非営利型法人の「理事の親族等が3分の1以下」という要件は、いつ判定するのでしょうか?

一般社団法人の非営利型要件をわかりやすく解説|理事の人数・親族割合・退任時の注意点

理事が退任した場合の取扱いと、「3~4か月」の考え方

一般社団法人や一般財団法人の中には、一定の条件を満たすことで、法人税法上「非営利型法人」として扱われるものがあります。

非営利型法人に当てはまると、株式会社などの一般的な会社とは、税金がかかる範囲が変わってきます。

非営利型法人は、法人税法上「公益法人等」というグループに分類されます(社会的に公益性が高いとされる法人のグループで、宗教法人や学校法人なども同じグループに含まれます)。このグループに入ると、原則として「収益事業」から生まれた利益にだけ、法人税がかかります。
「収益事業」とは、物品の販売やサービスの提供など、法人税法であらかじめ決められた事業のことです。

一方、非営利型法人の条件を満たさない一般社団法人・一般財団法人は「普通法人」として扱われます。
普通法人になると、株式会社と同じように、原則としてすべての利益に法人税がかかることになります。

そのため、
「うちは一般社団法人だから、法人税は一部の事業にしかかからない」
と考えるのは、少し注意が必要です。

一般社団法人・一般財団法人という法人の種類だけで決まるわけではなく、法人税法上の「非営利型法人の条件」を満たしているかどうかを、あらためて確認する必要があります。

その条件のひとつが、今回取り上げる「理事とその親族等の割合」に関する条件です。

理事本人と親族等を合わせて「理事の数の3分の1以下」であることが必要です

非営利型法人の条件のひとつとして、それぞれの理事について、
「その理事本人」と「その理事の親族など特別な関係にある理事」を合わせた人数が、理事全体の数の3分の1以下であること
が求められています。

ここでポイントになるのが、親族だけを数えるのではなく、基準となる理事本人も1人として数える、という点です。

たとえば、理事が3人いて、Aさん・Bさん・Cさんの間に親族関係やそれに近い特別な関係がない場合で考えてみましょう。

Aさんについて判定すると、対象になるのはAさん本人1人だけです。

理事の総数は3人ですから、
1人 ÷ 3人 = 3分の1
となります。

条件は「3分の1未満(3分の1より少ないこと)」ではなく「3分の1以下(3分の1も含む)」ですので、この場合は条件を満たします。

Bさん、Cさんについても、同じように考えます。

一方で、理事が3人いて、AさんとBさんが親子で、Cさんだけが親族などの特別な関係のない第三者だった場合を考えてみます。

Aさんを基準にすると、Aさん本人とその子であるBさんの、合わせて2人が対象になります。

2人 ÷ 3人 = 3分の2

となり、3分の1を超えてしまいます。

この場合、この親族等割合の条件を満たすことができません。

つまり、「理事が3人いれば大丈夫」というわけではなく、人数だけでなく、理事同士がどのような関係にあるかまで確認する必要があるのです。

「親族等」には、配偶者や3親等以内の親族以外の人も含まれます

この条件で注意しておきたいのが、「親族等」の範囲です。

対象になるのは、単純な夫婦や親子だけではありません。

法人税法施行規則(法律の細かい取り扱いを定めた国のルールです)では、理事と「特殊の関係のある者」として、次のような人が定められています。
理事の配偶者、3親等以内の親族(自分から見て、祖父母・孫・おじ・おば・甥や姪あたりまでの範囲です)、事実上婚姻関係と同じような事情にある人、その理事の使用人(雇われている人)、その理事から受け取るお金などで生活している人などです。

したがって、役員名簿を見て「名字が違うから問題ない」と判断してしまうのは、少し早すぎるといえます。

実際に条件を判定するときは、親族関係だけでなく、法人税法上の「特殊の関係」に当たる人が理事になっていないかまで、確認する必要があります。

なお、「同じ会社で働いている人なら、みんな特殊関係者になる」という意味ではありませんので、その点はご安心ください。

法令では、たとえば「その理事の使用人」など、具体的な関係が定められています。実際にどのような関係にあるのかを確認したうえで、判断することになります。

理事が1人または2人では、この条件を満たすことができません

一般社団法人については、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(法人の基本ルールを定めた法律です)上、理事を1人以上置くこととされています。

一方、理事会を置く一般社団法人では、理事は3人以上必要です。

法人のルールの上では、理事会を置いていない一般社団法人であれば、理事が1人または2人という形もありえます。

しかし、法人税法上の非営利型法人の条件を考えると、事情が変わってきます。

理事が1人であれば、
1人 ÷ 1人 = 100%
です。

理事が2人で、その2人の間に親族関係などがなくても、それぞれの理事本人を1人として数えますので、

1人 ÷ 2人 = 50%

となります。

どちらの場合も、3分の1を超えてしまいます。

そのため、国税庁も、一般社団法人がこの条件を満たして非営利型法人になるためには、少なくとも3人以上の理事が必要になる、と説明しています。

ただし、理事が3人いれば自動的に条件を満たすわけではありません。

先ほどご説明したとおり、3人のうち2人が親族などの関係にあれば、条件から外れてしまう可能性があります。

この「3分の1以下」の判定は、原則として、そのときどきの状況で行います

ここが、今回いちばんお伝えしたいポイントです。

法人税基本通達1-1-12(国税庁が、法律の解釈や実務上の取り扱いをまとめた指針です)では、この親族等割合の条件について、原則として、
「判定するそのときの実際の状況」
によって判断する、とされています。

つまり、事業年度の始まりの日や決算日だけを確認すればよい、というものではありません。

事業年度の途中で理事が退任したり、新しい理事が就任したりして理事の顔ぶれが変われば、そのつど、条件を満たしているかどうかが問題になります。

たとえば、理事会を置いておらず、定款(法人の基本的なルールを定めた文書です)の上でも理事が2人以上いればよいとされている一般社団法人があるとします。

これまで理事が3人いて、全員のあいだに親族関係などがなかったとしても、そのうち1人が辞任し、実際に理事が2人になった場合には、それぞれの理事本人だけで、理事全体の2分の1を占めることになります。

そのため、原則的な考え方では、この時点で親族等割合の条件を満たさない状態になってしまいます。

ただし、実際に理事が辞任した場合については、もうひとつ大切な確認事項があります。

「理事が辞任した=その瞬間に必ず理事が1人減る」とは限りません

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には、「権利義務理事」と呼ばれる仕組みがあります。

これは、法律や定款で決めた理事の人数を欠くことになる場合には、任期満了や辞任によって退任した理事であっても、新しい理事が就任するまでのあいだ、引き続き理事としての権利と義務を持ち続けることがある、という仕組みです(一般法人法75条に定められています)。

たとえば、定款で「理事3名以上」と決めている法人に理事が3人しかおらず、そのうち1人が辞任した場合には、単純に「理事が2人になった」とだけ考えればよいとは限りません。

辞任した理事が、権利義務理事として引き続き理事の立場に残っているかどうかを、確認する必要があります。

また、理事会を置いている一般社団法人では、法律上、理事が3人以上必要です。

そのため、実際に非営利型法人の条件を判定するときは、
「辞任届の日付だけを見て人数を数える」
のではなく、定款の内容、法人の運営体制、辞任の効力が発生するタイミング、後任の理事が決まっているかどうかなどを確認したうえで、判断することが大切です。

理事の人数についての判定で迷うことがあれば、状況を整理したうえで、税務署に確認しておくと安心です。

理事の退任などで、一時的に条件を外れてしまった場合には、例外的な取り扱いがあります

ここまでお読みいただくと、
「理事が退任して、一時的に人数が足りなくなったら、その日からすぐに普通法人になってしまうのだろうか」
と、心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

この点については、法人税基本通達1-1-12に、実務上とても大切な取り扱いが定められています。

非営利型法人が、たとえば理事の退任によってこの親族等割合の条件を満たさなくなった場合でも、条件を満たさなくなってから「相当の期間内」に理事の変更などを行い、再び条件を満たしたと認められれば、そのあいだも継続して条件を満たしていたものとして取り扱ってよい、とされています。

ここで注意しておきたいのは、「突然の辞任」や「病気による退任」など、予想できない事情のときだけに限定されているわけではない、という点です。

通達では、「理事の退任に基因して」と書かれています。

そのため、「突然の退任のときだけ救済してもらえる」と考えるのではなく、理事の退任などによって一時的に条件を外れてしまった場合について、決められた期間内に条件を回復できたかどうかを確認する、と理解しておくのが適切です。

「相当の期間」とは、具体的にどのくらいの期間でしょうか。国税庁は「3~4か月程度」を一つの目安としています

それでは、「相当の期間」とは、具体的にどのくらいの期間を指すのでしょうか。

法人税基本通達そのものには、「〇日以内」「〇か月以内」という、はっきりとした期限は書かれていません。

ただし、国税庁が公表しているこの通達の趣旨説明では、「相当の期間」とは、再び条件を満たすために通常行われるべき努力に必要な期間を意味する、と説明されています。

そして、後任の候補者を選ぶ手続きや、実際の変更手続きにかかる日数などを考えると、
条件を満たさなくなったときから3~4か月程度で理事の変更などが行われていれば、「相当の期間」内と判断することになるだろう
という考え方が示されています。

この「3~4か月程度」は、実務のうえでとても参考になる目安です。

ただし、「4か月以内であれば必ず大丈夫」という、法律で決められた期限ではありません。

国税庁自身も、相当の期間は、それぞれの法人の事情によって異なるとしています。

そのため、「まだ3か月しか経っていないから、何もしなくても大丈夫」と考えるのではなく、条件を外れたことが分かった時点で、後任の理事の候補者選びや社員総会の準備など、必要な手続きをできるだけ早く進めていただくことが大切です。

条件を満たさなくなった場合、いつから普通法人になるのでしょうか

一時的な取り扱いが認められず、非営利型法人の条件を満たさなくなった場合には、その法人は普通法人として扱われることになります。

国税庁の法人税基本通達では、非営利型法人が普通法人になる場合の区分が変わる日について、
「非営利型法人の条件のいずれかを満たさなくなった日」
とされています。

つまり、税務署から「今日から普通法人です」という通知を受けて、そこで初めて変わるわけではありません。

条件を満たさなくなったという事実そのものによって、法人税法上の区分が変わってしまいますので、日頃から条件を満たしているかどうかを確認しておく必要があります。

事業年度の途中で普通法人になると、申告する期間も途中で区切られることがあります

非営利型法人が、事業年度の途中で普通法人になった場合には、税務上の事業年度が途中で区切られる「みなし事業年度」というものが生じます(本来の決算期とは別に、税金の計算のためだけに区切られる特別な期間のことです)。

たとえば、4月1日から翌年3月31日までを事業年度としている法人が、10月1日に非営利型法人の条件を満たさなくなり、そのまま普通法人になったとします。

この場合、原則としては、
4月1日から9月30日まで
と、
10月1日から翌年3月31日まで
の、それぞれが税務上の事業年度として取り扱われることになります。

前半の期間については非営利型法人として収益事業だけに課税され、後半の期間については普通法人としてすべての所得に課税されます。
国税庁の通達の解説でも、この考え方が示されています。

そのため、「決算は来年の3月だから、そのときまでに考えればよい」という問題ではありません。

年度の途中で法人の区分が変わると、法人税の申告のタイミングそのものに影響が出る可能性があります。

普通法人へ変わるときには、「それまでに貯まった利益」の税務処理にも注意が必要です

もう一つ、とても大切な税務上の注意点があります。

非営利型法人は、法人税法上「公益法人等」に当てはまります。

この公益法人等が普通法人に変わる場合には、単に「これから先の利益がすべて課税対象になる」というだけでは終わりません。

法人税法64条の4では、普通法人に変わる前に、収益事業以外の事業から生まれた利益が積み重なった金額である「累積所得金額」や、反対に積み重なった赤字に当たる「累積欠損金額」について、変わった日を含む事業年度の所得の計算のなかで、一定の調整を行う仕組みが設けられています。

国税庁の質疑応答事例でも、非営利型法人である一般社団法人が、理事の交代によって条件を満たさなくなり普通法人になるケースを例に、この累積所得金額の取り扱いが説明されています。

これは、計算がかなり専門的になる部分です。

普通法人に変わった場合には、
「その日以降だけ税金の計算方法が変わる」
と考えるのではなく、それまでに積み重なった、収益事業以外の部分の税務上の金額についても、あわせて確認する必要がある場合がある、と覚えておいていただくとよいでしょう。

理事の退任が決まったら、早めの確認をおすすめします

実務上は、理事が退任してから問題に気づくよりも、退任や役員の改選の予定が分かった時点で確認しておくほうが安心です。

特に、今の理事が3人しかいない法人や、理事の中に夫婦・親子・兄弟姉妹などの親族がいる法人、理事の中にその理事本人が雇っている人など特殊な関係にある人がいる法人、次回の社員総会などで理事の辞任や退任を予定している法人、後任の理事がまだ決まっていない法人、理事を親族に変更する予定がある法人、そして非営利型法人の条件をしばらく確認していない法人では、早めに確認しておくことをおすすめします。

理事の変更は、登記の手続きだけの問題ではなく、法人税がかかる範囲そのものに影響する可能性があります。

「役員が一人変わるだけ」と考えず、変更の前と後で理事の顔ぶれがどう変わるのかを、一度確認しておくと安心です。

まとめ

非営利型法人の「理事の親族等が3分の1以下」という条件は、原則として、そのときどきの実際の状況によって判定します。

理事本人も人数に含めて数えますので、一般社団法人で理事が1人または2人の場合には、この条件を満たすことができません。

また、理事が3人以上いても、親族や、法人税法上の特殊な関係にある理事が複数いる場合には、条件を満たさない可能性があります。

一方で、理事の退任などによって一時的に条件を満たさなくなった場合でも、決められた期間内に理事を変更するなどして条件を回復すれば、継続して条件を満たしていたものとして取り扱ってもらえる余地があります。

国税庁の通達の趣旨説明では、「3~4か月程度」がひとつの目安として示されていますが、これは一律に決まった期限ではありません。

また、理事が辞任しても、一般法人法75条によって、引き続き権利義務理事として立場が残る場合があります。

そのため、「辞任した日」「登記した日」「後任者が就任した日」だけを機械的に見て判断するのではなく、定款の内容や法人の運営体制もあわせて確認することが重要です。

さらに、非営利型法人の条件を満たさなくなって普通法人になると、収益事業だけでなく、原則としてすべての利益が法人税の対象になります。

事業年度が途中で区切られる「みなし事業年度」が生じたり、普通法人への変更のときに、それまでに積み重なった利益についての税務上の調整が必要になったりする可能性もあります。

理事の退任・就任・改選を予定している一般社団法人・一般財団法人では、登記の手続きだけでなく、「非営利型法人の条件を維持できるかどうか」まで、事前に確認しておくことが大切です。

この記事は、2026年9月1日時点で確認できる法人税法、法人税法施行令・施行規則、法人税基本通達、および国税庁の公表資料などをもとに、一般的な考え方を整理したものです。実際の「相当の期間」の判断や、権利義務理事がいる場合の税務上の判定、累積所得金額などの計算については、それぞれの法人の事実関係によって取り扱いが異なる可能性があります。
実際の適用には個別の判断が必要ですので、具体的な判断をされる際は、所轄の税務署へご確認いただくことをおすすめします。