役員社宅が「小規模住宅」にあてはまるかどうかの見分け方

役員社宅が「小規模住宅」に該当する条件とは?マンションの共用部分と役員負担額に注意

~マンションの共用部分と、役員が払う家賃には注意しましょう~

会社が住宅を持っていたり、マンションなどを借りたりして、社長や取締役といった役員に貸すことがあります。
いわゆる「役員社宅」です。

役員社宅について、まず知っておいていただきたいのは、会社が払った家賃が、そのまま全部役員個人の税金の対象になるわけではない、ということです。
役員から、税金のルール上必要とされる一定額の家賃を受け取っていれば、社宅を貸したことによる利益は、原則として役員の給料としては扱われません。
この「税金のルール上必要とされる家賃」のことを、賃貸料相当額といいます。

ただし、この賃貸料相当額は、どの住宅でも同じ計算方法になるわけではありません。
住宅の広さや、税金の計算で使う「その建物は何年使えるとみなすか」という年数(法定耐用年数といいます)、会社がその住宅を持っているのか、それとも外から借りているのかなどによって、計算方法が変わってきます。
なかでも特に間違えやすいのが、役員に貸している住宅が「小規模住宅」にあてはまるかどうかの判定です。

この記事では、役員社宅における小規模住宅の判定基準、マンションの共用部分の考え方、固定資産税の課税標準額(固定資産税を計算するときのもとになる金額)の確認方法、役員から受け取るべき家賃について、経営者の方にもわかりやすいように、順番に説明していきます。

まず確認したい4つのポイント

役員社宅については、まず次の4点を確認しておきましょう。
一つ目は、法定耐用年数が30年以下の住宅であれば、床面積が132平方メートル以下かどうかという点です。
二つ目は、法定耐用年数が30年を超える住宅であれば、床面積が99平方メートル以下かどうかという点です。
三つ目は、マンションの場合、専有部分(自分の部屋の部分)だけでなく、廊下やエントランスなどの共用部分を合理的に割り振った面積も含めて判定できているかという点です。
そして四つ目は、役員から、原則として賃貸料相当額以上の家賃を受け取っているかという点です。

ここで、多くの経営者の方が誤解しやすい点があります。
一般の従業員に社宅を貸す場合は、従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、差額を給料として課税しなくてよい、という取扱いがあります。
ところが、この「50%以上受け取ればOK」というルールは、役員社宅には原則として使えません。
役員から受け取っている家賃が賃貸料相当額より少ない場合は、その差額が役員に対する給料として課税されます。
役員から家賃をまったく受け取っていない場合は、原則として賃貸料相当額の全額が給料として課税されます。
「従業員と同じ感覚で家賃を決めていた」というケースは実務上よくありますので、この違いは、ぜひ最初に押さえておいていただきたいポイントです。

役員社宅の「賃貸料相当額」とは

会社が役員に住宅を安く貸すと、役員は通常より少ない負担で住宅を利用できることになります。
このとき役員は、会社から「安く住宅を利用できるという利益」を受け取っていると考えます。
税金の世界では、現金ではなく、物やサービスという形で受け取る利益のことを「経済的利益」と呼びます。
会社が役員に与えた経済的利益は、原則として給料の一部として扱われます。

ただし、役員から税金のルール上定められた賃貸料相当額を受け取っていれば、社宅を貸したことによる経済的利益はなかったもの、として扱われます。
ここで注意していただきたいのは、この賃貸料相当額は、不動産会社が提示するような一般的な家賃相場とはまったく別物だ、という点です。
原則として、建物や土地の固定資産税の課税標準額や、建物の床面積などを使って計算します。
「近所の似た物件の家賃相場だから、これくらいでいいだろう」という考え方では計算できませんので、ご注意ください。

小規模住宅にあてはまるかどうかの基準

役員に貸す住宅が小規模住宅にあてはまるかどうかは、住宅の法定耐用年数と床面積によって判定します。
法定耐用年数が30年以下の住宅であれば、床面積が132平方メートル以下であてはまります。
132平方メートルは、おおよそ40坪です。
一方、法定耐用年数が30年を超える住宅であれば、床面積が99平方メートル以下であてはまります。
99平方メートルは、おおよそ30坪です。
整理すると、法定耐用年数が30年以下の場合は床面積132平方メートル以下、30年を超える場合は床面積99平方メートル以下が、小規模住宅となる基準です。

国税庁の所得税基本通達では、この算式で使う「木造家屋以外の家屋」とは、法定耐用年数が30年を超える住宅用の建物をいい、「木造家屋」とは、法定耐用年数が30年以下の住宅用の建物をいうものとして取り扱っています。
そのため、「鉄骨造だから」「鉄筋コンクリート造だから」という建物の構造の名前だけで判断するのではなく、その住宅に実際に適用される法定耐用年数を確認することが大切です。
名前と実際の耐用年数の区分が一致しないケースもありますので、思い込みで判断しないようにしましょう。

マンションは専有面積だけで判定しません

マンションのように、1棟の中に複数の世帯が入っている建物では、1世帯として使う部分の床面積で、小規模住宅にあてはまるかどうかを判定します。
ここで、ぜひ注意していただきたいことがあります。
賃貸借契約書や物件資料に書かれている「専有面積」の数字だけでは、正しく判定できないのです。

マンションには、共用廊下や階段、エントランス、エレベーターホール、集合玄関など、入居者が共同で使う共用部分があります。
小規模住宅にあてはまるかどうかを判定するときは、専有部分だけでなく、これらの共用部分のうち、対象の部屋に対応する面積も加えて考えます。
国税庁の質疑応答事例でも、役員に貸したマンションについては、賃貸料相当額の計算と、小規模住宅の面積判定の両方について、共用部分を含めて計算することが示されています。

共用部分は合理的な方法で割り振ります

共用部分は、対象の部屋の専有面積の割合、登記上の持分の割合、敷地権の割合など、物件の状況に応じた合理的な方法で割り振ります。
専有面積の割合を使う方法は、よく用いられる方法のひとつです。
ただし、すべてのマンションについて、必ずこの方法を使わなければならない、というわけではありません。
建物や土地の状況に応じて、合理的だと説明できる計算方法を選ぶ必要があります。

たとえば、建物や土地の登記事項証明書、賃貸借契約書、売買契約書、物件の平面図、管理規約、専有面積がわかる資料、共用部分の面積がわかる資料、敷地権割合や共有持分がわかる資料などを確認しながら計算していきます。
国税庁の所得税基本通達では、固定資産税の課税標準額が、貸与した部分以外も含めて決められている場合には、建物や土地の状況に応じて合理的に割り振り、貸した部分に対応する賃貸料相当額を計算することとされています。

たとえば、法定耐用年数が30年を超えるマンションで、専有面積が94平方メートルだったとします。
専有面積だけを見ると、99平方メートル以下ですので、一見すると小規模住宅にあてはまるように見えます。
しかし、合理的に割り振った共用部分が7平方メートルあるとすると、判定に使う床面積は94平方メートルに7平方メートルを足した101平方メートルになります。
101平方メートルは99平方メートルを超えますので、この例では小規模住宅にはあてはまりません。
このように、特に専有面積が90平方メートル台のマンションは、共用部分を加えることで99平方メートルを超えてしまう可能性があります。
契約書に書かれた専有面積だけで判断せず、共用部分を含めた面積を確認するようにしましょう。

小規模住宅の賃貸料相当額の計算方法

役員に貸している住宅が小規模住宅にあてはまる場合、1か月あたりの賃貸料相当額は、その年度の建物の固定資産税の課税標準額に0.2パーセントを掛けた金額と、12円にその建物の総床面積を掛けて3.3平方メートルで割った金額と、その年度の敷地の固定資産税の課税標準額に0.22パーセントを掛けた金額を合計して計算します。
この計算方法は、小規模住宅を一般の従業員に貸す場合の賃貸料相当額の計算方法と同じ算式です。

区分マンション(分譲マンションの1室など)では、専有面積だけを算式に入れればよい、というわけではありません。
共用部分を含めた建物全体の床面積や、建物・敷地の固定資産税の課税標準額をもとに計算し、対象の部屋に対応する金額を合理的に割り振ります。
すでに対象の部屋に対応する建物・土地の課税標準額が明確になっている場合は、その資料をもとに計算できます。
一方、建物全体や土地全体の課税標準額しかわからない場合には、専有面積割合、持分割合、敷地権割合など、物件の状況に合った方法で割り振る必要があります。
どの割合・どの計算方法を使ったのかは、後から税務調査などで説明できるよう、計算表と根拠資料を保存しておきましょう。

「固定資産税額」ではなく、固定資産課税台帳の価格を確認しましょう

賃貸料相当額の計算で、実務上とても間違えやすいのが、固定資産税に関する数字です。
計算に使うのは、会社や所有者が実際に納めた固定資産税の税額ではありません。
国税庁の取扱いでは、原則として、毎年1月1日時点における固定資産の価格として、固定資産課税台帳に登録されている金額をもとに計算します。

固定資産税の納税通知書や課税明細書には、評価額、価格、課税標準額、固定資産税相当額、都市計画税の課税標準額、実際の固定資産税額など、似たような名前の数字がいくつも並んでいることがあります。
特に土地については、住宅用地の特例や負担調整といった仕組みが関係することがあり、書類に「課税標準額」と書いてあるからといって、その数字をそのまま使ってよいとは限りません。
ここは慎重に確認しておきたいところです。

どの数字を使えばよいかわからない場合は、固定資産課税台帳の登録内容を確認する、固定資産評価証明書などを取得する、貸主や管理会社に資料を依頼する、物件所在地の市区町村へ確認するといった対応をおすすめします。
「課税明細書に課税標準額と書いてあるから、この数字で間違いない」と決めつけず、その金額がどういう性質のものかまで確認しておくと安心です。

借り上げ社宅でも、固定資産税の資料が必要です

会社が所有している住宅であれば、会社側で固定資産税の課税明細書などを確認しやすいでしょう。
一方、会社が外部の大家さんや不動産会社から住宅を借りて、それを役員に貸す「借り上げ社宅」の場合、会社は物件の所有者ではありません。
そのため、会社の手元に、固定資産税の課税標準額がわかる資料がないことがあります。

しかし、小規模住宅の賃貸料相当額は、借り上げ社宅の場合であっても、固定資産税の課税標準額などを使った算式で計算することに変わりはありません。
そのため、貸主や管理会社に、建物の固定資産課税台帳上の価格、敷地の固定資産課税台帳上の価格、建物全体の床面積、対象の部屋の専有面積、共用部分を含めた床面積、敷地権割合や共有持分、対象の部屋に対応する建物・土地の金額といった情報の提供をお願いする必要が出てきます。

貸主によっては、資料の提供に時間がかかったり、一部の情報を教えてもらえなかったりすることもあります。
役員社宅として契約する予定がある場合は、入居してから慌てないように、できるだけ契約前に必要な資料を取得できるかどうかを確認しておくと安心です。

固定資産税の価格が変わった場合は、再計算しましょう

固定資産課税台帳に登録された価格が改訂された場合は、原則として、役員社宅の賃貸料相当額も計算し直します。
新しい金額を使い始める時期は、改訂後の価格にもとづく固定資産税の第1期の納期限が属する月の翌月分からです。
たとえば、第1期の納期限が4月中であれば、原則として5月分から改訂後の金額を使うことになります。

なお、一般の従業員に貸している社宅については、固定資産税の課税標準額の増減が20%以内であれば、再計算を省略できるという取扱いがあります。
しかし、この省略のルールは、あくまで使用人(従業員)社宅についてのものです。役員社宅について、同じ省略ルールをそのまま使ってしまわないよう、注意しましょう。

役員には、原則として「50%ルール」がありません

役員社宅で特に間違えやすいのが、役員から受け取る家賃の金額です。
一般の従業員に社宅を貸す場合は、従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、賃貸料相当額との差額を給料として課税しなくてよい、という取扱いがあります。
たとえば、従業員社宅の賃貸料相当額が月額2万円の場合、従業員から月額1万円以上を受け取っていれば、原則として差額は給料として課税されません。

しかし、この取扱いを、そのまま役員社宅に当てはめることはできません。
役員社宅では、原則として、計算した賃貸料相当額以上の家賃を役員から受け取る必要があります。
たとえば、役員社宅の賃貸料相当額が月額2万円であるにもかかわらず、役員から月額1万円しか受け取っていない場合には、差額の月額1万円が給料として課税されます。
役員から家賃をまったく受け取っていない場合には、原則として月額2万円の全額が給料として課税の対象になります。

通常の役員社宅については、賃貸料相当額以上を役員から受け取る、という理解で問題ありません。
ただし、所得税基本通達には、住宅の一部を会社の業務のために使っている場合や、単身赴任の方などが住宅の一部だけを使っている場合、複数の役員社宅について一定の条件を満たす場合など、使用状況を考慮した取扱いも用意されています。
そのため、「どんな場合でも例外なく全額を受け取らなければならない」と言い切ってしまうのではなく、「原則として、賃貸料相当額以上を受け取る必要がある」とお伝えするのが、より正確な説明になります。
個別の事情がある場合は、決めつけずに確認することをおすすめします。

役員社宅では、「50%」という数字が、もうひとつ別の場面でも出てきます。
小規模住宅にあてはまらない借り上げ社宅では、賃貸料相当額を計算するときに、固定資産税の課税標準額などを使った所定の算式による金額と、会社が家主に支払っている家賃の50%とを比較し、金額が多い方が賃貸料相当額になります。
これは、「役員から賃貸料相当額の50%を受け取ればよい」という意味ではありません。
あくまで、賃貸料相当額そのものを決めるための比較計算です。
たとえば、比較した結果、賃貸料相当額が月額8万円になった場合には、役員から原則として月額8万円以上を受け取る必要があります。
似ている数字ですので混同しがちですが、使用人社宅で本人から受け取る家賃についての50%と、小規模住宅でない借り上げ役員社宅の賃貸料相当額を計算するときの50%は、まったく別の取扱いですので、分けて理解しておきましょう。

小規模住宅にあてはまらない場合の計算

役員に貸す住宅が小規模住宅にあてはまらない場合は、会社が所有している住宅か、会社が外部から借りた住宅かによって計算方法が変わります。
会社が所有している住宅であれば、その年度の建物の固定資産税の課税標準額に12パーセントを掛けた金額と、その年度の敷地の固定資産税の課税標準額に6パーセントを掛けた金額を合計し、その金額を12で割った金額が、1か月あたりの賃貸料相当額になります。
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物については、建物部分の割合は12パーセントではなく10パーセントを使います。

会社が外部から借りている住宅であれば、会社所有の場合と同じ方法で計算した金額と、会社が家主に支払っている家賃の50パーセントを比較して、金額の多い方が賃貸料相当額になります。
小規模住宅にあてはまるかどうかによって、役員が負担すべき家賃の金額が大きく変わることがありますので、あわてずに一つずつ確認していきましょう。

役員から受け取る家賃が少ないと、どうなるのか

役員から受け取っている家賃が賃貸料相当額より少ない場合は、原則として、その差額が役員に対する給料として扱われます。
給料として扱われる場合には、源泉所得税(会社が役員や従業員の給料からあらかじめ差し引いて、国に納める所得税のことです)の計算や、給与台帳、年末調整(1年間の所得税を最終的に精算する手続きです)、源泉徴収票などへの反映を確認する必要があります。
たとえば、賃貸料相当額が月額3万円で、役員から受け取った家賃が月額1万円であれば、差額の月額2万円が給料として課税の対象になります。

ここで気をつけていただきたいのが、「会社の経費として家賃を処理しているから、役員個人の税金には関係しない」というわけではない、ということです。
会社側の経費の処理と、役員個人に対する給料としての課税は、それぞれ分けて確認する必要があります。
この点は見落とされがちですので、ぜひ意識しておいてください。

社会保険は、所得税とは別の方法で計算します

役員社宅では、所得税だけでなく、健康保険や厚生年金保険の取扱いにも注意が必要です。
ここまで説明してきた賃貸料相当額は、所得税の計算に使うものです。
社会保険では、この所得税の賃貸料相当額を、そのまま使うわけではありません。

健康保険・厚生年金保険では、社宅を貸すことを「現物給与」として評価します。
現物給与とは、現金ではなく、住宅や食事といった形で受け取る報酬のことです。
住宅の現物給与は、厚生労働大臣が定める都道府県別の現物給与価額などを使って金額に置き換え、役員が実際に負担している社宅家賃なども踏まえたうえで、社会保険上の報酬に含める金額を確認します。
つまり、所得税・源泉徴収における賃貸料相当額と、健康保険・厚生年金保険における住宅の現物給与価額は、それぞれ別々に計算するものだと考えてください。

所得税の面で給料としての課税が発生していないからといって、社会保険のほうでも現物給与が必ずゼロになるとは限りません。
反対に、所得税上の差額の金額を、そのまま社会保険上の報酬に加えるわけでもありません。
社会保険については、最新の「全国現物給与価額一覧表」を確認し、必要に応じて年金事務所や社会保険労務士に確認するようにしましょう。

役員本人が契約した住宅は、原則として社宅にはなりません

役員自身の名義で賃貸借契約を結び、その家賃を会社が負担する場合は、原則として、会社による社宅の貸与にはなりません。
また、会社が役員に現金で住宅手当を支給する場合も、その住宅手当は原則として給料として扱われます。
役員社宅として取り扱うためには、一般的には、会社が所有している住宅を役員に貸すか、会社が貸主と賃貸借契約を結び、その住宅を役員に貸すか、どちらかの形をとる必要があります。

「会社がお金を出して家賃を払っているから社宅になる」というわけではなく、誰が賃貸借契約の当事者になっているかが重要なポイントです。
契約書の名義を、あらためて確認しておくと安心です。

豪華社宅は、別の取扱いになります

床面積の基準を満たしていれば、どんな住宅でも小規模住宅の計算方法を使える、というわけではありません。
社会通念上、一般的な社宅とは認められない、いわゆる「豪華社宅」については、固定資産税の課税標準額を使った通常の算式は使えません。
豪華社宅にあてはまる場合は、その住宅について通常支払うべき使用料に相当する金額が、賃貸料相当額になります。

床面積が240平方メートルを超える住宅については、住宅の取得価額、会社が支払っている家賃、内装や外装の状況、設備の内容、一般的な社宅として貸与される住宅かどうかといった事情を総合的に考えて判定します。
ただし、床面積が240平方メートルを超えただけで、ただちに豪華社宅になるわけではありません。
一方で、240平方メートル以下であっても、一般的な住宅にはないプールなどの設備や、役員個人の好みを著しく反映した設備がある場合には、豪華社宅にあてはまることがあります。面積だけで判断せず、住宅全体の様子を確認することが大切です。

役員社宅を始める前に準備しておきたい資料

役員社宅の税務処理を適切に行うために、あらかじめ資料を準備しておきましょう。
物件に関しては、賃貸借契約書、売買契約書、建物と土地の登記事項証明書、建物の平面図、管理規約、専有面積と共用部分がわかる資料、敷地権割合や共有持分がわかる資料、固定資産税の課税明細書、固定資産評価証明書などを揃えておくと安心です。
社内では、社宅管理規程、役員との社宅使用契約書、賃貸料相当額の計算表、面積や固定資産税の金額を割り振った計算資料、役員家賃の決定記録、給与から社宅家賃を差し引いた記録、家賃を受け取ったことがわかる通帳や会計帳簿を準備しておきましょう。

特に、区分マンションの計算では、どの資料を使い、どの割合で共用部分や固定資産税の金額を割り振ったのかを、記録として残しておくことが大切です。
あとから見返せる形にしておくと、税務調査のときにも慌てずに説明できます。

実務上の手続きの流れ

役員社宅を導入するときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
まず、契約名義を確認します。借り上げ社宅の場合は、原則として会社が貸主と賃貸借契約を結びます。
次に、法定耐用年数を確認します。
建物の構造や用途から、税金の計算上の法定耐用年数が30年以下か、30年を超えるかを確認しましょう。
続いて、共用部分を含めた床面積を確認します。
マンションでは、専有面積に共用部分を合理的に割り振った面積を加えて、小規模住宅にあてはまるか判定します。

その次に、固定資産税に関する金額を確認します。
固定資産課税台帳に登録された建物と土地の価格を確認し、書類に記載された項目名だけで判断せず、どの金額を使うべきかを確認しましょう。
そのうえで、賃貸料相当額を計算します。
小規模住宅か、それ以外の住宅かに応じた算式を使い、区分マンションでは、建物・土地の金額や床面積を合理的に割り振ります。

計算ができたら、役員から家賃を受け取ります。原則として、計算した賃貸料相当額以上の家賃を毎月受け取り、給与から差し引く場合には、給与明細に「社宅使用料」などと表示しておくと、あとから見てもわかりやすくなります。
あわせて、所得税と社会保険を別々に確認しましょう。
所得税の賃貸料相当額と、社会保険の現物給与価額は計算方法が異なりますので、両方を分けて確認する必要があります。

最後に、定期的な見直しを忘れないようにしましょう。
固定資産課税台帳の価格が改訂された場合、役員が別の住宅に転居した場合、増築や改築が行われた場合、会社が支払う家賃が変更された場合、社宅の使用状況が変わった場合、社会保険の現物給与価額が改定された場合には、再計算が必要かどうかを確認します。

よくある間違い

役員社宅では、いくつかの間違いが起こりやすいので、あらかじめ知っておくと安心です。
どれも珍しいことではありませんので、当てはまるものがあれば、今から整えていけば大丈夫です。

まず、専有面積だけで小規模住宅と判断してしまうケースです。
マンションでは、共用部分を合理的に割り振った面積を加えて判定する必要があります。
また、共用部分の割り振り方法を記録していないケースもよく見られます。
専有面積割合、登記上の持分割合、敷地権割合など、どの方法を使ったかを記録しておきましょう。
固定資産税の税額そのものを使ってしまう間違いもあります。
計算に使うのは、実際に納付した固定資産税額ではありません。
課税明細書の項目名だけで判断してしまうことも要注意です。
課税明細書には似た数字が並ぶことがありますので、固定資産課税台帳に登録された価格に該当するかどうかを確認しましょう。

役員から賃貸料相当額の半分しか受け取らないという間違いも多く見られます。
使用人社宅の50%ルールは、役員社宅には原則として使えません。
会社が支払う家賃の半分を一律に役員負担としてしまうケースもありますが、「会社家賃の50%」を使うのは、小規模住宅にあてはまらない借り上げ役員社宅の賃貸料相当額を計算する場面です。
所得税の計算だけで社会保険も終わったと思い込んでしまうことも起こりがちです。
所得税の賃貸料相当額と、社会保険の現物給与価額は別の方法で計算します。
最後に、役員個人名義の住宅の家賃を、会社が支払ってしまっているケースもあります。
この場合、原則として社宅の貸与とは認められず、会社が負担した家賃が給料として課税される可能性がありますので、注意しましょう。

まとめ|面積・固定資産税・役員負担額をセットで確認しましょう

役員社宅が小規模住宅にあてはまるかどうかは、住宅の法定耐用年数と床面積によって判定します。
法定耐用年数が30年以下の場合は132平方メートル以下、30年を超える場合は99平方メートル以下が基準です。
マンションでは、専有面積だけでなく、共用部分を合理的に割り振った面積も含めて判定します。
また、賃貸料相当額を計算するときには、共用部分だけでなく、建物や土地の固定資産課税台帳上の価格についても、対象の部屋に対応する金額を合理的に割り振る必要があります。
固定資産税の課税明細書に記載された項目名だけを見て、計算に使う数字を機械的に決めてしまうのは避けましょう。

さらに、役員社宅では、一般の従業員社宅に認められている「賃貸料相当額の50%以上を受け取ればよい」という取扱いは、原則として利用できません。
役員から受け取る家賃が賃貸料相当額より少なければ、その差額が役員給与として課税されます。

最後に、確認しておきたいポイントをまとめます。
契約者が会社になっているか、法定耐用年数を確認しているか、共用部分を含めた面積で判定しているか、固定資産課税台帳上の価格を確認しているか、区分マンションの金額を合理的に割り振っているか、賃貸料相当額を正しく計算しているか、役員から原則として必要な家賃を受け取っているか、所得税と社会保険を分けて確認しているか、計算根拠となる資料を保存しているか。
これらを一つずつ確認しておくと安心です。

役員社宅は、きちんと運用すれば、会社と役員の双方にとって使いやすい仕組みです。
一方で、物件ごとの面積、共用部分、法定耐用年数、固定資産税の資料、契約関係などによって、計算結果は変わってきます。
特に、床面積が基準に近いマンション、固定資産税の資料が取得しにくい借り上げ住宅、会社が高額な家賃を支払っている住宅については、契約前または入居前に確認しておくと、あとから慌てずに済みます。

※この記事は、2026年7月26日に確認した国税庁および日本年金機構の公表資料をもとに作成しています。
主な参照資料は、国税庁タックスアンサーNo.2600「役員に社宅などを貸したとき」、所得税基本通達36-40から36-44、国税庁の質疑応答事例および日本年金機構の「全国現物給与価額一覧表」です。

税制は年度によって内容が変わることがあります。
また、実際の適用は、物件の構造、床面積、共用部分、固定資産課税台帳上の価格、契約関係、役員による使用状況などによって異なります。
この記事はあくまで一般的な考え方をご紹介するものですので、個別の物件については、正確な金額や最新の取扱いを、税務署、年金事務所へご確認ください。