iDeCoは税制上のメリットだけを見て判断するのではなく、費用も確認しておきたい制度です。

加入するときや掛金を納めるとき、資産を管理するときなどに手数料がかかります。

また、利用する金融機関によって、手数料やサービス、選べる運用商品の種類も異なります。

そのため、金融機関を選ぶときは、「有名だから」「普段使っているから」という理由だけではなく、手数料や商品のラインアップも確認しておくと安心です。

また、これから加入を考えている人に知っておいていただきたいのが、2026年12月にiDeCoの制度改正が予定されていることです。
掛金の上限額が引き上げられるほか、加入できる年齢もこれまでの65歳未満から70歳未満まで広がる見込みです(一定の条件があります)。
すでに加入している人にとっても、掛金を増やせるようになる可能性があるため、改正の内容が固まった段階で、ご自身の掛金設定を見直す機会にしてもよいでしょう。

また、「60歳まで取り出せないなら、その前に亡くなった場合はどうなるのだろう」と心配になる人もいるかもしれません。

加入者が亡くなった場合、積み立てていた資産がなくなったり、国に没収されたりするわけではありません。

一定の遺族が「死亡一時金」として受け取ることができます。

受取人を事前に指定できる場合もあります。

税金についても、一定の条件を満たす死亡一時金は相続税の対象となり、相続人が受け取る死亡退職金等には「500万円×法定相続人の数」という非課税限度額があります。

ここで少し注意したいのが、「死亡後3年」という数字です。

亡くなってから3年以内に支給が確定した死亡一時金であれば、この非課税枠を使うことができます。
一方、3年を超えてから支給が確定すると、相続税ではなく受け取った遺族の一時所得として所得税・住民税がかかる扱いに変わり、非課税枠も使えなくなります。

あまり時間が経ちすぎると請求そのものが難しくなることもあるため、iDeCoの死亡一時金は、亡くなったことがわかったら早めに手続きを進めておきたいところです。

細かな税務や手続きは状況によって異なるため、実際に必要になったときには金融機関などに確認することが大切です。

家族が手続きに困らないよう、iDeCoに加入していることを家族に伝えておくのも一つの備えになります。

NISAとiDeCoは「どちらが得か」より、目的を分けて考える

NISAとiDeCoを比べると、つい、「結局どちらを使ったほうが得なの?」と考えたくなります。

ですが、2つはそもそもの役割が違います。

NISAは、運用益を非課税にしながら資産形成を行える制度です。

必要になれば、保有している商品を売却することもできます。

一方のiDeCoは、老後資金を準備するための年金制度です。

原則として60歳になるまで自由に引き出せない代わりに、掛金の所得控除、運用中の非課税、受け取るときの控除という税制上の仕組みがあります。

つまり、考える順番として大切なのは、制度の優劣ではありません。

「このお金をいつ使う予定なのか」ということです。

たとえば、急な病気や家電の故障などに備える生活防衛資金までiDeCoに入れてしまうと、必要なときに使えません。

数年後に住宅購入や教育費などの大きな支出が予定されている場合も同じです。

一方で、「このお金は老後まで使わない」と決められる資金であれば、iDeCoの特徴を生かせる可能性があります。

制度から考えるのではなく、まず自分のお金の使い道を整理する。

そうすると、NISAとiDeCoの違いも少しわかりやすくなります。

まとめ iDeCoは「節税できる投資」ではなく「老後のための年金」と考える

iDeCoには、掛金の所得控除、運用中の非課税、受け取るときの控除という税制上のメリットがあります。

特に、掛金そのものが所得控除になる点はNISAにはない大きな特徴です。

一方で、そのメリットだけを見て始めるのは避けたいところです。

iDeCoは老後資金を準備するための制度なので、原則として60歳になるまで自由にお金を取り出せません。

また、60歳から受け取るためには、原則として一定の加入期間も必要です。

まずは、毎日の生活に必要なお金、急な出費に備えるお金、数年以内に使う予定のお金、そして老後まで使わないお金を分けて考えてみることが大切です。

そのうえで、「老後まで使わないお金の一部を、どのように準備していくか」と考えたときに、iDeCoを選択肢の一つとして調べてみるとよいでしょう。

NISAもiDeCoも、使えば必ず正解という制度ではありません。

投資や資産形成で大切なのは、税制上のお得さだけで判断することではなく、仕組みを知ったうえで、自分の生活や将来の予定に合っているかを考えることです。

iDeCoは特に、2026年も掛金や加入年齢の見直しが続いている制度です。
投資を急いで始める必要はありませんが、制度の大枠を知ったうえで、最新の内容はそのつど金融機関などに確認しながら進めていくと安心です。

まずはNISAとiDeCoのような制度の違いを知り、「自分は何のためにお金を準備したいのか」を整理する。

それだけでも、将来のお金について考える大きな一歩になるのではないでしょうか。