グループ通算制度から離脱しても、以前のグループ会社の税金について責任が残ることがあります

通算グループを抜けた後も税金の責任が残る?「連帯納付責任」の注意点

社長がいくつかの会社をグループとして経営されている場合、法人税の申告について「グループ通算制度」という仕組みを使っていることがあります。
なお、この制度は法人(会社)を対象としたものであり、個人事業主の方には直接関係のない制度ですので、まずはその点をご承知おきください。

もし将来、子会社の株式を売却したり、グループの組織を作り直したりして、この制度の対象から外れる(離脱する)予定がある場合には、少し注意していただきたい点があります。
それは、「グループから離脱したのだから、他のグループ会社の税金についてはもう関係がない」とは、必ずしも言い切れないということです。

今回は、この点について、国税庁が示している法人税基本通達1-1-13「通算離脱法人の連帯納付責任」という考え方をもとに、できるだけやさしい言葉で整理してみます。なお「通達」とは、国税庁が法律の具体的な取り扱いについて示している公式な指針のことです。

結論から先にお伝えすると、グループ通算制度から離脱したあとであっても、まだグループに所属していた期間に成立した一定の法人税については、他のグループ会社に対する「連帯納付責任(れんたいのうふせきにん)」と呼ばれる責任が残ることがあります。
会社の売却や組織の再編を考えていらっしゃる経営者様には、「離脱したあとの税金」だけでなく、「離脱する前の期間について、まだ残っている税務上の責任がないかどうか」という視点も、ぜひ持っていただきたいと思います。

そもそも「連帯納付責任」とは、どのような仕組みでしょうか

グループ通算制度というのは、いくつかの会社が一つのグループとしてまとまり、法人税の計算を一定のルールで合わせて行う仕組みのことです。
ただし、注意していただきたいのは、親会社がグループ全体の税金をまとめて一括で申告・納付するわけではない、という点です。
原則として、グループに参加しているそれぞれの会社が、それぞれ自分の法人税を計算し、個別に申告・納付を行います。

一方で、税額を計算する場面では、グループの中の黒字の会社と赤字の会社の数字を一定のルールで合算する「損益通算(そんえきつうさん)」と呼ばれる仕組みが使われます。
これは、たとえば、グループの中に利益が出ている会社と、赤字が出ている会社がある場合に、その黒字と赤字をある程度相殺して、グループ全体としての税負担を調整するイメージの制度です。

つまりこの制度は、「申告と納税はそれぞれの会社ごとに行う」一方で、「税額の計算では、グループ会社同士がお互いに影響し合う」という、少し独特な仕組みになっています。

このような仕組みになっているため、グループ通算制度では、一定の法人税について、他のグループ会社も一緒に納付する責任を負う「連帯納付責任」という制度が設けられています。
具体的には、ある会社と他の会社との間に「通算完全支配関係(つうさんかんぜんしはいかんけい)」と呼ばれる、グループ通算制度の対象となるくらい強い支配関係(かんたんにいえば、ほぼ100%の株式を持っているような関係のことです)がある期間の中で成立した法人税について、他のグループ会社もその納付について連帯して責任を負うことになります。

たとえば、A社、B社、C社という3つの会社が、同じグループ通算制度のグループに入っているとします。
もしB社が本来納めるべき法人税を滞納してしまった場合、一定の条件を満たせば、A社やC社もその税金を納める責任を負うことになります。
「これはB社の税金だから、A社にはまったく関係がない」とは限らない、ということです。

連帯納付責任には、金額の上限が原則としてありません

ここは、経営者の方に特に知っておいていただきたいポイントです。

国税庁が公表しているグループ通算制度に関するQ&Aでは、対象となる法人税を一つの会社が滞納した場合、他のグループ会社はその法人税の全額について連帯納付責任を負い、この責任には金額の上限が設けられていないことが説明されています。

つまり、「自分の会社が損益通算によって得た、税負担が軽くなった分の金額まで」とか、「自分の会社がグループ通算制度によって得たメリットの範囲まで」といった形で、法律上の連帯納付責任が自動的に制限されるわけではない、ということです。

たとえば、もし他のグループ会社に多額の未納の法人税があった場合には、自分の会社の税額とはまったく別に、その未納分について連帯納付責任が問題になる可能性があります。
もし実際にこの責任にもとづいて予定外の納税が必要になった場合には、資金繰りにも影響が及ぶ可能性がありますので、日頃からグループ内の他社の納税状況を把握しておくことは、リスク管理の面でも大切だといえるでしょう。

なお、ここでいう連帯納付責任は、あくまで会社(法人)そのものが負う責任であり、社長個人が自分の財産で負う責任ではありません。
とはいえ、会社の資金繰りや経営に影響することはありますので、経営者としては状況を把握しておくことが望ましいといえます。

グループを離脱すれば、連帯納付責任もなくなるのでしょうか

ここが、今回の法人税基本通達1-1-13で示されている、いちばん大切なポイントです。

答えを先にお伝えすると、グループを離脱しただけでは、それまでに生じていた一定の連帯納付責任は、自動的にはなくなりません。

この通達では、通算グループに参加していた会社が、制度の利用をやめたり、グループから離脱したりして、通算制度の承認の効力を失った場合であっても、その効力を失う日より前に終わった、他のグループ会社の事業年度(決算の対象となる1年間の期間のことです)の法人税で、その両社の間に通算完全支配関係があった期間の中で納税義務が成立したものについては、法人税法第152条第1項に定められている連帯納付責任が、そのまま適用されることが示されています。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、ポイントをひとことでまとめると、「いま同じグループにいるかどうか」ではなく、「その法人税の納税義務が成立した時点で、通算完全支配関係があったかどうか」で判断する、ということです。

そのため、いまはすでにグループを離脱している会社であっても、離脱する前に成立していた一定の法人税については、以前同じグループだった会社に対する連帯納付責任が、そのまま残っていることがあります。

「株式を売却したから離脱」とは限らない、確認しておきたいポイント

会社の株式を売却する場面では、この点にも注意が必要です。

単に株式を売却したという事実だけで、必ずグループ通算制度から離脱することになるとは限りません。
大切なのは、その株式の売却などによって、親会社と子会社との間の「通算完全支配関係」がなくなったかどうか、という点です。

たとえば、親会社が持っている子会社の株式を、グループの外の第三者へ売却し、その結果、通算完全支配関係がなくなった場合には、その子会社は通算グループから離脱することになります。

したがって、実務では、「株式をいつ売却したか」という日付だけでなく、「通算完全支配関係が、いつなくなったのか」という点まで、あわせて確認しておく必要があります。

法人税の「納税義務が成立する日」も、あわせて確認しましょう

では、連帯納付責任があるかどうかを判断するとき、法人税の納税義務は、いつ成立するのでしょうか。

法人税については、原則として、その会社の事業年度が終了した時点で、納税義務が成立するとされています。

国税庁のQ&A「通算制度離脱時の連帯納付責任」でも、この考え方にもとづいた具体例が示されています。

その例では、3月決算の子会社であるS社について、親会社であるP社がS社の株式の一部をグループの外の第三者へ売却したことにより、7月1日にグループ通算制度から離脱しています。
この場合、S社の事業年度は、離脱日の前日にあたる6月30日に終了することになります。
そして、この6月30日の時点では、まだP社などとの間に通算完全支配関係があります。

そのため、法人税の納税義務も6月30日に成立することになり、P社やグループ内の他の会社は、S社の4月1日から6月30日までの事業年度の法人税について、連帯納付責任を負うことになると説明されています。

ここで気をつけていただきたいのは、実際に申告書を提出した日や、税金を納めた日で判断するわけではない、という点です。
「対象となる事業年度が、いつ終了したのか」「その時点で、どの会社との間に通算完全支配関係があったのか」を確認することが、何より重要になります。

離脱した側の会社にも、以前のグループ会社の税金について責任が残ることがあります

先ほどの国税庁のQ&Aは、「離脱する会社の法人税について、グループに残る会社が連帯納付責任を負う」という例でした。

一方で、法人税基本通達1-1-13では、これとは逆の方向についても明らかにされています。
つまり、グループを離脱した会社の側が、以前同じグループだった他の会社の法人税について、離脱したあとも連帯納付責任を負うことがある、ということです。

たとえば、A社とB社が同じグループ通算制度のグループに参加していたとします。
その後、A社がグループから離脱したとします。
A社が離脱する前、A社とB社との間に通算完全支配関係があった期間の中で、B社の法人税の納税義務が成立していた場合には、そのあとA社がグループを離脱したとしても、そのことだけを理由に、A社の連帯納付責任が消えるわけではありません。

したがって、「会社を売却してグループから外れたのだから、以前のグループ会社とは、税務上ももう完全に関係がなくなった」とは、言い切れない場合がある点に注意が必要です。

株式譲渡によるM&Aでは、特に確認しておきたいポイントです

この問題は、株式譲渡というかたちで、通算グループに参加している子会社を売買する場合にも、とても重要になります。

株式譲渡では、その会社の株主は変わりますが、対象となる会社そのものが、別の法人になるわけではありません。
そのため、対象となる会社がグループ通算制度に参加していた期間に負った連帯納付責任については、株式譲渡が終わったあとも、その会社に残る可能性があります。

買い手の立場から見ると、「この会社自身に、未納の法人税がないかどうか」だけでなく、「以前所属していたグループの他の会社の法人税について、この会社に連帯納付責任が残っていないかどうか」まで確認しておく必要がある場合があります。

特に、株式譲渡などのM&Aを予定していらっしゃる場合には、たとえば、対象となる会社がグループ通算制度を利用していた期間や、グループから離脱した日、通算完全支配関係がなくなった日、離脱する前に終了した各会社の事業年度、各会社の法人税の申告・納付の状況、未納となっている法人税がないかどうか、税務調査や修正申告などによって過去の年度についてまだ確定していない事項がないかどうか、そして株式譲渡の契約の中で、離脱前の税務上の負担を売り手と買い手のどちらが経済的に負担するのかが整理されているかどうかといった点を、あらかじめ確認しておくと安心です。

なお、株式譲渡の契約の中で「離脱する前の税金については、売り手が負担する」と取り決めをしたとしても、それはあくまで、売り手と買い手のあいだでの負担の取り決めにすぎません。
その契約があるからといって、税法上すでに発生している対象会社の連帯納付責任そのものが、自動的になくなるわけではない点には、注意が必要です。
税務上の責任と、売り手・買い手のあいだの契約上の負担とは、分けて考える必要があります。

会社を清算して登記を終えても、責任が残る場合があります

連帯納付責任がどれくらい強い責任なのかを理解するうえで、もう一つ知っておいていただきたい取扱いがあります。

法人税基本通達1-1-7では、会社が清算結了(せいさんけつりょう。会社をたたむときの、最後の登記手続きのことです)の登記を済ませた場合であっても、法人税の納税義務を果たすまでは、その会社は税務上、なお存続しているものとして取り扱うことが示されています。

さらに、その会社が通算グループに参加していた会社で、他のグループ会社の法人税について連帯納付責任を負っている場合には、その対象となる法人税について、自社および他のグループ会社が納付の義務を果たすまでは、なお存続するものとして取り扱われます。

つまり、「会社をグループから離脱させた」というだけでなく、「清算結了の登記まで済ませた」という場合であっても、税務上の連帯納付責任が、それだけで自動的に消えるとは限らない、ということです。
対象となる税金が、実際にきちんと納付されたかどうかまで確認することが大切になります。

法人税だけでなく、地方法人税・防衛特別法人税にも注意が必要です

ここまでは、法人税基本通達1-1-13の内容にそって、主に「法人税」を中心にご説明してきました。

ただし、2026年9月現在、通算グループの会社の連帯納付責任について考える際には、法人税だけを確認すればよいわけではありません。
地方法人税(国税として集められ、地方自治体の財源にあてられる税金です)についても、地方法人税法第31条第1項により、法人税法第152条第1項の連帯納付責任に対応する規定が設けられています。

さらに、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される防衛特別法人税(防衛力の強化にあてる財源として、新たに設けられた法人税に上乗せする税金です)についても、同じように、通算グループの会社の連帯納付責任に関する規定が設けられています。
国税庁の徴収に関する通達でも、通算グループの会社の連帯納付責任の対象として、「法人税」「地方法人税」「防衛特別法人税」の3つが明記されています。

そのため、2026年以降に、通算グループに参加している子会社の売却やグループの再編を行う場合には、法人税だけでなく、これらの税目についても、あわせて納付状況を確認しておくことが大切です。

なお、防衛特別法人税は、原則として2026年4月1日以後に開始する事業年度が対象となりますが、通算グループの会社については、その会社が属している親会社の事業年度を基準とする特別な取扱いもあります。
実際にいつから適用されるのかについては、個別に確認していただく必要があります。

まとめ

法人税基本通達1-1-13「通算離脱法人の連帯納付責任」で、いちばんお伝えしたいことは、「通算グループから離脱すれば、離脱する前に生じていた税務上の責任まで、すべてなくなるわけではない」という点です。

連帯納付責任があるかどうかを確認するときには、「いま、その会社が通算グループに参加しているかどうか」だけで判断することはできません。
対象となる法人税について、「どの事業年度の税金なのか」「いつ納税義務が成立したのか」「その時点で、両社のあいだに通算完全支配関係があったのかどうか」を、順番に確認していくことが重要です。

また、株式譲渡によって通算グループの子会社を売買する場合には、その会社自身の未納の税金だけでなく、以前所属していた通算グループの他の会社に関する連帯納付責任が残っていないかどうかについても、確認しておく必要があります。

グループ通算制度では、申告と納付はそれぞれの会社が個別に行いますが、税務上の責任まで、各社が完全に切り離されているわけではありません。
会社の売却や組織の再編、グループ通算制度の利用をやめることなどを予定していらっしゃる場合には、離脱する日だけに注目するのではなく、過去の事業年度や、各社の申告・納付の状況まで含めて、事前に確認しておくことが、あとになってからのトラブルを防ぐために、とても大切です。

もし今後、グループ会社の株式売却や組織再編をご検討されている場合には、早めの段階で、所轄の税務署にご相談いただくことをおすすめいたします。

※この記事は、2026年9月1日時点で公表されている国税庁の資料などをもとに、一般の方向けに、できるだけわかりやすく整理したものです。
実際に連帯納付責任があるかどうかは、それぞれの会社の事業年度、通算完全支配関係があった期間、離脱した理由、申告・納付の状況などによって異なります。また、この記事でご紹介した内容は、作成時点の情報にもとづくものであり、実際の適用にあたっては、個別の事情に応じた判断が必要です。
個別の取引や組織再編をご検討の際には、必ず所轄の税務署にご確認いただきますようお願いいたします。