駐車場用地の賃貸借と『相当の地代』|舗装・土留め工事を借主が負担する場合の税務上の注意点

駐車場用地を20年間借りるとき、「相当の地代」は必要?――舗装や土留め工事を借主が負担する場合の税務上の注意点

隣の土地を駐車場として借りたい。
ところが地主さんから、「土地は貸すけれど、整地・アスファルト舗装・周りの土留め工事は借りる側でやってほしい」と言われた。
しかも契約期間は20年という条件です。

このようなお話をいただくと、多くの経営者さまが真っ先に気になるのが、「賃料は土地の値段の6%くらい、いわゆる『相当の地代(そうとうのちだい)』を払わなければいけないのか」「それとも、工事費をこちらが負担する分、賃料はかなり安くしてもよいのか」という点です。

今回は、次のような前提で、税務上どのように考えればよいかを整理します。

・借りる側は法人である
・地主さんとの間に、資本関係・親族関係・その他の特別なつながりはない(いわゆる第三者間取引である)
・使う目的は駐車場である
・整地・アスファルト舗装・土留めなどの工事費は借主側が負担する
・契約期間はおよそ20年である

結論を先に申し上げますと、「土地の評価額の6%を最低ラインの地代として必ず払わなければならない」という単純な話ではありません。
かといって、「駐車場だから相当の地代のことは一切考えなくてよい」と言い切ってしまうのも正確ではありません。

今回のように借主側が舗装や土留めの工事をする場合には、土地の使い方の実態、工事の内容、工事でできたもの(舗装や擁壁など)が最終的に誰のものになるのか、契約期間、契約が終わったときにどうするのかまで含めて、総合的に考える必要があります。
以下、順を追って見ていきましょう。

そもそも「相当の地代」とは、どういう仕組みか

税金の解説を調べていると、「相当の地代は、更地(さらち。建物などが建っていない土地)の評価額のおおむね年6%」という説明を目にすることがあります。
このため、「法人が土地を借りるなら、土地の値段の6%程度は必ず地代として払わなければいけない」と思い込んでしまうケースが少なくありません。

しかし、これは少し正確さに欠けます。

相当の地代というのは、本来であれば土地を借りるときに「権利金(けんりきん。借地権を設定する際に地主へ支払う一時金のことです)」を支払うのが通常であるにもかかわらず、それを支払わない場合に、代わりにどのくらいの地代を払っていれば税務上問題にならないか、という場面で出てくる考え方です。

国税庁がまとめている法人税基本通達13-1-2という取り扱いの本文には、相当の地代について「更地価額のおおむね年8%程度」という記載があります。
ただし、その後に出された国税庁長官通達によって、「当分の間は年6%として取り扱ってよい」とされており、現在の実務ではこの年6%が目安として使われています。

つまり、「通達に6%と書いてある」というよりは、「本来の基準は8%だけれども、当面は6%で運用してよいとされている」という関係になっている、という点が正しい理解です。

そして何より大切なのは、この6%という数字は、すべての土地の貸し借りに当てはめなければならない「最低賃料」ではない、ということです。
ここを混同しないようにしましょう。

駐車場用地では、相当の地代をそのまま当てはめない扱いがある

法人税基本通達13-1-5という取り扱いには、土地を資材置き場や駐車場などとして使う場合についての、特別なルールがあります。

この通達では、「駐車場などとして、土地を更地のまま使う場合」のように、通常であれば権利金のやり取りが発生しないような土地の使い方については、実際の地代が相当の地代に届いていなくても、それだけを理由にただちに権利金をもらったものとみなして課税する、ということはしない、とされています。

たとえば、よくある平面の駐車場用地であれば、「土地の値段×6%」を必ず地代にしなければならない、というものではありません。

むしろ大切なのは、「その地域で、その用途で、その契約条件であれば、他人同士(第三者間)が取引した場合に、通常どのくらいの賃料になるか」という、実際の相場観です。

ただし、今回のケースにこの取り扱いがそのまま使えるとは限らない

ここが今回、特に注意していただきたいポイントです。

先ほどの法人税基本通達13-1-5が想定している典型的なケースは、「駐車場などとして、土地を更地のまま使う場合」です。

ところが今回、借りる側の法人が行うのは、次のような工事です。

・土地の整地
・アスファルト舗装
・土留め工事
・必要に応じた排水などの設備工事

つまり、単に更地をそのまま使うだけではないのです。

このため、「駐車場として使うのだから、13-1-5に当てはめて問題ない」と決めつけてしまうのは危険です。

実は、税法上の「借地権」という考え方には、一定の場合、建物だけでなく、構築物(舗装や擁壁のような、土地に固定された工作物)の所有を目的とした土地の貸し借りも含まれることがあります。

そのため、今回のようなケースでは、次のような点まで含めて確認する必要があります。

・具体的に何を工事するのか
・その工事でできたもの(舗装・土留めなど)は誰の所有になるのか
・借主がどの程度、その土地を独占的に使うのか
・契約期間はどのくらいか
・契約が終わったときに、借主が撤去するのか、地主に残すのか

このように考えると、法人税基本通達13-1-5は重要な参考にはなりますが、今回の取引に当然そのまま当てはまる、とまでは言い切れません。

「毎月の地代」の金額だけを見ていては、実態を見誤る

今回の取引では、毎月の賃料の金額だけを見て判断すると、実態を見誤るおそれがあります。
なぜなら、借りる法人が自分の費用で、次のような工事を行うからです。

・造成
・路盤(アスファルトの下地となる部分)工事
・アスファルト舗装
・土留め
・擁壁(ようへき。土砂の崩れを防ぐための壁状の構造物)
・排水設備

たとえば、借主である法人が1,500万円の工事費を負担し、その舗装や設備を20年間使ったあと、そのまま地主さんに返すとします。

この場合、工事費1,500万円のすべてが地主さんの利益になるわけではありません。
なぜなら、借主自身も20年間、その舗装などを自分の事業のために使っているからです。
また、20年も経てば、資産としての価値がかなり下がっているものもあるでしょう。

一方で、大規模な造成や擁壁、土留めのように、長期間にわたって土地そのものの価値を高めるような工事であれば、地主さん側に経済的な利益が残る可能性があります。

ですから、「工事費のうち、どのくらいが借主自身の利用のための支出で、どのくらいが地主さんの土地の価値を高めることにつながっているのか」という視点で考える必要があります。

「工事費を負担するのだから、賃料は最低限でよい」とは限らない

「工事費をこちらで負担するのだから、賃料は固定資産税相当額くらいの、ごく低い金額でもよいのではないか」と考えることもあるかもしれません。

しかし、税務上の「使用貸借(しようたいしゃく。ただ同然、あるいはごくわずかな負担だけで物を貸し借りする契約のことです)」は、単に賃料が安いということだけを意味するものではありません。

土地について、固定資産税などの公租公課(こうそこうか。税金や社会保険料など、公的な負担のことです)相当額以下の負担しかしていない場合には、使用貸借として扱われる場面があります。

しかし、現金でやり取りする地代が少なくても、権利金やそれに代わるような経済的利益のやり取りがある場合には、単純に「これは使用貸借です」と整理することはできません。

今回のように、借主である法人が相当額の舗装・土留めなどの工事を負担する場合は、現金の賃料だけでなく、工事負担も含めた契約条件全体を見て考える必要があります。

そのため、契約書には、「使用貸借程度の賃料とする」という書き方をするよりも、「借主が整地・舗装・土留めなどの工事費を負担すること、そのほかの契約条件を総合的に考慮して、賃料を月額○○円とする」という形で、賃料を決めた理由がわかるように書いておくほうが実務的です。

第三者間の取引であることは、重要な事情になる

今回、地主さんと借主である法人との間に、資本関係も、親族関係も、その他の特別なつながりもない、という点は重要です。

これが身内や関係会社同士の取引(関連者間取引)だと、「会社から関係者へ、意図的に利益を移しているのではないか」という疑いを持たれやすくなります。

一方、独立した第三者同士であれば、地主さんも借主である法人も、通常は自分に著しく不利な条件には合意しないはずです。
その意味で、実際に第三者間で交渉して決まった賃貸条件は、その取引に経済的な合理性があることを示す、重要な事情になります。

ただし、「第三者間で合意した価格だから、必ず税務上も適正な価格になる」という絶対的なルールがあるわけではありません。
ですから、次のような資料を残しておくことが大切です。

・賃料の相場を示す資料
・工事費の見積もり
・契約期間
・工事でできたものの所有関係
・途中で解約する場合の条件
・契約終了時に原状回復するかどうかの取り決め

月々の賃料だけでなく、契約期間全体での負担で比較する

このような契約では、「20年間の総負担額」で比較すると、経済的な合理性を説明しやすくなります。

たとえば、工事の負担がなければ、通常の賃料が月30万円だったとします。
20年間の総額を計算すると、30万円×12か月×20年=7,200万円です。

一方、「舗装・土留め工事を借主が負担する代わりに、賃料は月20万円にする」という条件であれば、20万円×12か月×20年=4,800万円になります。
ここに工事費1,500万円を足すと、地代4,800万円+工事費1,500万円=6,300万円という計算になります。

これは、「工事費を負担する代わりに、20年間の賃料の総額が低く設定された」という経済的な関係を説明するための、一つの材料になります。

ただし、この計算はあくまで、契約条件の経済的な合理性を検討するための一例にすぎません。
税法上、「工事費÷20年を賃料から差し引けば、それが適正な賃料になる」という公式な計算方法があるわけではない、という点は非常に重要なところです。
工事費の性質、耐用年数、残っている価値、修繕費、撤去費用なども含めて、個別に判断する必要があります。

アスファルト舗装と土留めは、同じものとして扱わない

工事費は一まとめにせず、できるかぎり項目ごとに分けて把握しておくべきです。

たとえば、次のような項目です。
・造成工事
・路盤
・アスファルト舗装
・排水設備
・フェンス
・照明
・土留め
・擁壁

一般的なアスファルト敷きの舗装については、税務上の耐用年数(げんかしょうきゃくという仕組みのなかで、その資産を何年かけて経費化していくかの目安となる年数のことです)はおおむね10年とされています。
したがって、20年間使用したあとに舗装を地主さんに残したとしても、施工した当初の工事費相当額が、そのまま地主さんの利益になるわけではありません。

一方、鉄筋コンクリート造の擁壁や大規模な造成などは、舗装とは違った経済的な効果を持つ可能性があります。

そのため、「舗装工事1,000万円、土留め500万円」というようなおおまかな区分ではなく、できるだけ細かい工事の内訳を保存しておくことをお勧めします。
なお、実際の耐用年数は資産の構造や施工方法によって区分が異なる場合がありますので、正確な年数は最新の耐用年数表でご確認ください。

「20年」という期間そのものが6%基準を生むわけではない

契約期間が20年だからといって、「20年なら相当の地代が必要になる」という決まったルールがあるわけではありません。

ただし、契約期間が長くなるほど、借主が得る土地利用上の利益は大きくなっていきます。
3年間だけの一時的な利用と、20年間にわたって排他的に土地を使い、その上に構築物を設置する場合とでは、経済的な意味合いが異なります。

したがって、「20年」という期間は、それ自体が相当の地代を直接必要とする基準になるわけではありませんが、土地利用の実態を判断するうえで重要な事情の一つにはなります。

契約が終わったときの取り扱いは、必ず決めておく

今回、もっとも重要な契約条項の一つが、「20年後に舗装や土留めをどうするのか」という点です。
主に、次のようなケースが考えられます。

借主が撤去して更地に戻す場合

この場合、地主さんに恒久的な利益が残る可能性は比較的小さくなります。
ただし、借主は撤去費用を負担することになります。

地主さんが無償で受け取る場合

契約終了の時点で、残っている価値のある設備などを地主さんが無償で受け取る場合には、その時点での経済的な利益について検討が必要になる可能性があります。

地主さんが残っている価値で買い取る場合

契約終了時に、設備などを適正な残存価額で地主さんが買い取る方法です。
税務上の権利関係を明確にしやすい方法の一つといえます。

工事をした時点から、最初から地主さん所有とする場合

借主が費用を負担しながら、最初から地主さんの所有物として設置する場合には、特に注意が必要です。
借主である法人から見て、これが自社の事業に必要な土地利用のための合理的な支出なのか、それとも地主さんへの利益の提供という性格が強いものなのかを、慎重に確認する必要があります。

借主の工事費は、原則として資産として計上することを検討する

借主である法人が負担する工事費についても、税務上の処理が必要です。
アスファルト舗装、フェンス、排水設備、擁壁などは、内容によって構築物などの減価償却資産(時間の経過とともに価値が減っていく資産のことで、一度に経費にせず、耐用年数に応じて少しずつ経費化していきます)になる可能性があります。

したがって、「地主さんに言われて工事したのだから、その年に全額を修繕費として経費にできる」という処理が、必ず認められるわけではありません。

工事の内容ごとに、資本的支出(しほんてきししゅつ。単なる修理ではなく、資産の価値を高めたり、使える期間を延ばしたりするための支出のことです。
この場合は一度に経費にできず、複数年に分けて経費化します)にあたるのか、修繕費にあたるのか、それとも構築物などの減価償却資産にあたるのかを、それぞれ判定する必要があります。

また、契約終了時に無償で地主さんへ引き渡すことが予定されている場合には、その条件も踏まえたうえで、会計・税務上の処理を確認しておく必要があります。

土地の貸し借りと、駐車場施設の貸し借りは、消費税の扱いが異なる

消費税についても注意が必要です。

原則として、土地の貸し付けは消費税がかからない取引(非課税取引)とされています。

一方で、地主さんが駐車場として舗装をし、区画を分け、フェンスなどを設けた施設を貸す場合などは、単なる土地の貸し付けではなく、「駐車場施設の利用」として、消費税がかかる取引になることがあります。

今回のように、地主さんが更地のまま貸し、借主である法人が自分で舗装をし、自社の駐車場として使用するのであれば、土地そのものの貸し借りという性格が強いと考えられます。

ただし、消費税がかかるかどうかは、契約書の名前だけで決まるものではなく、実際の使用状況や施設の提供内容によって判断されます。
そのため、実態が土地の貸し借りであるなら、その実態を契約書にも正確に反映させておくことが重要です。

土地の賃貸借契約書は、印紙税にも注意が必要

更地を駐車場用地として貸す土地賃貸借契約書は、「土地の賃借権の設定に関する契約書」として、印紙税(いんしぜい。契約書などの書類を作成するときにかかる税金です)がかかる文書になる場合があります。

一方で、駐車場施設そのものの利用契約は、これとは異なる取り扱いになることがあります。

したがって、契約を結ぶ際には、「これは土地の賃貸借なのか、それとも施設の利用契約なのか」という実態を確認したうえで、印紙税の要否を判断する必要があります。

税務上、説明しやすい賃料の決め方―5つのステップ

今回のようなケースでは、次のような手順で資料を整えておくと、後々説明がしやすくなります。

ステップ1 近隣の賃料を調べる

駐車場用地、資材置き場、更地など、同じくらいの面積・似たような契約期間の賃料事例を集めます。
不動産会社の査定書があれば、さらに説明しやすくなります。

ステップ2 地主さんが求めた工事条件を記録に残す

「舗装は借主負担」「土留めも借主負担」「契約期間は20年」「工事をしなければ貸さない」といった条件を、メールや書面、議事録などで残しておきます。

ステップ3 工事の見積書を保存する

造成、路盤、舗装、排水、土留め、擁壁など、工事の内容ごとに見積額を把握しておきます。

ステップ4 契約期間全体での負担を比較する

工事負担がない場合の通常賃料と、工事負担がある場合の「賃料+工事費」を比較します。
ただし、これはあくまで経済的な合理性を説明するための資料であって、税法上の公式な適正賃料の計算方法ではありません。

ステップ5 社内の稟議などに、賃料を決めた理由を残す

後日「なぜこの賃料だったのか」と聞かれたときに説明できるよう、周辺相場、工事費、契約期間、途中解約の条件、返還の条件などを踏まえて賃料を決めたことを、社内資料として残しておきます。

契約書に定めておきたい事項

今回のような20年契約では、少なくとも次の事項を明確にしておきたいところです。

・土地の使用目的
・建物を建てられるかどうか
・整地・舗装・土留めなどの施工範囲
・工事費を誰が負担するか
・賃料を決めるにあたって工事負担を考慮したこと
・工事でできたものの所有者
・固定資産税・償却資産税などの負担関係
・修繕費の負担
・契約期間
・途中で解約する場合の条件
・契約終了時の原状回復
・舗装などをそのまま残す場合の取り扱い
・地主さんが取得する場合の対価
・更新の条件
・地代を改定する条件

特に、工事でできたものの所有権と、契約が終わったときの取り扱いについては、非常に重要なポイントですので、あいまいにせず、しっかり定めておくことをお勧めします。

「相当の地代」と「通常の地代」は、別のものと考える

ここで改めて整理しておきましょう。

「相当の地代」と、「通常収受すべき地代」「市場賃料」は、同じ意味ではありません。

相当の地代は、主に借地権を設定する際の権利金の認定課税との関係で使われる、税務上の基準です。

一方、市場賃料は、「その土地を、その条件で第三者に貸した場合に、いくらになるか」という、経済的な観点からの価格です。

今回のケースで重要なのは、土地の値段に機械的に6%を掛けることよりも、近隣の駐車場用地などの賃料相場と、借主が負担する工事内容との関係です。

地主さんが個人か法人かによって、考え方が変わる

法人税基本通達13-1-5などは、基本的に法人税の取り扱いです。
そのため、地主さんが法人なのか個人なのかによって、適用の仕方や検討すべき内容が異なってきます。

借りる側が法人であっても、地主さんが個人の場合と法人の場合を、同じように扱うことはできません。
特に、権利金の認定、経済的利益、無償返還、地代の認定といった点については、契約の相手方がどのような立場にあるのかを確認したうえで、整理していく必要があります。

「土地の無償返還に関する届出書」は、一律に出すものではない

借地権の相談では、「土地の無償返還に関する届出書(契約が終わったときに、土地を無償で地主さんに返すことを、あらかじめ税務署に届け出ておく書類です)を出しておけば安全なのではないか」というお話が出ることがあります。

しかし、この届出は、駐車場用地を借りる場合に一律に出す制度ではありません。

また、法人税基本通達13-1-7という取り扱いでは、13-1-5の取り扱いが適用される場合は、この届出の対象から除外される、という関係になっています。

そのため、まずは、今回の土地の使い方が13-1-5の対象となる通常の駐車場利用にあたるのか、それとも借地権の設定として別途整理すべき取引なのかを判断する必要があります。
さらに、地主さんが個人か法人かも確認しなければなりません。

したがって、「20年契約だから無償返還届を出す」「駐車場だから出さない」という一律の判断は適切ではなく、契約内容を確認したうえで、個別に検討すべき事項です。

後日、説明できる資料を契約時点で残しておく

このような取引では、数年後に次のような説明を求められる可能性があります。

・なぜこの賃料なのか
・なぜ借主である法人が舗装工事を負担したのか
・地主さんと会社に特別なつながりはないか
・工事負担は地主さんから求められたものか
・近隣の賃料相場はいくらか
・舗装・土留めなどは誰の所有物か
・20年後にどうするのか
・途中で解約した場合はどうなるのか
・工事費を会社ではどのように経理処理したのか

これらの質問に対して、契約を結んだ時点の資料を使って説明できる状態にしておくことが重要です。
具体的には、不動産会社による賃料査定、近隣土地の募集資料、地主さんとのメールのやり取り、工事の見積書、契約書、社内の稟議書、取締役会などの議事録、20年間の負担を比較した資料などを保存しておくとよいでしょう。

今回のケースのまとめ

今回の前提でお話ししてきた内容を整理すると、次のようになります。

土地の評価額の6%相当を、機械的に最低ラインの地代として設定しなければならないとは言えません。
駐車場用地には、通常、権利金のやり取りを伴わない利用の形があり、法人税基本通達13-1-5も、そのような取引を想定した取り扱いです。

ただし今回は、アスファルト舗装、土留め、造成などを借主である法人が行うため、13-1-5が典型例としている「更地のまま駐車場として利用するケース」と、完全に同じであるとは言えません。

そのため、「駐車場だから6%は不要」という一言で片付けるのではなく、工事の内容、工事でできたものの所有者、契約期間、原状回復の義務、契約終了時の帰属、周辺の賃料相場、工事負担を含めた経済的な合理性を、総合的に確認する必要があります。

また、地主さんと借主である法人が独立した第三者同士であることは、取引条件に経済的な合理性があることを示す、重要な事情になります。

したがって実務上は、「工事をしない場合の通常の賃料」と「借主が工事を負担する場合の条件」を比較したうえで、なぜその賃料になったのかを、客観的な資料で説明できるようにしておくことが重要になります。

最も大切なのは「契約時点の根拠」を残しておくこと

このような案件でもっとも大切なのは、「いくらの賃料なら絶対に安全か」という単一の答えを探すことよりも、「なぜその金額になったのかを、あとから説明できるようにしておくこと」です。

たとえば、次のような経緯が、契約書・見積書・査定書・稟議書などで確認できれば、取引条件について説明がしやすくなります。

・通常の賃料は月30万円だった
・地主さんの要求による工事費は1,500万円だった
・契約期間は20年である
・工事でできたものは、契約期間中は借主の所有とする
・契約終了時は原則として撤去する
・以上を踏まえて、月額20万円とした

反対に、「地主さんと話し合って何となく月10万円にした」「工事費は会社が負担したが、誰の資産か決めていない」「20年後の扱いは決めていない」という状態は、できるだけ避けておきたいところです。

税務上重要なのは、金額そのものだけでなく、その金額と契約条件に合理的な理由があることです。
今から契約を結ばれる場合は、この記事でご紹介した資料を一つずつ整えていただくことで、後々の説明がぐっとしやすくなります。

ご注意

本稿は、一般的な税務上の考え方を整理したものであり、この記事の内容は作成時点の情報にもとづいています。
実際の取り扱いは、地主さんが個人か法人か、工事の内容、契約条項、工事でできたものの所有関係、返還の条件などにより異なりますので、実際の適用には個別の判断が必要です。
契約書案や工事見積書などをふまえたうえで、契約を結ぶ前に、税務署に個別にご確認いただくことをお勧めします。