会社が合併して消滅したとき、法人税の申告はどこの税務署に出せばいい?

会社が合併したら法人税はどこに申告する?被合併法人の納税地をわかりやすく解説

会社どうしが合併すると、どちらか一方の会社がなくなる(消滅する)ことがあります。

このとき、経理や税務を担当する方が意外と迷いやすいのが、「なくなった会社の最後の法人税の申告は、いったいどこの税務署に出せばいいのか」という点です。

「これまで申告していた税務署に、そのまま出せばいいのでは」と思ってしまいそうですが、実は合併の後は取扱いが変わります。

先に結論をお伝えします。合併の日より後については、なくなった会社の法人税の納税地(申告や届出などの手続きの基準となる場所のことです)は、合併後に残る会社の納税地になります。

これは、法人税基本通達1-1-5という国税庁の通達(法律の具体的な運用方法を示したもの)で明らかにされているルールです。
国税庁の現在の通達でも、「なくなった会社のその合併の日以後における法人税の納税地は、合併後の会社の納税地による」とされています。

つまり、合併によって会社が一つなくなった後は、その会社の税務上の窓口も、残った会社の側に移っていくと考えると分かりやすいでしょう。

まず「被合併法人」と「合併法人」という言葉を確認しましょう

合併の税務では、「被合併法人(ひがっぺいほうじん)」「合併法人(がっぺいほうじん)」という、少し聞き慣れない言葉が出てきます。

被合併法人とは、合併によってなくなる会社のことです。

一方、合併法人とは、吸収合併であれば合併後も残る会社、新設合併であれば合併によって新しくできる会社のことをいいます。

この記事では分かりやすくするため、被合併法人を「なくなる会社」、合併法人を「引き継ぐ会社」と言い換えることがあります。

たとえば、A社がB社を吸収合併して、B社がなくなるとします。
この場合、A社が合併法人(引き継ぐ会社)、B社が被合併法人(なくなる会社)になります。

なお、グループ通算制度(複数の会社をまとめて一つのグループとして法人税を計算する制度)を利用しているグループ内での合併など、特別な取扱いになるケースもあります。
ご自身の会社がそうした制度を利用している場合には、通常のケースとは異なる可能性がありますので、個別に確認しておくと安心です。

会社が消滅しても、税金の義務まで消えるわけではありません

合併によって会社そのものがなくなると、「その会社の税金についても、そこで終わりになるのでは」と思われるかもしれません。

しかし、税務上はそうではありません。

国税通則法第6条という法律では、法人が合併した場合、合併後に残る会社(または合併によって新しくできる会社)が、なくなった会社について課される国税や、納めるべき国税などの義務を引き継ぐことが定められています。

つまり、なくなる会社について、法人税の申告や納税がまだ残っていたとしても、「会社がなくなったから、その義務も消える」ということにはなりません。

合併によって権利や義務を引き継いだ会社が、その後の税務手続きにも対応していくことになります。

たとえば、B社がA社に吸収合併された後、B社の最後の法人税申告が必要になったとします。
このとき、すでにB社そのものは存在していません。
そのため、B社の権利や義務を引き継いだA社が、B社の分の申告手続きを行うことになります。

イメージとしては、お店を人に譲ったあとも、譲った時点までの取引の後始末は、そのお店を引き継いだ人が対応していくようなものだと考えていただくと分かりやすいかもしれません。

なくなる会社の「最後の事業年度」はいつまで?

ここでもう一つ大切なのが、なくなる会社の最後の事業年度(会社の1年間の区切りのことです)がいつまでになるのか、という点です。

法人が事業年度の途中で合併によって解散した場合には、原則として、その事業年度が始まった日から、合併の日の前日までの期間が、最後の一つの事業年度になります。

国税庁も、法人税法第14条の取扱いとして、事業年度の途中で合併により解散した法人については、「その事業年度の開始の日から合併の日の前日までの期間」が一つの事業年度になることを明らかにしています。

たとえば、3月決算のB社が、10月1日を効力発生日としてA社に吸収合併されたとします。

この場合、B社の最後の事業年度は、原則として4月1日から9月30日までになります。

いつもの決算月である翌年3月まで待つわけではありませんので、注意が必要です。

なお、税務上の「合併の日」は、吸収合併の場合には原則として合併の効力が発生する日、新設合併の場合には新しくできる会社の設立登記の日とされています。

そのため、合併を予定している場合には、合併の効力発生日が決まった時点で、なくなる会社の最後の事業年度と申告期限を確認しておくことをおすすめします。

なくなる会社の法人税申告書は、どこの税務署に出す?

ここが今回の一番のポイントです。

法人税基本通達1-1-5では、合併の日以後における、なくなる会社の法人税の納税地は、引き継ぐ会社の納税地によることとされています。

そのため、なくなる会社が合併前にどこの税務署へ法人税を申告していたかにかかわらず、合併の日以後は、引き継ぐ会社の納税地を基準として法人税の手続きを行うことになります。

そもそも「納税地」という言葉は、単に税金を振り込む場所という意味だけではありません。

国税庁の研修資料でも、納税地は、法人税の申告や申請、請求、届出などの手続きを処理する場所であり、その会社を担当する税務署を決める基準となる場所だと説明されています。
国内の会社の場合、法人税の納税地は、原則として本店または主な事務所がある場所です。

つまり、「納税地が引き継ぐ会社の側に移る」というのは、単に税金の振込先が変わるという意味ではありません。

法人税の申告や届出などについて、どこの税務署が窓口になるのかを判断する基準そのものが、引き継ぐ会社の側になる、ということなのです。

具体例で考えてみましょう

たとえば、大阪に本店のあるB社が、東京に本店のあるA社に吸収合併されたとします。

B社はこれまで、大阪にある税務署へ法人税を申告していました。
一方、A社は東京の税務署へ法人税を申告しています。

この場合、B社の最後の事業年度の申告だからといって、合併後も当然に大阪の税務署へ提出するわけではありません。

合併の日以後、B社の法人税の納税地はA社の納税地になります。

したがって、B社の分の法人税についても、原則としてA社の納税地を基準として手続きを進めることになります。

「なくなった会社の申告だから、これまで使っていた税務署に出せばよい」と思い込まないことが大切です。

e-Taxでは、引き継ぐ会社の利用者識別番号を使います

現在は法人税申告をe-Tax(国税の電子申告・納税のシステムです)で行っている会社も多いため、電子申告の取扱いも確認しておきましょう。

国税庁は、吸収合併によって会社が消滅し、合併日の直前の事業年度についてのなくなる会社の申告を、引き継ぐ会社が行う場合には、引き継ぐ会社の利用者識別番号(e-Taxを利用するために割り振られる番号のことです)を使用すると案内しています。

また、申告書の法人名の欄には、引き継ぐ会社の名称だけを書くのではなく、なくなる会社の申告であることが分かるように表示します。

国税庁では、「株式会社霞ヶ関商事(被合併法人:株式会社虎ノ門商事)」という記載例を示しています。

電子納税についても、少し注意が必要な点があります。

なくなる会社の分の法人税を電子納税する際、税目、申告区分、対象となる期間が、引き継ぐ会社自身の申告と同じになると、e-Taxのシステム上、二重納付と判定されてしまうことがあります。

このような場合、国税庁は、納付情報登録依頼の作成画面で申告区分を「その他」として、なくなる会社の分の納付を行う方法を案内しています。

合併のときは、通常の法人税申告とは入力方法が異なる部分がありますので、電子申告・電子納税を行う場合には、この点を意識しておくと安心です。

電子申告が義務になるかどうかは「なくなる会社」を基準に確認します

もう一つ、見落としやすいポイントがあります。

なくなる会社の分の申告について、電子申告が義務になるかどうかは、引き継ぐ会社だけを見て判断するわけではありません。

国税庁によると、引き継ぐ会社が行う、なくなる会社の分の申告についての電子申告義務は、なくなる会社が「特定法人」(資本金が1億円を超える会社や、相互会社、投資法人、通算法人(グループ通算制度を利用している会社)などのことをいいます)に該当するかどうかによって判定します。

たとえば、申告の対象となる事業年度が始まったときの、なくなる会社の資本金または出資金の額が1億円を超えている場合には、引き継ぐ会社の資本金などが1億円以下であっても、なくなる会社の分の申告は電子申告義務の対象になります。

「合併後の会社が小さい会社だから、紙で申告してもよい」と単純には判断できませんので、注意しましょう。

合併前の、なくなる会社の状況も確認しておく必要があります。

「適格合併かどうか」と「納税地」は分けて考えましょう

合併の税務では、「適格合併」「非適格合併」という言葉がよく出てきます。

このため、「適格合併か非適格合併かによって、申告する税務署も変わるのでは」と思われるかもしれません。

しかし、今回説明している、なくなる会社の法人税の納税地については、適格合併か非適格合併かとは分けて考える必要があります。

法人税基本通達1-1-5は、「法人が合併した場合」と定めており、この納税地の取扱いについて、適格合併と非適格合併を区別していません。
したがって、基本的にはどちらの場合も、合併の日以後における、なくなる会社の法人税の納税地は、引き継ぐ会社の納税地となります。

一方で、適格合併に該当するかどうかは、資産や負債を税務上どの金額で引き継ぐのか、譲渡による利益や損失を認識するのか、繰り越してきた欠損金(過去の赤字のことです)を引き継げるのかなど、法人税の計算に大きく影響することがあります。

つまり、「どこの税務署が窓口になるか」という納税地の話と、「法人税をいくら計算するか」という適格・非適格の話は、いったん分けて考えるのが分かりやすいでしょう。

合併後に、なくなった会社の過去の年度が確認されることもあります

会社が合併によってなくなっても、その会社の過去の税務関係まで、すべてなくなるわけではありません。

たとえば、合併後に、なくなった会社の合併前の事業年度について、税務上の確認が必要になることがあります。

このような場合、すでになくなった会社は存在しないため、帳簿や申告書などを引き継いだ会社が対応することになります。

ここで一つ気をつけたいのは、「なくなった会社についての税務調査は、必ず引き継ぐ会社を担当する税務署の職員だけが行う」というところまで、単純に言い切らないことです。

法人税基本通達1-1-5によって、合併の日以後の、なくなる会社の法人税の納税地は引き継ぐ会社の納税地となりますので、申告や更正(税務署による申告内容の見直しのことです)などの手続きを考えるうえでは、この合併後の納税地が重要な基準になります。

ただし、実際の税務調査では、会社の規模や調査の体制などによって、国税局が関係する場合もあります。
そのため、「必ず特定の税務署の職員が調査する」と断定するよりも、合併後は、引き継ぐ会社がなくなった会社の過去の税務についても対応できるように備えておく、と理解しておくのがよいでしょう。

そのためにも、合併のときには、なくなる会社の法人税申告書、総勘定元帳、請求書、領収書、契約書、固定資産に関する資料など、保存が必要な税務・会計資料を、きちんと引き継ぐ会社へ引き継いでおくことが大切です。

「会社がなくなったから、資料も処分してよい」ということではありません。

合併後に内容を確認する必要が生じる可能性も考えて、資料の保存場所や担当者をあらかじめ決めておくと、いざというときも安心です。

「異議申立て」という古い表現には気をつけましょう

古い税務の解説書や、以前の通達の解説では、「異議申立て」という言葉が使われていることがあります。

しかし、現在の国税に関する不服申立て制度では、税務署長などが行った課税処分などに不服がある場合、主に「再調査の請求」または「審査請求」という手続きを利用します。

国税庁によると、再調査の請求は税務署長などに対して行い、審査請求は国税不服審判所長に対して行います。
納税者の方は、原則としてどちらか一方を選んで手続きを行うことができます。

したがって、現在の説明で、「引き継ぐ会社の所轄税務署長に異議申立てをする」という古い表現をそのまま使うのは、適切ではありません。

現在の制度に合わせるのであれば、「更正などの処分に不服がある場合には、再調査の請求や、国税不服審判所への審査請求などの不服申立て手続きを検討します」と説明するのがよいでしょう。

申告期限も忘れずに確認しましょう

法人税の確定申告書は、原則として事業年度が終わった日の翌日から2か月以内に提出します。

合併によって事業年度が途中で終了する場合には、いつもの決算月ではなく、合併の日の前日を基準として、最後の事業年度が終わることがあります。

そのため、普段の決算スケジュールだけを見ていると、申告の準備が遅れてしまう可能性があります。

たとえば、3月決算の会社が10月1日に合併によってなくなったのであれば、原則として9月30日までが最後の事業年度です。

「翌年3月決算だから、まだ時間がある」と考えるのではなく、合併の効力発生日が決まった時点で、法人税の申告期限を確認しておく必要があります。

なお、申告期限の延長の特例を受けている場合などには、期限が異なることがありますので、実際の申告期限は個別に確認するようにしてください。

合併のときは「法人税だけ」を確認すればよいわけではありません

今回説明した法人税基本通達1-1-5は、あくまで、なくなる会社の法人税の納税地についての取扱いです。

実際の合併では、法人税だけでなく、消費税、住民税や事業税といった地方税、源泉所得税などについても、それぞれ確認が必要になることがあります。

それぞれの税金には、それぞれ独自の申告、届出、期限のルールがありますので、

「法人税が引き継ぐ会社の納税地になるのだから、ほかの税金もすべてまったく同じ手続きでよい」と考えるのは避けたほうがよいでしょう。

消費税の各種届出についても、法人税とは別に、合併後の取扱いを個別に確認しておくことをおすすめします。

合併を行う場合には、法人税だけでなく、税金の種類ごとに必要な申告や届出を、あらためて整理しておくことが大切です。

まとめ

会社が合併によってなくなった場合でも、その会社に関する税務上の義務まで、すべて消えてしまうわけではありません。

国税の納付義務などは引き継ぐ会社へ引き継がれ、合併の日以後における、なくなる会社の法人税の納税地は、引き継ぐ会社の納税地となります。

したがって、実務上は、「なくなった会社が以前どこの税務署に申告していたか」ではなく、「合併後、その会社の税務上の義務を引き継いだ会社の納税地はどこか」を確認することが重要です。

また、e-Taxで、なくなる会社の分の申告をする場合には、引き継ぐ会社の利用者識別番号を使い、なくなる会社の分の申告であることが分かるように法人名を表示するなど、通常の申告とは異なる取扱いがあります。

さらに、適格合併か非適格合併かという問題は、資産・負債や欠損金などの税務処理には大きな影響がありますが、今回の「なくなる会社の法人税の納税地」という論点とは、分けて考える必要があります。

合併では、会社法上の手続きだけでなく、最後の事業年度の決算、法人税・消費税などの申告、各種届出、帳簿書類の引き継ぎなど、多くの作業が同時に発生します。

合併の効力発生日が決まったら、早めに税務上の手続きを一覧にして確認しておくと安心です。

なお、この記事は2026年8月12日時点で確認できる国税庁・e-Gov法令検索の公表情報をもとに、一般の方向けに分かりやすく整理したものです。
個別の合併では、合併の形態、適格合併・非適格合併の判定、グループ通算制度の適用状況、申告期限の延長の有無などによって、税務処理が異なる場合があります。
実際の申告や組織再編を行う際には、正確な内容を所轄の税務署でご確認いただくことをおすすめします。