非営利型法人は収益事業が50%を超えるとダメ?「主たる事業」の判定ポイント
一般社団法人・一般財団法人を運営されている方から、次のようなご質問をいただくことがあります。
「収益事業(お金を得ることを目的とした事業)の割合が50%を超えると、非営利型法人(税金の面で優遇を受けられる法人の種類)ではなくなってしまうのでしょうか?」
これは、法人の税金に直結する、とても大切なご質問です。
結論から先にお伝えすると、「売上の50%を超えたら即アウト」という単純な話ではありません。
国税庁が示している法人税基本通達1-1-10(法人税の取り扱いについて国税庁が示した公式な考え方の一つです)には、「主たる事業として収益事業を行っていない」かどうかを判断するための、もう少し丁寧な考え方が示されています。
この記事では、経営者の方や事務担当の方が「自分の法人には関係があるのか」「何を確認しておけば安心なのか」を判断できるように、この50%の考え方を一つずつ整理してご説明します。
なお、この記事は作成時点で確認できる国税庁の法人税基本通達等の情報に基づいて、一般の方向けにわかりやすく整理したものです。
実際の判定は、法人の定款(法人の基本的なルールを定めた書類です)の内容や、事業の実態によって結論が変わります。
金額や割合、取扱いの詳細は今後変わる可能性もありますので、正確なところは必ず所轄の税務署にご確認ください。
まず知っておきたいこと―この50%ルールは「すべての非営利型法人」に関係するわけではありません
公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人は、法人税の世界では、次の2種類に分けられます。
・非営利型法人に該当する法人
・非営利型法人に該当しない法人
非営利型法人に当てはまると、法人税法上は「公益法人等(こうえきほうじんとう。公益的な性格を持つ法人として扱われるグループのことです)」として扱われ、原則として収益事業から生まれた利益にだけ法人税がかかります。
一方、非営利型法人に当てはまらない一般社団法人・一般財団法人は「普通法人」として扱われ、原則としてすべての利益に法人税がかかります。
つまり、「非営利型法人に当てはまるかどうか」は、法人の税負担に直接影響する、とても重要なポイントなのです。
ここで一つ、押さえておいていただきたいことがあります。法人税法上の非営利型法人には、実は2つのタイプがあります。
・非営利性が徹底された法人
・共益的活動(会員同士の利益や交流のための活動といったイメージです)を目的とする法人
今回ご説明する「主たる事業として収益事業を行っていないこと」という条件は、このうち「共益的活動を目的とする法人」だけに関係する条件です。
そのため、「非営利型法人であるためには、どの法人も収益事業を50%以下に抑えなければならない」という意味ではありません。
「非営利性が徹底された法人」のほうには、そもそもこの条件自体がありません。
まずはこの区別を押さえておくと、以下の説明が理解しやすくなります。
「収益事業」とは、単に「お金が入ってくる事業」という意味ではありません
次に気をつけていただきたいのが、「収益事業」という言葉の意味です。
日常の感覚では、「お金をいただいて行う事業」「利益を目的とした事業」を収益事業とイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、法人税法上の「収益事業」は、単純に「お金を受け取っているかどうか」で決まるものではありません。
法人税法施行令という法律の中で、物品販売業、不動産貸付業、請負業、料理飲食店業など、あらかじめ定められた事業の種類(全部で34種類あるため、「34業種」と呼ばれることもあります)に当てはまるかどうかで判断されます。
そのため、次のようなイメージは、どちらも正確ではありません。
・利益が出ているから、それだけで収益事業になる
・一般社団法人が行う事業だから、収益事業にはならない
実際にどのような業務を行っているのかを一つずつ確認しながら、法人税法上の収益事業に当てはまるかどうかを判断していく必要があります。
なお、「共益的活動を目的とする法人」の要件を判定する場面では、法人税法施行令第3条第4項による読み替え(条文の文言を場面に応じて置き換えて適用するしくみです)があるほか、一定の実費弁償方式(かかった実費だけを会員などから受け取る方式です)による業務について、所轄税務署長等の確認を受けている場合には、通常とは異なる取扱いになることもあります(この点は、法人税基本通達1-1-11で定められています)。
そのため、実際の法人について判断するときは、「34業種のどれかに当てはまるかどうか」だけを見るのではなく、契約の内容や事業の実態まで確認することが大切です。
「主たる事業として収益事業を行っていない」とは、どういう意味でしょうか
法人税基本通達1-1-10では、「主たる事業として収益事業を行っていない」かどうかは、原則として「その法人が、主たる事業として収益事業を行うことが、いつものこと(常態)になっていないかどうか」で判断するとされています。
少し難しい言い回しですが、かみくだいて言えば、「その法人は、ふだんどのような活動を中心にしている法人なのか」を見る、ということです。
たまたま一時的に収益事業を行ったからといって、それだけで「収益事業が主たる事業だ」と判断されるわけではありません。
反対に、これまで収益事業を中心に行ってきた法人が、一時的にその事業をお休みしているだけで、近いうちに再開する予定であるような場合には、お休みしている期間だけを見て「収益事業を中心に行っていない」と判断するわけでもありません。
過去の事業の状況も参考にしながら、今、何を中心に活動している法人なのかを見ていくことになります。
一つの目安が「収益事業以外の割合が、おおむね50%を超えているかどうか」です
それでは、「主たる事業が何なのか」を、具体的にはどのように判定するのでしょうか。
法人税基本通達1-1-10では、法人の事業の性質に応じて、収入金額や費用の金額といった、合理的と考えられる指標(ものさし)を総合的に見たうえで、その指標で見た「収益事業以外の事業」の割合が、おおむね50%を超えているかどうかで判定するとされています。
国税庁がこの通達についてまとめた趣旨説明では、事業の規模を表す指標として、収入金額、費用の金額、資産の価額、従事者の数など、さまざまなものが考えられると説明されています。
つまり、「収益事業の売上が全体の50%以下であれば大丈夫」という、単純な計算式で決まるものではありません。その法人の実際の活動を、いちばんよく表している指標は何かを考える必要があります。
「どの指標を使うか」が結果を左右します
たとえば、会員向けの研修や情報提供、交流活動などを中心に行っている一般社団法人が、それとは別に、法人税法上の収益事業も行っているとします。
仮に、1年間の費用の内訳が次のようになっていたとしましょう。
・収益事業以外の活動にかかった費用 600万円
・収益事業にかかった費用 400万円
合計1,000万円のうち、収益事業以外にかかった費用は60%にあたります。
もし、この法人の事業規模を考えるうえで「費用の金額」という指標が合理的だと認められるのであれば、「収益事業以外の事業がおおむね50%を超えている」と判断するための、一つの材料になります。
ただし、この例で「費用で見ると60%だから、必ず要件を満たす」とまでは言い切れません。
たとえば、収入金額で見ると収益事業のほうが圧倒的に大きい、職員の大部分が収益事業に携わっている、法人の主な設備や資産のほとんどを収益事業に使っている、といった事情がある場合には、費用の金額だけでは、法人の実態を十分に表せていない可能性があります。
反対に、収入金額だけでは実態が正しく表れない法人もあります。
そのため、「必ず売上高で判断する」「必ず複数の指標を組み合わせる」という決まったルールがあるわけではなく、その法人の事業の中身にあわせて、実態を合理的に表す指標を選ぶ、という考え方になります。
必要に応じて、収入、費用、資産、従事者の数なども確認しながら、法人全体としてどの事業が中心になっているのかを見ていくことになります。
「おおむね50%」は、きっちり線を引く数字ではありません
法人税基本通達では、単に「50%を超える」ではなく、「おおむね50%を超える」という表現が使われています。
この「おおむね」という言葉も大切なポイントです。
法人税基本通達では、個別の事情に応じた判断が必要な場面で、あえて「おおむね○%」といった幅のある表現を使い、機械的な処理にならないようにする、という考え方が取られています。
そのため、たとえば次のような考え方は、どちらも正確ではありません。
・50.1%なら必ず要件を満たす
・49.9%なら必ず要件を満たさない
小数点以下まで細かく計算して、機械的に結論を出すものではないのです。
一方で、「おおむね」と書いてあるからといって、50%を大きく下回っていても問題ない、という意味でもありません。
50%の前後になる場合には、数字だけを見るのではなく、その指標が法人の実態をきちんと表しているか、その法人がふだん何を中心に活動しているかを含めて、落ち着いて丁寧に確認することが大切です。
事業内容が変わっていなければ、前の年の実績を使える場合があります
「今日は収益事業以外が50%を超えているだろうか」と、毎日のように計算するのは現実的ではありません。
そこで法人税基本通達1-1-10では、一定の場合に、前の事業年度の実績を利用した、簡単な判定方法が示されています。
具体的には、法人の事業内容が変わるなど、収益事業と収益事業以外の割合に大きな変化が生じる場合を除いて、前の事業年度において、合理的な指標で見た「収益事業以外の事業」の割合がおおむね50%を超えていれば、今年度の始まりの時点でも「主たる事業として収益事業を行っていない」と判定してよい、とされています。
たとえば、前の年も今年も同じような事業を続けていて、事業の規模や内容に大きな変化がなければ、前の年の実績を使って判断できる、というイメージです。
新しい事業を始めた場合などは、前の年の数字だけでは判断できません
ただし、事業の内容が大きく変わった場合には注意が必要です。
国税庁の趣旨説明では、たとえば、事業年度の途中で賃貸用のビルを取得したり、多額の寄附金を受け取ったりしたことによって、その後、収益事業の割合が大きくなっていくようなケースが例としてあげられています。
このような場合には、それ以降の実施状況だけで単純に判定するのではなく、実際に生じた事実関係にもとづいて、合理的に見込まれる状況を判定していくことになる、とされています。
つまり、「前の年は収益事業以外が70%だったから、今年も同じように大丈夫」と、前の年の実績だけで判断することはできません。
ビルを取得した時点や、多額の寄附金を受け取った時点など、事業の内容に大きな変化が生じたタイミングで、そのときの実際の状況にもとづいて、あらためて原則どおりの判定を行うことになります。
実務上は、たとえば次のようなケースにあてはまる場合には、非営利型法人の要件への影響を、早めに確認しておくことをおすすめします。
・新しい収益事業を始めた
・大きな不動産を取得して、賃貸事業を始めた
・多額の寄附金を受け取った
・これまでの主な事業をやめた
・職員の配置を大きく変えた
・法人の収入の構造が大きく変わった
前の年が50%以下だったとしても、「それだけでアウト」ではありません
この通達の中で、特に誤解が生まれやすいのが、この部分です。
前の事業年度の実績を計算してみたところ、収益事業以外の割合が「おおむね50%を超えていなかった」とします。
このとき、「50%を超えなかったのだから、今年度は非営利型法人になれない」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、法人税基本通達1-1-10の注書き(本文の補足として書かれている部分です)では、前の事業年度の割合がおおむね50%を超えていなかったとしても、それだけを理由に「主たる事業として収益事業を行っていない」という条件を満たさなくなるわけではない、と明記されています。
この場合には、前の年の実績を使った簡単な判定ではなく、今年度が始まった時点の実際の状況にさかのぼって、あらためて原則どおりの判定を行うことになります。
たとえば、前の年は一時的に収益事業の割合が大きくなっていたものの、その収益事業が前の年の終わりまでに終了し、今年度の始まりの時点では、収益事業以外の活動が中心になっている、といったケースが考えられます。
このような場合には、前の年の数字だけで結論を出さず、今年度が始まった時点の実態にもとづいて、あらためて確認することになります。
つまり、「前の年が50%以下だった=すぐに要件を満たさなくなる」というわけではありません。ここは実務上、とても大切なポイントです。
実務では「なぜこの判定になったのか」を説明できるようにしておくと安心です
税務の世界では、「うちの法人は非営利型法人だと思っています」というだけでなく、そう判断した根拠を、必要なときに説明できるようにしておくことがとても大切です。
特に、収益事業と収益事業以外の割合が50%の前後にある法人では、毎期、判定の根拠を整理しておくと安心です。
たとえば、次のような資料が参考になります。
・収益事業とそれ以外に分けた収入の集計表
・収益事業とそれ以外に分けた費用の集計表
・どの職員がどの事業に携わっているかがわかる資料
・建物や設備などを、どの事業で使っているかがわかる資料
・事業計画書、予算書、事業報告書
・新しい事業を始めたときや、事業をやめたときの理事会の議事録
・どの指標を使って判定したのかを整理したメモ
これらすべてが、法律上かならず作成しなければならない書類、というわけではありません。
ただし、あとから税務署などに、「なぜ収入金額ではなく費用を基準にしたのですか」「なぜこの法人では、収益事業以外が主たる事業だと判断したのですか」と確認された場合に、その理由を客観的な資料で説明できるようにしておくことは、とても大切です。
特に割合が50%の前後にある法人では、毎期同じ考え方で、継続して確認しておくことをおすすめします。
まとめ―「売上の50%」だけで判断しないことが大切です
最後に、ここまでの内容を整理します。
まず、今回ご説明した「主たる事業として収益事業を行っていないこと」という条件は、非営利型法人のうち「共益的活動を目的とする法人」に関係する条件です。すべての非営利型法人に共通する「収益事業50%ルール」ではありません。
そのうえで、判定にあたっては、「この法人はふだん、何を中心に活動しているのか」を確認します。
その材料として、収入金額や費用の金額など、その法人の活動の実態を合理的に表す指標を用います。
収益事業以外の事業の割合が「おおむね50%を超えているかどうか」が重要な目安になりますが、単純に売上高だけで機械的に計算するものではありません。
また、事業内容に大きな変化がなければ、前の年の実績を使った簡単な判定が認められています。
一方で、事業内容が大きく変わった場合には、前の年の数字だけに頼らず、変わったあとの実態にもとづいて、あらためて判定する必要があります。
そして、前の年の収益事業以外の割合がおおむね50%を超えていなかった場合でも、それだけで直ちに要件を満たさなくなるわけではありません。
その場合には、今年度が始まった時点の実際の事業の状況にさかのぼって、原則どおりの判定を行います。
実務上、特に意識しておきたいのは、「収益事業があるかどうか」だけでなく、「どの事業が主たる事業なのか」「その判断にどの指標を使うのが合理的なのか」を、必要なときに説明できるようにしておくことです。
また、「主たる事業として収益事業を行っていないこと」は、「共益的活動を目的とする非営利型法人」に求められるいくつかの条件のうちの一つにすぎません。この条件だけをクリアすれば、自動的に非営利型法人になれるわけではなく、法人税法施行令第3条に定められたそのほかの条件も含めて、定款の内容や、法人の実際の運営状況を確認する必要があります。
特に、新しく収益事業を始めるとき、事業の規模が大きく変わるとき、収益事業とそれ以外の事業の割合が50%前後になっているときには、事業を始めてから慌てて確認するのではなく、できるだけ早い段階で、所轄の税務署にご相談いただくことをおすすめします。
※この記事は2026年9月1日時点で確認できる国税庁の法人税基本通達等の情報にもとづき、一般の方向けにわかりやすく整理したものです。
実際の非営利型法人の判定や収益事業の判定は、法人の定款、事業の内容、契約関係、運営の実態などによって結論が異なります。
また、制度の取扱いは今後変わる可能性もありますので、個別の法人についての正確な判断は、所轄の税務署に必ずご確認ください。






