社長への無利息貸付、そのままで大丈夫?令和8年は認定利率が1.3%に変わっています

令和8年、会社から役員・従業員への貸付けは「年1.3%」に|無利息・低利率の貸付けで注意したい給与課税

会社から社長や役員、従業員へお金を貸すことがあります。

たとえば、社長が一時的に個人のお金を必要としている場合や、従業員から生活資金について相談を受けた場合などです。

このようなときに注意したいのが、「利息をいくらにするか」という点です。

会社から役員や従業員へ無利息、または通常より低い利率でお金を貸すと、「本来支払うはずだった利息を支払わなくて済んだ」という利益が本人に生じます。

税務上は、この利益を「経済的利益」といい、一定の場合には給与として課税されることがあります。

そして令和8年(2026年)中に行う貸付けについて、会社が他から借り入れたお金をそのまま貸し付けた場合などを除き、利息相当額を計算する際の利率は年1.3%となっています。

国税庁の「No.2606 金銭を貸し付けたとき」でも、令和8年中に貸付けを行ったものについて1.3%と明記されています。

ただし、ここで注意したいのは、
「令和8年なら、とにかく1.3%で貸せば大丈夫」
という単純な話ではないことです。

会社が外部から借りた資金を役員等へ貸す場合や、会社の合理的な平均調達金利を使う場合、災害や病気に伴う一定の貸付けなどには、別の取扱いがあります。

また、社長や取締役への貸付けでは、税金だけでなく会社法上の手続きにも注意が必要です。

この記事では、中小企業の経営者の方に向けて、「1.3%とは何の数字なのか」「無利息なら必ず給与になるのか」「すでに役員貸付金がある場合には何を確認すればよいのか」をできるだけ分かりやすく説明します。

まず結論|令和8年中に行った貸付けは「年1.3%」

会社が役員または従業員へ金銭を貸し付けた場合、税務上の利息相当額は一定のルールで計算します。

国税庁によると、会社が他から借り入れて、そのお金を貸し付けた場合には、原則としてその借入金の利率を使います。

それ以外の場合には、「貸付けを行った日の属する年」に応じた利率を使います。

令和4年から令和7年中に行った貸付けについては年0.9%でしたが、令和8年中に行った貸付けは年1.3%となりました。

ここで重要なのは、基準になっているのが「貸付けを行った日の属する年」だということです。

そのため、
「令和8年になったから、会社に残っているすべての役員貸付金を一律1.3%に変更する」
と単純に考えるのは適切ではありません。

以前から残っている貸付金がある場合には、いつ貸し付けたものなのか、令和8年に追加貸付けが行われていないかなどを確認する必要があります。

なぜ無利息で貸すと給与の問題が出てくるのでしょうか

「貸したお金はいずれ返してもらうのだから、給与ではないのでは?」
と思われる方も多いでしょう。

確かに、貸付金の元本そのものについて、きちんと返済を受ける前提の本当の貸付けであれば、貸した金額のすべてが直ちに給与になるという話ではありません。

問題になるのは利息の部分です。

たとえば、会社が社長へ300万円を1年間貸したとします。

本来であれば一定の利息を受け取るべきところ、会社が「社長なので無利息でよい」とした場合、社長は本来支払うべき利息を支払わなくて済みます。

税務上は、この「利息を支払わなくて済んだ利益」も経済的利益として扱われます。

国税庁は、役員または使用人へ無利息または低い利率で金銭を貸した場合、一定の例外を除き、所定の利率によって計算した利息と実際に支払った利息との差額を給与として課税するとしています。

つまり、
「あとで元本を返してもらえば、それだけで税務上問題ない」
というわけではありません。

元本の返済とは別に、利息についても確認する必要があるということです。

300万円を無利息で1年間貸したらどうなる?

分かりやすいように、単純な例で考えてみましょう。

令和8年に会社が社長へ300万円を貸し、その300万円を1年間返済せずに借りていたものとします。

また、会社が他から借りた資金をそのまま貸したケースではなく、年1.3%の利率で利息相当額を計算するケースとします。

単純計算すると、
300万円 × 1.3% = 3万9,000円
です。

社長から利息をまったく受け取っていなければ、この例では3万9,000円の経済的利益が生じることになります。

仮に、社長から年1.0%に相当する3万円の利息を受け取っていたとすると、単純計算では、
3万9,000円 − 3万円 = 9,000円
が差額になります。

実際には、貸付日や返済日、期中の返済、追加の貸付けなどによって計算額は変わります。

したがって、「貸付残高×1.3%」ですべてのケースが終わるわけではありません。
この例は仕組みを分かりやすくするために単純化しています。

「令和8年は1.3%」だから、すべて1.3%にすればよいわけではありません

ここは特に間違えやすいところです。

国税庁では、会社が他からお金を借り入れ、そのお金を役員や従業員へ貸し付けたことが明らかな場合には、その借入金の利率によって利息相当額を計算するとしています。

たとえば、会社が金融機関から年2.0%で300万円を借り、その300万円をそのまま社長へ貸したことが明らかな場合を考えてみます。

この場合、
「令和8年だから1.3%でよい」
とは限りません。

原則として、その借入金の利率である2.0%を基準に考えることになります。

「会社が他から借り入れて貸し付けた場合は、その借入金の利率」
「その他の場合は、貸付けを行った日の属する年に応じた利率」

したがって、実務ではまず、
「この貸付金の元になったお金はどこから来たものなのか」
を確認する必要があります。

無利息・低利率でも給与課税しなくてよい場合があります

ここまで読むと、
「従業員が病気でお金に困っているときでも、会社は利息を取らなければならないのでしょうか」
と心配されるかもしれません。

そのようなわけではありません。

国税庁では、一定の場合について、無利息または低利率の貸付けであっても給与として課税しなくて差し支えない取扱いを設けています。

たとえば、災害や病気などによって臨時に多額の生活資金が必要になった役員や従業員に対し、そのために必要な金額を合理的な返済期間で貸し付ける場合です。

また、会社自身の借入金について、平均調達金利などの合理的な利率を計算し、その利率によって役員や従業員へ貸し付ける場合も対象になります。

所得税基本通達36-28では、合理的な平均調達金利の例として、貸付けを行った日の前年中または前事業年度中における借入金の平均残高に対する支払利息の割合などが示されています。

つまり、
「1.3%未満なら必ず給与課税される」
というわけではありません。

ただし、「うちの会社なら0.5%くらいでよいだろう」と感覚だけで利率を決めるのは避けた方がよいでしょう。

会社独自の平均調達金利などを使うのであれば、どのようにその利率を計算したのか、後から説明できる資料を残しておくことが大切です。

「差額5,000円以下」の取扱いにも条件があります

もう一つ知っておきたいのが、経済的利益が少額の場合の取扱いです。

災害等の場合や合理的な平均調達金利を使う場合以外の貸付けについても、所定の利率による利息と実際に支払った利息との差額による経済的利益が、一定の範囲で5,000円以下であれば、課税しなくて差し支えないとされています。

ここで注意したいのは、5,000円という数字が「貸付金の元本」を指しているわけではないことです。

見るのは、原則として無利息または低利率で貸したことによって本人が受ける経済的利益です。

また、会社の場合は、原則としてその法人の事業年度で判定します。

所得税基本通達36-28では、使用者が事業年度を有する法人の場合、その事業年度における利益の合計額で判定するとされており、事業年度が1年未満の場合には5,000円の金額も月数に応じて調整されます。

したがって、
「差額が5,000円くらいだから大丈夫だろう」
と感覚的に判断するのではなく、会社の事業年度に合わせて実際の金額を確認することが大切です。

社長への貸付けは「税務上の利息」だけ確認すればよいわけではありません

中小企業では、従業員への貸付けよりも、社長や役員に対する貸付金が問題になることがあります。

ここで一つ大切なことがあります。

税務上、会社から社長へ貸しただけで、その貸付元本が直ちに給与になるわけではありません。

ただし、だからといって「会社から社長へ自由にお金を貸してよい」という意味ではありません。

特に株式会社が取締役である社長へお金を貸す場合には、会社と取締役との取引になるため、会社法上の利益相反取引(会社と取締役の利害がぶつかるおそれのある取引のことです)に関する手続きを確認する必要があります。

会社法356条では、取締役が株式会社と取引をしようとする場合には、重要な事実を開示して株主総会の承認を受けることを定めています。
取締役会設置会社では、会社法365条により、その承認主体は取締役会となり、取引後の報告についても規定されています。

したがって、社長への貸付けでは、
「税務上、何%の利息を取ればよいか」
だけでなく、
「会社法上、必要な承認手続きを行っているか」
も確認しておいた方が安心です。

具体的にどの手続きが必要になるかは、会社の機関設計(取締役会や監査役を置いているかなど、会社の意思決定や監督の仕組みのことです)や貸付けの内容によって確認が必要です。

社長の個人的な支払いを「とりあえず役員貸付金」にするのは注意

中小企業では、会社の預金口座やクレジットカードから、社長個人の支払いが行われてしまうケースがあります。

その場合、会計上、社長へ貸したものとして「役員貸付金」などで処理することがあります。

ただし、ここで注意したいのは、
「個人的な支払いは、とりあえず役員貸付金にしておけば大丈夫」
というわけではないことです。

本当に貸付金として扱うのであれば、返済する前提があり、実際に会社がその返済を求めていることが重要です。

返済期限はどうなっているのか、返済方法は決まっているのか、実際に返済されているのか、といった事実関係も確認する必要があります。

法人税基本通達の考え方によれば、法人が本来役員個人が負担すべき費用を肩代わりした場合、その負担額は役員に対する経済的利益の一例として扱われると解釈されています。
役員へ無利息または低利率で貸付けを行った場合の利息差額も、同じ経済的利益の考え方に含まれます。

そのため、返済を求める実態がないにもかかわらず、帳簿上だけ「役員貸付金」としている場合には、給与などとして扱われる可能性があります。

単に仕訳の科目を「役員貸付金」にするだけではなく、実際に貸付けとしての実態があるかどうかが大切です。

契約書を作り、返済条件をはっきりさせておきましょう

会社から役員や従業員へまとまった金額を貸す場合には、金銭消費貸借契約書などを作成しておくと、内容を後から確認しやすくなります。

たとえば、貸付金額、貸付日、利率、返済期限、毎月の返済額、返済方法などを明確にしておきます。

そして、契約書を作るだけでなく、実際の返済も契約内容に合わせて行うことが重要です。

たとえば、
「毎月10万円ずつ返済する」
という契約を作ったにもかかわらず、2年間まったく返済していないとなれば、
「本当に返してもらう予定の貸付けだったのか」
という疑問が生じる可能性があります。

できれば、返済や利息の支払いは現金手渡しではなく、会社口座への振込みなど、後から履歴を確認できる方法で行うと管理しやすくなります。

なお、紙で金銭消費貸借契約書を作成する場合には、印紙税(契約書などの文書を作成したときに、記載された金額に応じて収入印紙を貼って納める税金です)にも注意が必要です。

国税庁では、金銭消費貸借契約書や金銭借用証書を「消費貸借に関する契約書」として印紙税の課税文書に分類しており、原則として契約書に記載された契約金額によって税額が変わります。

契約書を作成するときには、貸付条件だけでなく、印紙税の取扱いもあわせて確認しておきましょう。

決算のときに利息を計算すれば、それだけで終わるとは限りません

役員貸付金の利息というと、
「決算のときに1年分を計算して、会計ソフトに入力すればよい」
と思われることがあります。

しかし、無利息・低利率貸付けによる経済的利益は、所得税上の給与課税にも関係します。

実務上は、無利息または通常より低い利率で貸し付けたことによる経済的利益は、その利益を受けた各月の末日、または1年を超えない一定の期間ごとの末日を区切りとして把握することが一般的です。

そのため、実務では単に決算整理仕訳だけを考えるのではなく、給与課税が必要になる差額はないか、源泉所得税(会社が給与などを支払うときに、あらかじめ所得税分を差し引いて国に納める仕組みです)の取扱いはどうなるか、という点まで確認する必要があります。

特に社長や役員に対する無利息・低利率の貸付けでは、法人税上の役員給与の取扱いにも関係することがあります。

実務上は、役員等への無利息・低利率貸付けにより生じる一定の利益は、法人税基本通達が定める「経済的利益」の考え方に沿って、役員給与の取扱いの対象になると解釈されています。

すでに役員貸付金がある会社は何を確認すればよい?

今回の年1.3%への変更をきっかけに、すでに役員貸付金がある会社は一度整理してみるとよいでしょう。

確認したいポイントは、次のとおりです。

・誰に対する貸付金なのか
・いつ、いくら貸したのか
・令和8年中に追加貸付けがあるか
・貸付資金は会社自身のお金か、外部から借りたお金か
・契約書があるか
・利率を何%にしているか
・その利率の根拠を説明できるか
・実際に利息を受け取っているか
・返済期限や返済方法が決まっているか
・契約どおり返済されているか
・社長・取締役への貸付けの場合、会社法上の承認手続きを確認しているか

特に大切なのは、決算書に記載されている「役員貸付金○○万円」という残高だけを見ないことです。

たとえば500万円の役員貸付金があったとしても、それが令和6年に一度に貸した500万円なのか、令和6年から令和8年にかけて少しずつ増えた500万円なのかによって、確認すべき内容が変わってきます。

令和8年中に新たな貸付けが行われているのであれば、その部分について令和8年の利率を考える必要があります。

まずは貸付金の発生時期を整理することから始めるとよいでしょう。

役員貸付金は「税金」だけでなく資金繰りにも影響します

役員貸付金について考えるとき、
「何%の利息なら税務上大丈夫か」
という点に目が向きがちです。

しかし、経営上はもう一つ大切な問題があります。

それが会社の資金繰りです。

会社から社長へ500万円を貸せば、会社の預金は500万円減ります。

その後、会社自身に運転資金が必要になり、金融機関から500万円を借りることになれば、会社は銀行に利息を支払わなければならなくなります。

つまり、
「社長へ低い利率で貸している一方で、会社はもっと高い利率で銀行から借りている」
という状態になることもあります。

税務上の利率が1.3%だからといって、
「1.3%で貸せば会社から社長へいくらでも貸してよい」
という意味ではありません。

会社のお金は、仕入代金、給与、税金、借入金の返済などにも必要です。

社長への貸付けを行う場合には、税務上の処理だけでなく、会社の資金繰りに無理がないかもあわせて考えることが大切です。

まとめ|令和8年は「前年までの0.9%のまま」にしないよう確認しましょう

令和8年中に会社が役員や従業員へ金銭を貸し付けた場合、一定の場合の利息相当額を計算する利率は年1.3%です。

令和4年から令和7年中の貸付けについては0.9%でしたので、以前の利率をそのまま使っている会社は注意しましょう。

ただし、今回のポイントは単純に「0.9%から1.3%へ変更する」というだけではありません。

会社が外部から借りた資金を貸している場合には、その借入金利率を使うことがあります。

会社の合理的な平均調達金利を使っている場合や、災害・病気などに伴う一定の貸付け、経済的利益が一定の少額に収まる場合には、給与として課税しなくてよい取扱いもあります。

また、社長や取締役への貸付けでは、税務上の利率だけでなく、会社法上の承認手続きも確認しておきたいところです。

そして、会社から支払った社長個人の費用を帳簿上「役員貸付金」にしただけで安心するのも避けましょう。

本当に返済する前提があるのか、返済条件は決まっているのか、実際に返済されているのかという貸付けとしての実態が重要です。

すでに役員貸付金がある会社は、この機会に、
「いつ貸したのか」「なぜその利率なのか」「返済されているか」
を一度確認してみてください。

会社と社長のお金をきちんと分け、貸付けをするのであれば契約内容を明確にし、その契約どおりに実際のお金も動かす。

これが、役員貸付金に関する税務上・実務上のトラブルを防ぐ基本になります。

この記事について

この記事は、2026年9月19日時点で確認できる添付資料、国税庁の「No.2606 金銭を貸し付けたとき」、所得税基本通達、法人税に関する国税庁資料、会社法および印紙税に関する公的資料をもとに作成しています。

実際の取扱いは、貸付日、資金の出どころ、契約内容、返済状況、会社の借入状況、役員との関係などによって異なる場合があります。
特に過年度から続く役員貸付金や、追加貸付け・返済を繰り返しているケースについては、個別に事実関係を整理したうえで判断することをおすすめします。

税務上の具体的な処理については税務署へご確認ください。