免税事業者からの仕入れ控除の経過措置
※この記事は、2026年7月23日時点の法令、国税庁の公表資料などに基づいて作成しています。
実際の処理は、契約内容、支払条件、経理方法、消費税の計算方法などによって異なることがあります。
はじめに
2026年10月1日から、「適格請求書発行事業者」(消費税のインボイスを発行できる、税務署に登録した事業者のことです)ではない取引先からの課税仕入れについて、仕入税額控除の経過措置の割合が、原則として80%から70%へ下がります。
ここでいう「経過措置」とは、インボイス制度が始まったことで取引先の税負担が急に増えないよう、一定期間だけ設けられている特別なルールのことです。
「課税仕入れ」とは、事業のために商品を仕入れたり、事務所を借りたり、外注先からサービスを受けたりする取引のうち、消費税の対象になるものをいいます。すべての支払いが対象になるわけではありません。
たとえば、給与、借入金の返済、住宅家賃、将来返還される敷金などは、今回の経過措置をそのまま当てはめる取引ではありません。
今回の変更で特に注意したいのが、次のような継続的な支払いです。
・事務所や店舗の家賃
・駐車場代
・保守料やシステム利用料
・年間契約のサービス料金
・前払いしている費用
・敷金や保証金のうち返還されない部分
これらは、単純に「9月中に支払ったから80%」「10月に支払ったから70%」と判断できるとは限りません。
同じ家賃であっても、契約書に書かれた支払日、前払いか後払いか、どの期間の賃料なのかによって、適用する控除割合が変わることがあります。
なお、今回の変更が消費税の納付額に直接影響するのは、主に一般課税により消費税を計算している事業者です。
一般課税とは、実際の仕入れや経費に含まれる消費税を集計して、売上げに係る消費税から差し引く方法です。
一方、簡易課税制度では、実際の仕入税額を積み上げるのではなく、売上げに係る消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」(業種ごとにあらかじめ決められている、売上げに対する仕入れの割合の目安です)を掛けて仕入控除税額を計算します。
そのため、簡易課税制度を適用している場合、80%から70%への変更が消費税の納付額に直接影響するものではありません。
そもそも「仕入税額控除」とは何でしょうか
消費税を納める事業者は、原則として、売上時に受け取った消費税から、仕入れや経費の支払い時に負担した消費税を差し引いて、納付する消費税を計算します。
この「仕入れや経費に含まれる消費税を差し引くこと」を、仕入税額控除といいます。
たとえば、次のようなイメージです。
・売上げに係る消費税:100万円
・仕入れや経費に係る控除対象の消費税:60万円
・納付する消費税:100万円-60万円=40万円
インボイス制度では、原則として、適格請求書発行事業者からインボイスの交付を受け、帳簿とともに保存しなければ仕入税額控除を受けることができません。
ただし、制度が始まってから一定期間は、免税事業者(消費税の申告・納税が免除されている事業者です)やインボイス登録をしていない課税事業者などからの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。
今回変わるのは、消費税率そのものではありません。
適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、会社が仕入税額として差し引ける割合が変わります。
控除割合は2026年10月1日から80%から70%へ
経過措置によって控除できる割合は、次のように段階的に下がります。
まず、2023年10月1日から2026年9月30日までの課税仕入れは80%控除です。
続く2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%と、2年ごとに控除できる割合が下がっていきます。
そして2031年10月1日以後は、この経過措置による控除そのものがなくなります。
2026年度税制改正により、経過措置は70%、50%、30%と段階的に縮小される仕組みに見直されています。
もともとは80%の次に一気に50%へ下がる予定でしたが、急な負担増を和らげるため、70%の段階が新たに設けられ、経過措置が終わる時期も2年先送りされました。
ここで大切なのは、控除割合を判断する基準です。
請求書を受け取った日や、銀行口座からお金が引き落とされた日だけで決まるわけではありません。
原則として、その取引について「課税仕入れを行った時期」が、2026年9月30日以前なのか、2026年10月1日以後なのかによって判断します。
どのくらい負担が増えるのでしょうか
税込11万円の事務所家賃を、インボイス登録をしていない貸主に支払っているケースで考えてみましょう。
この11万円に含まれる消費税相当額を1万円とします。
80%控除の場合 1万円×80%=8,000円。仕入税額として差し引ける金額は8,000円です。
70%控除の場合 1万円×70%=7,000円。仕入税額として差し引ける金額は7,000円です。
差額は1か月あたり1,000円です。
1年間では、単純計算で1万2,000円の差になります。
家賃が税込110万円であれば、差額は月1万円、年間12万円です。
家賃だけを見ると大きな差ではないように感じるかもしれません。
しかし、インボイス登録をしていない取引先への支払いが、家賃、外注費、業務委託料、保守料など複数ある場合には、年間の影響額が大きくなることがあります。
まずは、自社がどの取引に経過措置を適用しているのかを確認しておくことが大切です。
事務所や店舗の家賃は、契約内容によって判断が変わります
通常の家賃は「契約上の支払日」がポイントです
事務所や店舗などの賃貸借契約では、契約書に次のような支払条件が書かれています。
・毎月末日までに翌月分を支払う
・当月分を当月末日までに支払う
・当月分を翌月10日までに支払う
通常の賃料については、前受けに係る金額を除き、契約や慣習によって支払いを受けるべき日が取引時期になります。
買手側の課税仕入れの時期も、原則として、売手側の資産の譲渡等の時期の取扱いに準じて判断します。
したがって、「何月分の家賃か」だけではなく、契約書に定められた支払日まで確認する必要があります。
例1:9月分の家賃を9月30日までに支払う契約 対象期間は2026年9月分、契約上の支払日は2026年9月30日です。控除割合は原則80%になります。
例2:9月分の家賃を10月10日までに支払う契約 対象期間は2026年9月分ですが、契約上の支払日は2026年10月10日です。控除割合は原則70%になります。
ここでいう支払日とは、単に実際に振り込んだ日ではなく、契約上の支払期日です。
たとえば、契約上は10月10日が支払期日であるところ、会社が自主的に9月30日に早く振り込んだとしても、それだけで80%控除に変わるとは限りません。
反対に、契約上の支払期日が9月30日であるにもかかわらず、実際の振込みが数日遅れた場合も、実際の振込日だけを見て判断するものではありません。
まずは賃貸借契約書の支払条件を確認しましょう。
10月分の家賃を9月に前払いしても、通常は70%控除です
ここは、特に勘違いが起こりやすいところです。
たとえば、2026年10月分の事務所家賃を、2026年9月30日に前払いしたとします。
「9月中に払ったのだから、80%控除になるのではないか」と考えたくなるかもしれません。
しかし、前払金については、原則として、支払日ではなく、実際に物の引渡しを受けた時や、サービスの提供を受けた時が課税仕入れの時期になります。
10月分の家賃は、実際に不動産を使用する期間が2026年10月です。
そのため、9月中に支払っていたとしても、通常は70%控除になります。
例 対象は2026年10月分の事務所家賃、支払日は2026年9月30日、実際の賃貸期間は2026年10月1日~10月31日です。控除割合は原則70%になります。
銀行の振込日だけを見て80%控除として処理しないように注意しましょう。
ただし、後ほど説明する「短期前払費用」の取扱いを正しく適用している場合には、支払日時点の割合を使用できることがあります。
10月1日をまたぐ賃貸期間は、契約上の取引単位を確認します
次のように、賃貸期間が2026年10月1日をまたぐケースもあります。
・賃貸期間:2026年9月16日~10月15日
・支払日:2026年9月15日
・支払方法:1か月分を前払い
添付資料では、次のように期間を分けて計算する例が示されています。
・9月16日~9月30日分:80%控除
・10月1日~10月15日分:70%控除
一方で、毎月15日締めの1か月間を一つの取引単位としている場合には、その取引単位が完了する10月15日時点の70%を、全体に適用することも認められると説明されています。
国税庁のQ&Aでも、2026年9月21日から受けている一つの役務が10月20日に完了する場合には、原則として、その役務全体について70%を適用する考え方が示されています。
一方、商品の仕入れについては、実際の引渡日ごとに、9月30日までの分は80%、10月1日以後の分は70%と分けます。
賃料について、日割り計算と一括計算のどちらを選べるかは、次のような事情によって異なります。
・契約上の賃貸期間
・請求や精算の単位
・1か月を一つの取引としているか
・期間ごとの金額を合理的に分けられるか
・従来からどのように経理しているか
会社にとって有利になるように、取引ごと、年度ごとに自由に計算方法を変えてよいという意味ではありません。
10月1日をまたぐ契約がある場合には、契約書、請求書、従来の経理処理を確認したうえで判断しましょう。
「短期前払費用」を適用している場合は、支払日時点の割合を使えることがあります
通常の前払いでは、実際にサービスを受ける時期で控除割合を判断します。
しかし、法人税や所得税で「短期前払費用」の取扱いを適用している場合には、消費税でも支出した日の課税仕入れとして処理できることがあります。
短期前払費用とは、簡単にいうと、一定の契約に基づいて継続的に受けるサービスについて、支払日から1年以内にサービスを受ける費用を前払いし、継続して支払った年の経費にする取扱いです。たとえば、次のような費用が候補になります。
・家賃
・保守料
・サーバー利用料
・システム利用料
・一定の保険料
短期前払費用の取扱いを適用している場合、消費税についても、その支出した日の属する課税期間に課税仕入れを行ったものとして取り扱われます。
具体例 3月決算の法人が、2026年5月31日に、2026年5月から2027年4月までの1年分の事務所家賃を支払ったとします。
この支払いについて、法人税上、短期前払費用の取扱いを継続して適用している場合には、支払日である2026年5月31日時点の控除割合を使用できる可能性があります。
2026年5月31日は80%控除の期間です。
そのため、2026年10月以後の期間に対応する家賃が含まれていても、1年分全体について80%控除を適用できるケースがあります。
国税庁のQ&Aでも、適格請求書発行事業者ではない取引先に支払った1年分の保守料金について、短期前払費用の取扱いを受けている場合には、支払日時点の80%を全額に適用して差し支えないと示されています。
早く払えば、必ず短期前払費用になるわけではありません
「9月中に1年分を払えば、すべて80%控除にできる」と単純に判断するのは避けましょう。
短期前払費用として認められるためには、一般に次のような点を確認する必要があります。
・一定の契約に基づく支払いであること
・継続的なサービスの提供を受ける費用であること
・支払日から1年以内にサービスの提供を受けること
・実際に支払いを済ませていること
・継続して支払った事業年度の経費にしていること
・売上げと直接対応させる必要がある費用ではないこと
短期前払費用には、継続して同じ処理を行うという要件があります。
今回だけ支払方法や経理方法を変更する場合には、要件を満たしているか慎重に確認しましょう。
また、法人税や所得税で短期前払費用として処理できないものを、消費税だけ支払日基準で処理することはできません。
前払いによって控除割合が変わる場合でも、前払いする資金そのものは先に必要になります。
消費税の影響額だけでなく、会社の資金繰りも含めて判断することが大切です。
敷金・保証金は「返還されないことが確定した時期」に注意します
事務所や店舗を借りる際には、敷金や保証金を支払うことがあります。
将来返還される敷金や保証金は、支払った時点では課税仕入れの対価にはなりません。
一時的に貸主へ預けているお金だからです。
一方、事業用建物の敷金や保証金のうち、返還されない部分は、権利の設定などの対価として消費税の課税対象になることがあります。
この場合、控除割合を判断する時期は、原則として「返還されないことが確定した時」です。
契約時に返還されない金額が決まっている場合
たとえば、契約書に「保証金100万円のうち20万円は、契約終了時に返還しないものとする」と書かれているとします。
このように、契約締結時点で返還されない金額が確定している場合には、原則として契約締結時で控除割合を判断します。
・2026年9月30日までに確定:80%控除
・2026年10月1日以後に確定:70%控除
退去時に返還されない金額が決まる場合
契約時には返還額が決まっておらず、退去時の状況などによって返還されない金額が確定する場合には、その確定した時期で判断します。
・2026年9月30日以前に確定:80%控除
・2026年10月1日以後に確定:70%控除
敷金や保証金は、支払日だけを見て処理を決めることができません。
賃貸借契約書に、次のような記載がないか確認しましょう。
・償却
・敷引き
・返還しない
・解約控除
・原状回復費用に充当する
なお、ここでの説明は、事務所や店舗など、消費税が課税される賃貸借を前提としています。
すべての家賃が経過措置の対象になるわけではありません
貸主がインボイス登録をしていない場合でも、すべての家賃について70%控除を検討するわけではありません。
そもそも消費税がかからない家賃には、仕入税額控除もありません。
事務所や店舗の家賃
事務所や店舗など、事業用建物の家賃は、原則として消費税の課税対象です。
貸主が適格請求書発行事業者ではない場合には、経過措置の適用を検討します。
住宅や社宅の家賃
人が住むための住宅の貸付けは、原則として消費税が非課税です。
会社が従業員用の社宅として借りている場合でも、契約上、住宅として使用することが明らかであれば、原則として非課税です。
この場合、もともと仕入税額控除の対象となる消費税がないため、80%や70%という経過措置は関係しません。
土地の地代
土地の貸付けも、原則として消費税は非課税です。
ただし、貸付期間が1か月未満の場合や、駐車場などの施設の利用に伴って土地を使用させる場合には、課税対象になることがあります。
会計ソフトでは、事務所家賃、住宅家賃、土地の地代、駐車場代を同じ税区分で処理しないように注意しましょう。
経過措置には帳簿と請求書等の保存が必要です
「相手が免税事業者だから、自動的に70%控除できる」というわけではありません。
経過措置を適用するためには、一定事項が記載された帳簿と請求書等を保存する必要があります。
帳簿には、通常の記載事項に加えて、その取引が経過措置の対象であることが分かる記載を行います。
たとえば、次のような記載です。
・70%控除対象
・免税事業者からの仕入れ
・7・5・3割控除対象
・対象取引に記号を付け、別途その記号の意味を記載する
会計ソフトに「免税事業者等70%控除」などの専用税区分がある場合には、その区分を使用します。
国税庁のQ&Aでは、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載し、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等を保存することが要件とされています。
家賃を口座振替や口座振込みで支払い、毎月請求書が発行されない場合には、契約書と通帳、振込記録などを組み合わせて保存する方法があります。
ただし、契約書に必要な記載が不足している場合には、貸主から不足事項の通知を受けて、一緒に保存する必要があります。
2026年10月以後は、定額仕訳や自動仕訳が、古い80%区分のままになっていないか確認しておきましょう。
一つの取引先から税込1億円を超える仕入れがある場合は上限にも注意します
2026年10月1日以後に開始する課税期間では、一の免税事業者等から行った経過措置対象の課税仕入れの税込合計額が、その年またはその事業年度で1億円を超える場合、その1億円を超える部分には経過措置を適用できません。
ここでの判定期間は、単純な「課税期間中」ではなく、原則として「その年またはその事業年度」です。
たとえば、ある一つの未登録事業者から、その事業年度中に税込1億2,000万円の経過措置対象仕入れを行ったとします。
この場合、一定の条件のもと、1億円を超える2,000万円部分には、70%控除の経過措置を適用できないことがあります。
次のような高額取引がある場合には確認が必要です。
・大規模な建設工事
・高額な業務委託
・不動産関連の継続取引
・特定の外注先への大口支払い
・一つの仕入先からの継続的な大量仕入れ
なお、複数の取引先への仕入額をすべて合計して1億円を判定するものではありません。
「一の免税事業者等ごと」に判定します。
よくある間違い
間違い1.9月中に振り込めば、すべて80%になる
通常の前払いでは、振込日ではなく、実際に商品を受け取った日やサービスの提供を受けた時期で判断します。
10月分の家賃を9月中に前払いしても、通常は70%控除です。
ただし、短期前払費用の取扱いを正しく適用している場合には、支払日時点の割合を使用できることがあります。
間違い2.請求書の日付だけで判断する
請求書の日付と課税仕入れの時期が、必ず一致するとは限りません。
請求書が9月30日付でも、サービスの完了日が10月であれば、70%になることがあります。
反対に、請求書が10月に届いた場合でも、9月中に商品の引渡しを受けた取引であれば、80%になる可能性があります。
間違い3.9月分の家賃なら必ず80%になる
通常の賃料では、契約上の支払期日が重要になります。
「9月分」と書いてあることだけで判断せず、賃貸借契約書に書かれた支払日を確認しましょう。
間違い4.住宅家賃にも70%控除を適用する
住宅家賃は、原則として消費税が非課税です。
消費税がかかっていないため、仕入税額控除もありません。
事務所家賃と住宅家賃では、会計ソフトの税区分を分ける必要があります。
間違い5.簡易課税でも必ず納付額が増える
簡易課税制度では、実際の仕入税額を積み上げず、売上げに係る消費税額とみなし仕入率を使って仕入控除税額を計算します。
そのため、免税事業者等からの仕入れが80%控除から70%控除へ変わっても、簡易課税による消費税の納付額には原則として直接影響しません。
自社が一般課税なのか簡易課税なのか分からない場合には、直近の消費税申告書の確認が必要です。
間違い6.控除できない30%は、法人税でも経費にならない
70%控除とは、消費税の計算上、仕入税額相当額の70%を差し引けるという意味です。
残りの30%が、法人税や所得税の計算でも自動的に経費にならないという意味ではありません。
法人税や所得税の処理は、税込経理か税抜経理か、費用なのか資産なのかなどによって変わります。
「消費税で控除できない金額」と「法人税や所得税で経費になる金額」は、分けて考えましょう。
2026年10月までに確認しておきたいこと
自社の消費税の計算方法を確認する
最初に、自社が一般課税と簡易課税のどちらを適用しているか確認します。
今回の記事で説明した80%から70%への直接的な影響は、主に一般課税の事業者に生じます。
経過措置を適用している取引先を一覧にする
会計ソフトや取引先台帳から、現在80%控除の税区分を使用している取引を抽出します。
特に、次の支払いを確認しましょう。
・事務所や店舗の家賃
・駐車場代
・外注費
・業務委託料
・保守料
・システム利用料
・専門家への報酬
・修繕費
・不動産管理料
取引先が、その後インボイス登録をしている可能性もあります。
登録状況が以前と変わっていないか、改めて確認しておくと安心です。
賃貸借契約書を確認する
家賃については、次の項目を確認します。
・何月分をいつ支払う契約か
・契約上の支払期日はいつか
・前払いか後払いか
・契約期間が10月1日をまたぐか
・敷金や保証金に返還されない部分があるか
・契約書にインボイス登録番号などの必要事項があるか
契約書だけで判断できない場合には、請求書、支払実績、従来の経理方法も併せて確認します。
短期前払費用の有無を確認する
年間家賃、保守料、サーバー利用料などを一括で経費にしている会社は、短期前払費用の取扱いを適用している可能性があります。
前払いしているだけで、自動的に短期前払費用になるわけではありません。
過去の申告処理、契約内容、継続性を確認しましょう。
会計ソフトの税区分を変更する
2026年10月1日以後は、対象取引について、原則として「免税事業者等70%控除」などの税区分を使用します。
特に注意したいのは、毎月自動的に作成される仕訳です。
・家賃の定額仕訳
・顧問料の自動仕訳
・保守料の定期仕訳
・銀行明細からの自動登録
・前月仕訳のコピー
10月以後も80%区分が継続しないように、設定を見直しておきましょう。
9月と10月をまたぐ取引を個別に確認する
次のような取引は、支払日だけで一律に判断しないようにします。
・商品の仕入れ:原則として引渡日
・一つのサービス:原則としてサービスが完了した日
・継続的な賃貸借:契約上の支払日や取引単位
・通常の前払い:実際のサービス提供時期
・短期前払費用:要件を満たす場合は支払時期
・敷金・保証金:返還されないことが確定した時期
判断に迷う取引は、9月や10月の仕訳を確定する前に確認しておくと、後から修正する手間を減らせます。
判断根拠として保存しておきたい資料
2026年10月前後の取引は、80%と70%のどちらを使ったのか、後から説明できるようにしておくことが大切です。
保存しておきたい主な資料は、次のとおりです。
・賃貸借契約書
・業務委託契約書
・保守契約書
・請求書
・領収書
・通帳や振込記録
・サービス提供期間が分かる資料
・商品の納品書や検収書
・短期前払費用の計算資料
・取引先のインボイス登録状況を確認した記録
・会計ソフトの税区分設定に関する資料
特に短期前払費用については、以前から継続して同じ方法で処理していることを確認できる資料が重要です。
また、10月1日をまたぐ契約については、なぜ日割り計算をしたのか、なぜ一つの取引として処理したのかを、仕訳の摘要欄や社内メモに残しておくと安心です。
必要以上に難しい資料を作る必要はありません。
「契約書の第何条を見て判断したのか」「サービスの対象期間はいつからいつまでか」が分かる簡単なメモでも、後から確認するときに役立ちます。
まとめ|まずは家賃・前払い・年間契約を確認しましょう
2026年10月1日から、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、仕入税額控除の経過措置の割合が80%から70%へ下がります。
ただし、控除割合は単純に実際の振込日だけで判断するものではありません。
特に注意したいポイントは次のとおりです。
・今回の変更が直接影響するのは、主に一般課税の事業者
・通常の家賃は、契約上の支払期日を確認する
・10月分の家賃を9月に前払いしても、通常は70%控除
・10月1日をまたぐ契約は、契約上の取引単位を確認する
・短期前払費用の要件を満たす場合は、支払日時点の割合を使えることがある
・敷金・保証金は、返還されないことが確定した時期を確認する
・住宅家賃や土地の地代など、非課税取引には経過措置を適用しない
・帳簿と請求書等を保存し、経過措置対象であることを記録する
・一つの免税事業者等からの仕入れが、その年または事業年度で税込1億円を超える場合は上限を確認する
今回の変更は、消費税率そのものが変わるものではありません。
適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、仕入税額として差し引ける割合が80%から70%へ下がるものです。
その結果、一般課税の事業者では、消費税の納付額が増え、資金繰りに影響する可能性があります。
まずは、会計ソフトで「80%控除」「免税事業者等からの仕入れ」などの税区分を検索してみましょう。
そのうえで、家賃、前払い費用、年間契約、敷金・保証金を中心に、契約書と経理処理を確認しておくと安心です。
ご注意 この記事は、2026年7月23日時点の一般的な税務上の取扱いを、分かりやすく説明したものです。
実際の控除割合や課税仕入れの時期は、契約内容、請求方法、サービスの提供単位、経理処理の継続性、消費税の計算方法などによって異なります。
また、簡易課税制度を利用している場合には、一般課税とは影響の出方が異なります。
個別の取引については、契約書や請求書などをご用意のうえ、税務署へご確認ください。






