豪華な役員社宅とは?240㎡基準と役員が負担する家賃をわかりやすく解説

役員社宅はどこから「豪華」になる?240㎡基準と税務上の注意点

会社がマンションや戸建住宅を借りて、社長や役員に「役員社宅(会社が契約して役員に貸す住まいのことです)」として貸すことがあります。

役員社宅は、正しく運用すれば、会社が支払った家賃の全額を役員の給与として扱わなくてもよい場合があります。

ただし、どのような住宅でも同じ計算方法が使えるわけではありません。

一般的な感覚からみて、ふつうの社宅とはいえないほど贅沢な住宅、つまり「豪華な役員社宅」に当てはまると、通常の役員社宅で使う計算式は使えなくなります。

この場合、役員が負担すべき家賃は、「その住宅を一般の方に貸したとしたら、通常いくらになるか」という考え方で決めることになります。

この記事では、税金や会計に詳しくない経営者の方にもわかるように、次の点を順番に解説していきます。

・豪華な役員社宅とは、どのような住宅のことなのか
・「床面積240㎡」という基準を、どのように考えればよいのか
・240㎡以下でも豪華社宅になってしまうのは、どのような場合か
・豪華社宅にあたる場合、役員が負担する家賃をどう決めるのか
・家賃を安くしすぎると、どのような税務上の問題が起きるのか
・税務調査に備えて、どのような資料を残しておくとよいのか
・所得税と社会保険とでは、扱いにどのような違いがあるのか

すでに役員社宅を利用している会社はもちろん、これから導入を検討している会社も、契約を結ぶ前にぜひ確認しておきましょう。

まず結論|240㎡は大事な目安ですが、それだけでは決まりません

豪華な役員社宅にあたるかどうかを考えるときに、最初におさえておきたいポイントは、次の3つです。

240㎡を超えただけで、必ず豪華社宅になるわけではありません

家屋の床面積が240㎡を超える住宅については、面積だけで判断するのではなく、次のような事情を全体的にみて確認します。

・住宅を購入したときの金額(取得価額)
・会社が家主に支払っている家賃
・内装や外装の状況
・設備や施設の内容
・そのほか、住宅全体の様子

国税庁の取扱いでも、床面積が240㎡を超えているという事実だけをもって、すぐに豪華社宅として扱うわけではないことが示されています。

240㎡以下でも、豪華社宅になることがあります

一方で、床面積が240㎡以下であっても、次のような場合には豪華社宅にあたります。

・一般的な社宅にはふつう設置されていない、プールなどの設備がある場合
・役員個人の好みを強く反映した設備・施設がある場合

つまり、「240㎡以下だから、うちは大丈夫」と単純に考えることはできません。
240㎡という数字はとても大事な判断材料ですが、最終的には住宅全体の状況をあわせて確認する必要があります。

豪華社宅には、通常の社宅家賃の計算式が使えません

豪華社宅にあたる場合には、固定資産税の課税標準額(固定資産税を計算するときのもとになる評価額のことです)などを使った通常の計算式は使えません。

その住宅を、一般の賃貸住宅として第三者に貸した場合に、通常受け取ると考えられる家賃が「賃貸料相当額(税務上、役員が本来負担すべきとされる家賃の金額のことです)」になります。

役員から受け取っている家賃が、この賃貸料相当額より少ない場合には、原則として、その差額が役員に対する給与として課税されます。

役員社宅の基本的なしくみ

会社が所有している住宅や、会社が家主から借りている住宅を、社長や役員に住まいとして貸すことを、一般に「役員社宅」と呼びます。

役員が自分の名前で住宅を借りて、その家賃を会社が負担する場合や、会社から現金で住宅手当を受け取る場合には、原則として、会社が負担した金額はそのまま給与として課税されます。

これに対して、会社が住宅を契約し、会社から役員へ社宅として貸し付ける場合には、役員から税務上必要とされる家賃を受け取っていれば、社宅を貸すことによる利益が給与として課税されない場合があります。

この、役員が負担すべき一定額の家賃のことを「賃貸料相当額」と呼びます。

住宅手当と役員社宅は、扱いが違います

似ているようで、税務上の扱いが異なるものが2つあります。

会社が契約する役員社宅

会社が家主と賃貸借契約を結び、その住宅を役員に貸します。
役員から必要な家賃を受け取っていれば、会社が負担した家賃の全額が給与として課税されるとは限りません。

役員本人が契約している住宅

役員本人が家主と契約し、その家賃を会社が支払うケースです。
この場合は「社宅を貸している」とは認められず、原則として、会社が負担した金額がそのまま給与として課税されます。
会社が現金で住宅手当を支払う場合も、基本的には同じ扱いになります。

役員社宅の制度を利用するのであれば、少なくとも次の点は最初にきちんと整えておきましょう。

・家主との契約名義を会社にすること
・会社から役員へ「社宅」として貸す形にすること
・役員から毎月家賃を受け取ること
・役員が負担する家賃の計算根拠を残しておくこと

役員社宅は3つに分けて考えます

役員社宅の賃貸料相当額は、大きく次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

1つ目は「小規模な住宅」です。
この場合は、固定資産税の課税標準額や床面積を使って、賃貸料相当額を計算します。

2つ目は「小規模ではない一般的な住宅」です。
この場合は、その住宅が自社所有か、それとも借上げ社宅かによって、計算方法が変わります。

3つ目は「豪華な役員社宅」です。
この場合は、一般の賃貸住宅として通常支払う家賃を基準にして、賃貸料相当額を決めることになります。

小規模住宅の基準

役員社宅における「小規模住宅」とは、建物の法定耐用年数(税法上、その建物が使えるとされている年数のことです)に応じて、次の床面積以下の住宅をいいます。

・法定耐用年数が30年以下の建物:132㎡以下
・法定耐用年数が30年を超える建物:99㎡以下

区分所有のマンションについて小規模住宅にあたるかどうかを判定するときは、廊下やエントランスなどの共用部分の床面積を、合理的な方法で振り分けて、専有部分の床面積に加えて判定します。

マンションの共用部分は、240㎡判定と分けて考えましょう

マンションの共用部分の扱いについては、混同しやすいので注意が必要です。

国税庁の質疑応答事例では、次の計算・判定について、共用部分を含めることが示されています。

・固定資産税の課税標準額を使った、通常の賃貸料の計算
・小規模住宅にあたるかどうかの判定

たとえば、専有面積が95㎡のマンションであっても、共用部分を合理的に振り分けた面積を加えると99㎡を超えてしまい、小規模住宅にはあたらなくなることがあります。

一方で、この質疑応答事例は、豪華社宅に関する「240㎡基準」について、マンションの共用部分を同じ方法で必ず加えるべきだと直接示したものではありません。

そのため、次の2つは、分けて確認することをおすすめします。

・小規模住宅の「99㎡・132㎡」判定
・豪華社宅の「240㎡」判定

特に高額な区分所有マンションなどについては、登記事項証明書、売買契約書、賃貸借契約書、固定資産税関係資料などを確認しながら、どの面積を基礎に判断するかを、税務署に確認しておくと安心です。

240㎡を超える住宅は、どのように判定するのでしょうか

床面積が240㎡を超える住宅については、次の事情を総合的に考えます。

・住宅の取得価額
・会社が支払う家賃
・内装や外装
・設備や施設
・そのほか、住宅全体の状況

240㎡を超えていることは重要な判断材料ですが、それだけで豪華社宅と決まるわけではありません。

たとえば

地方にある床面積260㎡の戸建住宅で、取得価額や家賃がその地域の住宅として特に高額ではなく、内装や設備も一般的なものである場合には、「240㎡を超えている」というだけの理由で、すぐに豪華社宅になるとは限りません。

反対に、床面積が同じくらいでも、非常に高額な家賃が設定されていて、内装や設備が特別な仕様になっている場合には、豪華社宅にあたる可能性があります。

ただし、実際の判定は、物件ごとに事情が異なります。
具体的な家賃額や取得価額だけで、機械的に線引きできるものではありません。

転勤や家族構成は、豪華社宅判定の直接的な基準ではありません

会社が広い住宅や高額な住宅を選ぶ背景には、次のような事情があるかもしれません。

・役員の転勤にともなって、住宅が必要になった
・同居する家族が多く、広い住宅が必要だった
・会社への通勤や緊急対応に便利な場所だった
・防犯やセキュリティを重視した
・来客への対応を想定していた

これらの事情は、会社がその住宅を選んだ理由を説明するための、補助的な資料にはなります。

しかし、転勤や家族構成などの事情があるからといって、豪華社宅にあたらなくなるわけではありません。
豪華社宅の判定では、床面積、取得価額、支払家賃、内外装、設備などを、あわせて総合的に確認します。

ですから、会社側に合理的な事情がある場合でも、「会社の業務上必要だったのだから、豪華社宅にはあたらない」と言い切ってしまうのは避けたほうが安全です。
会社が住宅を選んだ事情と、その住宅そのものが一般的な社宅といえるかどうかは、分けて考える必要があります。

業務で使用している部分がある場合

豪華社宅の240㎡判定では、国税庁の通達(国税庁が示している取扱いの指針のことです)上、床面積から「公的使用に充てられる部分」を除くこととされています。

国税庁の源泉徴収に関する資料では、「業務に関する使用部分等がある場合のその部分を除く」という表現で説明されています。

ただし、役員が自宅で仕事をすることがあるというだけで、書斎やリビングの一部を当然に床面積から除外できるとは限りません。
どの部分が公的使用部分や業務使用部分にあたるかは、実際の使用状況にもとづいて判断します。

たとえば、次のような資料があると、使用の実態を説明しやすくなります。

・住宅の間取り図
・業務使用部分の写真
・会議や来客に利用した記録
・会社の書類や備品の保管状況
・居住部分との区分がわかる資料

これらは、法律上すべてそろえなければならない必須書類、という意味ではありません。
単に部屋を「仕事部屋」と呼んでいるだけでなく、実際に会社の業務に使っていることを説明するための参考資料です。
業務使用部分を床面積から除外したい場合には、事前に税理士などへ相談しておくと安心です。

240㎡以下でも豪華社宅になるケース

床面積が240㎡以下であれば、必ず一般的な社宅として認められる、というわけではありません。

国税庁は、次のような住宅については、240㎡以下であっても豪華社宅にあたるとしています。

・一般的な住宅にはふつう設置されていない、プールなどの設備・施設がある
・役員個人の好みを強く反映した設備・施設がある

ここで大事なのは、「一般的な社宅にも、ふつう設置されている設備かどうか」という視点です。

慎重な確認が必要になる設備の例

次のような設備がある場合には、役員個人の好みを強く反映したものにあたらないか、慎重に確認しておく必要があります。

・専用プール
・役員の趣味専用に設けた特別な部屋
・特別仕様の防音設備
・一般住宅ではあまり見られない娯楽設備
・役員の希望による、高額な造作や内装
・住宅の通常の機能を大きく超える設備

ただし、こうした設備があるからといって、すべてが一律に豪華社宅になるわけではありません。

たとえば、床暖房、宅配ボックス、共用のフィットネスルームなどは、住宅の地域やグレードによっては、一般的な設備になっていることもあります。
設備の名前だけで判断するのではなく、物件全体の状況をあわせて確認することが大切です。

高額なタワーマンションは、すべて豪華社宅になるのでしょうか

都心のタワーマンションや高額な賃貸マンションだからといって、必ず豪華社宅になるわけではありません。

豪華社宅の判定では、次の要素をまとめて確認します。

・床面積
・会社が支払う家賃
・物件の取得価額
・内装や外装
・専用設備
・役員個人の好みがどの程度反映されているか
・一般的な社宅として貸されている住宅といえるか

都心部では、特別な設備がない一般的なファミリー向け住宅でも、家賃自体が高額になることがあります。

そのため、「家賃が月額100万円以上だから、必ず豪華社宅だ」というように、家賃の金額だけで判断することはできません。
ただし、会社が支払う家賃が高額であるほど、物件を選んだ経緯や役員負担家賃の妥当性を、より丁寧に説明できるようにしておくことが大切です。

豪華社宅の賃貸料相当額は、どうやって決めるのでしょうか

豪華社宅については、通常の役員社宅で使う計算式を使うことができません。

その住宅を一般の賃貸住宅として貸した場合に、通常やりとりされると認められる家賃が、賃貸料相当額になります。わかりやすくいうと、次の金額です。

同じ住宅を、役員ではない第三者に貸すとしたら、通常いくらの家賃になるか

会社が第三者から借りている場合

会社が役員と関係のない家主から住宅を借りている場合には、会社が実際に家主へ支払っている家賃が、通常の家賃を考えるうえで重要な参考になります。

ただし、契約金額に次のような費用が含まれている場合には、内容をよく確認する必要があります。

・管理費や共益費
・駐車場代
・家具や家電の利用料
・清掃サービス
・光熱費
・そのほかの個別サービス

国税庁の質疑応答事例では、エレベーターの保守料、火災報知機の保守料、共用部分の電気料、火災保険料といった管理費が、家主へ支払う家賃に含まれている場合には、それらを含めた総額を基礎に通常の賃貸料を計算してよいとされています。

一方、役員個人が利用した飲食代、クリーニング代、専有部分の光熱費、個別のサービス料金などは、住宅家賃とは分けて検討する必要があります。

会社が住宅を所有している場合

会社が所有している住宅の場合、会社が家主へ支払う家賃というものが存在しません。
そのため、一般の賃貸住宅として貸した場合の家賃を、合理的に見積もる必要があります。

実務上は、次のような資料が参考になります。

・近隣にある類似物件の募集家賃
・同じマンション内にある他の部屋の賃貸事例
・過去に第三者へ貸していたときの家賃
・不動産会社が作成した賃料査定書
・必要に応じた、不動産鑑定士による鑑定評価

ただし、不動産会社の査定書を取得すれば、税務上必ず認められる、という制度ではありません。
査定書は、役員負担家賃を合理的に説明するための、参考資料のひとつです。

募集家賃は、実際に契約が成立した家賃と異なることもあります。
複数の類似物件を比較しながら、物件の立地、築年数、面積、設備、契約条件などを考慮して、説明できる金額を設定することが大切です。
特に高額な住宅や特殊な住宅では、ひとつの資料だけに頼らず、複数の資料を用意しておくと安心です。

「会社が支払う家賃の50%」では、足りないことがあります

役員社宅について、「会社が払っている家賃の半分を役員から受け取っていれば、問題ない」と考えている方もいらっしゃいます。
しかし、これはすべての役員社宅にあてはまるわけではありません。

小規模ではない、一般的な借上げ社宅の場合には、次のうち、金額が多いほうが賃貸料相当額になります。

・会社が家主に支払う家賃の50%
・固定資産税の課税標準額などを使って計算した金額

一方、豪華社宅にあたる場合には、この計算方法を使うことができません。
一般の賃貸住宅として、通常支払うべき家賃を基準にする必要があります。

たとえば

次のようなケースを考えてみましょう。

・会社が家主に支払う家賃:月額100万円
・役員から受け取る家賃:月額50万円
・一般の賃貸住宅として通常支払う家賃:月額100万円

この住宅が豪華社宅にあたる場合、役員が会社の支払家賃の50%を負担していても、それだけでは十分とはいえません。
通常支払うべき家賃100万円と、役員負担家賃50万円との差額50万円が、役員に対する給与として課税される可能性があります。

役員から受け取る家賃が少ないと、どうなるのでしょうか

役員から受け取る家賃が、賃貸料相当額より少ない場合には、その差額が役員に対する給与として扱われます。

たとえば、次のようなケースです。

・豪華社宅の通常の家賃:月額80万円
・役員から受け取っている家賃:月額20万円
・差額:月額60万円

この場合、原則として、月額60万円が現金以外の給与、つまり「経済的利益(現金ではないけれど、実質的に受け取ったのと同じとみなされる利益のことです)」として扱われます。

役員本人への影響

給与として扱われた金額は、役員の給与所得に含まれます。
会社では、その金額を源泉所得税(会社が役員や従業員に給与を支払うときに、あらかじめ差し引いて国に納める税金のことです)の計算や、年末調整(1年間の給与にかかる所得税を、年末にまとめて精算する手続きのことです)などに反映する必要があります。

過去の役員負担家賃が不足していた場合には、会社に源泉所得税の追加納付が必要になることもあります。

会社への影響

法人税の面でも、住宅を無償または低い金額で貸したことによる利益は、役員に対する経済的利益として扱われます。

継続的に提供される利益の金額が、毎月おおむね一定である場合には、「定期同額給与(毎月ほぼ同じ金額を支払う給与のことで、要件を満たせば会社の経費として認められやすい仕組みです)」として、損金(税務上、会社の経費として認められる金額のことです)に算入できる場合があります。

一方、毎月の金額が一定でない場合や、不相当に高額な場合、事実を隠したり偽って処理したりしている場合には、損金として認められない可能性があります。

会社の経費として認められないうえに、役員本人には給与として課税されると、会社と役員の両方に負担が生じてしまいます。
役員負担家賃は、入居するときに確認するだけでなく、契約更新や家賃が変わったタイミングでも、あわせて見直していきましょう。

役員社宅は、必ず節税になるわけではありません

役員社宅は、正しく利用すれば、会社と役員の住居費の負担を整理できる、便利な制度です。

しかし、「会社名義で高級住宅を借りれば、家賃を全額会社の経費にできて、役員にも税金がかからない」という制度ではありません。

豪華社宅にあたると、役員が負担すべき家賃が一般の市場家賃に近づくため、通常の役員社宅と比べて、税務上の効果が小さくなることがあります。

また、会社が高額な家賃、敷金、礼金、仲介手数料、更新料などを負担すると、会社の資金繰りにも影響が出てきます。

役員社宅を検討するときは、税金だけでなく、次の点もあわせて確認しておきましょう。

・会社が毎月支払う家賃
・役員から毎月受け取る家賃
・給与課税される可能性
・法人税上の役員給与の取扱い
・敷金、礼金、仲介手数料などの初期費用
・更新料や修繕費
・解約時の違約金
・会社の資金繰り
・社会保険料への影響

豪華社宅の家賃を決める実務上の流れ

豪華社宅にあたる可能性がある場合には、次の順番で確認していくと整理しやすくなります。

ステップ1.契約関係を確認する

まず、会社が家主と賃貸借契約を結んでいるかを確認します。
役員本人が家主と直接契約し、会社が家賃を負担している場合には、原則として役員社宅ではなく、給与として扱われます。

ステップ2.床面積を確認する

次の資料で、床面積を確認します。

・登記事項証明書
・売買契約書
・賃貸借契約書
・物件のパンフレット
・固定資産税関係資料
・マンションの管理規約

マンションについては、小規模住宅の判定と、豪華社宅の240㎡判定を混同しないようにしましょう。

ステップ3.設備や内装を確認する

一般的な社宅には、通常見られない設備がないかを確認します。
役員の希望で追加した内装や設備がある場合には、見積書、契約書、請求書などを保存しておくと、あとで判断しやすくなります。

ステップ4.会社が住宅を選んだ経緯を整理する

転勤、通勤、家族構成、セキュリティなど、会社がその住宅を選んだ経緯を整理しておきます。
ただし、これらは豪華社宅にあたらないことを直接証明するものではなく、あくまで選定の経緯を説明するための補助資料である点に注意しましょう。

ステップ5.通常の家賃を確認する

借上げ社宅の場合は、会社が実際に家主へ支払う家賃や、契約内容を確認します。
会社所有の住宅の場合は、近隣の類似物件、不動産会社の査定、過去の賃貸実績などを参考に、通常の家賃を合理的に見積もります。

ステップ6.役員負担家賃を決定する

計算した賃貸料相当額をもとに、役員から受け取る家賃を決めます。
必要に応じて、社宅使用契約書、社宅規程、社内決裁資料などに、金額と計算の根拠を残しておきましょう。

ステップ7.毎月確実に徴収する

役員負担家賃は、毎月の役員報酬から差し引く方法や、役員から会社の口座へ振り込んでもらう方法があります。
給与明細や会計帳簿にも「社宅家賃」などの項目を表示し、毎月きちんと徴収していることがわかるようにしましょう。

ステップ8.定期的に見直す

次のような場合には、役員負担家賃をあらためて確認しましょう。

・賃貸借契約を更新した
・会社が支払う家賃が変わった
・大規模な改装をした
・特別な設備を追加した
・入居する役員が変わった
・住宅の使用方法が変わった
・周辺の家賃相場が大きく変わった

よくある勘違い

これまでの内容を、よくある勘違いという形で振り返っておきましょう。
どれも珍しいことではありませんので、当てはまるものがあっても心配しすぎず、これから整えていけば大丈夫です。

勘違い1.240㎡以下なら、絶対に豪華社宅ではない

240㎡以下でも、プールなどの特殊な設備や、役員個人の好みを強く反映した設備がある場合には、豪華社宅にあたります。

勘違い2.240㎡を超えたら、自動的に豪華社宅になる

240㎡を超える住宅は、取得価額、支払家賃、内外装、設備などを総合的に確認します。
面積だけでは決まりません。

勘違い3.会社家賃の50%を受け取れば、必ず大丈夫

豪華社宅には、会社家賃の50%を使う通常の計算方法があてはまりません。
一般の賃貸住宅として、通常支払うべき家賃を確認する必要があります。

勘違い4.転勤や家族の事情があれば、豪華社宅にならない

転勤、家族構成、通勤、セキュリティなどは、会社が住宅を選んだ事情を説明する資料にはなります。
ただし、それだけで豪華社宅にあたらなくなるわけではありません。

勘違い5.不動産会社の査定書があれば、絶対に安全

査定書は、通常の家賃を説明するための参考資料です。
税務上、その金額が自動的に認められるという、安全基準ではありません。

勘違い6.社宅規程を作れば、それで問題ない

社宅規程を作ること自体はとても大切です。
ただし、規程があるだけでは十分ではなく、実際の契約、住宅の状況、家賃の計算、毎月の徴収が、規程の内容ときちんと一致していることが重要です。

税務調査に備えて残しておきたい資料

豪華社宅にあたるかどうかは、複数の事情を総合的にみて判断します。
そのため、判断の根拠をあとから説明できるように、次の資料を、できる範囲で保存しておくことをおすすめします。

・会社と家主との賃貸借契約書
・会社と役員との社宅使用契約書
・社宅規程
・物件の間取り図
・床面積がわかる資料
・マンションの共用部分に関する資料
・物件や設備の写真
・設備一覧
・内装工事や設備工事の見積書、契約書、請求書
・不動産会社の賃料査定書
・近隣類似物件の募集資料や成約事例
・役員負担家賃の計算書
・必要に応じた、社内決裁資料や取締役会議事録
・給与明細
・役員から家賃を受け取ったことがわかる資料

これらの資料は、すべてが法律上必須というわけではありません。
大切なのは、会社がどのような事実と考え方にもとづいて役員負担家賃を決めたのかを、あとから説明できるようにしておくことです。
少しずつでかまいませんので、できるところから整えていきましょう。

消費税の取扱いにも注意しましょう

住宅としての貸付けは、原則として消費税が非課税(消費税がかからない取引のことです)です。

会社が住宅を借りて、それを役員へ住宅として転貸する場合も、契約や実際の使用状況から住宅用であることが明らかであれば、原則として住宅の貸付けとして扱われます。

また、共益費など、共同住宅の共用部分に関する費用は、住宅家賃に含まれる場合があります。
家具、照明設備、冷暖房設備なども、住宅と一体で貸し付けられていて、別に料金を設定していない場合には、住宅の貸付けに含まれます。

一方、次の費用は、契約内容によって消費税の扱いが変わることがあります。

・駐車場代
・家具や家電の利用料
・専有部分の電気、ガス、水道代
・清掃サービス
・そのほかの個別サービス

たとえば、家具や設備について家賃とは別に料金を決めている場合には、その部分が消費税の課税対象になることがあります。
駐車場についても、住宅と一体で貸しているか、駐車場代を別に受け取っているかによって、取扱いが変わります。

社会保険は、所得税と別の基準で計算します

役員社宅では、所得税だけでなく、健康保険や厚生年金の取扱いにも注意が必要です。

社会保険では、会社から住宅を現物で提供している場合、厚生労働大臣が定める「現物給与価額(食事や住宅など、現金以外の形で提供された利益を、金額に置き換えるための基準のことです)」を使って、住宅による利益を金額に換算します。

換算した金額から、役員が実際に負担している家賃を差し引いて、それでもなお会社が負担している利益が残る場合には、その金額を報酬に加えて、標準報酬月額(社会保険料を計算するもとになる、給与のランクのようなものです)を計算することがあります。

ここで大切なのは、次の点です。

所得税の賃貸料相当額と、社会保険の現物給与価額は、同じ計算ではありません。

税務上、必要な家賃を役員から受け取っていて給与課税が生じない場合であっても、社会保険では、別途、現物給与として加算が必要になることがあります。

なお、2026年10月1日から、住宅に関する現物給与価額と、その算出方法が改正されます。
この記事の作成日である2026年7月26日時点では、改正の前後で取扱いが変わりますので、適用時期を間違えないよう注意が必要です。
役員社宅を導入している会社は、給与計算や社会保険の担当者とも、あらかじめ情報を共有しておきましょう。

まとめ|面積だけで判断せず、家賃の根拠を残しましょう

豪華な役員社宅にあたるかどうかは、床面積だけでは決まりません。

床面積が240㎡を超える住宅については、取得価額、会社が支払う家賃、内装や外装、設備などを総合的にみて判断します。
240㎡を超えたからといって、必ず豪華社宅になるわけではありません。

一方、240㎡以下であっても、一般的な住宅にはないプールなどの設備や、役員個人の好みを強く反映した設備がある場合には、豪華社宅にあたります。

豪華社宅にあたった場合には、固定資産税の課税標準額などを使った通常の計算式を使うことができません。
一般の賃貸住宅として通常支払うべき家賃を確認し、その金額を基準として役員負担家賃を設定する必要があります。

最後に、実務上のポイントを整理しておきます。

・240㎡を超えても、自動的に豪華社宅になるわけではありません
・240㎡以下でも、特殊な設備があれば豪華社宅になることがあります
・小規模住宅の共用部分の扱いと、豪華社宅の240㎡判定は、混同しないようにしましょう
・業務使用部分は、実際の使用状況にもとづいて判断します
・転勤や家族構成は、豪華社宅判定の直接的な基準ではありません
・不動産会社の査定書は参考資料であり、絶対的な安全基準ではありません
・役員負担家賃が不足すると、その差額が給与として課税される可能性があります
・判断の根拠となる資料を、できる範囲で残しておきましょう
・所得税と社会保険とでは、計算の基準が異なります
・2026年10月1日から、社会保険の住宅に関する現物給与価額と算出方法が変わります

役員社宅は、会社ごと、物件ごとに事実関係が異なります。
特に、床面積が大きい住宅、家賃が高額な住宅、特殊な設備がある住宅、会社が所有している住宅については、役員負担家賃の計算根拠をあらかじめ整えておくと安心です。

※この記事は、2026年7月26日時点で確認できる国税庁および日本年金機構の公表資料にもとづき、一般的な取扱いをご説明したものです。
実際の税務・社会保険上の取扱いは、住宅の床面積、取得価額、支払家賃、内外装、設備、契約内容、使用状況などによって異なります。
実際の適用にあたっては個別の判断が必要になりますので、正確な内容や最新の情報については、所轄税務署、年金事務所にご確認ください。