大手企業の役員が中古リゾートマンションを買うとき、あえてローンを組むと節税になるのか?

別荘とローン控除には「二重の壁」がある。高所得の会社役員が陥りやすい、リゾート物件節税の誤解

中古のリゾートマンションを購入したい。
価格は1,000万円。
現金で買える資金はある。
利用頻度は月2〜3回程度。

このような場合に、「あえてローンを組んだ方が節税になるのではないか」と考える方は少なくありません。

特に会社役員や高所得の給与所得者の方は、所得税・住民税の負担も大きいため、「借入を使えば税金が下がるのではないか」「不動産を持てば経費が使えるのではないか」と考えがちです。

しかし、今回のケースでは、節税目的であえてローンを組むメリットは基本的にありません。

むしろ、税務署はこのような物件について、かなり冷静に見ます。

ポイントは、そのリゾートマンションが「生活用の別荘」なのか、「賃貸収入を得るための不動産」なのか、という点です。

まず結論:自分で月2〜3回使うリゾートマンションなら、ローン節税は難しい

今回の前提は、次のようなものです。

購入予定物件は中古リゾートマンション。
価格は1,000万円。
購入資金は現金で用意できる。
利用目的は、主に自分や家族が月2〜3回程度利用すること。

この条件であれば、税務上は基本的に「別荘・セカンドハウス」と見られます。

つまり、生活・保養・余暇のための資産です。

住宅ローン控除は、住宅ローンを組めば自動的に使える制度ではありません。
国土交通省の住宅ローン減税の要件でも、適用を受ける人が「主として居住の用に供する家屋」であること、引渡しや工事完了から6か月以内に居住の用に供すること、借入金の償還期間が10年以上であることなどが示されています。
令和8年度税制改正により住宅ローン減税は5年間延長され、令和8年1月1日から令和12年12月31日までの入居分も対象になりますが、前提はあくまで「主として居住する住宅」です。

さらに、もう一つ大切な要件があります。
住宅ローン控除は、控除を受けるその年の合計所得金額が2,000万円以下でなければ使えません。
大手企業の役員の方は、役員報酬の水準によっては、この所得の要件をそもそも満たせないケースも珍しくありません。
「主として居住する住宅ではないから使えない」という以前に、「所得が高すぎて使えない」という壁に先に当たることもあるのです。

月2〜3回使うリゾートマンションは、通常、「主として居住する住宅」とは言いにくいです。

したがって、ローンを組んでも、住宅ローン控除の対象にならない可能性が高いです。

ここを誤解してはいけません。

ローンを組むこと自体が節税になるのではありません。

住宅ローン控除など、税法上認められた制度の要件を満たす場合に限って、税金が減るのです。

税務署はここを見る:「住んでいるのか、遊びに行っているのか」

税務署目線で見ると、今回の最大のポイントは非常にシンプルです。

そのマンションに住んでいるのか。

それとも週末や休日に使っているだけなのか。

この違いは大きいです。

住宅ローン控除を受けるには、一般に住宅取得後6か月以内に入居し、引き続き居住していること、床面積の2分の1以上が専ら自己の居住用であること、返済期間10年以上の住宅ローンを利用していること、合計所得金額が2,000万円以下であることなど、複数の要件を同時に満たす必要があります。
国税庁も、マイホーム取得時の控除要件として、入居・継続居住・床面積・ローン期間・所得要件などを示しています。

一方、リゾートマンションの場合、実態としては次のような使い方になることが多いです。

平日は本宅で生活している。
住民票も本宅にある。
勤務先への通勤も本宅から行っている。
リゾートマンションには週末や休日に行く。
生活の本拠はあくまで本宅にある。

このような状況であれば、税務署はその物件を「居住用の本宅」とは見ません。

税務署が重視するのは、形式ではなく実態です。

仮に住民票だけ移したとしても、実際には本宅で生活し、勤務先にも本宅から通い、公共料金や郵便物、家族の生活実態も本宅にあるなら、税務署は「実際の居住地はどこか」を確認します。

税務調査や申告内容の確認で見られるのは、たとえば次のような点です。

どこから通勤しているか。
家族はどこで生活しているか。
郵便物や公共料金の利用状況はどうか。
年間を通じて何日程度滞在しているか。
本宅とリゾートマンションのどちらが生活の本拠なのか。

月2〜3回の利用であれば、通常は「保養目的の利用」と判断される可能性が高いです。

「ローン利息を経費にできる」は、事業や賃貸に使う場合の話

不動産を買うと、「ローン利息は経費になる」と聞いたことがある方も多いと思います。

これは半分正しく、半分誤解を招きやすい表現です。

ローン利息が経費になるのは、その不動産を賃貸に出して不動産所得を得ている場合などです。
国税庁は、不動産所得について、総収入金額から必要経費を差し引いて計算すると説明しており、必要経費になるものは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものとされています。
主な必要経費として、固定資産税、損害保険料、減価償却費(高額な資産を何年かに分けて少しずつ経費にしていく仕組み)、修繕費などが挙げられています。

つまり、ポイントは「収入を得るために直接必要か」です。

自分が休日に利用するためのリゾートマンションであれば、ローン利息は自分の生活・趣味・保養のための支出です。

その場合、所得税の必要経費にはなりません。

たとえば、1,000万円の物件を現金で買う代わりに、あえて1,000万円のローンを組んだとします。
金利が年2%なら、単純計算で年間利息は約16万円です。

この16万円が経費にならず、住宅ローン控除も使えないなら、何が起きるでしょうか。

答えは単純です。

税金は減らず、利息負担だけが増えます。

これでは節税ではありません。

単なる追加コストです。

もちろん、手元資金を残しておきたい、投資資金を別に使いたい、流動性を確保したいという資金繰り上の理由でローンを組むことはあります。

しかし、それは節税ではなく、資金管理の話です。

賃貸に出せば節税になるのか?

では、リゾートマンションを一部賃貸に出せばどうでしょうか。

ここで話は少し変わります。

空いている期間に貸し出し、賃料収入を得るなら、不動産所得の計算が必要になります。

この場合、賃貸収入に対応する固定資産税、管理費、修繕費、減価償却費、ローン利息などは、一定の範囲で必要経費になる可能性があります。

ただし、ここで重要なのが自己利用部分との按分(あんぶん)です。
按分とは、自分で使った割合と貸し出した割合に応じて、経費を分けることです。

自分が月2〜3回使い、それ以外を貸す場合、物件全体が100%賃貸用とは言えません。

自分で使っている部分は家事費、つまり私的な支出です。

賃貸に使っている部分だけが、必要経費の対象になります。

税務署はここをよく見ます。

年間何日、自分で使ったのか。
年間何日、実際に貸したのか。
貸出募集を本当にしていたのか。
管理会社との契約はあるのか。
予約サイトの掲載実績はあるのか。
賃料の入金記録はあるのか。
清掃費や管理費をどのように按分したのか。

「いつか貸すつもりだった」だけでは弱いです。

「たまに貸したことがある」程度で、経費だけ大きく計上して赤字を作ると、税務署は疑問を持ちます。

不動産所得の必要経費は、家事上の経費と明確に区分できるものに限られるというのが基本です。
自分の利用と賃貸利用が混在している物件では、利用日数や貸付実績などに基づく合理的な按分が重要になります。

リゾートマンションの赤字を役員報酬とぶつけられるのか

高所得の会社役員の方が特に気にされるのが、ここです。

「不動産所得を赤字にして、役員報酬と損益通算(そんえきつうさん)できないか」

損益通算とは、ある所得の赤字を別の所得の黒字から差し引いて、税金を減らす仕組みです。
この発想は、税務署がかなり警戒するところです。

不動産所得が赤字になった場合、原則として他の所得と損益通算できる場面があります。
国税庁も、不動産所得の損失があるときは他の黒字所得から差し引くことができると説明しています。

しかし、例外があります。

今回のようなリゾートマンションでは、この例外が問題になります。

国税庁は、別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係る損失は、損益通算の対象にならないとしています。

さらに、損益通算に関する国税庁の説明でも、不動産所得の損失のうち、別荘等の生活に通常必要でない資産の貸付けに係るものは、その損失がなかったものとみなされ、他の所得から控除できないとされています。

これは非常に重要です。

つまり、リゾートマンションを少し貸し出して赤字を作り、その赤字を役員報酬とぶつけて節税する、という方法は簡単には認められません。

税務署はこう見ます。

「これは本当に収益目的の不動産ですか」「実態は別荘ではありませんか」「赤字を作るために経費を入れていませんか」「自己利用分まで経費にしていませんか」「趣味・保養目的の資産ではありませんか」

特に、物件がリゾート地にあり、本人や家族が定期的に利用している場合、税務署は「別荘性」を強く意識します。

会社役員の場合、会社経費にする発想も要注意

大手企業にお勤めの雇われ役員ということですので、もう一つ注意点があります。

それは、個人で使うリゾートマンションを会社経費に寄せる発想です。

たとえば、会社の福利厚生施設として扱う、会社の保養所として契約する、会社に費用負担してもらう、というような形です。

本当に会社の福利厚生施設として、役員だけでなく従業員にも公平に利用機会があり、会社の規程が整備され、利用実績も管理されているなら、法人側の福利厚生費として検討する余地はあります。

しかし、実態として特定の役員やその家族が主に使っている場合は、税務署は厳しく見ます。

役員が会社から経済的な利益を受けた場合、その内容によっては役員給与の問題になります。
国税庁は、役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、利益の額が毎月おおむね一定のものは定期同額給与(損金として会社の経費に算入できる役員報酬の一形態)に該当し得る一方、その他のものは定期同額給与に該当せず、損金算入が認められない場合があると説明しています。

会社役員の場合、税務署は「会社のお金」と「個人の私的支出」が混ざることを特に警戒します。

今回のようなリゾートマンションは、まさにその線引きが問題になりやすい資産です。

個人で楽しむために買うなら、個人資金で買う。
会社の費用にはしない。
これが一番安全です。

現金購入とローン購入、どちらがよいか

今回のケースでは、税務上は現金購入の方がシンプルです。

現金で1,000万円を支払えば、ローン利息は発生しません。

住宅ローン控除が使えないなら、ローンを組むことで税負担が軽くなるわけではありません。

むしろ、金利、事務手数料、抵当権設定費用、保証料などが追加でかかる可能性があります。

ローンを組む合理性があるとすれば、税金ではなく資金繰りです。

たとえば、手元資金を厚く残したい。今後の修繕費や管理費の負担に備えたい。他の投資機会に資金を使いたい。
急な医療費や家族資金を残したい。

このような理由なら、ローンを検討する余地はあります。

しかし、税務上の節税を目的にするなら、今回の条件ではおすすめしません。

住宅ローン控除は、そもそも居住用でないため使えません。
加えて、合計所得金額が2,000万円を超えている場合には、所得要件の面からも使えません。
ローン利息も、私的利用なら経費になりません。
賃貸赤字を役員報酬とぶつけるのも、別荘性があると制限されます。
これらの点だけで、結論はかなり明確です。

むしろ重要なのは「税金」より「維持費」と「出口」

中古リゾートマンションを買うときに、本当に注意すべきなのは、所得税の節税よりも維持費と出口です。

リゾートマンションは購入価格が安く見えることがあります。

1,000万円という価格だけを見ると、手が届きやすい印象を受けるでしょう。

しかし、購入後には次のような費用がかかります。

管理費。
修繕積立金。
固定資産税。
火災保険料。
水道光熱費。
室内設備の修繕費。
家具・家電の買替費用。
大規模修繕時の一時金。
売却時の仲介手数料。

特に中古リゾートマンションでは、管理費や修繕積立金が高めの物件もあります。

築年数が古い場合、将来の大規模修繕、配管更新、共用部の老朽化、空室率、管理組合の財政状況なども確認が必要です。

この種の物件は「税金で得するか」よりも、「持ち続けられるか」「売りたいときに売れるか」の方が重要です。

節税を期待して買う物件ではありません。

生活の楽しみとして買う物件です。

だからこそ、税務上は無理に経費化しようとせず、最初から「自分の余暇のための資産」として整理した方が安全です。

税務署に問題視されやすい申告パターン

今回のようなリゾートマンションで、税務署が問題視しやすいのは次のようなケースです。

まず、住宅ローン控除を無理に受けるケースです。
実際には本宅で生活しているのに、リゾートマンションを居住用住宅として申告するのはかなり危険です。
また、合計所得金額が2,000万円を超えているにもかかわらず控除を申告するケースも、同様に問題になります。
居住実態の問題と所得要件の問題、この両方が絡む場合もあります。

次に、自己利用が多いのに、管理費、修繕費、ローン利息、減価償却費を全額経費にするケースです。
これは、家事費と業務用経費の区分ができていないと見られます。

さらに、賃貸実績が乏しいのに、大きな不動産所得の赤字を作って給与所得と損益通算するケースです。
別荘等の保養目的資産に係る貸付損失は、損益通算の対象外とされるため、税務署は強く確認します。

最後に、会社役員として会社に費用負担させるケースです。
会社の保養所という名目でも、実態として特定役員の私的利用なら、役員給与や経済的利益の問題になり得ます。

では、どう買うのが一番安全か

今回の条件であれば、私なら次のように整理します。

まず、完全に自分や家族で使うリゾートマンションとして購入するなら、現金購入で問題ありません。
ローンを組んでも住宅ローン控除は期待しにくく(居住用でないこと、また合計所得金額が高い場合は所得要件も満たせないこと)、利息も経費になりません。
節税目的のローンは不要です。

次に、将来的に貸す可能性があるなら、最初から記録を残してください。
自己利用日、貸出日、募集期間、予約履歴、賃料入金、清掃費、管理会社とのやり取りを残すことが大切です。

そして、賃貸に出す場合でも、自己利用分と賃貸利用分の按分を前提にしてください。
全額経費という発想は危険です。

さらに、赤字を給与所得と通算する前提で収支計画を作らないことです。
リゾートマンションは、別荘等の生活に通常必要でない資産と見られる可能性があり、その貸付けに係る損失は損益通算の対象外となる可能性があります。

最後に、会社のお金とは切り離すことです。
雇われ役員であればなおさら、会社経費にする発想は慎重にすべきです。

まとめ:今回の答えは「節税よりも、安心して楽しめるか」

中古リゾートマンションを1,000万円で購入し、月2〜3回程度使う。

この前提なら、税務上の答えははっきりしています。

あえてローンを組んでも、節税になる可能性は低いです。

現金で買えるなら、現金購入の方が税務上はシンプルです。

住宅ローン控除は、主として居住する住宅が対象です。
月2〜3回使うリゾートマンションは、通常、別荘・保養目的の資産と見られます。
さらに、大手企業の役員の方は合計所得金額が2,000万円を超えるケースも多く、居住実態の問題とは別に、そもそも所得要件でも使えない可能性があります。
「居住用ではない」「所得要件も満たさない」という、二重の壁が立ちはだかっているわけです。

ローン利息も、私的利用なら所得税の必要経費にはなりません。

賃貸に出すとしても、自己利用部分との按分が必要で、別荘性が強い場合には赤字の損益通算も制限されます。

税務署は、形式より実態を見ます。
「ローンを組んだかどうか」ではなく、「本当に住んでいるのか」「本当に収益目的で貸しているのか」「自己利用分まで経費にしていないか」「給与所得と不自然に赤字をぶつけていないか」を見ます。

今回のリゾートマンションは、節税商品として考えるより、生活を豊かにするための資産として考えた方がよいでしょう。

そのうえで、購入前には管理費、修繕積立金、固定資産税、将来の大規模修繕、売却しやすさを必ず確認してください。

税金で得をするかより、長く気持ちよく使えるか、そして将来手放せるか。そこが一番大事です。

※この記事は作成時点の情報に基づいています。
税制は年度によって改正される場合があります。
実際の適用にあたっては個別の事情によって判断が異なることがありますので、詳細は税務署にご確認ください。