会社と社長で共有している土地を分けたいとき、税金はどうなる?-法人税・所得税・消費税をやさしく解説

共有名義の土地を単独所有に変更する場合の税金と注意点

会社と社長(代表者)が、それぞれお金を出し合って一つの土地を購入し、共有名義(一つの土地を、複数の人でそれぞれの割合で持っている状態)で登記しているケースは、実務ではよく見られます。

たとえば、次のようなケースです。

土地全体について、会社が2分の1、社長個人が2分の1の持分(もちぶん・その土地に対してどれだけの権利を持っているかという割合)を持っている

その後、「会社が使う部分」と「社長個人が使う部分」をはっきり分けたいという理由などから、一つの土地を二つに分けて、
・一方を会社の単独所有
・もう一方を社長個人の単独所有
として登記をし直したいと考えることがあります。

このとき、次のような不安の声をよくお聞きします。

・「これは、会社と社長との間で土地を売買したことになるのでは?」
・「土地の値段が上がっていたら、法人税や所得税がかかるのでは?」
・「消費税の計算にも影響するのでは?」

結論から先にお伝えします。

会社と社長が共有している一つの土地を、それぞれの持分の割合にきちんと見合う形で分ける(これを「現物分割」といいます)場合には、
・法人税と所得税では、原則として「土地の譲渡(売買のように所有者が変わること)はなかったもの」として扱われます
・消費税でも、原則として「資産の譲渡等(消費税がかかる取引)」には当たりません

つまり、条件を満たしていれば、土地の値上がり分について、すぐに法人税や所得税がかかるわけではありません。

ただし、「税金や費用がまったくかからない」という意味ではありませんので、この点は注意が必要です。

・分割後の土地の価値に大きな偏りがある場合
・差額を埋めるために金銭(精算金)をやり取りする場合
には、その一部について「土地を譲渡した」として扱われる可能性があります。

また、土地の値上がり益に対する法人税や所得税がかからない場合であっても、
・登録免許税(とうろくめんきょぜい・登記をするときに国に納める税金)
・測量費
・登記費用
などは、別途かかります。

そして、会社と社長個人との間の取引では、「会社の財産」と「社長個人の財産」を、きちんと分けて考えることがとても大切です。

この記事では、会社と社長が共有している土地を、それぞれの単独所有に変更する場合の税金の取扱いと、実務で気をつけたいポイントを、できるだけやさしい言葉で解説します。

「共有地の分割」とは、どういうことか

共有地の分割とは、複数の人が一緒に持っている一つの土地を実際に分けて、それぞれが分割後の土地を単独で所有する形に変えることです。

たとえば、会社と社長が、一つの土地を2分の1ずつ共有しているとします。

分割する前は、会社も社長も、土地「全体」に対して2分の1の権利を持っている状態です。

実際には「会社が東側を使い、社長が西側を使っている」としても、登記の上では、東側・西側と分かれているわけではありません。

あくまで、土地全体に対する権利(持分)を、会社と社長がそれぞれ持っているだけの状態です。

そこで、土地を二つの地番(土地の一つひとつにつけられた番号)に分ける「分筆登記(ぶんぴつとうき)」という手続きを行い、
・東側を会社の単独所有
・西側を社長個人の単独所有
に変更します。

このように、お金に換えて分けるのではなく、土地そのものを実際に分ける方法を「現物分割」といいます。

法律的には「持分の交換」と考えられています

共有地の分割は、法律上は、一般に「共有持分の交換による譲渡」という性質を持つと考えられています。

たとえば、会社と社長が土地を2分の1ずつ共有している場合、
・会社が単独所有することになる土地には、分割前は社長の2分の1の持分も含まれています
・社長が単独所有することになる土地には、分割前は会社の2分の1の持分も含まれています
形だけを見ると、会社と社長が、お互いの持分を「交換」したように見えます。

実際に、昭和42年8月25日の最高裁判所の判決でも、共有地の分割は、一般に共有持分の交換による譲渡であるとされています。

ただし、税務では、法律上の形だけでなく、経済的な実態(実際にどれだけ得をしたか、損をしたか)も考慮します。

共有持分の割合どおりに土地を分けただけであれば、会社や社長の財産が実質的に増えたわけではありません。

土地全体に対して持っていた権利が、分割後の特定の土地に集約されただけと考えられるためです。

そのため、法人税と所得税では、一定の条件を満たす共有地の分割について、「土地の譲渡はなかったもの」として取り扱っています。

結論:「税金が一切かからない」わけではありません

共有持分に応じた合理的な現物分割であれば、次のように取り扱われます。

・会社について:分割した土地の譲渡益に対する法人税は、原則としてかかりません
・社長個人について:分割した土地の譲渡所得に対する所得税は、原則としてかかりません
・消費税について:原則として「資産の譲渡等」には当たりません
・消費税の課税売上割合(消費税を計算するときに使う割合)の計算でも、原則として分母に含めません

ただし、これはあくまで「土地の譲渡」についての取扱いです。

登記をする際の登録免許税や、土地を分けるための測量費、土地家屋調査士・司法書士への報酬などは、別途必要になります。

そのため、「共有地を分割しても、税金も費用もまったくかからない」という理解は、正確ではありません。

正しくは、次のように理解しておくと安心です。

共有持分に応じた合理的な分割であれば、土地の譲渡益に対する法人税や所得税は原則としてかからず、消費税でも資産の譲渡等には当たりません。
ただし、登録免許税や手続き費用は別途かかります。

一番大切なのは「面積」ではなく「土地の価値」

共有地を分割するときに、もっとも気をつけていただきたいのが、土地の「面積」と「価値」は、必ずしも一致しないという点です。

所得税に関する国税庁の通達(つうたつ・税務署が実務で使う取扱いの基準)では、次のように整理されています。

・分割後の土地の面積の割合と、共有持分の割合が違っていても
・分割後の土地の「価額」の割合が、共有持分の割合とおおむね同じであれば
・持分に応じた現物分割に当たる

つまり、税務上で重視されるのは、単純な面積ではなく、それぞれが取得する土地の「経済的な価値」です。

土地の価値は、たとえば次のような条件によって変わります。

・道路に面している長さ
・接している道路の幅
・土地の形
・間口と奥行き
・方角
・高低差
・建物の建てやすさ
・用途地域(その土地に建てられる建物の種類などを定めたルール)
・建ぺい率・容積率(敷地に対してどれくらいの建物を建てられるかを示す割合)
・上下水道などの設備状況
・土地に設定されている権利
・周辺の取引状況

たとえば、会社と社長の共有持分が2分の1ずつだったとします。

土地を面積でちょうど半分に分けたとしても、一方が広い道路に面した使いやすい土地で、もう一方が奥まった使いにくい土地であれば、二つの土地の価値が同じとは限りません。

価値の高い土地を一方だけが取得すると、「持分に応じた分割」とは認められない可能性があります。

反対に、面積がぴったり50%ずつでなくても、分割後の土地の「価額」がそれぞれおおむね50%ずつであれば、持分に応じた現物分割と認められる可能性があります。

分割案を決める際は、面積だけで判断せず、不動産会社の査定や不動産鑑定(専門家による土地の価値の評価)などにより、価値に偏りがないかを確認しておくことをおすすめします。

会社の税金(法人税)はどうなるか

法人税に関する国税庁の通達(法人税基本通達2-1-19)では、法人が他の人と共有している土地を、その持分に応じて分割した場合、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱うとされています。

したがって、会社と社長が共有している一つの土地を、共有持分に応じて合理的に分割したのであれば、会社は原則として土地の売却益を計上する必要はありません。

土地の値段が購入時より上がっていたとしても、共有関係を解消しただけであれば、その値上がり益が実現したとは考えないためです。

土地の帳簿価額(会社の帳簿に記載している金額)

会社が帳簿に計上している土地の金額は、原則として、分割後に会社が所有する土地へそのまま引き継ぎます。

たとえば、会社が共有持分について3,000万円の土地を帳簿に計上している場合には、その金額を、分割後に会社が単独所有する土地へ付け替えます。

分割によって新たに土地を売却し、別の土地を購入したものとして、売却収入や売却原価を計上するような処理は、通常は行いません。

ただし、分割後に会社が複数の地番の土地を取得する場合などは、土地ごとに合理的な基準で帳簿価額を配分する必要があります。

分割後の登記事項証明書や測量図面と、会社の固定資産台帳の内容が一致するように、きちんと整理しておきましょう。

分割費用の法人税の処理

先ほどの通達の注書きでは、共有地の分割にかかった費用は、その支出をした事業年度の損金(そんきん・法人税を計算するときの経費にあたるもの)に算入できるとされています。

対象となる費用としては、たとえば次のようなものが考えられます。

・測量費
・分筆登記に関する費用
・土地家屋調査士報酬
・司法書士報酬
・土地の評価に必要な費用
・共有物分割契約書の作成費用

ただし、請求書の中に登録免許税などの税金が含まれている場合には、専門家報酬と税金を分けて経理する必要があります。

請求書や領収書の内訳を確認し、会社が実際に負担した金額が分かるように保存しておきましょう。

社長個人の税金(所得税)はどうなるか

所得税に関する国税庁の通達(所得税基本通達33-1の7)では、個人が他の人と共有している一つの土地について、その持分に応じた現物分割を行った場合、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱うとされています。

したがって、社長個人についても、持分に応じた合理的な分割であれば、原則として譲渡所得(土地などを売ったときの利益にかかる所得)は発生しません。

個人が負担した分割費用の扱い

社長個人が負担した測量費や登記費用などは、その土地を何に使っているかによって取扱いが変わります。

・事業用や不動産賃貸用の土地について支払った費用は、その内容に応じて必要経費に算入できる場合があります
・必要経費に算入しなかった費用は、原則として分割後の土地の取得費に加算します
・自宅の敷地や、事業に使用していない土地について支払った分割費用は、原則として土地の取得費に加算されます

取得費に加算した金額は、将来その土地を売却するときの、譲渡所得の計算で使うことになります。

社長個人が支払った費用についても、領収書や請求書は処分せず、土地を所有している間は保管しておくことをおすすめします。

消費税はどうなるか

法人税または所得税において、土地の譲渡がなかったものとして取り扱われる共有地の分割は、消費税でも「資産の譲渡等」に当たらないものとして取り扱われます。

また、消費税の課税売上割合を計算する際にも、分割した土地の価額を分母へ含めません。

ここで一つ、勘違いしやすいポイントがあります。

・「土地の譲渡として非課税になる」のではなく
・一定の共有地の分割については、そもそも消費税の対象となる「資産の譲渡等」に当たらない
という点です。

通常の土地の売却は、消費税では非課税取引として扱われます。

一方、持分に応じた共有地の分割は、通常の土地売却とは違い、そもそも「資産の譲渡等」に当たらない取引として整理されます。

測量費などにかかる消費税

土地の分割に伴って支払う測量費や、土地家屋調査士・司法書士などへの専門家報酬は、原則として消費税の課税対象となります。

一方、法務局へ納める登録免許税には、消費税はかかりません。

会社が消費税の課税事業者(消費税の申告・納税を行う義務がある事業者)である場合、専門家報酬に含まれる消費税について、仕入税額控除(会社が支払った消費税分を、納める消費税から差し引くしくみ)を受けられるかどうかは、会社の計算方法や課税売上割合などによって異なります。

請求書を受け取った際は、次の金額が分かれているかを確認しましょう。

・専門家の報酬
・報酬に対する消費税
・登録免許税などの立替金
・その他の実費

取得から5か月で分割しても、すぐに課税されるわけではありません

今回のケースでは、土地を取得してから共有地を分割するまでの期間が5か月となっています。

法人税基本通達2-1-19、所得税基本通達33-1の7には、「共有地を何年以上保有しなければならない」という最低保有期間についての記載はありません。

したがって、取得から5か月後に分割するという事実だけを理由として、すぐに「土地の譲渡があった」とされるわけではありません。

ただし、保有期間が短い場合には、取引全体の実態を説明できるようにしておくことが大切です。

たとえば、次のような点を確認し、整理しておくとよいでしょう。

・土地を共有で取得した理由
・会社と社長がそれぞれ負担した購入代金
・購入代金の負担割合と登記持分が一致しているか
・共有取得後の土地の利用状況
・5か月後に分割することになった理由
・分割後の土地の利用目的
・分割後の土地価額と共有持分が見合っているか
・当初から一方へ財産を移す目的がなかったか

もし、当初から会社の土地を社長個人へ移すことなどを目的として、いったん共有で取得し、短期間で分割したような場合には、形式ではなく、実際の取引内容に基づいて判断される可能性があります。

そのため、「通達に保有期間の要件がないので、取得直後にどのように分けても問題ない」ということではありません。

取得から分割までの期間だけでなく、資金負担、登記持分、分割理由、土地価額なども含め、取引全体が合理的であることが重要です。

分割後の価値に偏りがあるときは、要注意です

社長が価値の高い土地を取得する場合

会社と社長の共有持分が2分の1ずつであるにもかかわらず、分割後の土地価額が、

・会社の土地:30%
・社長の土地:70%
となった場合を考えてみましょう。

合理的な精算が行われていなければ、「会社から社長へ、土地の価値が移った」と判断される可能性があります。

法人が役員に対して、資産を時価より低い価額で譲渡した場合、時価と譲渡価額との差額は、役員に対する経済的利益として取り扱われることがあります。
国税庁も、役員への資産の贈与や低い価額での譲渡による利益を、役員に対する経済的利益の一例として挙げています。

この場合、社長個人に対する給与としての課税や、会社側における役員給与の損金算入の可否(経費として認められるかどうか)などが問題になる可能性があります。

特に、一時的に生じた経済的利益は、定期同額給与(毎月同じ金額を支払う給与のことで、法人税では損金にしやすい形とされています)として認められず、会社の損金に算入できないことがあります。

会社が価値の高い土地を取得する場合

反対に、会社と社長の共有持分が2分の1ずつであるにもかかわらず、分割後の土地価額が、

・会社の土地:70%
・社長の土地:30%
となる場合も、注意が必要です。

この場合、「社長個人から会社へ、土地の価値が移った」と判断される可能性があります。

個人が法人へ土地を贈与した場合や、時価の2分の1を下回る金額で土地を譲渡した場合には、所得税では、原則として時価で譲渡したものとみなして、譲渡所得を計算します。

また、会社側でも、無償または低い価額で受け取った土地の価値について、受贈益(じゅぞうえき・タダ、または安く財産をもらったときに発生する会社の利益)などの法人税の処理が問題になる可能性があります。
法人税法上、無償で資産を譲り受けた場合は、その価値が収益に含まれるという考え方が基本になっています。

したがって、価値の偏りは、「社長が得をする場合だけ気をつければよい」というものではありません。

会社が持分を超える価値の土地を取得する場合にも、社長側と会社側の両方について、課税関係を確認しておく必要があります。

精算金を支払う場合は、一部が「譲渡」となることがあります

土地の形や道路への接し方によっては、共有持分どおりにきっちり分割できないことがあります。

そこで、土地の価値の差を調整するために、一方から他方へ金銭を支払うことがあります。

このような金銭を、一般に「精算金」といいます。

精算金があるからといって、必ず共有地の分割全体が課税されるわけではありません。

ただし、精算金の対象となった土地の部分については、「土地を譲渡した対価」として扱われる可能性があります。

共有地の分割に際して精算金が生じる場合の考え方について、国税庁の研究資料(税務大学校の論叢)では、次のように整理されています。

・持分に応じて合理的に分割された部分については、譲渡には当たらない
・一方で、分割後の各土地の価額と、分割前の持分に応ずる価額との間に差異が生じている場合には、その差異(精算金)に相当する部分については、共有持分の譲渡があったものとして、譲渡所得の課税対象になる

精算金を支払う場合には、次の点を明確にしておきましょう。

・何の差額を精算するのか
・どの土地部分に対応する金額なのか
・土地の価額をどのように計算したのか
・精算金の金額は合理的か
・法人税や譲渡所得の申告が必要になるか

「金銭で調整すれば、すべて持分どおりの非課税扱いになる」とは限りませんので、精算金がある場合は、契約を締結する前に、税務上の取扱いを確認しておくことをおすすめします。
なお、精算金がある場合の具体的な課税関係は、個々の事情によって判断が分かれることがありますので、実際の申告にあたっては、税務署へ事前にご確認ください。

別々の土地を入れ替える場合は、単純な「分割」ではありません

土地が複数ある場合にも、注意が必要です。

たとえば、会社と社長がA土地とB土地を共有しており、
・A土地はすべて会社が取得する
・B土地はすべて社長が取得する
という形で整理する場合です。

それぞれが取得する土地の価額が同じであったとしても、これは、一つの土地を持分に応じて現物分割したものとは扱われません。

国税庁の質疑応答事例では、異なる不動産の共有持分を入れ替える取引は、「共有持分同士の交換」として課税関係が生じるとされています。

このような場合には、土地の交換として法人税や所得税を検討し、固定資産の交換の特例(一定の要件を満たす交換について、税負担を軽くできる制度)を利用できるかどうかなどを、別途確認する必要があります。

「全体の価額が同じだから課税されない」とは限りませんので、複数の土地を整理するときは、特に注意しましょう。

登録免許税は別途必要です

共有地の分割によって法人税や所得税が生じない場合でも、土地の所有権移転登記を行う際には、原則として登録免許税がかかります。

登録免許税の税率は、原則として不動産の価額の1,000分の20(2%)です。

ただし、共有物分割の登記の前に分筆登記を行い、分筆によって生じた土地についての共有物分割の登記と同時に申請するなど、一定の要件を満たした場合には、分割前に持っていた持分に応じた価額の範囲内で、軽減税率である1,000分の4(0.4%)が適用されます。
持分を超えて取得する部分については、軽減税率の対象外となり、1,000分の20が適用されます。

このように、登録免許税の金額は、分筆登記のタイミングや申請方法によっても変わってきますので、具体的な税額は、登記手続を依頼する司法書士、または土地を管轄する法務局へ、事前にご確認ください。

不動産取得税にも注意が必要です

共有物の分割によって取得した不動産のうち、分割前に持っていた共有持分に対応する部分については、原則として不動産取得税は非課税です。

一方、分割前の共有持分の割合を超えて取得した部分は、この非課税の対象から除かれます。

たとえば、共有持分が2分の1である人が、分割後に土地価額の70%に相当する土地を取得した場合には、持分を超えた部分について、不動産取得税が問題になる可能性があります。

不動産取得税は、都道府県が課税する地方税です。

具体的な計算方法、申告手続き、提出書類などは、土地の所在地を管轄する都道府県税事務所へご確認ください。

分割前に準備しておきたい資料

共有地の分割について、税務上合理的な分割であることを説明するためには、資料をきちんと残しておくことがとても重要です。

特に、会社と社長との間の取引では、第三者が見ても分割内容が合理的だと分かる資料を、準備しておきましょう。

主な資料は、次のとおりです。

・土地取得時の売買契約書
・会社と社長がそれぞれ負担した購入代金の資料
・銀行振込の記録
・分割前の登記事項証明書
・公図
・地積測量図
・分筆予定図
・分割後の土地の査定書
・必要に応じた不動産鑑定評価書
・共有物分割契約書
・分割理由を説明する社内資料
・測量費や登記費用の見積書・請求書
・土地家屋調査士や司法書士との打合せ記録
・分割後の土地の利用計画

特に重要なのは、分割後の土地価額が、会社と社長の共有持分におおむね対応していることを示す資料です。

税務調査で確認された場合に、「面積が半分ずつなので、価値も半分だと思いました」という説明だけでは、十分でないことがあります。

道路への接し方、土地の形、建築のしやすさなども考慮したうえで、なぜその分け方が合理的なのかを説明できるようにしておきましょう。

実務上の手続きの流れ

共有地の分割を行う場合は、一般に次のような順番で進めていきます。

現在の共有持分を確認する

登記事項証明書を取得し、会社と社長の共有持分を確認します。
購入代金の実際の負担割合と、登記上の共有持分が一致しているかも確認します。

分筆できるか確認する

土地家屋調査士へ相談し、希望する形で土地を分筆できるかを確認します。
土地の形状、接道条件、自治体の条例などによっては、希望どおりに分けられないことがあります。

分割後の土地価額を確認する

面積だけでなく、接道状況、形状、利用可能性などを考慮して、それぞれの土地価額を確認します。
会社と社長との取引であるため、客観的な査定資料を残しておくことが大切です。

税務上の課税関係を確認する

共有持分に応じた分割になっているか、精算金が必要か、持分を超えて取得する部分がないかを確認します。
法人税、所得税、消費税だけでなく、登録免許税や不動産取得税も含めて検討します。

共有物分割契約書を作成する

会社と社長との間で、どの土地を誰が取得するのかを記載した共有物分割契約書を作成します。
土地の表示、持分、精算金の有無、費用負担などを明確にしておきます。

分筆登記と所有権移転登記を行う

土地家屋調査士へ分筆登記を依頼し、その後、司法書士へ共有物分割による所有権移転登記を依頼するのが一般的です。

会計帳簿と固定資産台帳を整理する

会社では、分割前の土地の帳簿価額を、分割後の土地へ引き継ぎます。
地番、面積、所在地、固定資産税評価額などを、分割後の登記内容に合わせて修正します。

まとめ

会社と社長が共有している一つの土地を、共有持分に応じて合理的に現物分割する場合、法人税と所得税では、原則として土地の譲渡がなかったものとして取り扱われます。

消費税でも、原則として資産の譲渡等には当たらず、課税売上割合の分母にも含めません。

ただし、これは「税金や費用が一切かからない」という意味ではありません。登録免許税、測量費、土地家屋調査士報酬、司法書士報酬などは、別途必要です。

また、税務上重要なのは、土地の面積割合ではなく、分割後の土地の価額割合です。会社と社長の共有持分が2分の1ずつであれば、原則として、それぞれが取得する土地の価額もおおむね2分の1ずつになるように分割する必要があります。

社長が持分を超える価値の土地を取得した場合には、会社から社長への経済的利益として、給与課税などが問題になる可能性があります。
反対に、会社が持分を超える価値の土地を取得した場合には、社長側のみなし譲渡課税や、会社側の受贈益などが問題になる可能性があります。

取得から分割までが5か月であっても、通達上、最低保有期間は記載されていません。
しかし、保有期間が短い場合には、共有取得の理由、資金負担、登記持分、分割理由、分割後の価額など、取引全体の実態を説明できるようにしておく必要があります。

登記を終えてから税務上の問題に気づくと、分割方法を元に戻すことが難しくなる場合があります。
土地の分け方を決める前に、土地家屋調査士、司法書士などの専門家へ相談し、それぞれの専門分野を確認しながら進めていくことをおすすめします。

※この記事は、2026年7月26日時点で確認できる国税庁の法令解釈通達、質疑応答事例、研究資料、税額表、および地方公共団体の公表資料をもとに、一般的な税務上の取扱いをまとめたものです。

※実際の課税関係は、土地の数、共有持分、購入代金の負担割合、分割後の土地価額、精算金の有無、契約内容などによって異なります。

※この記事の内容は作成時点の情報にもとづくものであり、実際の適用には個別の判断が必要です。
具体的な手続きを行う際は、必ず最新の法令や公表資料をご確認のうえ、税務署・都道府県税事務所・司法書士・土地家屋調査士など、専門家へご相談ください。